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268 至高のサウンド(その22)

トニー・ライスのソロ・アルバム制作に参加

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1974年秋、スターリング、オゥルドリッヂ、グレイの3人は、気鋭のギタリストでヴォーカリスト、トニー・ライスの『ギター』(Got Me A Martin Guitar)に続くセカンド・アルバムの制作を手伝っています。録音はメリーランド州シルヴァー・スプリングのジョージア通りにある「トラックス・レコーダーズ」というスタジオでした。

この時参加したのは、シーンからはリズム・ギターにジョン・スターリング、ドブロにマイク・オゥルドリッヂ、ベースにトム・グレイの3人と、バンジョーにJ.D.クロウ、マンドリンにラリー・ライス、フィドル、ヴィオラ、マンドリンにリッキー・スキャッグス、そしてドブロにジェリー・ダグラスという顔ぶれでした。なお、アルバムのプロデュースはジョン・スターリングが担当しています。

アルバムは『カリフォルニアの秋』(California Autumn)というタイトルで翌1975年にリリースされました(Rebel Records SLP 1549)。

A

1曲目「カリフォルニアの秋」(California Autumn

リード・ヴォーカルはトニー・ライスです。

2曲目「弾丸男」(Bullet Man

この曲でのマンドリンはスキャッグスです。

3曲目「ミスター貧乏」(Mr. Poverty

リード・ヴォーカルはトニー・ライスです。

4曲目「土の中のビリー」(Billy In The Low Ground

ドブロはジェリー・ダグラスです。

5曲目「赤い髪の少年」(Red Haired Boy

6曲目「グッド・ウーマンズ・ラヴ」(Good Woman’s Love

リード・ヴォーカルはトニー・ライス、コーラスはスキャッグスとスターリング、ドブロはジェリー・ダグラス、リズム・ギターはスターリングです。

B

1曲目「私の気持ちも知らないで」(You Don’t Know My Mind

リード・ヴォーカルはトニー・ライス、コーラスはスキャッグスとスターリングです。

2曲目「独り忘れて去られて」(Alone and Forsaken

3曲目「ビューグル・コール・ラグ」(Bugle Call Rag

4曲目「我が心のジョージア」(Georgia On My Mind

5曲目「スカボロゥ・フェア」(Scarborough Fair

6曲目「バーモント・ラグ」(Beaumont Rag

バンジョーはJ.D.クロウ、リズム・ギターはスターリングです。


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by scoop8739 | 2018-03-30 15:28 | セルダム・シーン

267 至高のサウンド(その21)

マイク・オゥルドリッヂ、2枚目のソロ・アルバム発表

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記録が正しければ、アルバム『旧い列車』のレコーディングと同時期、同じスタジオでマイク・オゥルドリッヂの2枚目となるソロ・アルバムがレコーディングされています。

このセッションにはセルダム・シーンのメンバーに加え、リード・ギターにゲリー・ミュール(Gerry Mulé)、デヴィッド・ブロンバーグ(Dave Bromberg)、リード・ギターとフィドルにリッキー・スキャッグス、エレキ・ギターにローウェル・ジョージ(Lowell George)、ギターとマンドリンにドイル・ロウソン(Doyle Lawson)、ベースにトム・ガイデラ(Thomas “Tom” Guidera)、ドラムにボブ・ラレンス(Robert “Bob” Larence)、フィドルにヴァッサー・クレメンツ(Vassar Clements)、パーカッションとコーラスにスターリングの妻のフェイスー(Fayssoux Starling)、コーラスにリンダ・ロンシュタット(Linda Ronstadt)という超豪華メンバーが参加しています。

アルバムは

A

1曲目「ニュー・キャンプタウン・レイシズ」(New Camptown Races

フランク・ウェイクフィールド作曲。この曲でのマンドリンはドイル・ロウソン、フィドルがヴァッサー・クレメンツです。

2曲目「メキシカン・ローズ」(Mexican Rose

ロイ・ニコルズ作。リッキー・スキャッグスがリード・ギター、フィドルをヴァッサーが弾いています。ドラムはボブ・ラレンスです。

3曲目「やさしく歌って」(Killing Me Softly

ノーマン・ギンベル作詞、チャールズ・フォックス作曲の1971年のポピュラー・ソングでした。ゲリー・ミュールがリード・ギター、ベン・エルドリッヂがリズム・ギターを弾いています。

