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265 至高のサウンド(その19)

アルバム『旧い列車』曲解説(A面)

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A面1曲目「アパラチアン・レイン」です。アルバムが“列車の歌”特集なので「アパラチアン・トレイン」とばかり思っていましたが、「アパラチアン・レイン」、そう、“雨”なんですネ? スターリングの盟友ポール・クラフト作のインスト曲です。エルドリッヂのまるで雨だれように聴こえるバンジョーの音からキック・オフし、華麗なクロマチック・ロール、ブルージーなマンドリン、哀愁漂うドブロと続き、再びバンジョーとマンドリンが絡んでエンディングと流れ込みます。不協和音風のエンディング・パターンが余韻を残します。作者ポール・クラフト自身もギターで参加しています。

2曲目「少し待って」はジョン・ダフィーの依頼によってハーブ・ペダーセンが提供した2曲のうちの1曲です。もう1曲は4曲目アルバム・タイトル曲の「旧い列車」でした。つまり2曲とも採用されたということです。歌が作られたいきさつは、「長いツアーから帰ってくると、エージェントから1週間以内にさらにもう9週間ツアー出て欲しいとの電話がありました。私は、家から離れる時間が配偶者にとって不満の種になるもの思い、エージェントに対し、少し返事を待ってくださいと言った」という内容のものですが、これが“永遠の愛の歌”に変わったのでした。切なく響くドブロのイントロから、少し高いキーでスターリングが歌い始め、トリオ・コーラスへと続きます。曲をコントロールするように音数を抑えたマンドリンの間奏も実にいい感じです。この曲ではグレイが珍しくエレキ・ベースを弾いています。

贅沢にもギター、マンドリン、ドブロが重なり合うようにイントロを奏でる3曲目「それぞれの道」はスターリングのオリジナル曲です。なるほど歌い回しも冴え渡っています。サビからのコーラスにリッキー・スキャッグスのヴィオラがかすかに重なり豊穣な音の響宴となっています。

4曲目「旧い列車」は2曲目と同じくハーブ・ペダーセンの作品です。彼が北カリフォルニア鉄道を走っている古いサクラメント・ノーザン線から得たアイディアを基に妻ニッキーと共作しています。ギターに始まりすぐにマンドリンのカット、バンジョーのリック、ベースのオクターブ、ドブロのスライドで汽車の走る音が聞こえてくる様を表現したイントロは秀逸です。スターリングの小気味良いヴォーカルにうっとり。さらにコーラスに堪能していると、間奏でバンジョーが切り込んできてメロディックなロールをつま弾き、マンドリンのトレモロに続き、さらにドブロとフィドルが曲の流れを邪魔しないように巧みに入ってきます。エンディングは満を持したかのようにドブロが鮮やかなフレーズを決めてくれます。これぞ“音の祭典”や〜!(彦摩呂風)

5曲目「グラスの底に」は作曲者ポール・クラフトが自ら弾くギターのイントロから始まり抑揚のあるスターリングの歌に繋ぎ、コーラスにはリンダ・ロンシュタットが加わって4部で力強く歌われます。それぞれの楽器が曲全体の雰囲気を損ねないように控えめに音を奏でています。まるでブルーグラス版“A.O.R.”といった感じです。

続く6曲目の「古い十字路」でアルバム初のブルーグラス・ソングが登場します。大御所ビル・モンローの十八番とも言えるゴスペル・ソングを、前曲と同じくリンダが加わったクァルテットで歌い上げます。シーンの3人はリンダを引き立たせるかのように少し抑え気味に歌っています。歌の背後ではフィドルがマイナー・チューンを奏で、バンジョーも控えめに音を紡ぎます。間奏のマンドリンがとてもブルージーです。


by scoop8739 | 2018-03-22 08:30 | セルダム・シーン | Comments(0)
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