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100 フェアウェル・ブルース

(Farewell Blues)

「ドクター・バンジョー」として知られるピート・ワーニックは、そのニックネーム通りコロムビア大学で社会学の博士号を取得しています。彼はバンジョーの魅力を世界中に広げる伝道師のような存在で、執筆したバンジョー教則本の累計販売冊数は25万部を超え、また数々の教則ビデオも制作しています。

彼は1970年代にニューヨークで結成されたバンド「カントリー・クッキング」でキャリアをスタートさせますが、その後1980年代にはティム・オブライエンらと共に人気グループ「ホット・ライズ」で活躍しました。このバンドはグラミー賞にもノミネートされたことがあります。

a0038167_1595036.jpgその後はブルーグラス・バンジョーのスリー・フィンガー・ロールを、いかにクラリネットやビブラフォンといったリード楽器、さらにベースやスネア・ドラムのリズム楽器、すなわち初期のジャズ・コンボとマッチするかというものを模索します。誰もがイメージとして持つバンジョーやジャズという垣根を、互いに地のままぶつけ合う事でその偏見や不自然さに真っ向から挑んできました。そんな彼のソロ・アルバムに、この「フェアウェル・ブルース」が収録されています。もともとこの曲はディキーランド・ジャズのスタンダード曲だけに、ピートはそのあたりを意識したようでクラリネットのジョー・ルカシックとの絡みが巧くマッチした仕上がりとなっています。
Pete Wernick / On A Roll (Sugar Hill)

クラレンス・ホワイトが20才の時に録音したプライベート・テープをもとに編集されたアルバムにもこの曲が収録されています。録音もホーム・レコーディングとは思えないほど鮮明ですが、クラレンスのフラット・ピッキング・ギターには一音一音に込められたインパクトがたいへん強く感じられます。ちなみにバックでリズム・ギターを弾いているのは ケンタッキー・カーネルズの僚友ロジャー・ブッシュです。
Clarence White / 33 Acoustic Guitar Instrumentals (Sierra)

クラレンス・ホワイトをアイドルとしてブルーグラス・ギターを学んだトニー・ライスが1976年に発表したソロ・アルバムの中にもこの曲が収録されています。J.D.クロウのバンジョーに始まり、兄ラリーのマンドリン、ジェリー・ダグラスのドブロと続いて、いよいよトニーのギター華麗にブレイクします。モダンなサウンドの中にもトラディッショナルな雰囲気が漂う名曲です。ちなみにフィドルはリチャード・グリーンが弾いています。
Tony Rice / Tony Rice (Rounder)

上記のアルバムとほぼ同時期に録音されたのがビル・キースのソロ・アルバムでした。デヴィッド・グリスマン、トニー・ライス、ヴァッサー・クレメンツといった凄腕のプレイヤーがサポートしています。ここでの「フェアウェル・ブルース」はビル・キースがアール・スクラッグスに敬意をはらってか、見事なばかりのスクラッグス・スタイルでの演奏を聴かせてくれます。
Bill Keith / Something Bluegrass (Rounder)

先にも書いた通り「フェアウェル・ブルース」は、「ビューグル・コール・ラグ」同様に、アール・スクラッグスがディキーランド・ジャズのスタンダード曲をブルーグラス・スタイルにアレンジしたものです。ディキーランド・ジャズではこの曲に「別れのブルース」という邦題がついていますが、バンドにこの曲をリクエストすると「淡谷のり子さんにでも歌ってもらいましょう」と一掃されます。(ンなはずないか…!?)
Lester Flatt & Earl Scruggs / The Complete Mercury Sessions (Mercury)

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by scoop8739 | 2005-05-29 15:11 | 不朽の名曲

99 ミッドナイト・フライヤー

(Midnight Flyer)

