275 至高のサウンド(その29)

アルバム『 新しいセルダム・シーンのアルバム』曲解説(A面)

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A面1曲目の「ビッグ・リグ」とは「大きなトラック」という意味です。オリジナルはフロリダ州キーウェストで活躍するカントリー・ロック歌手ジミー・バフェット(Jimmy Bafette)が1975年にリリースしたアルバム『ハバナの白昼夢』(Havaña Daydreamin')に収録されていた曲でした。これをスターリングは原曲のイメージからほど遠いほど洗練されたアレンジを施し歌っています。軽いギターのストロークからだんだん音が厚く重なりスターリングのコブシもよろしく巧みな熱唱へと続いていき、楽器は適度にバランス良く入ってきて曲を盛り上げます。なんとも“新しいセルダム・シーン”を象徴するかのような曲でのスタートとなりました。

2曲目は「貴方が感じる方法」です。なんだかイヤらしい邦題をつけましたが、原曲はスタンレー・ブラザーズのトラディッショナル・ナンバーです。遡ること10数年前、ダフィーはカントリー・ジェントルメン時代初期にスターデイ社にてこの曲をレコーディングしておりました。時代を経ったとは言え、“アップ・トゥ・デイト”に洗練されたアレンジや演奏スタイルにかかると、同じ曲がこうも印象が違って聴こえるものかと思ってしまいます。デリケートに歌うダフィーと重なるコーラスの美しさ、間を埋めるドブロの繊細な響き、どれをとっても非の打ちどころがありません。

3曲目「イージー・ライド・フロム・グッド・タイムス」は以前からシーンのアルバムに作品を提供しているハーブ・ペダーセンのオリジナル曲です。彼自身は1984年の発表したアルバム『寂しい気分』(Lonesome Feeling)で歌っています(Sugar Hill Records SH-3738)。しかしながらアレンジはまさにカントリー・ロック調となっていて、オゥルドリッヂはペダル・スティールを弾いています。ダフィーのマンドリンとスターリングのサイド・ギターはいつも通りとして、エルドリッヂが5弦ドブロとミュート・バンジョーを、そしてこの曲には途中からドラムが加わって曲に厚みを増しています。スターリングのヴォーカルは軽やかに、ウエスト・コースト・ロック風のコーラスもさらに気持ちよくさせてくれます。これこそ“簡単に”長距離ドライバー気分になれそうな曲です。

続く4曲目の「天国の谷間」は典型的なブルーグラス・ヒムです。こういった隠れた名曲を発掘するのを趣味とするグレイがアレンジして歌います。「死後の世界、それは常緑樹の日陰にバラの花が咲く美しい天国の谷間にある」という内容の曲で、グレイとダフィーがクローズ・ハーモニーで歌います。途中から輪唱となり再びコーラスに戻るという構成です。この曲でもドブロが効果的に演奏されています。こんな平和な気分でいられるのもほんの僅かな間です。いよいよ次の曲で“あれ”がやってきます。

アルバムのハイライトは5曲目「カリフォルニア大地震」です。この曲はカントリー・ロック歌手でエミルー・ハリスのバンドに在籍していたロドニー・クロウエル(Rodney Crowell)が作って歌っています。それをスターリングが巧みにアレンジしてドラマティックに歌いあげます。始めはまるでギターの弾き語りのように静かに歌い出し、コーラスが加わると重厚感が増してきます。途中からバス・ドラムが轟くといよいよ地震の揺れが始まったような錯覚に陥ります。「California earthquake you just don't know what you've done」、「神よ、貴方は何をしたいのか?」。そしてとどめの言葉が「We'll build ourselves another town so you can tear it down again」。嗚呼、なんてことでしょう、「建て直しても再び壊される」と。コーラスにはリンダ・ロンシュタットが加わっています。


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by scoop8739 | 2018-04-24 08:56 | セルダム・シーン
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