4曲目「これはグラスじゃない」(This Ain’t Grass

タット・テイラー作。フィドルはヴァッサー、マンドリンはダフィーです。

5曲目「ルイズビルまで8マイル」(8 More Miles To Louisville

グランバ・ジョーンズ作。この曲のマンドリンもダフィーです。

6曲目「マーシーのブルース」(The Sum Of Macy’s Blues

ディック・フェラー作。フィンガー・ピッキング・ギターはポール・クラフト、フラット・ピックはデヴィッド・ブロンバーグが担当しています。

B

1曲目「ボトム・ダラー」(Bottom Dollar

B.J.シェヴァー作。ミュールとブロンバーグがリード・ギター、コーラスにフェイスーとリンダが加わります。

2曲目「ストラッティン・ザ・ブルース」(Struttin’ The Blues

オゥルドリッヂ作。この曲のベースはトム・ガイデラが弾いています。

3曲目「パンハンドル・カントリー」(Panhandle Country

ビル・モンロー作。フィドルにはリッキーとヴァッサーが、マンドリンはダフィー、リズム・ギターはオゥルドリッヂ自身が弾いています。

4曲目「サマータイム」(Summertime

ジョージ・ガーシュイン作曲のミュージカル曲。この曲のフィドルもヴァッサーです。マンドリンは前曲同様ダフィーで、リード・ギターがミュールです。

5曲目「急がば回れ」(Walk Don’t Run

ジョニー・スミス作、ヴェンチャーズの演奏でも有名な曲です。前曲同様ミュールがリード・ギター、フィドルにヴァッサー、マンドリンとリズム・ギターはロウソンです。

6曲目「みんなでスライド」(Everybody SlidesWritten By D. Bromberg, L. George, M. Auldridge

デヴィッド・ブロンバーグ、ローウェル・ジョージ、マイク・オゥルドリッヂの共作。アコウスティック・ギターにブロンバーグ、エレキ・ギターにローウェル・ジョージ、リズム・ギターにポール・クラフト、ベースにトム・ガイデラ、パーカッションにフェイスー・スターリングという豪華メンバーでエンディングとなります。

アルバムは『ブルース・アンド・ブルー・グラス』(Blues And Blue Grass)というタイトルで1974年にタコマ社からリリースされました(Takoma D-1041)。


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by scoop8739 | 2018-03-26 08:38 | セルダム・シーン

266 至高のサウンド(その20)

アルバム『旧い列車』曲解説(B面)

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華やかなバンジョーの演奏から始まるB面1曲目の「パン・アメリカン」は1947年に書かれたハンク・ウィリアムスの自作自演曲ですが、どうも元歌はカーター・ファミリーの「ワバッシュ・キャノンボール」ではないかと思われます。この列車はシンシナティを出発し、モンゴメリーを経てニュー・オーリンズまで毎日運行していた「パン・アメリカン・クリッパー」のことでした。シーンのヴァージョンではオリジナルに比べてアップ・テンポなブルーグラス的アレンジを施し、全編コーラスによりルイビル、ナッシュビル、モンゴメリー、アラバマと地名を繋いで歌い上げています。間奏のドブロはここまでの演奏スタイルとは打って変わってテンポ良く力強く弾いています。

2曲目「建物で働いて」はアメリカ黒人のゴスペル・ソングでした。この曲はビル・モンローを始めプレスリーやB.B.キングなどいろんなジャンルのアーティストによって何度も録音されています。ギターとマンドリンのイントロに始まりバンジョーの軽やかなフレーズが続き、スターリングがファルセットで歌い出します。少々キーが高いように思われますが、それがかえってこの曲の緊張感を高めているようです。4部のコーラスではオゥルドリッヂがバスに、グレイがバリトンを受け持っています。2番ではダフィーのリードに替わります。間奏のドブロがブルージーな気分を高めます。3番でリードがスターリングに戻り、最後はコーラスでエンディングとなります。

3曲目の「愛をこめて」はサンドラ・シーモンズ(Sandra Seamons)とカイ・サヴェージ(Kay Savage)によって書かれた曲で、カントリー歌手ジョージ・ジョーンズ(George Jones)によってレコード化されています。シーンのヴァージョンはコーラスに始まり、ダフィーの繊細なリードに繋ぎます。間奏のマンドリンのトレモロとドブロの絡みが曲の情感を増します。