ブルーグラスやカントリーには汽車をモチーフにした曲が数多くあります。開拓時代の象徴なのでしょうか、カントリー・ロックの時代となっても有名なところではドゥービー・ブラザースの「ロング・トレイン・ランニング」なんかがありますね。ブルース・ハープやギターのシャッフルを使って汽車の躍動感を表していますが、蒸気機関車の出す音には洋の東西を問わず感情移入を促す何かがあるのでしょう。今回の曲はそんな夜汽車を歌ったもので、あのイーグルスがたっぷりとブルーグラスしている曲「ミッドナイト・フライヤー」です。

a0038167_2013473.jpg1972年にデビューしたイーグルスは、一般的にはL.A.のカントリー・ロック・バンドとして受け入れられていますが、そのキャラクターを決定的にしたのがバーニー・レドンの存在でした。彼はL.A.のカントリー・ロック人脈図の頂点にあたるスコッツヴィル・スクワィエル・バーカーズからキャリアがスタートし、ハーツ&フラワーズ、ディラード&クラーク、そしてフライング・ブリトゥ・ブラザースと渡り歩いた後、イーグルス結成当時にはもっとも名の知られた存在でした。つまりバーニーの存在こそが彼らをL.A.カントリー・ロックの「血統書」付きのバンドとしてファンにアピールすることができたのでした。バーニーのバンジョーをフィーチャーした軽快なカントリー・ロック仕立てのこの曲は、イーグルスの3枚目のアルバム「オン・ザ・ボーダー」に収録されています。
Eagles / On The Border (Asylum)

この曲の作者として知られるのは、セルダム・シーンやリンダ・ロンシュタットに曲提供しているポール・クラフトです。イーグルスの演奏では、テンポを早くしてサビの部分の「ウー」を汽笛(警笛)のようにコーラスでアレンジしていますが、ポールは1人で歌っているからでしょうか、その雰囲気は意識していますがテンポを少し落として歌っています。
Paul Craft / Brother Jukebox (Strictly Country)

ボビーとソニーのオズボーン兄弟とマック・ワイズマンというブルーグラス界の大ベテランがガップリ四つに組み、さらにバディ・スパイカーのフィドルが加わって作られた1970年代後半の秀作アルバムが「エッセンシャル・アルバム」です。油の乗切った時期のマックとボビーの歌の巧さを、ソニーとバディが音楽面で見事に支え、2人にはピッタリのスタンダードな有名曲を中心に落ち着いた、しかもハイ・レベルのブルーグラス音楽が堪能できます。ここにもこの曲が収録されています。イーグルスとはひと味違った、いかにもブルーグラスらしい「ミッドナイト・フライヤー」が聴かれます。
Osborne Brothers & Mac Wiseman / Essential Bluegrass (CMH)

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by scoop8739 | 2005-05-26 20:03 | 不朽の名曲

98 エルサレム・リッジ

(Jerusalem Ridge)

ブルーグラス・フィドラーとして常に5本の指に名前が挙がるケニー・ベイカーは、ケンタッキー州東部ジェンキンスの出身で、彼がミュージシャンの道を目指したのは、意外なことにトミー・ドーシーやグレン・ミラーといったスイング・ジャズからでした。第2次世界大戦中、戦地に慰問にやって来たウェスタン・スイング・バンドのボブ・ウィルスやステファン・グラッペリに感化されフィドルを弾くようになりました。

フィドルを覚えるとビル・モンロウのフィドル・インストゥルメンタルに興味を持ち、のちにモンロウのブルー・グラス・ボーイズに加入することとなります。彼のフィドル・プレイは、元々影響を受けていたウェスタン・スイングとジャズを下地に、他のブルーグラス・フィドラーよりも甘く、表情豊かな特有の音色を持っています。彼の加入を機に、ブルー・グラス・ボーイズでは1960年代初頭までバンジョーの陰に隠れがちだったフィドルが再び主役の座を獲得したのでした。

a0038167_1325361.jpg1976年春、彼はそれまでモンロウの下で演奏して来た曲を集大成したソロ・アルバムをリリースします。マンドリンはグループの御大モンロウ自身が担当し、ケニーの軽快なフィドルを中心にボブ・ブラックやヴィック・ジョーダンのバンジョーが絡み、ワルツ、ラグ、ブレイクダウンと、緩やかな音からアップテンポな曲まで、シンプルながら多彩に演奏されます。その中に標題の「エルサレム・リッジ」が収録されています。ケニーのフィドルを中心に、途中でモンロウがマンドリンのブレイクをはさみます。
Kenny Baker / Plays Bill Monroe (County)

