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201 時系列で聴くカントリー・ジェントルメン (40)


ブートレグのライヴ・テープ

ブートレグ (Bootleg)というのは、ブート盤とか、海賊盤などと言われるように、一般的には「法律上の権利を無視して諸権利を有しない者により権利者に無断で発売または流通される非合法商品である」と定義されています。

ビートルズやボブ・ディラン、ローリング・ストーンズなどのメジャーなアーティストなら高額で取引されるものですが、カントリー・ジェントルメンなどブルーグラス・アーティストの場合は一般的にあまりにも有名ではないため、それほど高額な取引はありません。

a0038167_16104699.jpgしかし、このブログを書き始めた頃(2005年)には、結構「闇社会(?)」で彼らのライヴ・テープが取引されていました。私レベルのファンにとっては、「喉から手が出る」を通り越して、「腹の底からわしづかみしたい」くらいなものなので、当然、情報をいただくと即購入ということになります。

やっと手にして聴いてみても、当然のことながら音質は悪いし、ライヴそのものもそれほどでもないし、中には曲の途中でブチ切れてしまうものもあったり、さんざんな内容でした。

でもそれはそれ、他人が持ってないものを持つ喜びは何よりも代え難いものでした。

ところが近年、ネット社会が当たり前となり、そこいら中に(例えばYを頭文字にするものなんかですが)もっとましな音源がアップされるようになりました。しかも、ビートルズなどと違って、「アップ即削除」ということもなく、いつでも聴き放題、ダウンロードし放題です。永年のファンにとってそれは喜ぶべきことなのか、悲しむべきことなのか、今やどうでもいいようになりました。

ま、そういうことなので、皆様もご興味あるならば、「Yを頭文字にする」音源で、1962〜63年の彼らが最も輝いていた頃のライヴをご堪能下さい。

とくに彼らがフランチャイズとしていた「シャムロック」での1963年8月6日(ビル・クリフトンとのセッションの日です。このライヴにはビル自身も出演しています)と、11月26日(「フォーク・セッション・インサイド」を録音して間もない頃)のライヴが秀逸ですヨ。

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by scoop8739 | 2017-07-24 16:12 | カントリー・ジェントルメン

200 時系列で聴くカントリー・ジェントルメン (39)

マーキュリーへの録音 (3)

続いて「フォーク・セッション・インサイド」のB面を聴くことにしましょう。米国オリジナル盤は日本盤とは少し曲順が異なっています。

a0038167_16261433.jpgB面1曲目「ガルヴェストンの洪水」(The Galveston Flood)の舞台は、グレン・キャンベルの歌でも有名なテネシー州ガルヴェストンです。この曲は1900年に実際に起こった暴風雨と大洪水の悲劇を基に歌われています。ご存知の方もおられるかと思いますが、米国ハリウッドにあるユニバーサル・スタジオでのスタジオ・ツアーズでも再現されているこの洪水で、列車に乗っていた数多くの家畜や人命が失われました。ジェントルメンは、亡くなった多くの者たちへの冥福を祈るかのようにトーキング・スタイルで歌っています。コーラス部ではリードをエディ、テナーがジョン、バリトンをトム、そしてベースをチャーリーの4部コーラスで歌われています。なお、この録音はアルバム「イエスタデイ&トゥディ」vol.3にも収録されています。

2曲目「漁師の花嫁」(Young Fisherwoman)は、米国版「岸壁の母」(?)のような作品で、その昔、ジム&ジェシーのグループでギターを弾いていたドン・マクハンという人の作です。早朝に漁のため元気に出港した夫が、夕方には帰ってこなかった。帰らぬ舟を待ちながら海辺に佇む漁師の若妻の姿を、ジョンが切々と歌い上げています。間奏のバンジョーはアルペジオ奏法で演奏されます。

