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276 至高のサウンド(その30)

アルバム『新しいセルダム・シーンのアルバム』曲解説(B面)

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B面1曲目「鉄道員」は古くからあるフォーク・ソングです。イントロで右チャンネルからのフィンガー・ピッキング・ギター(間奏ではハーモニー)はダフィー、左チャンネル(間奏ではリード・ギター)がエルドリッヂのツイン・ギターが楽しめます。2番目の歌詞「プラットフォームに立ち、安い葉巻を吸いながら空の車を運ぶ古い貨物列車を待っている。目の上の帽子を引っ張り上げ、トラックを横切って歩く。古い貨物列車の最後尾に乗り、もう戻っては来ませんよ」という歌詞に男の決意が感じられます。どんな歌でも自分のものにしてしまうスターリングの歌唱力、間奏に泣き節フレーズをたっぷり織り込むドブロの技に感涙です。

ゆったりとしたペダル・スティールのイントロで始まる2曲目「電話に応えて」はスターリングのカントリー風味の作品です。この曲でもダフィーとエルドリッヂのツイン・ギターが聴かれます。間奏のマンドリンもトレモロを利かせて優しく奏でています。

3曲目はアカペラ・コーラスに始まる「愛する資格さえない」です。この手法はアルバム『アクト3』での「ジョージアのバラ」で既にお馴染み、ダフィー好みのアレンジだと言ってもいいでしょう。作者はサム・ブキャナン(Sam Buchanan)とヴァーノン・クラウド(Vernon Claude)で、マック・ワイズマンの歌でよく知られる曲です。リード・ヴォーカルからコーラスへと余裕のブルーグラス・サウンドが展開されます。間奏のバンジョーもドブロもマンドリンも「これぞブルーグラス」だと言わんばかりの演奏を聴かせてくれます。

4曲目「人生の歌」はA面5曲目「カリフォルニア大地震」で驚かせてくれたロドニー・クロウエルの作です。ギターのストロークに始まり、スターリングが思い入れたっぷりに歌い上げます。オゥルドリッヂがペダル・スティールとドブロを、エルドリッヂが5弦ドブロとギターをオーヴァー・ダビングし計算された音作りをしています。この曲は後にトニー・ライスやアリソン・クラウスも歌っています。

5曲目の「レベルズ・イエ・レスト」はポウリン・ボウチャンプという名の女性の作です。ダフィーはこういったフォーク調の曲が好みのようで、カントリー・ジェントルメン時代にもこういうタイプの歌を多く歌っていましたよね。

6曲目「人生の絵画」は、1951年にハンク・ウィリアムスが「ルーク・ザ・ドリフター」(Luke the Drifter)という名で歌って大衆化したトラディッショナル・ソングです。シーンの演奏は厚みのあるドブロのイントロから3部コーラスで歌われます。続いてダフィーのリード・ヴォーカルの後、間奏でダフィーがリード・ギターをつま弾くとドブロへと渡り、ここで転調し再びダフィーのリード・ヴォーカルとなります。また転調して元へ戻ると、臨場感溢れる4部コーラスとなりエンディングを迎えます。

『新しいセルダム・シーンのアルバム』は、スターリングのカントリー・ロックへの傾倒から作られたものであることは一目瞭然(いや一聴瞭然)でした。これからのシーンはこの路線で突き進むものと思われていました。


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by scoop8739 | 2018-04-26 13:38 | セルダム・シーン

275 至高のサウンド(その29)

アルバム『 新しいセルダム・シーンのアルバム』曲解説(A面)

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A面1曲目の「ビッグ・リグ」とは「大きなトラック」という意味です。オリジナルはフロリダ州キーウェストで活躍するカントリー・ロック歌手ジミー・バフェット(Jimmy Bafette)が1975年にリリースしたアルバム『ハバナの白昼夢』(Havaña Daydreamin')に収録されていた曲でした。これをスターリングは原曲のイメージからほど遠いほど洗練されたアレンジを施し歌っています。軽いギターのストロークからだんだん音が厚く重なりスターリングのコブシもよろしく巧みな熱唱へと続いていき、楽器は適度にバランス良く入ってきて曲を盛り上げます。なんとも“新しいセルダム・シーン”を象徴するかのような曲でのスタートとなりました。

