カテゴリ:セルダム・シーン( 35 )

281 至高のサウンド(その35)

おわりに

さてこれまでのシーンは、ライヴ・パフォーマンスに於いてはダフィーの軽妙なステージ・ワークと派手さを中心に構成してきましたが、スタジオ・ワーク、つまりレコーディングではスターリングが中心となってやってきています。つまり、メンバーそれぞれの個性を引き出してそれをまとめる作業役(これをミュージカル・ディレクターと言います)を果たしていたのがスターリングだったのです。

またヴォーカリストとしても、彼の後釜を務められるような人物がそうそう存在する訳がありません。『アクト1』に収録された「ベビー・ジェイムス」を軽々と歌えるシンガーなどブルーグラス界広しと言えども、スターリング以外に見つけることはできません。

コンテンポラリー・ソングを易々と歌いこなせ、古いブルーグラス・ナンバーでは歌の巧さと新しさ(Something New)を加味できるセンスの良さが彼にはあったのです。

セルダム・シーンがブルーグラス界で最高の人気を勝ち得た要因には、スターリングに依存するものが大きかったと思われます。そんな彼がバンドを脱退したのですからこれは一大事です。明らかにバンドの質に変化が生じることは明らかでした。

たとえオゥルドリッヂのドブロに磨きがかかろうとも、エルドリッヂのバンジョーがますます冴えようとも、ダフィーのテナーが吠え渡ろうとも、グレイのベースが堅実に4ビートを刻み続けようとも、ローゼンタールのリード・ギターが新たなバンドの魅力になろうとも、スターリングのいた頃のセルダム・シーンを再現させることは出来ません。

“オリジナル・セルダム・シーン”が各々の個性と調和で燦然と輝き『至高のサウンド』を創造していた時代。そんな時代に私たちが彼らの創り出した音楽を聴いて感じた思い、その記憶と記録は永遠に消えるものではありません。そして私たちの中では今でも色褪せることなく、彼らの残した楽曲を聴くことで、いつまでも新鮮に彼らのサウンドを楽しむことが出来るのです。

[PR]
by scoop8739 | 2018-05-16 11:51 | セルダム・シーン

280 至高のサウンド(その34)

アルバム『洗礼』曲解説(B面)

a0038167_09505186.jpg

B面1曲目「テイク・ヒム・イン」はブルーグラス・ヒムのエッセンスに溢れた作品です。これもまたローゼンタールの自作曲です。なかなか作曲のセンスがいいですネ?

2曲目「天国行きの貨物列車」は、Youtubeにもアップされている「バーチメア・レストラン」でのライヴでも聴くことが出来ます。そこではダフィーが「次のアルバムに入れる曲」だと話しています。収録されたのは19761114日となっていますので、その頃には既にこのアルバムの準備が進められていたようです。この曲はアルバムでのスターリングの歌唱として1番の出来だと思われます。まさしくシーンでの最後のアルバムとなるにふさわしい名唱となっています。メンバーの演奏も実に素晴らしく、スターリングとの別れを惜しみつつ、かつ門出を祝福しているかのような感じがします。後にスターリング自身がこの曲をソロ・アルバム『長い時が経って』(Long Time Gone)に収録しています。かなりお気に入りの曲だったのでしょう。

バンジョーの軽快なイントロに始まる3曲目「帰る準備はできたかい?」は、『アクト2』に収録の「黄金の家に住むよりも」、『旧い列車』に収録の「古い十字路」、『新しいセルダム・シーンのアルバム』に収録の「人生の絵画」などと同様のハンク・ウィリアムス自作曲です。こうしてみるとシーンはハンクの曲をずいぶんとカッコよく定型的なブルーグラスにアレンジして演奏しています。そしてスターリングが前曲に続いての名唱です。他のメンバーの間奏も実に素晴らしい!