この曲はビル・モンロウのオリジナルとされ、フェスティバルなんかでも人気の曲です。モンロウ盤は、先のケニー・ベイカー盤からちょうど1年前にほぼ同じメンバーで録音されています。こちらの録音はどういう訳だかケニーのフィドルばかりで、モンロウによるマンドリンのブレイクが聴かれません。
Bill Monroe / Weary Traveler (MCA)

トニー・ライスはよっぽどこの曲がお気に入りのようで、彼のソロ・アルバムには何度も登場してきます。「エルサレム・リッジ」は次の3枚のアルバムで聴くことができます。その時代時代のトニーのプレイを聴き比べてみませんか?
Tony Rice / Church Street Blues (Sugar Hill)
次のアルバムはトニーの声帯の調子が悪い時期のもので、ドーグなどアコースティック系インスト中心のアルバム構成となっています。トニーの最高傑作アルバムといえるでしょう。
Tony Rice Unit / Unit Of Measure (Rounder)
次のアルバムはブルーグラス・チューンばかりを集めたオール・インストのベスト・セレクションとなっています。才能がありすぎる人は、余りにも多くのことを同時にやりすぎてファンを振り回してしまうことがありますが、トニーの優れた技術、技法を駆使したアルバムには時にその一歩手前のものを感じることがあります。しかしこのアルバムに限って言うと、たっぷりと軽やかでハッピーなトニーのギターを堪能できます。
Tony Rice / Bluegrass Guitar Collection (Rounder)

デヴィッド・グリスマン、ジョン・ハートフォード、マイク・シーガーという3つの個性が並ぶとありきたりのアルバムを作るはずがありません。このアルバムはちょっと古いスタイルを意識した演奏を聴かせてくれます。
Grisman, Hartford & Seeger / Retrograss (Acoustic Disc)

カール・ジャクソンは早くから才能が認められたバンジョー奏者で、さらに加えて優秀なボーカリストです。彼の80年代のソロ・アルバムにもこの曲が収録されています。カールの他には、ドブロにジェリー・ダグラス、マンドリンにマーティー・スチュアート、フィドルにブレイン・スプラウス、ギターはアラン・オブライアン、ベースにジム・ブロックJr.。そんな彼らの作り出すサウンドが悪かろうはずありません。CD化されれば必ず聴いていただきたい1曲です。
Carl Jackson / Song Of The South (Sugar Hill)(CD化されていません)

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by scoop8739 | 2005-05-22 13:32 | 不朽の名曲

97 ターン・ユア・レディオ・オン

(Turn Your Radio On)

a0038167_20322948.gif1971年、ジョン・ハートフォードは古い音楽を愛し演奏しながらも、最も先鋭的なロックとブルーグラスとの融合を少しも無理なく成し遂げました。それは彼がノーマン・ブレイク、タット・テイラー、バッサー・クレメンツ、ランディ・スクラッグスという、その当時もっともプログレッシヴなプレイヤーらと組んで作った「エアロ・プレイン」というアルバムで結実します。このアルバムでは後のニューグラスの雛形と言われるサウンドが聴かれます。

その演奏自体はブルーグラスそのものながら、ビル・モンロウのそれとは明らかに肌触りの違う革新的なものでした。この当時までブルーグラスはかなりきっちりとした様式を持つ音楽だったのですが、そういう中でのハートフォードの存在はいかにも異色の感じがします。録音されたテープはプロデューサーのデヴィッド・ブロンバーグの手によって都会的なセンスによる編集がなされますが、これはヒッピー・ブルーグラスとでも呼べるような奇妙な覚醒感があり、古臭いスタイルに包んだ反逆性、革新性は、今日のブルーグラスと比較しても決して古さを感じさせないものでした。

このアルバムのオープニングとエンディングに使われているのが標題曲の「ターン・ユア・レディオ・オン」です。ビートルズの「サージェント・ペッパーズ」のテーマ曲のような使われ方をしていますが、これによってアルバムのトータル性が強調されています。ちなみにこの曲は1938年にアルバート・E・ブラムリーが作ったゴスペル・ソングで、1972年にレイ・スティーブンスが歌ってメジャー・ヒットしています。
John Hartford / Aereo Plane (Rounder)