2曲目は「貴方が感じる方法」です。なんだかイヤらしい邦題をつけましたが、原曲はスタンレー・ブラザーズのトラディッショナル・ナンバーです。遡ること10数年前、ダフィーはカントリー・ジェントルメン時代初期にスターデイ社にてこの曲をレコーディングしておりました。時代を経ったとは言え、“アップ・トゥ・デイト”に洗練されたアレンジや演奏スタイルにかかると、同じ曲がこうも印象が違って聴こえるものかと思ってしまいます。デリケートに歌うダフィーと重なるコーラスの美しさ、間を埋めるドブロの繊細な響き、どれをとっても非の打ちどころがありません。

3曲目「イージー・ライド・フロム・グッド・タイムス」は以前からシーンのアルバムに作品を提供しているハーブ・ペダーセンのオリジナル曲です。彼自身は1984年の発表したアルバム『寂しい気分』(Lonesome Feeling)で歌っています(Sugar Hill Records SH-3738)。しかしながらアレンジはまさにカントリー・ロック調となっていて、オゥルドリッヂはペダル・スティールを弾いています。ダフィーのマンドリンとスターリングのサイド・ギターはいつも通りとして、エルドリッヂが5弦ドブロとミュート・バンジョーを、そしてこの曲には途中からドラムが加わって曲に厚みを増しています。スターリングのヴォーカルは軽やかに、ウエスト・コースト・ロック風のコーラスもさらに気持ちよくさせてくれます。これこそ“簡単に”長距離ドライバー気分になれそうな曲です。

続く4曲目の「天国の谷間」は典型的なブルーグラス・ヒムです。こういった隠れた名曲を発掘するのを趣味とするグレイがアレンジして歌います。「死後の世界、それは常緑樹の日陰にバラの花が咲く美しい天国の谷間にある」という内容の曲で、グレイとダフィーがクローズ・ハーモニーで歌います。途中から輪唱となり再びコーラスに戻るという構成です。この曲でもドブロが効果的に演奏されています。こんな平和な気分でいられるのもほんの僅かな間です。いよいよ次の曲で“あれ”がやってきます。

アルバムのハイライトは5曲目「カリフォルニア大地震」です。この曲はカントリー・ロック歌手でエミルー・ハリスのバンドに在籍していたロドニー・クロウエル(Rodney Crowell)が作って歌っています。それをスターリングが巧みにアレンジしてドラマティックに歌いあげます。始めはまるでギターの弾き語りのように静かに歌い出し、コーラスが加わると重厚感が増してきます。途中からバス・ドラムが轟くといよいよ地震の揺れが始まったような錯覚に陥ります。「California earthquake you just don't know what you've done」、「神よ、貴方は何をしたいのか?」。そしてとどめの言葉が「We'll build ourselves another town so you can tear it down again」。嗚呼、なんてことでしょう、「建て直しても再び壊される」と。コーラスにはリンダ・ロンシュタットが加わっています。


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by scoop8739 | 2018-04-24 08:56 | セルダム・シーン

274 至高のサウンド(その28)

新しい場面が始まる。

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前スタジオ・アルバム『旧い列車』から約2年、『ライヴ・アット・セラードアー』からは約1年半ぶりの1976年初頭、シーンは新しいアルバムの準備を始めます。

そしていよいよ1976年4月14日と17日の両日に、かつて『アクト2』でお世話になったヴァージニア州フォールズ・チャーチにある「バイアス・スタジオ」に於いて新曲のレコーディングが行われました。

新しいアルバムはその6月に『新しいセルダム・シーンのアルバム』(The New Seldom Scene Album)という“ド直球”なタイトルでリリースされます(Rebel Records SLP 1561)。

さて何が“新しい”のか?

曲を聴けばすぐにもわかりますが、あえて書くとするならば「以前に比べてずいぶんとカントリー・ロック畑からの選曲が多くなった」ということ。それに合わせてオゥルドリッヂがペダル・スティールを弾いていること。数曲にドラムが加わったこと。などが挙げられます。ゲスト・ミュージシャンとして、ハーモニー・ヴォーカルにリンダ・ロンシュタット、ドラムにマーク・カフが参加しています。