3曲目の「悲しき9時の鐘」(This Morning At Nine)は悲しい失恋の歌です。歌の内容は「今朝9時にかつての恋人が新郎と共に教会の鐘を鳴らした」というもので、60年代の一時期、ドンリー・リーノウ&テネシーカッタップスのギタリストとして、また歌手としても活躍していたシド・キャンベルの作です。この曲もA面4曲目同様、エディ・アドコックとピート・ロバーツによるツイン・バンジョーを聴くことが出来ます。

4曲目「浮き世の旅に疲れて」(I Am Weary)は、フォーク・ソング的ニュアンスを横溢させたピート・ロバーツの作品です。いかにもジェントルメンらしく伝統的なフォーク・ソングに対する洞察力の深さ、鋭さで聴かせる曲です。イントロと間奏ではバンジョーとマンドリンが同じメロディーを奏でます。ジョンとチャーリーとの斉唱の後、チャーリーのリードにハミング・コーラスが被さります。

A面1曲目同様、軽快なバンジョーのイントロで始まるB面5曲目「ダイナおばさんのパーティー」(Aunt Dinahs Quilting Party)は、アメリカのホーム・ソングの代表曲で、ジョンとエディのアレンジが効いています。「キルティング・パーティー」というのは、「アメリカ南部の諸州でよく見られるアメリカの婦人社交界=羊毛・羽毛などを入れた刺し子の掛け布団作りのお手伝い会」を意味しています。アメリカのご婦人方は、自分たちの余暇の時間を、比較的実用的に過ごしたようです。さらに珍しくエディのボーカルを聴くことができます。また、チャーリー・ウォーラーによる独特なギターのベース・ランニングは、当時この曲を聴いた数多くのギター奏者を虜にしたようです。この録音もまたアルバム「イエスタデイ&トゥディ」vol.2に収録されています。

最後になりましたが、このアルバムで「ナイト・ウォーク」と双璧をなすインスト曲「心の痛手」(Heartaches)は、このアルバム一番の聴きものでしょう。有名なスタンダード・ソングに果敢に挑戦し、見事なまでのアレンジですっかり彼らのレパートリーに昇華させています。トムのベース・ソロがまたこの曲に大きな貢献をしています。

アルバムを通して聴くことで、全曲に亘るトム・グレイのソリッドな4ビート・ベースが彼らのモダン・ブルーグラス・サウンドの大きなファクターとなっていることに気づかれることでしょう。


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by scoop8739 | 2017-07-21 16:56 | カントリー・ジェントルメン

199 時系列で聴くカントリー・ジェントルメン (38)


マーキュリーへの録音 (2)

それでは名盤「フォーク・セッション・インサイド」のA面から聴いていきましょう。

a0038167_16261433.jpg軽快なバンジョーのイントロから始まる1曲目「青い鳥が呼んでいる」(Bluebirds Are Singing For Me)は、オリジナルが南部山岳地帯のトラディッショナル曲です。この曲はマック・ワイズマンが得意としていた曲でした。しかし当時、マックはまだレコーディングしておらず、それをジョン・ダフィーとピート・ロバーツがブルーグラス風にアレンジし録音しました。チャーリー・ウォーラーの声が溌剌としています。

ギターの重いイントロから始まる2曲目「悲しく、せつない日」(Sad And Lonesome Day)は、南部山岳地帯で創造的発掘とレコーディング活動を続けていたカーター・ファミリーが大恐慌時代に創った作品でした。かつてオズボーン・ブラザーズが「Sad And Lonesome Day Blues」というタイトルで歌っていました。ジョンとチャーリーの斉唱で歌われます。

3曲目の「酒場の女」(The Girl Behind The Bar)は、スタンレー・ブラザーズの1947年の作品です。スタンレー・ブラザーズがクリンチ・マウンテン・ボーイズを結成して間もなく、リッチ・R・トーン社にレコードを残しています。ジョン・ダフィーとピート・ロバーツはスタンレーのファンであったため、機会あれば録音したいと思っていたそうです。この曲もまたジョンとチャーリーの斉唱で歌われています。