4曲目「そこにいましたか?」(Were You There ?)は、ジョニー・キャッシュやハリー・ベラフォンテなどによって歌われたアメリカ独自の宗教歌です。最初は無伴奏でダフィーのリードから、すぐにスターリングとローゼンタールとオゥルドリッヂがコーラスに加わります。「彼らが私の主を十字架に張付けた時、あなたはそこにいましたか?」を繰り返し、3行目の歌詞「震える、震える、震える」(trembletrembletremble!)というところのコーラスがとても美しく響きます。単純な歌詞だからこその説得力と精神性が感じられる曲です。

ギターのイントロで始まる5曲目「ウォーク・ウィズ・ヒム・アゲイン」はローゼンタールの曲で、ダフィーとのコーラスはスターリングとは違ったソフトでメロウな趣きがあります。モダンで凝った演奏と曲調がシーンに新しい風を起こしています。

6曲目「ゴスペル・メドレー」は伝統的な宗教歌のメドレーです。無伴奏コーラスから始まる「アメイジング・グレイス」(Amazing Grace)をスタートに、フラット&スクラッグスでお馴染みの「ゲット・ライン・ブラザー」(Get In Line Brother)、ビル・モンローの得意とする「スィング・ロウ・スィート・チェリオット」(Swing Low Sweet Chariot)、そしてラストはハンク・ウィリアムの「灯りが見えた」(I Saw The Light)と綴られます。このゴスペル・メドレーは当時のシーンのステージでフィナーレを飾るものでした。ダフィーの気合いの入ったリード・ヴォーカルとローゼンタールが加わったコーラスは重量感があってなかなかのものです。

『洗礼』(Baptizing)と題されたこのアルバムは、スターリング在籍時のセットと、新しく加入したローゼンタールでのセットを交互に組み込んだ鮮やかな手法で新旧交代を演出しています。つまり、さりげなくソフトに“新生セルダム・シーン”を紹介したものとなりました。

そしてアルバムは197810月にリリースされます(Rebel Records SLP 1573)。日本盤の発売は1979年になってからのことでした(Seven Seas GXF 6024)。

その当時、カウンティ・レコード社々長のデイヴ・フリーマンが語っているところによると、このアルバムは、選曲、ヴォーカル、ハーモニー、バックアップのどれをとっても非の打ちどころのない、1970年代のゴスペル・アルバムとしてはナンバー・ワンのアルバムであると言っても過言でないというものでした。


[PR]
by scoop8739 | 2018-05-14 08:56 | セルダム・シーン

279 至高のサウンド(その33)

アルバム『洗礼』曲解説(A面)

a0038167_09505186.jpg

まずA面1曲目の「サイド・オブ・ザ・ロード」は、マック・ワイズマンがドット・レコードに残したアルバム『This Is Mac Wiseman(Dot 3697)に収録されていた曲でした。スターリングのドライヴの効いたヴォーカルでグイグイと歌われ、コーラスでさらに迫力を感じさせてくれます。間奏はダフィーのリード・ギターでしょう。バンジョーもコブシの効いたシンコペーションたっぷりの演奏です。この曲にはリズム・マンドリンでスキャッグスが加わっています。

続く2曲目「ブラザー・ジョン」で初めてローゼンタールのヴォーカルを聴くことが出来ます。スターリングと較べること自体が酷なのですが、ソフトでメロウな歌声は万人受けしたのではないでしょうか? この曲の作者はローゼンタール自身です。彼は「マディー・ウォーター」で見せたマイナー調の曲作りがお得意のようです。

マンドリンのトレモロで始まる3曲目「山小舎の夢」は再びスターリングの出番です。この曲も1曲目同様、マック・ワイズマンのアルバム『This Is Mac Wiseman』からの選曲となりました。スターリングの格調漂う詩情豊かな歌声に酔いしれます。コーラスも美しくキマっています。間奏のギターはオゥルドリッヂです。

4曲目「落葉」はクリフ・ウォルドロンのアルバム『トラヴェリング・ライト』でも聴くことができる曲で、グランパ・ジョーンズが作り、奥方ラモーナとのデュエットで歌われた有名なカントリー・ナンバーでした。哀愁溢れるダフィーのヴォーカルが歌の意味を切々と伝えているようです。間奏のギターはローゼンタールです。オゥルドリッヂがまるでペダル・スティールを弾いているかのようにドブロを奏でます。

5曲目の「ヒー・トゥック・ユア・プレイス」はフラット&スクラッグスの曲ですが、スターリングが所謂ブルーグラスの曲でありながらブルーグラスとは違った歌い方をしています。オリジナルのレスター・フラットとはひと味違ったブルーグラス・ヴォーカルを聴かせてくれます。


[PR]
by scoop8739 | 2018-05-11 08:45 | セルダム・シーン

278 至高のサウンド(その32)