さて、その収録曲は…

A

1曲目「ビッグ・リグ」(Big Rig

2曲目「貴方が感じる方法」(If That’s The Way You Feel

3曲目「イージー・ライド・フロム・グッド・タイムス」(Easy Ride From Good Times To The Blues

4曲目「天国の谷間」(Paradise Valley

5曲目「カリフォルニア大地震」(California Earthquake

B

1曲目「鉄道員」(Railroad Man

2曲目「電話に応えて」(Answer Your Call

3曲目「愛する資格さえない」(I Haven’t Got The Right To Love You

4曲目「人生の歌」(Song For Life

5曲目「レベルズ・イエ・レスト」(Rebels Ye Rest

6曲目「人生の絵画」(Pictures From Life’s Other Side


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by scoop8739 | 2018-04-20 10:17 | セルダム・シーン

273 至高のサウンド(その27)

アルバム『ライヴ・アット・セラードア』曲解説(D面)

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いよいよ最終盤面、D面1曲目はノー・イントロのハーモニーから始まる「ジョージアのバラ」です。ビル・モンローの正調ブルーグラス・ソングをシーンなりの解釈でアレンジし、ダフィーが高いキーをものともせずにブンブン飛ばします。終始鳴り続けるエルドリッジのバンジョーが心地よく沁みます。途中で転調してもダフィーの勢いはますますパワーアップというところです。

2曲目「コロラド・ターンアラウンド」はドブロをフィーチャーしたインスト曲です。作者はドブロの巨匠“アンクル・ジョッシュ”ことジョッシュ・グレイヴスで、彼が1974年にリリースしたアルバム『Alone At Last』(Epic KE 33168 )にも収録されています。タイトル通り急転回する車のようにめまぐるしくコードが変わる曲ですが、各楽器とも何の問題もなくスムーズに演奏しているようです。

続く3曲目「オール・ザ・ウェイ・トゥー・テキサス」は、このライヴ時点で新しく書かれたスターリングの曲です。彼女を残し旧い貨物列車でテキサスに去ってしまう男の哀愁を切々と歌っています。ブリッジにミュートをつけたバンジョーと抑えめに聴こえるドブロの音がさらに哀愁をそそります。まるで遥か彼方のテキサスの風景が目に浮かぶようです。

4曲目「ホワイト・ライン」はカナダのシンガー・ソングライター、ウィリー・P・ベネットが作り、1975年発売のアルバム『Tryin' To Start Out Clean』(Woodshed Records WS-004)に収録したカントリー・ロックでした。それをスターリングがバラード調にアレンジして歌います。バンジョーとマンドリンが背後で優しく奏で、ドブロがその間を埋めるように音を紡ぐと、この曲の歌詞に描かれた世界観が眼前に広がります。

そしてライヴの最後は5曲目「ライダー」です。アルバム『アクト3』に収録され、フェスティバルではハイ・パフォーマンスで聴かせる曲だけに、今回のライヴの締めには最もふさわしいものと言えるでしょう。アルバム同様に、ベースのイントロで始まりバンジョーへと続きます。そして意気のいいコーラスからスターリングのヴォーカルへ順に歌われます。間奏でマンドリンが実にファンキーに長いソロを弾き、同じように2番を歌った後には間奏のバンジョーがシンコペーションの強い長いソロを聴かせます。ベースが堅実にリズムをキープしてラスト・ランとなり、ドブロで曲を締めくくります。 大きな喝采の中、場内アナウンスがライヴの終わりを告げます。

そんじょそこらのライヴ・アルバムとは比べ物にならないパフォーマンスの繊細かつ完璧さ、音質の良さ、そしてアルバムとしてのまとまり。彼らがデビューして僅か2年にして頂点にまで登り詰めたばかりの完成度の高さです。これこそセルダム・シーンの記念碑として永世に残すべきアルバムとなりました。


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by scoop8739 | 2018-04-17 10:48 | セルダム・シーン

272 至高のサウンド(その26)

アルバム『ライヴ・アット・セラードア』曲解説(C面)

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ダフィーのM.C.でいよいよ第二幕が始まります。C面1曲目は観客のリクエストに応えて、オゥルドリッヂのファースト・アルバムからの曲「ピックアウェイ」です。この曲はレスター・フラットとバンジョーのヴィック・ジョーダン(Vic Jordan)が共作している1971年のアルバム『フラット・オン・ビクター』(RCA Victor LSP-4495)に収録された“超カッコいい”インスト曲です。そのアルバムでのマンドリンはローランド・ホワイトが弾いていました。またジョーダン自身も1973年に発表した自身のソロ・アルバムでこの曲をタイトル名にしているくらいですので(Atteiram API 1027)よほどの自信作だったのでしょう。そんな曲をシーンはドブロをフィーチャーして演奏しています。ドブロのしなやかで弾むようなその音色に気持ちがグイグイ持っていかれます。バンジョーやマンドリンやベースまでもが負けじとばかりに技を繰り出し演奏が加熱します。なんとファンタスティックなライヴなのでしょう!