クリス・ヒルマンのソロ2作目は、カントリーのカヴァーを中心としたロッキン・カントリーでの演奏となっています。サウンドはクリスが直後に結成するデサート・ローズ・バンドの音楽性の基礎となりました。アルバムのラストを締めくくっているこの曲は、クリスとハーブ・ペダーセンとバーニー・レドンの3人による掛け合いコーラスが楽しい作品に仕上がっています。レドンのバンジョー、クリスのマンドリンも前奏や間奏ではかなり元気の良い演奏を聴かせてくれます。
Chris Hillman & Desert Rose Band / Desert Rose (Sugar Hill)

「マウンテン・デュー」や「トラジック・ロマンス」で有名なヒルビリー歌手のグランパ・ジョーンズもこの歌を歌っていました。1965年の録音です。
Grandpa Jones / Everybodys Grandpa (Box) (Bear Family)

ジャンルは違うのですが、戦前から戦後にかけてアンドリューズ・シスターズに代表される女性ジャズ・コーラスのグループのひとつにダイニング・シスターズがいました。このアルバムでは、アコーディオン、フィドル、ギターらによるシンプルなバックで、カントリー・ナンバーや古いフォーク、軽いタッチのゴスペル・ナンバーなどのキャッチーな楽曲をとてもチャーミングに歌い上げています。50年代初頭のカントリー・スタイルの一連の作品にこそ彼女達の個性や魅力がいっぱい詰まっている感じがします。アルバムのオープニング曲にこの「ターン・ユア・レディオ・オン」が収録されています。
The Dinning Sisters / Back In Country Style (Jasmine)

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by scoop8739 | 2005-05-19 20:40 | 不朽の名曲

96 七面鳥のこぶ

(Turkey Knob)

1960年代のカントリー・ジェントルメンの栄光を支えた一人が、バンジョー奏者のエディ・アドコックであることには疑う余地がありません。彼のあの何とも形容しがたいユニークなバンジョー奏法は、ドン・リーノウの影響とされています。

1950年代半ば、ヴァージニアのローカル・カントリー・バンド、スモーキー・グレイヴスのブルー・スター・ボーイズでバンジョーを弾いていたアドコックは、なかなかスクラッグス・ロールを自分のものにできずにいました。そこでドン・リーノウに教えを受けてリーノウ・スタイルに活路を見出し、スクラッグス・ロールを多用せずにすむ独自のフィンガリングをマスターしたといいます。

その後ワシントンD.C.にやって来た彼は、ビル・ハーレルのロッキー・マウンテン・ボーイズに加わりますが、このバンドはジャズをブルーグラスに適合させ、スウィンギーでジャジーなサウンドを好んで取り上げていた先進的なバンドでした。ここでの経験がエディに、ブルーグラスに対するアプローチを違ったものにする要因になったのだそうです。エディはこの時期、ようやく自らのスタイルを確立し、シンコペーションを強調したそのピッキングはドン・リーノウをベースにチェット・アトキンスやマール・トラヴィスのギャロッピング奏法を加味したものです。

a0038167_120348.jpgジェントルメンに加入後はさらにこのスタイルに磨きがかかり、ジョン・ダフィーのマンドリンの多様な広がりあるスケール奏法やブルーズっぽい単弦演奏とのコンビネーションもうまくマッチして、「ナイト・ウォーク」「サンライズ」「心の痛手」など、インストゥルメンタルの名曲を数多く発表してきました。そんな中でも数多くのプレイヤーに取り上げられ演奏されているのが「七面鳥のこぶ」という曲です。
The Country Gentlemen / The Country Songs - Old And New (Smithsonian Folkways)

ジョン・ヒックマンは、バイロン・バーライン、ダン・クレアリーらと行動をともにするバンジョー奏者です。彼は1969年、南カリフォルニアに移り住んだ後、ダグ・ディラード、クラレンス・ホワイト、ジョン・ハートフォード、カントリー・ガゼットらと親交を結びます。彼のバンジョーは紛れもないクロマティック・スタイルですが、基本的にはドン・リーノウの華やかさ、エディ・アドコックのバック・アップ、ビル・エマーソンのハード・ドライヴィング、ボビー・トンプソンのブルース・フィーリングを併せ持つ素晴らしいプレイヤーなのです。そんな彼のソロ・アルバムにもこの曲が収録されています。
John Hickman / Don’t Mean Maybe (Rounder)

