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86 わらの中の七面鳥

(Turkey In The Straw)

バンジョーと言えばすぐにアール・スクラッグスの名を思い浮かべますが、こと演奏に関しては誤解を恐れずに書かせてもらうと、最も高度の音楽センスとテクニックを披露していたのがダン・リーノウではなかったでしょうか。

5弦バンジョーの奏法は、いわゆる三本指奏法(親指、人差し指、中指を使うスクラッグス・スタイル)のことですが、ダン・リーノウや元カントリー・ジェントルメンのエディ・アドコックに見られる共通した奏法は、既成の奏法にとどまらず、ツー・フィンガー・スタイルをも活用していることにあると思われます。それは彼らの演奏の中で、2コーラス目か3コーラス目にたびたび出てくる、親指と人差し指、または親指と中指の組み合わせによる三連音符、四連音符などを多用したアドリヴで聴くことができます。

スリー・フィンガー奏法も音符に直すと三連音符、四連音符も聴かれますが、彼らの場合はコード進行時におけるコード分解の方法にあります。つまり、これまでの奏法では、ただスリー・フィンガー・スタイルに乗せてメロディーが移行するだけだったのに対して、彼らの場合は、それまでのブルーグラスではほとんど使われなかったサスペンションとか、13thといったコードの応用に現れています。

エディ・アドコックはカントリー・ジェントルメンに加入する以前に、しばらくダン・リーノウ宅に寄宿していろいろとバンジョーの手ほどきを受けていたとのことです。そういえばエディーの奏法にはダンとの共通点を多く見出すことができます。しかしエディーはさらに改良を加え、ダンに比べると音が簡素化され、整理されています。

86 わらの中の七面鳥_a0038167_21133465.jpgこうしたブルーグラス・バンジョーの世界では異色のプレイヤーである2人が共演したアルバムが「センセーショナル・ツイン・バンジョーズ」なるものです。この録音には延べ8時間を費やしたと言われていますが、マイクを挟んで2人がお互いの指使いを見ながら、ほとんど即興的に和音の構成、ピッキングの打ち合わせがなされたのだそうです。その中の1曲に、フォーク・ダンス曲の「オクラホ・マミキサー」としてもおなじみの「わらの中の七面鳥」があります。イントロ直後から、いきなり2人のツー・フィンガー・デュエットが始まります。
Adcock & Reno / Sensational Twin Banjos (Rebel)

ビル・モンロウのブルー・グラス・ボーイズがピーター・ローワン、リチャード・グリーンを擁していた頃にこの曲を録音しています。ちなみにバンジョー奏者はラマー・グリア、ベースはビルの息子のジェイムズでした。
Bill Monroe And His Blue Grass Boys / Bluegrass Time (MCA) (CD化されていません)

アラン・マンデは「フェスティバル・フェイバリッツ」シリーズの第4集目にして、この曲を完璧なクロマティック・ロールで聴かせてくれます。
Alan Munde / Festival Favorites (Ridge Runner) (CD化されていません)

レスター・フラットのナシュヴィル・グラスの創設メンバーで、バンジョーを弾いていたのがヴィック・ジョーダンでした。彼はバンジョーの魅力をバウンスするところにあると言っています。“バウンス”という聞き慣れない言葉の意味は“はずむ”と表現でもするのでしょうか。この点をとくに強調したのがヴィックなのです。彼のソロ第一作のなかにもこの曲が収められています。あっと驚くヘッド・アレンジで演奏していますが、コード進行も幾分変わっているようです。
Vic Jordan / Pick Away (Polydor) (CD化されていません)

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by scoop8739 | 2005-04-23 21:16 | 不朽の名曲
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