4曲目の「聞こえないのかい」(Can’t You Hear Me Calling)は、大御所ビル・モンロゥがコロンビア社の黄金時代にレコーディングした曲です。この曲にジェントルメンは大胆なアレンジを施し、チャーリー・ウォーラーによるボーカルがリスナーを圧倒します。また、エディ・アドコックとピート・ロバーツによるツイン・バンジョーも聴きごたえがあります。ちなみにビル・モンロゥ盤のデュエット相手はマック・ワイズマンでした。ジョンとチャーリーとエディによる三部コーラスが聴きものです。

5曲目は「学校の火事」(The Scool House Fire)です。ディクソン・ブラザーズのドーシー・ディクソンが書いた曲で、田舎の小学校の学芸会に起きた火事のことを歌っています。あまりに突然の出来事に逃げ場を失ない、炎に包まれて死んでいったいたいけない子供への哀惜を、ジョンが感情込めて歌っています。

ベースのイントロから始まるA面最後の曲「ナイト・ウォーク」(Night Walk)を作曲したのはメンバーのバンジョー奏者エディ・アドコックです。彼の演奏スタイルは、従来のブルーグラス・スリーフィンガーから大きく逸脱しています。マール・トラヴィスやチェット・アトキンスのギャロッピングをスリー・フィンガー・バンジョーに取り入れたとも思われるユニークなもので、ドン・レノのスタイルをさらに発展させたものでした。ジョンのマンドリンもさることながら、トム・グレイの堅実なベースが加わることによって、ジェントルメンの目指すモダン・ブルーグラスがより完成に近づいたのでした。なお、トライアングルを叩いているように聞こえる音は、レコーディングに立ち会ったフリーランド氏の提案で、ピート・ロバーツがスタジオ内にあった10オンス入りのペプシ・コーラの瓶を釘で叩いて鳴らしたものです。

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by scoop8739 | 2017-07-20 08:51 | カントリー・ジェントルメン

198 時系列で聴くカントリー・ジェントルメン (37)


マーキュリーへの録音 (1)


ビル・クリフトンとの後半のセッションを終えての翌日、ジェントルメンは歴史的な録音に着手します。記録では9月5日と6日の両日にヴァージニア州フォールス・チャーチにあるピート・(カイケンダル)・ロバーツが持つウィンウッド・スタジオにおいて12曲を録音したとされています。

この時立ち会ったレベル・レコード社々長チャールズ・R・フリーランド氏は、以前からカントリー・ジェントルメンの音楽的志向に大変な関心と興味と情熱を抱いていました。

それは、彼らが前衛的な歩みを試みる面と、同時に非常にシンプルで判りやすい昔ながらの曲との、つまり新旧の最も良いところが結合したサウンドを創り出しているという点でした。

一方でフリーランド氏は日頃より、スターディ社がメジャーなレーベルであったマーキュリー社と業務提携し成長している様子を窺っており、シングル盤を発売するだけのレーベルからの脱却を図ります。そこで彼はジェントルメンをプロモートし、マーキュリー社に、この最も新しく録音された12曲の音源をもって業務提携を持ちかけます。

もちろんジェントルメンの方も、マーキュリーの持つ広範囲に亘る流通網に頼ることによって、彼らのパフォーマンスを広く知らしめたいという狙いがありました。

ところが、フリーランド氏の狙いは単に目下人気沸騰中のジェントルメンの売り出しだけでは終わらなかったのです。彼らを手始めにして、レベル社を単なるカントリー系からブルーグラス系レーベルへの切り替えを図ります。その後次々と、ラルフ・スタンレー、ダン・リノ、レッド・スマイリー、ビル・ハーレルらを自社のレコーディング・アーティストとしていき、押しも押されぬレーベルへと築いていったのです。

