271 至高のサウンド(その25)

アルバム『ライヴ・アット・セラードア』曲解説(B面)

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B面1曲目「ベイビー・ブルー」はしっとりとした曲です。セット・リスト順なのでしょうか、それとも後で編集したものなのでしょうか、まったく巧く出来ています。この曲はダフィーがカントリー・ジェントルメン時代からレパートリーにして歌っているものでオリジナルはダフィーの好きなボブ・ディランの作です。アルバム『旅する人』(The Traveler)にも収録されています。ダフィーはフィンガー・ピッキング・ギターを弾きながら切々と歌い上げます。

2曲目はデビュー・アルバム『アクト1』から「シティー・オブ・ニュー・オーリンズ」です。この曲はスターリングがどのステージでも必ず歌うほどのお気に入りのナンバーです。それだけ数多く歌っているので安定した節回しで余裕すら感じられます。しかしマンネリとはならず、このライヴでもシーンの演奏は新鮮に聴くことが出来ます。

3曲目「おじいさんの古時計」はグレイがカントリー・ジェントルメン時代から得意としているベースをフィーチャーした曲で、ライヴならではの楽しさ溢れる演奏が聴かれます。当時、グレイはベスト・ベーシスト賞を受けており(同時期にオゥルドリッヂもベスト賞を受けていました)、それを反映してか、M.C.のスターリングが「トム、間違うなよ」と言った矢先に、バンジョーがイントロの音を外す、といった掛け合いで観客を大いに笑わせます。このステージングの妙もシーンの得意技ですネ。

マンドリンの静かなトレモロで始まる4曲目「フィールズ・ハヴ・ターンド・ブラウン」も前曲同様、カントリー・ジェントルメン時代からのレパートリーでした。その曲もリード・ヴォーカルがチャーリー・ウォーラーからジョン・スターリングに代わっただけでずいぶんと雰囲気が変わります。まるで甘いも苦いも知り尽くした中年男の哀愁のようなものが漂います。その甘美な歌声に陶酔しているとコーラスに続いて悩ましげなドブロの旋律が響きます。あゝ至福の瞬間…。

な〜んて気分に浸っていると、次の5曲目「恋のヒット・パレード」ではまるで冗談音楽のような演奏が始まります。ジミー・マーチンの看板曲であるそれをそっくり真似ています。M.C.のスターリングが「みんなマイクの前で、笑わずに、目を開いて、田舎風のユニフォームに揃えて」と少々小馬鹿にしたように言うと、小気味いいバンジョーのイントロから曲がスタートします。観客も大騒ぎ、スターリングのリード・ヴォーカルはジミーを意識してハイ・テンションです。コーラスのダフィーは鼻をつまんでポール・ウィリアムス調に歌い、さらに間奏では走り気味のマンドリンを弾きます。2番目の間奏ではバンジョーが張切りすぎて途中でピックを落としてしまうと、すかさずダフィーが「値段で言うと25セントのショックだ!」とツッコミを入れます。ピックをつけ直し再び演奏を始めるエルドリッヂ、汚名挽回とばかりにクロマチックをやり出すと、スターリングが手でその弦を押さえて、「J.D.クロウはそんな弾き方はしません!」とキツい一発。あんたら、まるで往年のクレイジー・キャッツか!? いやはや、とんだドタバタ寸劇でした。

これで第一幕の終わり、と思いきや、観客のアンコールに応えて6曲目「永遠のきずな」が始まります。マンドリンのイントロからのスターリングのリード・ヴォーカルは時にメロウに、時に力強く、合いの手のように入るドブロの音も清々しく、4部コーラスで気分をグッと盛り上げます。2番目のリードはグレイ、3番目はダフィーと続きます。最後のコーラスが終わると場内アナウンスが流れ、拍手鳴り止まぬ中、ステージは終了となります。しばらく休憩の後に第二幕が開演です。


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by scoop8739 | 2018-04-09 08:46 | セルダム・シーン
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