270 至高のサウンド(その24)

アルバム『ライヴ・アット・セラードア』曲解説(A面)

a0038167_08500936.jpg

第一幕、A面1曲目「刑の終るその日まで」はシンコペーションの利いたバンジョーのイントロに始まりスターリングの歌が続きます。力強いコーラスの後のリフレインはダフィーです。間奏のマンドリンの後のコーラスが終わると、スターリングの紹介でオゥルドリッヂがソロで登場し渋い声を聴かせます。バンジョーの間奏後は1番と同じ組み合わせで歌われます。ドブロの間奏が終わりダフィーのいつもながらの高音からのコーラスに続いて、今度は珍しくトムが登場します。レスター・フラットの歌で聴くと何の変哲もない曲ですが、シーンは趣向豊かにバンジョーを除くメンバー全員で歌い回して客の関心を引き寄せています。

続く2曲目はスターリングが好きなマール・ハガード作の「カリフォルニア・コットンフィールズ 」です。「オクラホマの暮らしを捨て、なけなしの金をはたいて中古のA型フォードを買い、家財道具をすべて積んで家族は夢の土地カリフォルニアを目指したものの、苦労していざカリフォルニアに着いてみると、はたして夢破れた人たちが住む家もなくあふれていた」と、歌はまるでジョン・スタインベック作、ヘンリー・フォンダ主演で映画化された『怒りの葡萄』のような感じです。スターリングのソロにコーラスではテナーにオゥルドリッヂ、ハイ・バリトンがダフィーと歌われます。間奏のバンジョーのフレーズが多彩です。

前曲が終わり大きな歓声の中、スターリングによるバンド・メンバーの紹介が始まります。冗談を交えつつ愉快に楽しく観客の心をグッとつかむ話術は絶妙です。

というところで、3曲目「パンハンドル・カントリー」がドブロのキック・オフで始まります。ビル・モンローのオリジナルではフィドル3台で演奏される曲ですが、シーンの場合はドブロが伸びのある音で軽やかなフレーズを奏で、とてもあか抜けた感じがします。バンジョーが負けずと多彩な技で応戦し、マンドリンも細かな音を繋げて参戦すると、ここぞとばかりにベースがソロを入れてきます。再びドブロに戻るとコーラスが飛び出し、オゥルドリッヂのソロ第2弾アルバムではここでリッキー・スキャッグスとヴァッサー・クレメンツのツイン・フィドルが入るところなのですが、ギターのDラン後にエンディングを迎えます。そしてとどめの「ツー、スリー、フォー、ジャン!」で見事に終わります。なんてカッコいい終わり方なのでしょう!? ついでに「どうだ、ニューグラス・リヴァイヴァル?」と締めくくるあたり、余裕のブチかましではありませんか?

賑やかな曲の後にはしんみりと4曲目「マディー・ウォーターズ」が始まり、アルバム『アクト3』と同じアレンジでスターリングが歌います。歌の背後ではドブロのハーモニクスが美しく響き、マンドリンも艶っぽく曲を盛り上げます。エンディングはドブロとマンドリンの絡みで締めています。

しんみりの後は5曲目「ロウハイド」で再び観客を沸かせます。ビル・モンローのトレード・マークのような不朽の名曲にダフィーが挑みます。とはいえカントリー・ジェントルメン時代から慣れ親しんでいた曲だけに“お手のもの”と言った塩梅です。バンジョーの卒ない演奏を受けてドブロが登場します。この曲にドブロが加わっただけでずいぶんと表情が豊かになります。ダフィーもそこのところを充分に熟知しているはず、マンドリン・ワークにも余裕が感じ取れます。


[PR]
by scoop8739 | 2018-04-05 08:26 | セルダム・シーン
<< 271 至高のサウンド(その25) 269 至高のサウンド(その23) >>