ダグ・ディラードのアルバムの中にもこの曲があります。ここではエディ・アドコックのスタイルではなく、むしろアール・スクラッグスのロールで、しかもそこに彼独自の味付けが加わり演奏されています。ドン・ベックが弾いているドブロが変わったスタイルなのも聴きものです。
Doug Dillard / The Banjo Album (Rural Rhythm)

1970年代後半、リッキー・スキャッグスの率いる「ブーン・クリーク」のメンバー、ウェンズレー・ゴールディングのギター、ジェリー・ダグラスのドブロ、それにリッキーのフィドルのバック・アップを得て、無名のビリー・ペリーなるバンジョー弾きがソロ・アルバムをリリースしています。全体的にウェスタン・スウィング調なのはサイドメンの影響なのでしょうか?
Billy Perry / More Bluegrass Jam (KBA Records) (CD化されていません)

城田じゅんじがナターシャ・セブン時代にリリースしたソロ・アルバムにもこの曲が収録されています。彼にとってエディ・アドコックは学生バンド時代からのアイドルでした。城田はエディのプレイに忠実に演奏しています。マンドリンの坂庭省吾がこれまたジョン・ダフィーそっくりの演奏を聴かせてくれます。
城田じゅんじ / Soft Shoes (東芝EMI) (CD化されていません)

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by scoop8739 | 2005-05-15 12:06 | 不朽の名曲

95 ヴィクティム・トゥ・ザ・トゥーム

(Victim To The Tomb)

デヴィッド・グリスマン、ピーター・ローワン、ヴァッサー・クレメンツ、ジェリー・ガルシア、ジョン・カーンからなる「オールド&イン・ザ・ウェイ」は、70年代前半にサンフランシスコで活躍した幻のセッション・バンドでした。

a0038167_217457.jpgそんな彼らが約30年ぶりに集まって作ったのが「オールド&イン・ザ・グレイ」です。タイトルの意味は、白髪混じりとなった彼らの現在の容貌を洒落たものだそうです。故人となったガルシアに替わってバンジョーにハーブ・ペダースン、ベースのカーンに替わってブライン・ブライトとメンバーに若干の交替がありますが、ほとんど昔のメンバーで新録音に挑んでいます。

このCDには、グリスマン、ローワン、クレメンツを中心にした彼らのブルーグラスに対する熱き想いが込められていて、ビル・モンロウ、スタンレー、カーター・ファミリー、ドン・リーノウ、ルーヴィン・ブラザーズといった先人たちの作品に加えて、亡くなった同世代のプレイヤーの作品も取り上げ、極上のブルーグラス・サウンドを提供してくれています。「ヴィクティム・トゥ・ザ・トゥーム」はカントリー・ジェントルメンのオリジナル・メンバー、ジョン・ダフィーの数少ないオリジナル曲のひとつでした。
Old & In the Gray / Old & In the Gray (Acoustic Disc)

ニューグラスの寵児サム・ブッシュをして「ニューグラスの父」と言わしめたジョン・ダフィーは、1960年代に大活躍したモダン・ブルーグラスの急先鋒「カントリー・ジェントルメン」を率い、1970年代になるとニューグラス時代の中心的バンド「セルダム・シーン」のリーダーとして常に時代を牽引してきた革新的な巨人のひとりでした。この曲は彼がジェントルメン時代に作ったものですが、父親の死に対する哀惜の念をうまく表現している名曲です。
The Country Gentlemen / Folk Songs & Bluegrass (Smithsonian Folkways)

カントリー・ジェントルメンとは同じレーベルなのですが、バンジョー奏者ピート・カイケンダル繋がりで交流がありそうでなかったのがレッド・アレンでした。彼の独特のハスキーなボーカルは、テナーに廻ったときにより「ハイ・ロンサム」なムードを漂わせました。長年のパートナーであったマンドリンの奇才フランク・ウェイクフィールドとのデュエットを多く含んでいるものがフォークウェイズに残されています。この中にもダフィーの名曲が収録されています。
Red Allen / The Folkways Years 1964-1983 (Smithsonian Folkways)