閑話休題。カントリー・ジェントルメンがマーキュリー・レコードに残したアルバムを紹介しましょう。

a0038167_16261433.jpg1963年11月に発売されたこのアルバムは「フォーク・セッション・インサイド」(Folk Session Inside)と題され、翌年4月には本邦での彼らの第2弾として日本フォノグラム(キング・レコード)より発売されました。

邦題「フォーク・ブルーグラス」と題されたこのアルバムは、初めて紹介されるや大評判となり、当時の学生バンドのほとんどがアルバムの中の曲をレパートリーに加えていたと言われています。

このアルバムではダイナミックかつエキサイティングな、一番油の乗り切っていた頃のジェントルメンの演奏が堪能できることでしょう。もちろん、今日でもジェントルメンを代表する名盤と言われています。


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by scoop8739 | 2017-07-19 16:49 | カントリー・ジェントルメン

197 時系列で聴くカントリー・ジェントルメン (36)


レベルへの録音 (8)

ビル・クリフトンとの二ヶ月に亘るレコーディング・セッションの間に、ジェントルメンは8月17日からマサチューセッツ州マーサズ・ヴァインヤードにあるライヴハウス「ムーンカッサー・コーヒー・ハウス」にてライヴを行います。この時に録音されたものが後にレベル社から発売される「イエスタデー・アンド・トゥデイ」(以降「Y&T」と表記)の3部作にそれぞれ残されています。

8月17日
トム・ドゥーリー (Tom Dooley)a0038167_11313235.jpeg
哀しみの男 (Man of Constant Sorrow)

8月18日
乙女の挽歌 (I Never Will Mary)
プレティー・ポリー (Pretty Polly)

8月21日コロンバス砦のブルース (Columbus Stockade Blues)
我が祖国 (This Land Is Your Land)
M. T. A. (M.T.A.)
神の子等 (These Men Of Gold)

順に曲を紹介しましょう。
「トム・ドゥーリー」は言わずと知れたキングストン・トリオが1958年に発表し大ヒットとなった曲で、ジョン・ダフィーがコミカルにキングストン・トリオのジョン・スチュワートを茶化しています。一方、スチュワートはダフィーを評して「バカ高い声を張り上げてりゃイイってもんじゃないヨ」と、言ったとか言わなかったとか? 「Y&T」vol.1に収録。

「哀しみの男」は、カーター・スタンレーの名唱で知られる伝統的なフォーク・ソングです。ダフィーのリード・ボーカルが素晴らしいです。「Y&T」vol.2に収録。

「乙女の挽歌」は、以前「Bluegrass at Carnegie Hall」でも取り上げていますが、カーター・ファミリーがレパートリーとしていた曲です。ナターシャー・セブン時代の高石ともやも取り上げていました。「Y&T」vol.1に収録。

「プレティー・ポリー」を歌うダフィーには独特の世界観があるようで、従来曲が持つトラディッショナルな雰囲気から逸脱し、自らの個性を楽しんでいるように思えます。「Y&T」vol.3に収録。

「コロンバス砦のブルース」は、間奏からセカンド・コーラスに入るところで転調するあたり、ジェントルメン独自のアレンジが利いている曲です。トム・グレイのベースに注目してください。「Y&T」vol.2に収録。

「我が祖国」は言うまでもなく、ウディ・ガスリーが自作自演したフーテナニーのテーマ曲のような曲です。ダフィーはこの曲がとてもお気に入りのようで、これ以降も何度もレコーディングしています。「Y&T」vol.2に収録。

次の「M. T. A.」もキングストン・トリオの1958年のヒット曲で、ボストンの地下鉄網に閉じ込められたチャーリーという人の不合理な物語を歌っています。日本盤「Y&T」vol.2のみ収録。

最後の曲「神の子等」もまた、「Bluegrass at Carnegie Hall」にも収録されていた曲です。この曲のようなセイクレッド・ソングの場合、彼らは自在なアレンジを行わず、堅実な演奏に徹しています。「Y&T」vol.3に収録。

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by scoop8739 | 2017-07-17 12:12 | カントリー・ジェントルメン