2曲目「ダーク・ホロウ」もカントリー・ジェントルメン時代からのレパートリーです。スターリングのリードで歌われますが、チャーリー・ウォーラーと比べてやはり役者が一つも二つも上なのを感じます。

3曲目はバンジョーのイントロに始まり、しんみりとバラード調で歌われる「小さな例外」です。この曲はアルバム『アクト2』に収録されていて、このライヴでもコーラスからダフィーのリードへの流れ、歌の隙間を埋めて邪魔しないバンジョーとドブロのバックアップなど、アレンジ、バランスとも非の打ち所のない出来となっています。

続く4曲目「イフ・アイ・ワー・ア・カーペンター」はダフィーが得意とするフォーク調の曲です。作者はシンガー・ソングライターのティム・ハーディンで、彼が1967年に2枚目のアルバムで発表しています。それをポップ歌手の「ボビー・ダーリン」が、同年にソウル・グループの「フォー・トップス」が、そして翌1968年にはイギリスのアイドル・グループ「ハーマンズ・ハーミッツ」が次々とレパートリーにしてきました。そんな曲をエマーソン&ウォルドロンがブルーグラス調にアレンジし、彼らのファースト・アルバム『New Shades Of Grass』で発表してからはブルーグラス畑でも多く歌われるようになっています。シーンの演奏ではエマーソン&ウォルドロン盤と同じアレンジのバンジョーのイントロから始まりますが、そこにドブロが効果的に音を入れ込んでいます。抑え気味に歌うダフィーのリードから一気に厚みのあるコーラスとなり、間奏のバンジョー、マンドリンへと続きます。ここに入り込むドブロの音色がこの曲に芳醇な潤いを加えています。

バンジョーとマンドリンの絡みで始まる5曲目「オールド・グレイ・ボネット」は爽やかな印象のインスト曲です。原曲は1909年に作られたラグタイム・ソングでハイドン・カルテットによって歌われヒットしました。シーンはバンジョー、マンドリン、ドブロの順にソロをとり、セカンド・ブレイクでバンジョーが鮮やかにクロマチック・ロールをキメています。

6曲目「C&Oキャナル」は4枚目のアルバム『旧い列車』からの曲です。ポンポン船を思わせるようなバンジョーのイントロに始まり、アルバムではここでハーモニカが入るところですが、代わりにマンドリンのトレモロでノスタルジックな気分を高めています。いよいよスターリングの登場です。歌も上手けりゃ曲作りも巧い。楽器が曲調をコントロールするかのように静かに奏でられます。


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by scoop8739 | 2018-04-12 08:53 | セルダム・シーン

271 至高のサウンド(その25)

アルバム『ライヴ・アット・セラードア』曲解説(B面)

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B面1曲目「ベイビー・ブルー」はしっとりとした曲です。セット・リスト順なのでしょうか、それとも後で編集したものなのでしょうか、まったく巧く出来ています。この曲はダフィーがカントリー・ジェントルメン時代からレパートリーにして歌っているものでオリジナルはダフィーの好きなボブ・ディランの作です。アルバム『旅する人』(The Traveler)にも収録されています。ダフィーはフィンガー・ピッキング・ギターを弾きながら切々と歌い上げます。

2曲目はデビュー・アルバム『アクト1』から「シティー・オブ・ニュー・オーリンズ」です。この曲はスターリングがどのステージでも必ず歌うほどのお気に入りのナンバーです。それだけ数多く歌っているので安定した節回しで余裕すら感じられます。しかしマンネリとはならず、このライヴでもシーンの演奏は新鮮に聴くことが出来ます。

3曲目「おじいさんの古時計」はグレイがカントリー・ジェントルメン時代から得意としているベースをフィーチャーした曲で、ライヴならではの楽しさ溢れる演奏が聴かれます。当時、グレイはベスト・ベーシスト賞を受けており(同時期にオゥルドリッヂもベスト賞を受けていました)、それを反映してか、M.C.のスターリングが「トム、間違うなよ」と言った矢先に、バンジョーがイントロの音を外す、といった掛け合いで観客を大いに笑わせます。このステージングの妙もシーンの得意技ですネ。

