287 「ニューグラス」への道(その6)

フォーク・ロックの先兵

イギリスからのロック攻勢によって、アメリカの音楽界が大きな変化を強要されたとしても不思議ではありません。事実、フォーク特有のトロピカルな歌詞や素朴なメロディーにロックのビートを組み合わせ、エレクトリック・サウンドで処理する新しいスタイルの音楽が生まれます。

19657月、フォーク界ではナンバーワンのスターだったボブ・ディランが、ニューポート・フォーク・フェスティバルのステージに登場します。そこではお決まりのようにトリを務めるディランの演奏を、観客は何よりも楽しみにしていたのでした。

ところが彼はその期待を裏切るようにエレキ・ギターを携えて「ライク・ア・ローリング・ストーン」、「マギーズ・ファーム」など3曲を演奏します。バックで演奏していたマイク・ブルームフィールドのブルース・ギターなど、まさしくそのスタイルはロックそのものでした。

a0038167_11255443.jpgそんなフォークをロック風に演奏する錯誤の中、バーズはディラン作の「ミスター・タンブリン・マン」でデビューし、そのヒットによって“フォーク・ロック”の概念を確立させました。

バーズは1964年にロジャー・マッギン、ジーン・クラーク、デヴィッド・クロスビーによってロサンゼルスで結成され、その後すぐにベーシストとしてクリス・ヒルマン、ドラマーとしてマイケル・クラークが加入します。

メンバーのそれぞれがソロのフォーク歌手やフォーク・グループに参加していて、コーヒー・ハウスやトルバドール・クラブ、ウイスキー・ア・ゴーゴーといったライブ・スポットで演奏活動し、ビートルズの影響があってバンド結成を思い立ち集結します。

「ミスター・タンブリン・マン」は単にフォーク・ソングをエレクトリック化したものではありませんでした。12弦ギターやタンバリンなどを効果的に使い、フォーク的な3パートのコーラスにも工夫を凝らして、なだらかなサウンドが奏でられています。

それはフォーク・シーンからやって来たメンバーたちの資質と、プロフェッショナルなスタッフの力量によって作り上げられた見事な完成品と言えました。このサウンドは1965年以来数年の間、アメリカン・ポップスの主流となります。

さて、この曲が収録された同名アルバム『ミスター・タンブリン・マン』にはディラン作品が4曲も含まれていました。デビュー当時のバーズはフォークのスーパースターであったディランを強烈に意識していたようで、ロジャー・マッギンのヴォーカルはディランのフォロワーぶりを感じさせるに充分なものです。

彼らはさらにピート・シーガー作の「ターン・ターン・ターン」(Turn, Turn, Turn!)を発売しヒットさせますが、これら2曲はバーズのシンボル的な曲となりました。

ところで、「ミスター・タンブリン・マン」をいち早くアルバムに収録したのが誰あろうフラット&スクラッグスでした。彼らは1968年に発売の『変わる時』(Changin’ Time)ではボブ・ディランの曲を5曲も収録しています。


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by scoop8739 | 2018-06-07 11:29 | Road To New Grass
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