ジョン・スターリングの退団とアルバム『洗礼』

a0038167_09505186.jpg

1977年の夏、次のアルバム制作が始められます。この当時、彼らがライヴ活動を行っていた「レッド・フォックス・イン」や「バーチメア・レストラン」、また各地のフェスティバル会場では既にレコーディングが終わった曲がお披露目されていたようです。

ところが秋になって、スターリングはアリゾナ州で医院を開業するためにバンドを離れることを決意します。新しいアルバム制作が進む中での退団決意はバンドに衝撃を与えました。スターリングの代わりとして白羽の矢が立ったのが、アルバム『アクト3』で「ウィリー・ボーイ」や「マディー・ウォーター」の曲提供をしたフィル・ローゼンタールでした。

彼はコネチカット州ギルフォードで生まれ、ニューイングランドに拠点を置くブルーグラス・バンド「アップル・カントリー」と「オールド・ドッグ」をかけ持ちし、ギター、バンジョー、マンドリン、ヴォーカルを巧みにこなすマルチ・プレイヤーです。「オールド・ドッグ」として「バーチメア・レストラン」に出演した折には、度々オゥルドリッヂと共演していました。そんなローゼンタールが新しくバンドに加わるということで、シーンに新たな展開が始まると期待されました。

さて、スターリングとのセットで既にレコーディングされていた曲と、新たにローゼンタールが参加した曲を加えて作られたのが、セルダム・シーン初のゴスペル・アルバム『洗礼』(Baptizing)です。ゲストには新生ブーン・クリークを率いるリッキー・スキャッグスがフィドルとマンドリンで2曲ほど参加しています。録音場所は前作同様、ヴァージニア州フォールズ・チャーチにあるバイアス・スタジオでした。

A

1曲目「サイド・オブ・ザ・ロード」(By The Side Of The Road

2曲目「ブラザー・ジョン」(Brother John

3曲目「山小舎の夢」(Dreaming Of A Little Cabin

4曲目「落葉」(Fallen Leaves

5曲目「ヒー・トゥック・ユア・プレイス」(He Took Your Place

B

1曲目「テイク・ヒム・イン」(Take Him In

2曲目「天国行きの貨物列車」(Freight Train To Heaven

3曲目「帰る準備はできたかい?」(Will You Be Ready To Go Home

4曲目「そこにいましたか?」(Were You There ?

5曲目「ウォーク・ウィズ・ヒム・アゲイン」(Walk With Him Again

6曲目「ゴスペル・メドレー」(Gospel Medley


[PR]
by scoop8739 | 2018-05-07 09:51 | セルダム・シーン

277 至高のサウンド(その31)

マイク・オゥルドリッヂ、3枚目のソロ・アルバム

a0038167_09382788.jpg

1976年夏、マイク・オゥルドリッヂはテネシー州ナシュヴィルにある「ジャック・トラックス」(Jack's Tracks Recording Studio)という録音スタジオで3枚目のソロ・アルバムのレコーディングを始めます。しかしこのレコーディングにはシーンの他のメンバーは参加しておりません。

サポートにはナシュヴィルのスタジオ・ミュージシャンが参加しました。バンジョーにヴィック・ジョーダン、フィドルにヴァッサー・クレメンツ、ジム・ブキャナン、リード・ギターにデヴィッド・ブロンバーグ、サイド・ギターにはディック・フェラー、ハーモニカにダニー・フラワーズ、ペダル・スティールにロイド・グリーン、ベースにジョー・アレン、そしてコーラスにはリンダ・ロンシュタットという蒼々たるメンバーでした。

参考までに曲目を紹介致します。

A面1曲目「南部の雨」(Southern Rain

2曲目「テネシーの旅人」(Tennessee Traveler

3曲目「山すべり」(Mountain Slide

4曲目「バーバラのためのブルース」(Blues For Barbara

以上の4曲はオゥルドリッヂのオリジナル曲です。

曲目「恋の終列車」(Last Train To Clarksville)モンキーズのデビュー・ヒット曲でした。

6曲目「カリフォルニアの夢」(California Dreamin')お馴染みママス&パパスの大ヒット曲です。

7曲目「夢を夢みて」(Dreamin' My Dreams)この曲はウェイロン・ジェニングスとクリスタル・ゲイルよって歌われたカントリー・ナンバーです。マリアンヌ・フェイスフルの歌唱によって有名になりました。

