282 「ニューグラス」への道(その1)

チーズ・タッカルビ

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最近、巷で婦女子に人気のグルメに「チーズ・タッカルビ」というものがあります。

「ゴメン、何それ?」と言われる流行に疎いオジさんオバさんに、ちょいとこの料理の説明をしておきましょう。

まず「タッカルビ」から知っていただかないといけません。これは韓国語で「鶏カルビ」という意味です。韓国は春川市、最近では冬季オリンピックが開催されたピョンチャン近くの郷土料理なんだそうです。

ヤンニョム、コチュジャンで味付けした鶏肉を半日ほど寝かし、ざっくりと切ったキャベツ、サツマイモ、ニンジン、ネギなどの野菜と一緒にピリ辛く炒めた料理です。

具は店舗ごとに異なりますが、大きな鉄板で調理し、好みに合わせてトッポギ(韓国餅)や野菜を加えます。中には麺を入れたり、飯を入れてチャーハンのようにして食べることもあるそうです。

そんな「タッカルビ」は店にもよりますが、日本人にとっては辛くて食べづらい料理でした。ところが東京のコリアン・タウン、新大久保にある「市場(シジャン)タッカルビ」というお店がこれにチーズをトッピングして出したところ、辛さがまろやかになって一段と美味しくなるという噂が広まり、今では新大久保に女子高生が大挙して訪れていると言われています。

ちなみに、2017年「今年の一皿」の急上昇ワード賞にも「チーズ・タッカルビ」が選ばれているほどです。今ではあの「コストコ」でも定番商品となっています。

話は変わります。

少々強引な展開で戸惑われているとは思いますが、ブルーグラス・ミュージックなるものを「タッカルビ」に喩え、チーズを流行の音楽に置き換えて話を進めてみます。

韓国春川市の郷土料理とアメリカ南東部地方の郷土音楽。こういう持って行き方でなんとなくお察しが出来たのではと思いますが、一般的には“耳に馴染みにくい”音楽だった「ブルーグラス」を、チーズ、すなわち“今流行の音楽”でトッピングすることで大衆化させようとする動き、それが「1970年代初頭に起こったニューグラスのムーヴメント」でした。

この流れの源にあるものとは、フォーク・リヴァイヴァルのブームが去って、アメリカに英国からの音楽侵略(British Invasion)が始まった1960年代中期に遡らなくてはなりません。

1964年2月、ビートルズがアメリカに初上陸して以来、アメリカの音楽界は英国の侵略を受け続けることになります。フォーク・ソングやブルーグラスもそれまでは“温故知新”とばかりに栄華を極めていましたが、聴衆の嗜好が変わると一気に市場が冷え込んでいきました。

こうした中、アメリカのフォーク・シーン、とりわけニューヨークのグリニッチ・ヴィレッジで活躍していたボブ・ディラン、ロジャー・マッギン、ジーン・クラークなどの多くのミュージシャンたちはそれに影響を受け、生き残りをかけた対抗手段として、エレクトリック・ギター、エレクトリック・ベース、ドラムスというロックの楽器編成(ただしアコースティック・ギターを併用する場合も多い)で演奏するようになります。これがフォーク・ロックの始まりでした。

当然ながらブルーグラス界でも同様に生き残りをかけてあらゆる手段がとられます。あるものは電気楽器を導入したり、またあるものはバンドにドラムスを加入させたり、一番多かったのは異ジャンルの音楽をレパートリーに混入させるという方法でした。つまり、「伝統的」(Traditional)なものから「前衛的」(Progressive)なものへの変化、対応が起こったのです。


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by scoop8739 | 2018-05-21 14:30 | Road To New Grass
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