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311 「ニューグラス」への道(その29)

“時代のあだ花”だったのか、「ブルー・ヴェルヴェット・バンド」と「シートレイン」。

a0038167_09232739.jpg1960年初頭のアメリカ東海岸は、カントリー・ジェントルメンを筆頭にロンサム・リヴァー・ボーイズ、グリーンブライア・ボーイズ、ロンサム・トラヴェラーズなどシティ派ブルーグラスのメッカでした。その地でヴォーカル(ギター)のジム・ルーニーがバンジョー奏者のビル・キースと出会い、1950年代後半から共に活動を始めます。彼らは1962年にアルバム『山に住む』(Livin’ On The Mountainを発表しました。このアルバムは東海岸特有の音作りで、以降の都会派ブルーグラッサーにさまざまな影響を与えることとなります。

a0038167_09233757.jpg1968年になって彼らは、フォーク系のミュージシャンのエリック・ワイズバーグ、先進的なフィドル奏者リチャード・グリーンをメンバーに加えて、「ブルー・ヴェルヴェット・バンド」(The Blue Velvet Band)を結成しています。そして翌1969年にはワーナー・レコードからアルバム『スウィート・モーメント・ウィズ・ブルーベルベッド・バンド』を発表したのでした。ゲスト・ミュージシャンにはドラムのゲリー・チェスター(Gary Chester)とマウス・ハープのジョン・ハモンド(John Hammond)が参加しています。

それは彼らにとって唯一となるアルバムでしたが、ハンク・ウィリアムスやマール・ハガードなどの名曲を取り上げ、初期のカントリー・ロックとも言えるサウンドを披露しています。アルバムでのビル・キースのバンジョー演奏はドク・ワトソンでお馴染みの「リトル・サディ」(Little Sadie)1曲のみで、他はペダル・スティールばかりを演奏しています。なお、このアルバムの目玉といえばビル・モンローの当たり曲「世界の頂きに座って」(Sittin’ On Top Of The World)でしょうか。アンディ・カルバーグ(Andy Kulberg)の弾くベースのイントロから始まるのは、原曲のイメージからほど遠いロックのサウンドでした。

a0038167_09234736.jpgロックしているといえば「シートレイン」(Seatrain)というバンドが頭に浮かんできます。このバンドはビル・モンローのブルー・グラス・ボーイズで60年代の最高傑作と言われる名盤『ブルーグラス・タイム』を創り上げた立役者のリチャード・グリーンとピーター・ローワンを中心に構成され、西海岸ロックを演奏しているグループです。

彼らは1971年にビートルズのプロデューサーだったジョージ・マーチンに制作を委ね、出来上がったのが『シートレイン』(Seatrain)というアルバムでした。そこにはローワンの舞うようなヴォーカルにグリーンの大胆かつ細心なフィドルが絡み合って不思議な世界を創り出しています。それ自体はブルーグラス・アルバムではありませんが、目玉はとてもロックな感じの「オレンジ・ブロッサム・スペシャル」でしょう。

しかしながら、「ブルー・ヴェルヴェット・バンド」しかり「シートレイン」しかり、ロック・ファンからもブルーグラス・ファンからも距離を置かれてしまいます。彼らは「ニューグラス」がその姿を現す直前の“時代のあだ花”的な存在としてブルーグラス史に名を残すバンドとなりました。


by scoop8739 | 2018-08-23 09:25 | ニューグラスへの道 | Comments(0)
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