B面1曲目「インディアン・サマー」(Indian Summer)フィル・ローゼンタールの作です。

2曲目「キャロライナのお天気娘」(Carolina Sunshine Girl)ジミー・ロジャース作です。

3曲目「不器用な手先」(All Thumbs

4曲目「スペイン風のコップ」(Spanish Grass

5曲目「ナシュヴィルのロイド」(Lloyd's Of Nashville

以上の2曲はオゥルドリッヂのオリジナル曲です。

6曲目「我が心のジョージア」(Georgia On My Mind)ホーギー・カーマイケル作のスタンダード曲です。

このアルバムは同年にフライング・フィッシュ社からリリースされています(Flying Fish FF029)。


[PR]
by scoop8739 | 2018-05-01 09:39 | セルダム・シーン

276 至高のサウンド(その30)

アルバム『新しいセルダム・シーンのアルバム』曲解説(B面)

a0038167_10161438.jpg

B面1曲目「鉄道員」は古くからあるフォーク・ソングです。イントロで右チャンネルからのフィンガー・ピッキング・ギター(間奏ではハーモニー)はダフィー、左チャンネル(間奏ではリード・ギター)がエルドリッヂのツイン・ギターが楽しめます。2番目の歌詞「プラットフォームに立ち、安い葉巻を吸いながら空の車を運ぶ古い貨物列車を待っている。目の上の帽子を引っ張り上げ、トラックを横切って歩く。古い貨物列車の最後尾に乗り、もう戻っては来ませんよ」という歌詞に男の決意が感じられます。どんな歌でも自分のものにしてしまうスターリングの歌唱力、間奏に泣き節フレーズをたっぷり織り込むドブロの技に感涙です。

ゆったりとしたペダル・スティールのイントロで始まる2曲目「電話に応えて」はスターリングのカントリー風味の作品です。この曲でもダフィーとエルドリッヂのツイン・ギターが聴かれます。間奏のマンドリンもトレモロを利かせて優しく奏でています。

3曲目はアカペラ・コーラスに始まる「愛する資格さえない」です。この手法はアルバム『アクト3』での「ジョージアのバラ」で既にお馴染み、ダフィー好みのアレンジだと言ってもいいでしょう。作者はサム・ブキャナン(Sam Buchanan)とヴァーノン・クラウド(Vernon Claude)で、マック・ワイズマンの歌でよく知られる曲です。リード・ヴォーカルからコーラスへと余裕のブルーグラス・サウンドが展開されます。間奏のバンジョーもドブロもマンドリンも「これぞブルーグラス」だと言わんばかりの演奏を聴かせてくれます。

4曲目「人生の歌」はA面5曲目「カリフォルニア大地震」で驚かせてくれたロドニー・クロウエルの作です。ギターのストロークに始まり、スターリングが思い入れたっぷりに歌い上げます。オゥルドリッヂがペダル・スティールとドブロを、エルドリッヂが5弦ドブロとギターをオーヴァー・ダビングし計算された音作りをしています。この曲は後にトニー・ライスやアリソン・クラウスも歌っています。

5曲目の「レベルズ・イエ・レスト」はポウリン・ボウチャンプという名の女性の作です。ダフィーはこういったフォーク調の曲が好みのようで、カントリー・ジェントルメン時代にもこういうタイプの歌を多く歌っていましたよね。

6曲目「人生の絵画」は、1951年にハンク・ウィリアムスが「ルーク・ザ・ドリフター」(Luke the Drifter)という名で歌って大衆化したトラディッショナル・ソングです。シーンの演奏は厚みのあるドブロのイントロから3部コーラスで歌われます。続いてダフィーのリード・ヴォーカルの後、間奏でダフィーがリード・ギターをつま弾くとドブロへと渡り、ここで転調し再びダフィーのリード・ヴォーカルとなります。また転調して元へ戻ると、臨場感溢れる4部コーラスとなりエンディングを迎えます。

『新しいセルダム・シーンのアルバム』は、スターリングのカントリー・ロックへの傾倒から作られたものであることは一目瞭然(いや一聴瞭然)でした。これからのシーンはこの路線で突き進むものと思われていました。


