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254 至高のサウンド(その8)

アルバム『アクト1』曲解説(A面)

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まずA面1曲目の「レイルロード・ライン」から非ブルーグラス的なサウンドに驚かされます。曲の途中でマイナー・コードになったり、目まぐるしく変わるコードなど、この感じは今まで耳に馴染んできたブルーグラス・サウンドとはどこかニュアンスが違います。ヴォーカルの後方で奏でられるドブロの音色のせいでしょうか? この曲はスターリングの学生時代からの盟友ポール・クラフトの作です。この人はシンガー・ソングライターで、これ以降もシーンに多く関わりを持ちます。選曲とアレンジはスターリングだと思われます。

スロー・テンポな2曲目「いとしのコーリー」は古くからの民謡です。ビル・モンローやフラット&スクラッグスを始め多くのアーティストがレコーディングしていますが、ここではアレンジもそれまでのものとはずいぶん違っていて、ディレイが霧に包まれたように懸かりミステリアスな雰囲気がします。ダフィーも曲調に合わせて切なげに歌っています。しかし何よりドブロがいい味を出しています。この曲、カントリー・ジェントルメンを脱退したエディ・アドコックが新しく結成したグループ「セカンド・ジェネレーション」のファースト・アルバムにもまったく同じアレンジで収録されています。アドコックさんが真似たのでしょうか?

始めにギター、そしてバンジョーのイントロで始まる3曲目の「ウォント・オブ・ア・ウーマン」はいかにもスターリングらしい選曲です。この曲もまたポール・クラフトの作でした。それにしてもスターリングの歌のうまさは抜群です。そしてサビからのトム・グレイの弾く4ビートのベースも心地よく、間奏でドブロからバンジョーに移る時にベースの4ビートがハイ・ポジションにまでのぼり曲を盛り上げています。

4曲目「ベビー・ジェイムス」はシンガー・ソングライター、ジェイムス・テイラーが彼のデビュー・アルバムで発表しヒットさせた曲です。フィル・インから入るエルドリッヂの弾く軽やかなギターのイントロに始まり、深みのあるリード・ヴォーカルはスターリングの真骨頂と言えるものです。ブルーグラス界広しと言えども、この曲をこれほど上手くい歌える人はいないでしょう。

5曲目の「ジョシュア」はアルバム最初のインスト曲です。原題が「ジェリコの戦い」(Joshua fit the battle of Jericho)という、ジョシュア(ヨシュア)のジェリコ攻略を歌った有名な黒人霊歌です。この曲は合唱曲としても歌われるほかジャズのスタンダード・ナンバーとしても定着しています。シーンの演奏では鮮やかなバンジョーの音色に始まり、続いて真打ちのドブロが登場します。音色といい音の紡ぎ方といい絶妙です。選曲とアレンジはエルドリッヂ&オゥルドリッヂのコンビでしょうか? ダフィーもカントリー・ジェントルメン時代では荒々しく感じたマンドリンの間奏をグっとこらえて巧みに曲調をコントロールしています。

6曲目「王冠の星」は選曲といいアレンジといいダフィーの世界です。この曲の作者はファーリン・ハスキー(Ferlin Husky)といい、カントリー・ミュージック歌手として有名な方で、「ゴーン」(Gone)や「鳩の羽」(Wings of a Dove)という曲がカントリー・チャートで1位になっています。地から沸き上がるような無伴奏の4部コーラスで始まり、ダフィーのリードに繋げます。情緒たっぷりと歌うダフィーには貫禄さえ感じられます。


by scoop8739 | 2018-02-15 08:48 | セルダム・シーン | Comments(0)
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