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303 「ニューグラス」への道(その21)

ボブ・ディランのカントリー志向

ボブ・ディランは196712月、自身9作目となるアルバム『ジョン・ウェズリー・ハーディング』でカントリーの路線を始めます。

ところが、かつてディランの曲「ミスター・タンブリン・マン」をフォーク・ロック調にカバーし歌ってヒットさせたバーズが19688月にアルバム『ロデオの恋人』を発表します。これは後に「カントリー・ロックの名盤」と言われるほどのアルバムとなりました。

a0038167_08345043.jpgこれでさらに火がついたのか、1969年4月にディランは追いかけるように『ナシュヴィル・スカイライン』とタイトルされたカントリー・アルバムを発表します。レコーディングは前作、前々作に続いてカントリーのメッカであるナシュヴィルで行われました。

前作の発表から1年4ケ月が経ち、その間にアメリカではロバート・ケネディ上院議員とキング牧師の暗殺事件、ベトナム戦争への反戦運動など激動の季節を経てきました。またわずか数ヶ月後には今やなかば伝説化した「ウッドストック・ミュージック・フェスティバル」が開催されようとしていたのです。

そんな激動の折に何ですが、ディランといえばプロテストソングの旗手として大活躍していたはずが呑気に何のメッセージ性もないアメリカの保守的な音楽のカントリー・ソング(日本でいえば演歌のようなものでしょう?)をレコーディングしていたのです。

また何よりもこのアルバムではディランの声が変わっています。例のざらついた声は一切なしで、鼻にかかった澄んだ声になっていてまるで別人のようです。一説には元々ディランはデビュー前、つまりニューヨークにやって来る前まではこういう歌声だったという話があります。これはディランなりにベストと判断して歌っているようでアルバムのテイストとして適していると判断したのでしょう。

1曲目の「北国の少女」(Girl From The North Country)は有名なカントリー歌手、ジョニー・キャッシュとの共演
(実際はキャッシュとかなりの曲をレコーディングしたのですがアルバムで採用されたのは1曲のみでした)
です。

2曲目はインスト曲「ナシュヴィル・スカイライン・ラグ」(Nashville Skyline Rag)です。この曲は何も情報がなければ誰もディランの曲だとは思わなかったでしょう。完全なカントリー・ラグとなっています。

6曲目の「レイ・レディ・レイ」は本来、映画『真夜中のカーボーイ』の主題歌として作曲されたものですが、その締め切りに間に合わず、ハリー・ニルソンの「うわさの男」に差し替えられてしまったという経歴を持っている曲です。

アルバム全体を通して感じるのはとても聴きやすいポップなアルバムということです。歌っている内容も小難しいことは何もなく、恋愛や人生のちょっとした場面を切り取ったものでした。

しかしコアなファンは怒ったことでしょうね。音楽的な裏切りだととる評論家諸氏も多かったようです。ところがこの作品はそれまでのディランの作品よりも倍近く売れました。アルバムは全米3位、全英1位。「レイ・レディ・レイ」に至っては「雨の日の女」(Rainy Day Women #12 & 35)以来の最大のシングル・ヒットとなりました。


by scoop8739 | 2018-07-23 08:36 | ニューグラスへの道 | Comments(0)
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