[PR]
by scoop8739 | 2018-04-26 13:38 | セルダム・シーン

275 至高のサウンド(その29)

アルバム『 新しいセルダム・シーンのアルバム』曲解説(A面)

a0038167_10161438.jpg

A面1曲目の「ビッグ・リグ」とは「大きなトラック」という意味です。オリジナルはフロリダ州キーウェストで活躍するカントリー・ロック歌手ジミー・バフェット(Jimmy Bafette)が1975年にリリースしたアルバム『ハバナの白昼夢』(Havaña Daydreamin')に収録されていた曲でした。これをスターリングは原曲のイメージからほど遠いほど洗練されたアレンジを施し歌っています。軽いギターのストロークからだんだん音が厚く重なりスターリングのコブシもよろしく巧みな熱唱へと続いていき、楽器は適度にバランス良く入ってきて曲を盛り上げます。なんとも“新しいセルダム・シーン”を象徴するかのような曲でのスタートとなりました。

2曲目は「貴方が感じる方法」です。なんだかイヤらしい邦題をつけましたが、原曲はスタンレー・ブラザーズのトラディッショナル・ナンバーです。遡ること10数年前、ダフィーはカントリー・ジェントルメン時代初期にスターデイ社にてこの曲をレコーディングしておりました。時代を経ったとは言え、“アップ・トゥ・デイト”に洗練されたアレンジや演奏スタイルにかかると、同じ曲がこうも印象が違って聴こえるものかと思ってしまいます。デリケートに歌うダフィーと重なるコーラスの美しさ、間を埋めるドブロの繊細な響き、どれをとっても非の打ちどころがありません。

3曲目「イージー・ライド・フロム・グッド・タイムス」は以前からシーンのアルバムに作品を提供しているハーブ・ペダーセンのオリジナル曲です。彼自身は1984年の発表したアルバム『寂しい気分』(Lonesome Feeling)で歌っています(Sugar Hill Records SH-3738)。しかしながらアレンジはまさにカントリー・ロック調となっていて、オゥルドリッヂはペダル・スティールを弾いています。ダフィーのマンドリンとスターリングのサイド・ギターはいつも通りとして、エルドリッヂが5弦ドブロとミュート・バンジョーを、そしてこの曲には途中からドラムが加わって曲に厚みを増しています。スターリングのヴォーカルは軽やかに、ウエスト・コースト・ロック風のコーラスもさらに気持ちよくさせてくれます。これこそ“簡単に”長距離ドライバー気分になれそうな曲です。

続く4曲目の「天国の谷間」は典型的なブルーグラス・ヒムです。こういった隠れた名曲を発掘するのを趣味とするグレイがアレンジして歌います。「死後の世界、それは常緑樹の日陰にバラの花が咲く美しい天国の谷間にある」という内容の曲で、グレイとダフィーがクローズ・ハーモニーで歌います。途中から輪唱となり再びコーラスに戻るという構成です。この曲でもドブロが効果的に演奏されています。こんな平和な気分でいられるのもほんの僅かな間です。いよいよ次の曲で“あれ”がやってきます。

アルバムのハイライトは5曲目「カリフォルニア大地震」です。この曲はカントリー・ロック歌手でエミルー・ハリスのバンドに在籍していたロドニー・クロウエル(Rodney Crowell)が作って歌っています。それをスターリングが巧みにアレンジしてドラマティックに歌いあげます。始めはまるでギターの弾き語りのように静かに歌い出し、コーラスが加わると重厚感が増してきます。途中からバス・ドラムが轟くといよいよ地震の揺れが始まったような錯覚に陥ります。「California earthquake you just don't know what you've done」、「神よ、貴方は何をしたいのか?」。そしてとどめの言葉が「We'll build ourselves another town so you can tear it down again」。嗚呼、なんてことでしょう、「建て直しても再び壊される」と。コーラスにはリンダ・ロンシュタットが加わっています。


[PR]
by scoop8739 | 2018-04-24 08:56 | セルダム・シーン

274 至高のサウンド(その28)

新しい場面が始まる。

a0038167_10161438.jpg

前スタジオ・アルバム『旧い列車』から約2年、『ライヴ・アット・セラードアー』からは約1年半ぶりの1976年初頭、シーンは新しいアルバムの準備を始めます。

そしていよいよ1976年4月14日と17日の両日に、かつて『アクト2』でお世話になったヴァージニア州フォールズ・チャーチにある「バイアス・スタジオ」に於いて新曲のレコーディングが行われました。

新しいアルバムはその6月に『新しいセルダム・シーンのアルバム』(The New Seldom Scene Album)という“ド直球”なタイトルでリリースされます(Rebel Records SLP 1561)。

さて何が“新しい”のか?