前曲とは曲調が変わってミディアム・テンポのバンジョーのイントロから始まる4曲目「心変わり」は、恋人との別れを歌ったダン・リノの作品です。グレイも加わったコーラスの後にダフィーのハイ・リードで歌われます。2番目の間奏の時にバンジョーが途中から転調し、ダフィーがさらに高いテナーを聴かせてくれます。

5曲目「旅は続く」はビル・モンローやフラット&スクラッグスも歌っているブルーグラス・セイクレッドの定番曲です。スターリングの弾むように軽快な歌に始まり4部コーラスへと続きます。

6曲目の「C&O キャナル」とは“チェサピークとオハイオ運河”のことで、ワシントンD.C.のジョージタウンからメイランド州のカンバーランドのポトマック川沿いに至るまでの間に石炭を積んだ船が運航していました。現在は時代の推移とともに運河としての役割を終え、側道がサイクリング・ロードとなっているそうです。それを懐かしむかのようにスターリングが曲を書きました。さてシーンの演奏ではフェード・インするバンジョーの緩やかなイントロに続いてハーモニカが使われています。このハーモニカは以前にシーンと共演したことのあるボブ・ウィリアムスが吹いています。スターリングの自信溢れたヴォーカルに続いてダフィーとの2部コーラスとなります。歌のバックでドブロがいい味を出します。

アメリカ盤(Rebel Records REB 1536)は10月に、日本盤は12月にキング・レコードから発売されています(Seven Seas SR 835)。

なお、この年の8月に開催された「ゲティスバーグ・ブルーグラス・フェスティバル」に出演し、このアルバム『旧い列車』からの4曲を含む演奏を披露しています。


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by scoop8739 | 2018-03-23 13:04 | セルダム・シーン

265 至高のサウンド(その19)

アルバム『旧い列車』曲解説(A面)

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A面1曲目「アパラチアン・レイン」です。アルバムが“列車の歌”特集なので「アパラチアン・トレイン」とばかり思っていましたが、「アパラチアン・レイン」、そう、“雨”なんですネ? スターリングの盟友ポール・クラフト作のインスト曲です。エルドリッヂのまるで雨だれように聴こえるバンジョーの音からキック・オフし、華麗なクロマチック・ロール、ブルージーなマンドリン、哀愁漂うドブロと続き、再びバンジョーとマンドリンが絡んでエンディングと流れ込みます。不協和音風のエンディング・パターンが余韻を残します。作者ポール・クラフト自身もギターで参加しています。

2曲目「少し待って」はジョン・ダフィーの依頼によってハーブ・ペダーセンが提供した2曲のうちの1曲です。もう1曲は4曲目アルバム・タイトル曲の「旧い列車」でした。つまり2曲とも採用されたということです。歌が作られたいきさつは、「長いツアーから帰ってくると、エージェントから1週間以内にさらにもう9週間ツアー出て欲しいとの電話がありました。私は、家から離れる時間が配偶者にとって不満の種になるもの思い、エージェントに対し、少し返事を待ってくださいと言った」という内容のものですが、これが“永遠の愛の歌”に変わったのでした。切なく響くドブロのイントロから、少し高いキーでスターリングが歌い始め、トリオ・コーラスへと続きます。曲をコントロールするように音数を抑えたマンドリンの間奏も実にいい感じです。この曲ではグレイが珍しくエレキ・ベースを弾いています。

贅沢にもギター、マンドリン、ドブロが重なり合うようにイントロを奏でる3曲目「それぞれの道」はスターリングのオリジナル曲です。なるほど歌い回しも冴え渡っています。サビからのコーラスにリッキー・スキャッグスのヴィオラがかすかに重なり豊穣な音の響宴となっています。