マンドリンの静かなトレモロで始まる4曲目「フィールズ・ハヴ・ターンド・ブラウン」も前曲同様、カントリー・ジェントルメン時代からのレパートリーでした。その曲もリード・ヴォーカルがチャーリー・ウォーラーからジョン・スターリングに代わっただけでずいぶんと雰囲気が変わります。まるで甘いも苦いも知り尽くした中年男の哀愁のようなものが漂います。その甘美な歌声に陶酔しているとコーラスに続いて悩ましげなドブロの旋律が響きます。あゝ至福の瞬間…。

な〜んて気分に浸っていると、次の5曲目「恋のヒット・パレード」ではまるで冗談音楽のような演奏が始まります。ジミー・マーチンの看板曲であるそれをそっくり真似ています。M.C.のスターリングが「みんなマイクの前で、笑わずに、目を開いて、田舎風のユニフォームに揃えて」と少々小馬鹿にしたように言うと、小気味いいバンジョーのイントロから曲がスタートします。観客も大騒ぎ、スターリングのリード・ヴォーカルはジミーを意識してハイ・テンションです。コーラスのダフィーは鼻をつまんでポール・ウィリアムス調に歌い、さらに間奏では走り気味のマンドリンを弾きます。2番目の間奏ではバンジョーが張切りすぎて途中でピックを落としてしまうと、すかさずダフィーが「値段で言うと25セントのショックだ!」とツッコミを入れます。ピックをつけ直し再び演奏を始めるエルドリッヂ、汚名挽回とばかりにクロマチックをやり出すと、スターリングが手でその弦を押さえて、「J.D.クロウはそんな弾き方はしません!」とキツい一発。あんたら、まるで往年のクレイジー・キャッツか!? いやはや、とんだドタバタ寸劇でした。

これで第一幕の終わり、と思いきや、観客のアンコールに応えて6曲目「永遠のきずな」が始まります。マンドリンのイントロからのスターリングのリード・ヴォーカルは時にメロウに、時に力強く、合いの手のように入るドブロの音も清々しく、4部コーラスで気分をグッと盛り上げます。2番目のリードはグレイ、3番目はダフィーと続きます。最後のコーラスが終わると場内アナウンスが流れ、拍手鳴り止まぬ中、ステージは終了となります。しばらく休憩の後に第二幕が開演です。


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by scoop8739 | 2018-04-09 08:46 | セルダム・シーン

270 至高のサウンド(その24)

アルバム『ライヴ・アット・セラードア』曲解説(A面)

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第一幕、A面1曲目「刑の終るその日まで」はシンコペーションの利いたバンジョーのイントロに始まりスターリングの歌が続きます。力強いコーラスの後のリフレインはダフィーです。間奏のマンドリンの後のコーラスが終わると、スターリングの紹介でオゥルドリッヂがソロで登場し渋い声を聴かせます。バンジョーの間奏後は1番と同じ組み合わせで歌われます。ドブロの間奏が終わりダフィーのいつもながらの高音からのコーラスに続いて、今度は珍しくトムが登場します。レスター・フラットの歌で聴くと何の変哲もない曲ですが、シーンは趣向豊かにバンジョーを除くメンバー全員で歌い回して客の関心を引き寄せています。

続く2曲目はスターリングが好きなマール・ハガード作の「カリフォルニア・コットンフィールズ 」です。「オクラホマの暮らしを捨て、なけなしの金をはたいて中古のA型フォードを買い、家財道具をすべて積んで家族は夢の土地カリフォルニアを目指したものの、苦労していざカリフォルニアに着いてみると、はたして夢破れた人たちが住む家もなくあふれていた」と、歌はまるでジョン・スタインベック作、ヘンリー・フォンダ主演で映画化された『怒りの葡萄』のような感じです。スターリングのソロにコーラスではテナーにオゥルドリッヂ、ハイ・バリトンがダフィーと歌われます。間奏のバンジョーのフレーズが多彩です。