ボストン、ニュー・イングランドのブルーグラス・シーンで、カントリー・ジェントルメンに続けとばかりにデビューしたのがチャールズ・リヴァー・ヴァレー・ボーイズでした。彼らは、ボストンとはチャールズ川をはさんだ向かいの学園都市ケンブリッジで、ハーバード大学の学生バンドからスタートし、ヒルビリー・テイストのアーリー・ブルーグラスを中心に、トロピカル・ソングやカントリー・ヒットなどもとりあげていました。オールドタイム・ストリング・バンド・スタイルも大きく採り入れて、とても都会の若者たちとは思えない泥臭い演奏を聴かせています。そんな彼らがジェントルメンのこの曲をもレパートリーに加えていました。
The Charles River Valley Boys / Bluegrass And Old Timey Music (Prestige)

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by scoop8739 | 2005-05-14 21:10 | 不朽の名曲

94 パンハンドル・カントリー

(Panhandle Country)

マイク・オウルドリッジは人気バンド、セルダム・シーンの中にあってドブロという楽器をもってその中心的な役割を担ってきました。それでなくても革新的なアレンジや選曲で多くのファンを楽しませてくれるセルダム・シーンでしたが、これに飽き足らないのか、マイクは多数のソロ・アルバムをリリースしています。

a0038167_21501932.jpgその中から、タコマには「ドブロ」「ブルース・アンド・ブルーグラス」という2枚のアルバムを残しています(2枚のLPは1枚のCDになって発売されています)。これらはポピュラー・ミュージックから、ロック・ナンバー、ジャズ、レッド・ネック、もちろんブルーグラスまで大変ヴァラエティにあふれる内容となっていて、フラット&スクラッグスの「フォギー・マウンテン・バンジョー」や、ビル・モンロウの「ブルーグラス・インストゥルメンタル」に匹敵するほどのブルーグラス・インストにおける歴史的名盤となっています。またこれらのアルバムでは、脇を固めるサポート・ミュージシャンも豪華な人選がなされていて、マイクの素晴らしいドブロ演奏が堪能できます。

2枚目のアルバム「ブルース・アンド・ブルーグラス」の中に、ビル・モンロウのおなじみのインストゥルメンタル・ナンバー「パンハンドル・カントリー」が収録されています。ヴァラエティ豊かな選曲のアルバムの中にあって、さすがにこの曲は正当なブルーグラス・アレンジがなされています。バンジョー、マンドリン、リズム・ギター、ベースはセルダム・シーンのメンバーがサポートし、オリジナル曲同様、ツイン・フィドルにヴァッサー・クレメンツとリッキー・スキャッグスが参加しています。この曲ではマンドリン、ジョン・ダフィーのスケール・ピッキングも充分に生かされています。
Mike Auldridge / Dobro & Blues And Bluegrass (Takoma)

そのセルダム・シーンのライヴ盤では、マイクのドブロを中心にメンバーそれぞれがセンスのいいソロを聴かせてくれます。ライヴ録音にも拘らずマイクのドブロの音の伸びが大変よく美しい音色で聴かれます。最後のパートはコーラスを歌った後に「1・2・3・ジャン!」とカッコいい終わり方をして一言、「どうだ、ニューグラス・リバイバルめ!」と笑わせてくれます。
Seldom Scene / Recorded Live At The Cellar Door (Rebel)

毎度おなじみアラン・マンデ節のバンジョーが聴けるのは、後期カントリー・ガゼットのライヴ演奏を集めたアルバムです。マンドリンもこれまたローランド・ホワイト節が全開です。
Country Gazette / Live On The Road (Disc Union) (CD化されていません)

この曲のオリジナルは、ケニー・ベイカー、ボビー・ヒックスという2大フィドラーを擁したブルー・グラス・ボーイズ、1958年4月8日の録音でした。モンロウが主催する「ブラウン・カウンティ・ジャンボリー」のオープニング・テーマ曲としても有名な曲です。
Bill Monroe / Bluegrass 1950-58 (Box) (Bear Family)

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by scoop8739 | 2005-05-11 21:56 | 不朽の名曲

93 アイ・ウイッシュ・ユー・ニュー

(I Wish You Knew)