4曲目「旧い列車」は2曲目と同じくハーブ・ペダーセンの作品です。彼が北カリフォルニア鉄道を走っている古いサクラメント・ノーザン線から得たアイディアを基に妻ニッキーと共作しています。ギターに始まりすぐにマンドリンのカット、バンジョーのリック、ベースのオクターブ、ドブロのスライドで汽車の走る音が聞こえてくる様を表現したイントロは秀逸です。スターリングの小気味良いヴォーカルにうっとり。さらにコーラスに堪能していると、間奏でバンジョーが切り込んできてメロディックなロールをつま弾き、マンドリンのトレモロに続き、さらにドブロとフィドルが曲の流れを邪魔しないように巧みに入ってきます。エンディングは満を持したかのようにドブロが鮮やかなフレーズを決めてくれます。これぞ“音の祭典”や〜!(彦摩呂風)

5曲目「グラスの底に」は作曲者ポール・クラフトが自ら弾くギターのイントロから始まり抑揚のあるスターリングの歌に繋ぎ、コーラスにはリンダ・ロンシュタットが加わって4部で力強く歌われます。それぞれの楽器が曲全体の雰囲気を損ねないように控えめに音を奏でています。まるでブルーグラス版“A.O.R.”といった感じです。

続く6曲目の「古い十字路」でアルバム初のブルーグラス・ソングが登場します。大御所ビル・モンローの十八番とも言えるゴスペル・ソングを、前曲と同じくリンダが加わったクァルテットで歌い上げます。シーンの3人はリンダを引き立たせるかのように少し抑え気味に歌っています。歌の背後ではフィドルがマイナー・チューンを奏で、バンジョーも控えめに音を紡ぎます。間奏のマンドリンがとてもブルージーです。


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by scoop8739 | 2018-03-22 08:30 | セルダム・シーン

264 至高のサウンド(その18)

4幕目の演目は『旧い列車』

a0038167_16002866.jpgセルダム・シーンの面々は翌1974年3月10日と2週間後の24日、メリーランド州シルヴァー・スプリング、ジョージ通りにある「トラック・レコーダーズ・Inc.」にて4作目となるアルバムのレコーディングを行いました。

このレコーディングには、コーラス要員としてリンダ・ロンシュタット、ポール・クラフト、さらに前作でフィドルを弾いたリッキー・スキャッグス、そしてかつて共演したことのあるハーモニカのボブ・ウィリアムス等が参加しています。

A

1曲目「アパラチアン・レイン」(Appalachia Rain

2曲目「少し待って」(Wait A Munite

3曲目「それぞれの道」(Different Roads

4曲目「旧い列車」(Old Train

5曲目「グラスの底に」(Through The Bottom Of The Glass

6曲目「古い十字路」(Old Cross Roads

B

1曲目「パン・アメリカン」(Pan American

2曲目「建物で働いて」(Working On A Building

3曲目「愛をこめて」(Walking Through This World With Me

4曲目「心変わり」(Maybe You Will Change Your Mind

5曲目「旅は続く」(Traveling On And On

6曲目「C&Oキャナル」(C & O Canal

アルバムのタイトルは、ここまでの流れで行くと『アクト4』となるものと思っていたところ、意表をついて『旧い列車(オールド・トレイン)』となりました。これまでセルダム・シーン作品で数多く取り上げられていた“トレイン・ソング(列車の歌)”をコンセプトにしたアルバムです。


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by scoop8739 | 2018-03-20 16:13 | セルダム・シーン

263 至高のサウンド(その17)

アルバム『アクト3』曲解説(B面)

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一変してブルース調でしっとりと歌われるB面1曲目「マディー・ウォーター」は、A面4曲目の「ウィリー・ボーイ」と同じフィル・ローゼンタールの作です。この曲を哀愁たっぷりと歌いこなすスターリングはそれまでのブルーグラス界にはいなかった “歌に感情を込める”繊細さを持ち、器用で達者なヴォーカリストです。この曲でも控えめにフィドルが鳴っていていい感じです。

そんなスターリングのオリジナル曲が2曲目「ミーン・ママ・ブルース」です。流麗なドブロのイントロからギターのソロに続き、巧みなスターリングの歌い回しと力強いコーラス・ワークが続きます。そこへ歯切れのよいエルドリッヂのバンジョーが割って入ってきてメロディックやプリング・オフを巧みに取り入れた間奏で曲を盛り上げていきます。この途切れることのない流れるようなバンジョーのノートの選択とアクセントを紡ぎだすロールは、当時ではアラン・マンデと双璧をなすものでした。まさに神業です。ちなみにリード・ギターはゲスト・プレイヤーのクレイトン・ハンブリック(Clayton Hambrick)でした。

