283 「ニューグラス」への道(その2)

ブルーグラス、“広義”と“狭義”のプログレッシヴ化

プログレッシヴ・ブルーグラスは純粋なブルーグラスとは異なり、アパラチアの起源から遠く離れた多くの異なる影響を受け、ジャズ、フォーク、ロックの要素を加え、他の国のスタイルとミックスしています。

多くのプログレッシヴ・ブルーグラス・バンドは、アコースティック・ベースの伝統的なブルーグラス・サウンドから出発して増幅された楽器も使用しています。ジャム・バンド・スタイルの即興もよく聞かれる要素です。

さて、「プログレッシヴ・ブルーグラス」(Progressive Bluegrass)というものを“広義”に解釈すれば、その歴史はビル・モンローにまで遡らなければなりません。彼は1940年代中盤のカントリー・シーンでの真のイノヴェーターと思われるのです。

その根拠にはビルは、当時の“オールド・タイム・ストリング・バンド”や、“兄弟ヒルビリー・デュエット”に飽きたらず、フラット・マンドリンを武器にスウィング(ドライヴ)するストンプ・ミュージックを考えつきました。

彼はブルース、ジャグ・バンド・ミュージックといった黒人系音楽と、南部白人ストリング・バンド、テキサスのウェスタン・スウィングなどに触発されたアコゥスティック・フュージョンを試みます。

過去、あまり聴くことの出来なかったブルージーなリックを前面に押し出したマンドリン演奏と自身のハイ・テナー・ヴォイスは、「プア・ホワイト・ブルーズ」の存在を明確にし、後にこのビルの特徴あるヴォーカルは「ハイ・ロンサム」と呼ばれるようになりました。

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彼の考えはさらに新たな幸運をもたらしました。ビルのバンドに加入したアール・スクラッグスが5弦バンジョーをそれまでのトラッド奏法からより昇華し前進させた歯切れの良い音の連続技、すなわち「スクラッグス・スタイル」と導き、ビルのバンド・キャラクターとして貢献します。

同じくレスター・フラットはギター奏法に「Gラン」を工夫し、また当時のヒルビリー・シーンでは珍しくあか抜けたヴォーカルを披露することになります。フィドルのチャビー・ワイズは今日でもブルーグラス・サウンドの中核となっているブルーズ・リックをビルのバンドに提供します。

これのサウンドこそが、“オーバー・ドライヴ感”を備えたエキサイティングなホット・アコゥスティック・ストリング・バンドである「ブルーグラス」の誕生に結びついたのでした。

ビル・モンローの歴史的な発明を“広義”の「プログレッシヴ・ブルーグラス」と捉えるのならば、そんなビル・モンローをリスペクトする1970年代初頭のフリーク達がたどり着いたオリジナルなサウンドこそが“狭義”の意味での「プログレッシヴ・ブルーグラス」と言えるのではないでしょうか。

この「ニューグラス」と呼ばれるプログレッシヴなブルーグラスが形作られるまでには、さまざまな音楽やバンドが互いに触発し合い影響し合って、新しいサウンドを模索していったのでした。


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by scoop8739 | 2018-05-24 13:19 | Road To New Grass
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