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503 ブルーグラスの「際もの」アルバム(その1)

どの音楽ジャンルにも伝統を継承し育てていく「正統派」があれば、そこから脱して新しいものを創造しようとする「革新派」があり、またその中には「異端」も産まれます。言い換えれば、「王道」があれば「覇道」があり、そして「邪道」もある訳であります。

今回の企画は「邪道」と言うか、あえて言うなら「際もの」と呼ばれるバンドにスポットを当ててご紹介したいと思います。

「ランC&W」(Run C&W)

年代物のソウル・クラシックをブルーグラス・スタイルで演奏する「際もの」、あちら風に言うと「ノベルティー」な企画もののバンドがこのランC&W(Run C&W)です。この名前から連想するのはラップの「ランDMC」というグループでしょう。DMCをカントリー&ウエスタンのC&Wに代えたネーミング。だからといって曲にはラップは含んでいません。

彼らの基本的な前提は、古いモータウン(Motown)や、スタックス(Stax)、その他のソウル・クラシックを取り上げて、それらにブルーグラス風の味付けを施すことです。この奇妙な思いつきはある意味、楽しい効果をもたらします。

メンバーはバンジョー、マンドリン、ドブロ、ベース、何でもござれのクラシェン(Crashen Burns)、ウォッシュボードとヴォーカルのG.W.ウォッシュ(G.W.Wash Burns)、バンジョーとヴォーカルのスライド(Slide Burns)、ギターとヴォーカルのラグ(Rug Burns)というバーンズ4兄弟。バンジョーやハーモニカや洗濯板(Washboard)を用いての演奏はいかがわしい匂いがプンプンしてきます。

503 ブルーグラスの「際もの」アルバム(その1)_a0038167_10063265.jpg何はともあれ、1993年にリリースされたアルバム『トゥワンギーな最初の世紀に』(Into The Twangy-First Century)を聴いてみて下さい。

https://www.youtube.com/watch?v=gzWOAqwpXuo/

「ウォーキング・ザ・ドッグ」、「アンチェインド・メロディ」、「マイ・ガール」、「ホールド・オン・アイム・カミン」とソウルの名曲がどんどんと出てきます。

ライナーを読んでいくと、そこに元イーグルスのメンバーであるバーニー・リードン(Bernie Leadon)の名前を発見して驚きます。彼はこのアルバムのプロデュースをしているのです。

このリード・ヴォーカルのダミ声にどこか聴き覚えがあると疑ってかかると、案の定、ラッセル・スミス(Russell Smith)ではございませんか!?

ご存知のとおり、1970年代から80年代初頭において、最大かつ最も過小評価されたバンドの1つである「アメイジング・リズム・エース」(Amazing Rhythm Aces)の才能あふれるヴォーカリストですよ、彼は!

となると、このバンジョー奏者こそバーニー本人と疑うところはありません。このバンドが古いモータウン曲のカバーとして上手く機能するように、彼はスクラッグス・スタイルを駆使して素晴らしい仕事をしています。

その他にナシュヴィルのソングライター、ジム・フォトグロ(Jim Photoglo)とヴィンス・メレームド(Vince Melamed)が加わっています。

503 ブルーグラスの「際もの」アルバム(その1)_a0038167_10065278.png前作が売れたのか、はたまた2枚作ることが契約条件だったのか、翌1994年に2枚目『ロウ対ウェイド』(Row vs, Wade)がリリースされました。これまた前作の路線を踏襲しています。

https://www.youtube.com/watch?v=yGqibh8tV5k/

「リーチ・アウト・アイル・ビー・ゼア」、「パパ・ワズ・ア・ローリング・ストーン」、「スパニッシュ・ハーレム」とソウル・ファンなら泣いてしまう選曲です。おっと、別の意味で泣いてしまうか!?

ライナー・ノーツに書かれているように、「カントリー・ロックへのユニークなソウルフルなアプローチ」などとほめてもらっても困るのです。これはあくまでパロディ、つまり「際もの」として鼻で笑って聴いて欲しいアルバムなんですから。

それぞれの音源はYoutubeにて佐生武彦さんがアップして下さってる「Take’s Bluegrass Album Channel」で聴くことが出来ます。


# by scoop8739 | 2020-04-14 10:13 | 際ものアルバム