そんな思いで涙していると3曲目「シング・ミー・バック・ホーム」が始まります。この曲はカントリー歌手のマール・ハガードの自作曲で、オリジナルは1967年に発表されています。その後エヴァリー・ブラザースを始め、ジョーン・バエズ、フライング・バリトゥ・ブラザーズ等に歌い継がれてきました。スターリングはそのオリジナルに比べてグッと控えめに歌っています。こうした感情を抑えた歌い方をすることでこの曲の美しさが強調されます。さすがです。ちなみにこの曲は「ローリング・ストーンズ」のギタリスト、キース・リチャードの愛唱歌でもありました。

次の4曲目「インディアン万才!」は一転して軽やかなバンジョーから始まるインスト曲です。シーンの地元ワシントンD.C.をフランチャイズとするアメリカン・フットボール・チームの名門「レッド・スキンズ」がナショナル・フットボール・リーグで初めて採用した戦闘曲でした。セルダム・シーンも実際にホーム・ゲームでこの曲を演奏したそうです。ちなみに“レッド・スキンズ”とはインディアンの別称のことですが、実際に赤いヘルメットの側面にはインディアンのイラストが描かれています。最後のところでバンジョー・ソロにからむダフィーの「ディキシー・ランド」(Dixie’s Land)のメロディーがいい味を出しています。

エルドリッヂの弾く穏やかなギターのイントロで始まる5曲目「ホワイト・サテン」は、カントリー・ジェントルメン以来のコンビ、アン・ヒルとジョン・ダフィーの共作によるエコロジーをテーマにした曲です。彼らは社会問題を扱ったフォーク調の作品を多く作っています。始めはダフィーとスターリングによるユニゾンで歌われ、続いてダフィーの感情を抑えたソロとなります。バックで鳴っているドブロの音が哀愁を帯びて聴こえます。

マンドリンのイントロで始まる6曲目「ヘヴン」はアルバムのラストを飾るにふさわしいセイクレッド・ソングです。フラット&スクラッグスのアルバム『ソング・トゥ・チェリッシュ』でのレスターの名唱でも知られるように、ブルーグラスの世界では数多くのグループに歌われてきました。しかしここではダフィーの非南部的なリード・ヴォーカルが特徴的です。リードがスターリングに入れ替わり4部コーラスへと続きます。洗練された外連味のない正統派ブルーグラス・セイクレッドの真髄を思う存分に聴かせてくれています。

多様な音楽ソースで溢れたアルバム『アクト3』は197312月にリリースされました(Rebel SLP-1528)。日本盤は翌197410月にキング・レコードから発売されています(Seven Seas SR 834)。


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by scoop8739 | 2018-03-16 08:22 | セルダム・シーン

262 至高のサウンド(その16)

アルバム『アクト3』曲解説(A面)

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A面1曲目「チム・チム・チェリー」はディズニーのミュージカル映画『メリー・ポピンズ』(実写とアニメの合成版)の主題歌としてリチャードとロバートのシャーマン兄弟によって作られた曲です。もの悲しげなギターの独奏はダフィーです。バックでかすかに聴こえるドブロの音色が哀愁感を増しています。アルバムの幕開きにふさわしくしっとりとした演出です。

前曲からは打って変わって気合いの入ったアカペラ・コーラスで始まる2曲目「ジョージアのバラ」は、このアルバムでは珍しく“もっともブルーグラスらしい曲”です。この曲はご存知の通りビル・モンローの十八番曲で、通常「Rose Of Old Kentucky」と題され歌われています。もちろん選曲はモンロー信者のダフィーでしょう。コーラスから始まったり、途中で転調したりと、オリジナルからは想像できないほどいろんなアレンジとテクニックを駆使して聴かせてくれます。

3曲目「アナザー・ロンサム・デイ」はカントリー・ジェントルメンを脱退したエディ・アドコックが作ったバンドの女性シンガー、ウェンディ・サッシャー(Wendy Thatcher)の作になる美しい曲です。近年ではエミルー・ハリスの名唱でも有名となりましたが、この曲をいち早く取り上げた選曲眼のするどさに驚くばかりです。フォーク調のオリジナルに比べ、さらに磨きをかけたアレンジはセルダム・シーンの真骨頂といったところです。コーラスが綺麗にハモって気持ちいいですネ。リード・ギターはエルドリッヂが担当しています。