曲を聴けばすぐにもわかりますが、あえて書くとするならば「以前に比べてずいぶんとカントリー・ロック畑からの選曲が多くなった」ということ。それに合わせてオゥルドリッヂがペダル・スティールを弾いていること。数曲にドラムが加わったこと。などが挙げられます。ゲスト・ミュージシャンとして、ハーモニー・ヴォーカルにリンダ・ロンシュタット、ドラムにマーク・カフが参加しています。

さて、その収録曲は…

A

1曲目「ビッグ・リグ」(Big Rig

2曲目「貴方が感じる方法」(If That’s The Way You Feel

3曲目「イージー・ライド・フロム・グッド・タイムス」(Easy Ride From Good Times To The Blues

4曲目「天国の谷間」(Paradise Valley

5曲目「カリフォルニア大地震」(California Earthquake

B

1曲目「鉄道員」(Railroad Man

2曲目「電話に応えて」(Answer Your Call

3曲目「愛する資格さえない」(I Haven’t Got The Right To Love You

4曲目「人生の歌」(Song For Life

5曲目「レベルズ・イエ・レスト」(Rebels Ye Rest

6曲目「人生の絵画」(Pictures From Life’s Other Side


[PR]
by scoop8739 | 2018-04-20 10:17 | セルダム・シーン

273 至高のサウンド(その27)

アルバム『ライヴ・アット・セラードア』曲解説(D面)

a0038167_08500936.jpg
いよいよ最終盤面、D面1曲目はノー・イントロのハーモニーから始まる「ジョージアのバラ」です。ビル・モンローの正調ブルーグラス・ソングをシーンなりの解釈でアレンジし、ダフィーが高いキーをものともせずにブンブン飛ばします。終始鳴り続けるエルドリッジのバンジョーが心地よく沁みます。途中で転調してもダフィーの勢いはますますパワーアップというところです。

2曲目「コロラド・ターンアラウンド」はドブロをフィーチャーしたインスト曲です。作者はドブロの巨匠“アンクル・ジョッシュ”ことジョッシュ・グレイヴスで、彼が1974年にリリースしたアルバム『Alone At Last』(Epic KE 33168 )にも収録されています。タイトル通り急転回する車のようにめまぐるしくコードが変わる曲ですが、各楽器とも何の問題もなくスムーズに演奏しているようです。

続く3曲目「オール・ザ・ウェイ・トゥー・テキサス」は、このライヴ時点で新しく書かれたスターリングの曲です。彼女を残し旧い貨物列車でテキサスに去ってしまう男の哀愁を切々と歌っています。ブリッジにミュートをつけたバンジョーと抑えめに聴こえるドブロの音がさらに哀愁をそそります。まるで遥か彼方のテキサスの風景が目に浮かぶようです。

4曲目「ホワイト・ライン」はカナダのシンガー・ソングライター、ウィリー・P・ベネットが作り、1975年発売のアルバム『Tryin' To Start Out Clean』(Woodshed Records WS-004)に収録したカントリー・ロックでした。それをスターリングがバラード調にアレンジして歌います。バンジョーとマンドリンが背後で優しく奏で、ドブロがその間を埋めるように音を紡ぐと、この曲の歌詞に描かれた世界観が眼前に広がります。

そしてライヴの最後は5曲目「ライダー」です。アルバム『アクト3』に収録され、フェスティバルではハイ・パフォーマンスで聴かせる曲だけに、今回のライヴの締めには最もふさわしいものと言えるでしょう。アルバム同様に、ベースのイントロで始まりバンジョーへと続きます。そして意気のいいコーラスからスターリングのヴォーカルへ順に歌われます。間奏でマンドリンが実にファンキーに長いソロを弾き、同じように2番を歌った後には間奏のバンジョーがシンコペーションの強い長いソロを聴かせます。ベースが堅実にリズムをキープしてラスト・ランとなり、ドブロで曲を締めくくります。 大きな喝采の中、場内アナウンスがライヴの終わりを告げます。

