1960年代はブルーグラス音楽が大きく様変わりした時代です。フォーク・ムーブメントの影響で聴衆層が広がり、これに応えるように演奏内容がフォークソングを中心としたものに変わっていきました。レスター・フラットとアール・スクラッグスのようにモダン・フォークソング的なものへとスタイルを変えていくものや、オズボーン・ブラザースやジム&ジェシーのように楽器に電気を通してカントリー音楽に近づくものなど様々でした。
ワシントンD.C.出身のカントリー・ジェントルメンはブルーグラスに新しいジャンルを取り入れました。それは、レス・ポールとメリー・フォードの名曲「世界は日の出を待っている」をジャズ風にアレンジした曲「サン・ライズ」や、ポール・ホワイトマン楽団の「ウィスパリング」をアレンジした曲「心の痛手」などです。カントリー・ジェントルメンはまた、ビートルズの「イエスタデイ」や、サイモンとガーファンクルの「ミセス・ロビンソン」などのポップスもアレンジしてレコードに残しました。 そして60年代後半になると世の中はビートルズやローリング・ストーンズらを中心としたロックの時代に突入します。これに呼応するかのように新しいスタイルのブルーグラスが登場します。その代表となるグループがブルーグラス・アライアンスで、彼らが取り上げたのがボブ・ディランやゴードン・ライトフットの曲でした。アライアンスは「ニュー・グラス」という名のアルバムを残していますが、ここから「ニューグラス時代」が始まったのです。 このアライアンスは数年のうちにメンバー・チェンジを繰り返し次世代のニュー・ヒーローたちを輩出します。ギターの名手トニー・ライス、マンドリンとフィドルのサム・ブッシュらがそうでした。1970年代は彼らが中心となってニューグラスの花が開きます。サム・ブッシュの率いるニュー・グラス・リバイバルはジェリー・リー・ルイスの「火の玉ロック」で鮮烈なデビューを果たし、一方のトニー・ライスはバンジョーのJ.D.クロウのバンドに加わって、ファッツ・ドミノの「アイム・ウォーキン」を含むアルバムで活躍の場を見つけたのでした。 また、カントリー・ジェントルメンを脱退したマンドリンのジョン・ダフィーは、さらにプログレッシブ志向の強いグループ、セルダム・シーンを立ち上げます。彼らは、クリフ・ウォルドロンが進めていたコンテンポラリー・ロック(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)、ソウル(アル・ウィルソン)、カントリー(マール・ハガード)へのアプローチをより進化させることに成功します。 さらに、もう一つの流れが西海岸でも起こりました。カントリー・ロックのグループ、フライング・バリトウ・ブラザーズが、彼らのコンサートの中にブルーグラス・セグメントを組み込んでツアーを開始したのです。この時に生まれたユニットが、のちのカントリー・ガゼットと発展していきます。ブリトウズの解散後、彼らはユナイテッド・アーティスツと契約しアルバムをリリースします。これは古いカントリーやブルーグラスと新しいカントリー・ロックを結びつけたもので、LAカントリー・ロックの特徴であるダブル・トラックのハーモニーを入れた、西海岸サウンドらしい爽やかなコーラス・ワークが満喫できるポップ感覚溢れる素晴らしいアルバムとなっています。 こうして1960年代以降、さまざまな形でブルーグラス音楽はポップスとの接近を図ります。次に挙げるCDに収録されているのは、ブルーグラス・アレンジによるポップスの数々です。フォークありロックありカントリーありと、様々なジャンルの曲が独自のアプローチでブルーグラス音楽となっています。これも初心者には最適な一枚となることでしょう。 Bluegrass Goes to Town : Pop Songs Bluegrass Style(Rounder) 1. Friend of the Devil - Rice, Rice, Hillman & Pedersen 2. Hitchcock Railway - Claire Lynch 3. Bye Bye Love - Spectrum 4. Don't Think Twice, It's All Right - The Rice Brothers 5. Blue Bayou - The Cox Family 6. Can't Find My Way Home - Rob Ickes with Tim O'Brien 7. Heartbreak Hotel - The Doug Dillard Band 8. I Will - Tony Furtado with Alison Krauss 9. Bridge Over Troubled Water - The Whitstein Brothers 10. Jolene - Rhonda Vincent 11. Piece of My Heart - John Hartford 12. I'm Walkin' - J.D. Crowe & the New South 13. (Now and Then There's) A Fool Such as I - Tasty Licks 14. World Turning - Tony Trischka with Dudley Connell and Alison Krauss 15. What Goes On - Joe Val & the New England Bluegrass Boys 16. Only You (And You Alone) - IIIrd Tyme Out (次回につづく) 人気blogランキングへ
by scoop8739
| 2004-07-25 10:50
| プロローグ
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