4曲目「ウィリー・ボーイ」は、後にセルダム・シーンのヴォーカリストとなるフィル・ローゼンタールの自作曲です。この曲は先住民族として生まれたがために起こった悲劇を題材にして作られています。軽快なバンジョーのイントロに始まり、スターリングの渋いヴォーカルで滔々と歌われます。コーラスのハイ・バリトン・ヴォーカルがダフィー、テナーはグレイが担当しています。間奏のドブロがいい味を出しています。余談になりますが、1970年に公開されたアメリカ映画『明日に向かって走れ』(ロバート・レッドフォード主演)で、この「ウィリー・ボーイ」の悲劇が描かれています。

5曲目「過ぎ去りし恋」はオゥルドリッヂのムード溢れるドブロ演奏がたっぷりと聴ける曲です。オリジナルはボブ・ウィルスと彼の兄弟によって書かれたウエスタン・スゥイングの名曲でした。ドブロの後ろでマンドリンが聴き取れないくらい静かに奏でられています。リード・ギターはエルドリッヂです。これぞまさに大人による大人のための名演奏だと言えるでしょう。

とかなんとか書いていたら、次の6曲目「ライダー」ではいきなりベースのイントロからバンジョー、フィドルのソロへと続き、コーラスからスターリングの歌で曲が始まります。この演奏からはブルーグラスというよりジャズに近いものを感じます。なるほど元は黒人の“自由への脱出”を願う歌だったと言われています。ジェリー・ガルシア率いるグレイトフル・デッドが1970年に発表したアルバム『ヴィンテージ・デッド』に収録されていたこの曲を誰よりもいち早くブルーグラスにアレンジしたのではないでしょうか。それにしてもなんとも迫力ある演奏です。エルドリッヂがバリトン・ヴォーカルを担当しています。曲を邪魔しない程度に鳴っているセンスいいフィドルはニュー・サウスに加入前のリッキー・スキャッグスでした。


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by scoop8739 | 2018-03-13 17:12 | セルダム・シーン

261 至高のサウンド(その15)

さらに快演は続き、第3幕の開演です。

a0038167_12460177.jpg1973年の初め、セルダム・シーンはアメリカ合衆国国立公園局とアメリカのネットワークのひとつであるNBCNational Broadcasting Company、全国放送会社)の依頼でアルバムを制作しています。共演したのはボブ・ディランと一緒に演っていたハーモニカ奏者、ボブ・ウィリアムスでした。

アルバムは『乾いた過去』(When The Past Dries Up)と題され、国立公園センターを訪問した人々に販売されます。収録曲は「ロック・レディ」(Lock Ready)、「マディー・ウォーター」(Muddy Water)、「ソルティ・ドッグ・ブルース」(Salty Dog Blues)の3曲でした。

また3月には地元ワシントン大学の構内にあるライズナー大講堂(Lisner Auditorium)にて満場の観客の中でライヴが行われています。

そのセット・リストには、『アクト1』『アクト2』に収録された曲はもとより、次作に収録される予定の曲が数曲ほど含まれていました。

さてファンの期待が高まる中、この7月には3枚目のアルバム制作に取りかかります。

まず7月15日、メイランド州トウソンにある「I.T.I.スタジオ」にてディズニー・ソング「チム・チム・チェリー」をレコーディングし、さらに翌週の7月21日には、ゲスト・プレイヤーにリッキー・スキャッグスを迎えアルバムの残り11曲をレコーディングしています。

それでは曲の解説と参りましょう。

おっとその前に、実は私は国内盤から先に聴いていたので、後で聴いたオリジナル盤の曲順には違和感がありました。参考までに国内盤の曲順を書いておきます。

A

1曲目「ウィリー・ボーイ」

2曲目「過ぎ去りし恋」

3曲目「ライダー」

4曲目「アナザー・ロンサム・デイ」

5曲目「チム・チム・チェリー」

6曲目「ジョージアのバラ」

B

1曲目「ミーン・ママ・ブルース」

2曲目「シング・ミー・バック・ホーム」

3曲目「インディアン万才!」

4曲目「ホワイト・サテン」

5曲目「ヘヴン」

6曲目「マディー・ウォーター」

この曲順でシックリと行くのは、きっと197410月に初めてセルダム・シーンのアルバムを手にして彼らのサウンドを聴いた、私と同じような方ではないでしょうか?