前曲が終わり大きな歓声の中、スターリングによるバンド・メンバーの紹介が始まります。冗談を交えつつ愉快に楽しく観客の心をグッとつかむ話術は絶妙です。

というところで、3曲目「パンハンドル・カントリー」がドブロのキック・オフで始まります。ビル・モンローのオリジナルではフィドル3台で演奏される曲ですが、シーンの場合はドブロが伸びのある音で軽やかなフレーズを奏で、とてもあか抜けた感じがします。バンジョーが負けずと多彩な技で応戦し、マンドリンも細かな音を繋げて参戦すると、ここぞとばかりにベースがソロを入れてきます。再びドブロに戻るとコーラスが飛び出し、オゥルドリッヂのソロ第2弾アルバムではここでリッキー・スキャッグスとヴァッサー・クレメンツのツイン・フィドルが入るところなのですが、ギターのDラン後にエンディングを迎えます。そしてとどめの「ツー、スリー、フォー、ジャン!」で見事に終わります。なんてカッコいい終わり方なのでしょう!? ついでに「どうだ、ニューグラス・リヴァイヴァル?」と締めくくるあたり、余裕のブチかましではありませんか?

賑やかな曲の後にはしんみりと4曲目「マディー・ウォーターズ」が始まり、アルバム『アクト3』と同じアレンジでスターリングが歌います。歌の背後ではドブロのハーモニクスが美しく響き、マンドリンも艶っぽく曲を盛り上げます。エンディングはドブロとマンドリンの絡みで締めています。

しんみりの後は5曲目「ロウハイド」で再び観客を沸かせます。ビル・モンローのトレード・マークのような不朽の名曲にダフィーが挑みます。とはいえカントリー・ジェントルメン時代から慣れ親しんでいた曲だけに“お手のもの”と言った塩梅です。バンジョーの卒ない演奏を受けてドブロが登場します。この曲にドブロが加わっただけでずいぶんと表情が豊かになります。ダフィーもそこのところを充分に熟知しているはず、マンドリン・ワークにも余裕が感じ取れます。


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by scoop8739 | 2018-04-05 08:26 | セルダム・シーン

269 至高のサウンド(その23)

公式ライヴ・アルバム

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快進撃を続けるセルダム・シーンの魅力は選曲の多様さ、演奏技術の高さ、歌の巧さに加え、ステージ・パフォーマンスの楽しさというものが挙げられます。

1974年の大晦日(New Year’s Eve)間際の 1227日、28日の両日、彼らはワシントンD.C.ジョージタウンのあるライヴ・スポット「セラー・ドア」(Cellar Door)にて、遂にライヴ・レコーディングをすることになりました。

「セラー・ドア」というと、1970年にジャズ・トランペッターのマイルス・デイヴィスや、ロック・シンガーのニール・ヤングがライヴ・レコーディングをしたことでも有名な場所です。つまり他のどの場所よりもライヴ・レコーディングに適している場所だと思われます。Youtubeに出回っているライヴ音源もそれはそれで楽しいものですが、正式に録音して編集されたものほど完成度の高いものはありません。

という訳で、セルダム・シーンにとって初めてのライヴ・アルバムが制作され、2枚組LPとなって1976年2月にリリースされます(Rebel SLP-1547/1548)。

それでは曲順を紹介致します。

A

1曲目「刑の終るその日まで」(Doing My Time

2曲目「カリフォルニア・コットンフィールズ 」(California Cotton Fields

3曲目「パンハンドル・カントリー」(Panhandle Country

4曲目「マディー・ウォーターズ」(Muddy Waters

5曲目「ロウハイド」(Rawhide

B

1曲目「ベビー・ブルー」(Baby Blue

2曲目「シティー・オブ・ニュー・オーリンズ」(City Of New Orleans

3曲目「おじいさんの古時計」(Grandfather’s Clock

4曲目「フィールズ・ハヴ・ターンド・ブラウン」(The Fields Have Turned Brown

5曲目「恋のヒット・パレード」(Hit Parede Of Love

6曲目「永遠のきずな」(Will The Circle Be Unbroken

C

1曲目「ピックアウェイ」(Pickaway

2曲目「ダーク・ホロウ」(Dark Hollow

3曲目「小さな例外」(Small Exception Of Me

4曲目「イフ・アイ・ワー・ア・カーペンター」(If I Were A Carpenter

5曲目「オールド・グレイ・ボネット」(Old Gray Bonnet

6曲目「COキャナル」(C&O Canal

D

1曲目「ジョージアのバラ」(Georgia Rose

2曲目「コロラド・ターンアラウンド」(Colorado Turnaround

3曲目「オール・ザ・ウェイ・トゥー・テキサス」(He Rode All The Way To Texas

4曲目「ホワイト・ライン」(White Line

5曲目「ライダー」(Rider


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by scoop8739 | 2018-04-02 08:51 | セルダム・シーン