ボリック・ブラザース、モンロー・ブラザース、デルモア・ブラザースなどの兄弟デュオをお手本にして、アイラとチャーリーのルーヴィン兄弟がデュオを組んだのは1930年代でした。50年代になるとカントリー音楽のサウンドに変化が起こりますが、この時期にルーヴィン兄弟の活躍が始まります。なんと10回ものオーディションに挑戦した結果、1955年にグランド・オール・オプリーの出場を果たすこととなります。

a0038167_19521299.jpg彼らの特徴は革新的なヴォーカル・ハーモニーで、それは弟チャーリーのテナーと兄アイラの女声ばりのハイ・テナーとによる美しいデュエット・コーラスが魅力的でした。また曲作りにも大いなる才能を発揮しました。彼らの活躍は1963年に解散するまで続きますが、その後のカントリー、ロックに多大な影響を及ぼしたことでも有名です。
The Louvin Brothers / Radio Favorites 1951-57 (Country Music Foundation)

ルーヴィン兄弟と頻繁に交流していたのがジム&ジェシーのマクレイノルズ兄弟でした。この二組のグループは、スタイルの上からも、レパートリーの上からも、相互に近似していたという事情もあったのでしょうが、ジム&ジェシーは何度もルーヴィン兄弟の卓越した作曲のおかげを受けてきました。この曲もある意味、ジム&ジェシーのために書かれたようなものでした。
Jim & Jesse, Bill Monroe / Bean Blossom (MCA)

この曲というとこのグループと言われるくらいに定着したのがカントリー・ガゼットでした。彼らのデビューアルバム「パーティの裏切り者」の3曲目にこの曲が収録されていますが、軽快なフィドルのイントロに続いて、これぞウェスト・コースト・ブルーグラスという爽やかなハーモニーで歌われます。リード・ボーカルをとっているのはハーブ・ペダーソンでした。
Country Gazette / A Traitor In Our Midst (BGO)

初代ジョン・スターリング、二代目フィル・ロゼンタルに続いて、中期以降のセルダム・シーンを支えたリード・ボーカリストがルー・リードでした。彼はリード・ギター以外にもフィドルやマンドリンをも巧くこなすマルチ・プレイヤーです。そんな彼と同時期にシーンで活躍していたベーシストのT.ミッチェル・コールマンと、ドブロのマイク・オウルドリッジが加わって、1989年に「ハイ・タイム」というアルバムをリリースしています。この曲もアルバムに収録されています。ドブロのイントロに続いてコーラスが始まります。他のアーティストのものと比べると、すこしゆったりとしたテンポの仕上がりになっています。
Auldridge Reid & Coleman / High Time (Sugar Hill)

カール・ジャクソンのプロデュースで、エミルーやジェイムズ・テイラー、アリソン・クラウスなどが参加したルーヴィン・ブラザーズへのトリビュート盤がリリースされています。タイトルは「生きること・愛すること・失うこと」とでも訳すのでしょうか、マーティン・スチュアートとデル・マッカリーのデュエット曲「レット・アス・トラベル,トラベル・オン」など小気味良い演奏などが聴かれるこのアルバムは、第46回グラミー賞で最優秀カントリー・アルバムを受賞しただけでなく、4曲目のジェイムズ・テイラーとアリソン・クラウスの共演曲は、「ベスト・カントリー・コラボレーション」にも選ばれています。もちろんここでも「アイ・ウイッシュ・ユー・ニュー」を、娘さんでしょうか(?)キャシー・ルーヴィンとパメラ・ブラウン・ヘイズのデュエットで聴くことができます。
Various Artists / Livin', Lovin', Losin'- Songs of the Louvin Brothers (Universal South)

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by scoop8739 | 2005-05-09 19:53 | 不朽の名曲

92 ダスティ・ミラー

(Dusty Miller)