ちなみに国内盤はキング・レコード(Seven Seas SR 834)から「カレッジ・カントリー・シリーズ」の一環として発売されています。

閑話休題。では改めてオリジナル盤の曲順を書きます。

A

1曲目「チム・チム・チェリー」(Chim-Chim-Cher-Ee

2曲目「ジョージアのバラ」(Little Georgia Rose

3曲目「アナザー・ロンサム・デイ」(Another Lonesome Day

4曲目「ウィリー・ボーイ」(Willie Boy

5曲目「過ぎ去りし恋」(Faded Love

6曲目「ライダー」(Rider

B

1曲目「マディー・ウォーター」(Muddy Water

2曲目「ミーン・ママ・ブルース」(Mean Mother Blues

3曲目「シング・ミー・バック・ホーム」(Sing Me Back Home

4曲目「インディアン万才!」(Hail To The Redskins

5曲目「ホワイト・サテン」(Don’t Bother With White Satin

6曲目「ヘヴン」(Heaven

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by scoop8739 | 2018-03-10 12:48 | セルダム・シーン

260 至高のサウンド(その14)

アルバム『アクト2』曲解説(B面)

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B面1曲目「ハロー・メリー・ルー」はポップ歌手ジーン・ピットニー(Gene Pitney)とケイエット・マンジアシーナ (Cayet Mangiaracina) によって書かれた曲で、1961年にリッキー・ネルソンによって歌われヒットしました。シーンの演奏は軽やかなバンジョーのイントロに始まり力強くハイテンポで歌われます。またこの曲ではトム・グレイのバリトンも聴けます。

2曲目「ララのテーマ」はモーリス・ジャールが映画『ドクトル・ジバゴ』のために書いた作品でした。前曲とは打って変わって虚をつくようにエルドリッヂが可憐なバンジョーのソロを聴かせてくれます。

前曲がフェイド・アウトすると3曲目「君を失くして」が始まります。これはアール・スクラッグスが1951年に書いた曲で、「Don't Get Above Your Raisin'」とのカップリングでシングル・リリースされています。この地味な曲を発掘してきたダフィーの努力には感心させられます。軽快なマンドリンのイントロに始まり、悲しい内容なのにダフィーは溌剌と歌っているように思えます。つまりそれがブルーグラスなんですねぇ…。

4曲目「スウィーテスト・ギフト」はJ.B.コーツの作です。「罪を犯した放蕩息子に面会をする母親、罪の大小に無関係に注がれる息子への愛情、そして手土産の笑顔」という内容で、ブルー・スカイ・ボーイズが歌って知られるようになりました。近年ではリンダ・ロンシュタットがレパートリーにして有名になっています。この曲をダフィーのリードにトム・グレイが輪唱します。間奏のドブロが曲のムードをグッと高めているようです。この曲も物悲しい内容なのに、それを感じさせないような歌い方です。これまたブルーグラスなんですねぇ…?

軽やかにドブロのイントロで始まる5曲目「リーズン・フォー・ビーイング」は直訳すると“存在理由”という意味です。この曲はカントリー・ジェントルメン時代の作家コンビ、アン・ヒルとジョン・ダフィーの共作となっています。ジェントルメン時代だったらチャーリー・ウォーラーに疎まれたと思われる曲ですが、シーンではダフィーも水を得た魚のようにのびのびと歌っています。

6曲目「スモーキン・ヒッコリー」はベン・エルドリッヂのオリジナル・インスト曲です。華麗なテクニックで聴かせるバンジョーの演奏ですが、その音色が実に素晴らしい。このバンジョーは戦前のギブソン“グラナダ”のオリジナルで、もとはビル・エマーソンがジミー・マーチンのバンドにいた頃に弾いていたものです。それをエルドリッヂがビルから譲っていただいたそうで、ネックが使いすぎて細くなっていて弾きやすくなっているということです。という訳でもないのでしょうが、キース・トンプソン・スタイルを駆使した鮮やかな演奏が曲を一段と輝かせています。ダフィーのマンドリンもオゥルドリッヂのドブロもブルージーで曲に彩りを添えています。