そんじょそこらのライヴ・アルバムとは比べ物にならないパフォーマンスの繊細かつ完璧さ、音質の良さ、そしてアルバムとしてのまとまり。彼らがデビューして僅か2年にして頂点にまで登り詰めたばかりの完成度の高さです。これこそセルダム・シーンの記念碑として永世に残すべきアルバムとなりました。


[PR]
by scoop8739 | 2018-04-17 10:48 | セルダム・シーン

272 至高のサウンド(その26)

アルバム『ライヴ・アット・セラードア』曲解説(C面)

a0038167_08500936.jpg

ダフィーのM.C.でいよいよ第二幕が始まります。C面1曲目は観客のリクエストに応えて、オゥルドリッヂのファースト・アルバムからの曲「ピックアウェイ」です。この曲はレスター・フラットとバンジョーのヴィック・ジョーダン(Vic Jordan)が共作している1971年のアルバム『フラット・オン・ビクター』(RCA Victor LSP-4495)に収録された“超カッコいい”インスト曲です。そのアルバムでのマンドリンはローランド・ホワイトが弾いていました。またジョーダン自身も1973年に発表した自身のソロ・アルバムでこの曲をタイトル名にしているくらいですので(Atteiram API 1027)よほどの自信作だったのでしょう。そんな曲をシーンはドブロをフィーチャーして演奏しています。ドブロのしなやかで弾むようなその音色に気持ちがグイグイ持っていかれます。バンジョーやマンドリンやベースまでもが負けじとばかりに技を繰り出し演奏が加熱します。なんとファンタスティックなライヴなのでしょう!

2曲目「ダーク・ホロウ」もカントリー・ジェントルメン時代からのレパートリーです。スターリングのリードで歌われますが、チャーリー・ウォーラーと比べてやはり役者が一つも二つも上なのを感じます。

3曲目はバンジョーのイントロに始まり、しんみりとバラード調で歌われる「小さな例外」です。この曲はアルバム『アクト2』に収録されていて、このライヴでもコーラスからダフィーのリードへの流れ、歌の隙間を埋めて邪魔しないバンジョーとドブロのバックアップなど、アレンジ、バランスとも非の打ち所のない出来となっています。

続く4曲目「イフ・アイ・ワー・ア・カーペンター」はダフィーが得意とするフォーク調の曲です。作者はシンガー・ソングライターのティム・ハーディンで、彼が1967年に2枚目のアルバムで発表しています。それをポップ歌手の「ボビー・ダーリン」が、同年にソウル・グループの「フォー・トップス」が、そして翌1968年にはイギリスのアイドル・グループ「ハーマンズ・ハーミッツ」が次々とレパートリーにしてきました。そんな曲をエマーソン&ウォルドロンがブルーグラス調にアレンジし、彼らのファースト・アルバム『New Shades Of Grass』で発表してからはブルーグラス畑でも多く歌われるようになっています。シーンの演奏ではエマーソン&ウォルドロン盤と同じアレンジのバンジョーのイントロから始まりますが、そこにドブロが効果的に音を入れ込んでいます。抑え気味に歌うダフィーのリードから一気に厚みのあるコーラスとなり、間奏のバンジョー、マンドリンへと続きます。ここに入り込むドブロの音色がこの曲に芳醇な潤いを加えています。

バンジョーとマンドリンの絡みで始まる5曲目「オールド・グレイ・ボネット」は爽やかな印象のインスト曲です。原曲は1909年に作られたラグタイム・ソングでハイドン・カルテットによって歌われヒットしました。シーンはバンジョー、マンドリン、ドブロの順にソロをとり、セカンド・ブレイクでバンジョーが鮮やかにクロマチック・ロールをキメています。

6曲目「C&Oキャナル」は4枚目のアルバム『旧い列車』からの曲です。ポンポン船を思わせるようなバンジョーのイントロに始まり、アルバムではここでハーモニカが入るところですが、代わりにマンドリンのトレモロでノスタルジックな気分を高めています。いよいよスターリングの登場です。歌も上手けりゃ曲作りも巧い。楽器が曲調をコントロールするかのように静かに奏でられます。


[PR]
by scoop8739 | 2018-04-12 08:53 | セルダム・シーン