260 至高のサウンド(その14)

アルバム『アクト2』曲解説(B面)

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B面1曲目「ハロー・メリー・ルー」はポップ歌手ジーン・ピットニー(Gene Pitney)とケイエット・マンジアシーナ (Cayet Mangiaracina) によって書かれた曲で、1961年にリッキー・ネルソンによって歌われヒットしました。シーンの演奏は軽やかなバンジョーのイントロに始まり力強くハイテンポで歌われます。またこの曲ではトム・グレイのバリトンも聴けます。

2曲目「ララのテーマ」はモーリス・ジャールが映画『ドクトル・ジバゴ』のために書いた作品でした。前曲とは打って変わって虚をつくようにエルドリッヂが可憐なバンジョーのソロを聴かせてくれます。

前曲がフェイド・アウトすると3曲目「君を失くして」が始まります。これはアール・スクラッグスが1951年に書いた曲で、「Don't Get Above Your Raisin'」とのカップリングでシングル・リリースされています。この地味な曲を発掘してきたダフィーの努力には感心させられます。軽快なマンドリンのイントロに始まり、悲しい内容なのにダフィーは溌剌と歌っているように思えます。つまりそれがブルーグラスなんですねぇ…。

4曲目「スウィーテスト・ギフト」はJ.B.コーツの作です。「罪を犯した放蕩息子に面会をする母親、罪の大小に無関係に注がれる息子への愛情、そして手土産の笑顔」という内容で、ブルー・スカイ・ボーイズが歌って知られるようになりました。近年ではリンダ・ロンシュタットがレパートリーにして有名になっています。この曲をダフィーのリードにトム・グレイが輪唱します。間奏のドブロが曲のムードをグッと高めているようです。この曲も物悲しい内容なのに、それを感じさせないような歌い方です。これまたブルーグラスなんですねぇ…?

軽やかにドブロのイントロで始まる5曲目「リーズン・フォー・ビーイング」は直訳すると“存在理由”という意味です。この曲はカントリー・ジェントルメン時代の作家コンビ、アン・ヒルとジョン・ダフィーの共作となっています。ジェントルメン時代だったらチャーリー・ウォーラーに疎まれたと思われる曲ですが、シーンではダフィーも水を得た魚のようにのびのびと歌っています。

6曲目「スモーキン・ヒッコリー」はベン・エルドリッヂのオリジナル・インスト曲です。華麗なテクニックで聴かせるバンジョーの演奏ですが、その音色が実に素晴らしい。このバンジョーは戦前のギブソン“グラナダ”のオリジナルで、もとはビル・エマーソンがジミー・マーチンのバンドにいた頃に弾いていたものです。それをエルドリッヂがビルから譲っていただいたそうで、ネックが使いすぎて細くなっていて弾きやすくなっているということです。という訳でもないのでしょうが、キース・トンプソン・スタイルを駆使した鮮やかな演奏が曲を一段と輝かせています。ダフィーのマンドリンもオゥルドリッヂのドブロもブルージーで曲に彩りを添えています。

7曲目「黄金の家に住むよりも」はハンク・ウィリアムス作のゴスペル曲です。この美しい福音曲をスターリングの男らしいリード・ヴォーカルとダフィーの力強いハーモニー、加えてドブロの流麗な音色が完璧なまでにシーン・カラーに染め上げています。まさにアルバムのラストを飾るには充分過ぎる完成度の高さです。

セルダム・シーンの画期的なデビュー・アルバム『アクト1』と、続くこの『アクト2』のリリースは、1970年代初頭に始まった“ニューグラス”というブームに乗った他のバンドの追随を退け、遥か先を走っていった感があります。


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by scoop8739 | 2018-03-08 08:47 | セルダム・シーン
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