7曲目「黄金の家に住むよりも」はハンク・ウィリアムス作のゴスペル曲です。この美しい福音曲をスターリングの男らしいリード・ヴォーカルとダフィーの力強いハーモニー、加えてドブロの流麗な音色が完璧なまでにシーン・カラーに染め上げています。まさにアルバムのラストを飾るには充分過ぎる完成度の高さです。

セルダム・シーンの画期的なデビュー・アルバム『アクト1』と、続くこの『アクト2』のリリースは、1970年代初頭に始まった“ニューグラス”というブームに乗った他のバンドの追随を退け、遥か先を走っていった感があります。


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by scoop8739 | 2018-03-08 08:47 | セルダム・シーン

259 至高のサウンド(その13)

アルバム『アクト2』曲解説(A面)

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A面1曲目「最終列車」はノーマン・ブレイク作、フォーク調のしっとりと聴かせる曲です。ノーマンが1974年にアルバム『The Fields Of November』で初めて発表した曲でしたが彼の愛唱歌だったようです。近年では映画『オー・ブラザー』のサウンド・トラックとしてフィーチャーされています。ギターのストロークとバンジョーのアルペジオが心和むイントロを奏で曲が始まります。そしてスターリングが渋く歌いだし、ドブロが囁くように静かに奏でられコーラスへと導かれます。間奏のマンドリンもグッと抑え気味に曲をコントロールしています。

ドブロのどこか憂いを含むイントロに始まる2曲目の「思い出の庭」はスターリングの作です。優しく歌われるスターリングのリードからコーラスとなり、間奏ではダフィーの弾くフィンガー・ピッキング・ギターとドブロが軽快に競演します。バックアップのバンジョーも歌を邪魔しない程度にクロマチック・ロールを奏でています。

3曲目「パラダイス」はカントリー歌手でソングライターのジョン・プラインの作です。ケンタッキー州ミュンヘンベルク郡にあるパラダイスという町の話で、ここでは現在、ピーボディ石炭採掘会社とテネシー渓谷局が石炭火力発電所を運営しています。この曲は彼が父親のために書き、1971年のデビュー・アルバム『ジョン・プライン』に収録されました。以後この曲は数多くのシンガーによって歌われ続けています。シーンの演奏では、スターリングとダフィーの力強いコーラスが3拍子の速いテンポで歌われ曲のムードを高めています。間奏のエルドリッヂのバンジョーはこれでもかときらびやかに鳴り響きます。

打って変わってバンジョーの穏やかなイントロで始まる4曲目「小さな例外」は英国人のジャッキー・トレントとトニー・ハッチ夫妻の共作です。トニーはペトゥラ・クラークの「ダウンタウン」を書き、二人の共作で有名なのはスコット・ウォーカーの「ジョアンナ」という曲でした。話を戻して、こんなスローな曲でのエルドリッヂの音使いは他に類をみないものがあります。コーラスではダフィーのリードと共にスターリングのロー・テナーが聴けます。このコーラスにフィル・インするドブロのセンスには参ってしまいます。そしてなんと言ってもダフィーの歌のうまさが光ります。

5曲目「一番列車で」はイーグルスの創設メンバーであったバーニー・リードンがジーン・クラークと共作した曲で、ディラード&クラークの1968年発表のアルバム『ファンタスティック・エクスペディション』(The Fantastic Expedition Of Dillard & Clark)に収録されています。後にイーグルスの『ファースト・アルバム』でも取り上げられました。優しいギターのイントロにドブロが憂いあるサウンドで添います。切なげなスターリングのリード・ヴォーカルにダフィーのハイ・バリトンが被さり、まるで極上のワインを口に含んだ時の芳醇な香りが鼻腔をくすぐる感覚を味わえると言ったら言いすぎでしょうか?

前曲の印象を引き継ぐようにギター・ストロークのイントロに始まる6曲目「ブロウイン・アウェイ」は、シーン御用達のポール・クラフトの作品です。間奏のギターとドブロが胸を締め付けるように優しく切なげに鳴り響きます。余談ですが、この曲は後にリンダ・ロンシュタットのレパートリー曲にもなっています。


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by scoop8739 | 2018-03-05 08:45 | セルダム・シーン