惜しくも65歳で亡くなったジョン・ハートフォードの残した功績は、ビートルズの「イエスタデイ」に次ぐ録音回数を誇る世界的ヒット曲「ジェントル・オン・マイ・マインド」を書いたことや、1968年に西海岸でザ・バーズのアルバム「ロデオの恋人」(Sweetheart of the Rodeo)の録音現場に居合わせてカントリー・ロックの誕生にかかわったこと、さらに1970年代以降のニューグラス・ムーブメントの精神的支柱となったことや、1980年代以降のオールドタイム・フィドルの研究と保存と、その教育に力を注いだことなどです。

a0038167_20181553.jpgその彼が1960年代後半、RCAレコードに残したすべてのアルバムがCD化されています。シリーズ3枚目の最後のCDは、LP3枚分を収めた2枚組となっています。RCA時代も後期になると、ジョンの才能の凄さとレコード会社の商業主義との間に大きな溝ができますが、ジョンはバンジョーへの愛着と自身の詩の世界を押し通しました。しかしRCAの旧態然とした首脳部は、ジョンの計り知れない才能を知りながらも、それをヒッピー社会のビジネスに生かせず、遂には希有の芸術家を手放すことになったのでした。

さてここで特筆すべきは、7枚目のオリジナル・アルバムとして制作されながら、今日まで陽の目を見ることのなかった幻のアルバム「ラジオ・ジョン」(Radio John)が初めて世に出たという快挙です。つまりこれは、RCAの3枚シリーズでは最もハートフォードらしい作品集だったのです。この中に収録されている「ダスティ・ミラー」(Dusty Miller)は、録音タイトルが「Dusty Miller Hornpipe And Fugue In A Major For Strings, Brass And 5-String Banjo」とあるように、モデラートなフーガ仕立てとなっています。
JOHN HARTFORD / John Hartford/Iron Mountain Depot/Radio John (BMG)

若き日のサム・ブッシュが、これまた若いアラン・マンデやウェイン・スチュアートらと一緒の作ったのが名盤「プア・リチャーズ・アルマナック」でした。ここでのサムはただただフィドルに専念し、みごとなインストゥルメンタル・アルバムを完成させています。この曲でのサムは、地味ながらもきっちりと聴かせてくれます。
Sam Bush, Alan Munde, Wayne Stewart / Poor Richard’s Almanac (Ridge Runner) (CD化されていません)

アラン・マンデは「プア・リチャーズ」の録音の後、ジミー・マーチンのバンドに加わります。そこでジミーの指導の下、右指の強いアタックを習得し、独自のバンジョー・テクニックを身につけました。その後はカントリー・ガゼットに加わりますが、その昔メンバーだったストーン・マウンテン・ボーイズのリユニオン・アルバムにも参加しています。ここでの「ダスティ・ミラー」は、「プア・リチャーズ」の頃から比べると数段パワーある演奏をしています。
Stone Mountain Boys / Reunion (Ridge Runner) (これまたCD化されていません)

アリソン・クラウスは1987年にラウンダー・レコードからアルバム「トゥー・レイト・トゥ・クライ」でデビューします。そのときの彼女はなんと15才でした。この中にも「ダスティ・ミラー」が収録されています。アリソンの華麗に透き通った声と、力強いフィドル・プレイを堪能できるアルバムとなっています。
Alison Krauss & Union Station / Too Late To Cry (Rounder)

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by scoop8739 | 2005-05-06 20:19 | 不朽の名曲

91 ラフ・アンド・ロッキー

(Don’t This Road Look Rough And Rocky)

「世界の中心でブルーグラス・ジャズを叫ぶ」とでもいうのでしょうか、世界の中心都市ニューヨークで生まれた異色のグループが「ウェイファリング・ストレンジャーズ」です。音楽ディレクターでもあるヴァイオリン奏者のマット・グレイサーを中心に、ブルーグラス・サイドからはバンジョー奏者のトニー・トリシュカとギター奏者のジョン・ミゲーン、ジャズ・サイドからはピアニストのラズロ・ガードニー、ドラムのジェイムズ・ハダッド、ベースのジム・ ホイットニー、そして3人の女性ボーカルを加えた大所帯で、ブルーグラスのスタンダード作品を素晴しいアレンジで見事なまでにジャズと融合させています。

a0038167_2014177.jpg彼らのデビュー・アルバムではラルフ・スタンレーやティム・オブライエン、ローリー・ルイスやロンダ・ビンセントといった大物アーティストをゲストに迎え、21世紀型新感覚のアメリカン・ミュージックを披露してくれました。続く第2弾ではアンディ・スタットマンやダロル・アンガー、ジェイ・アンガーとモリー・メイソン、オールドタイムからのブルース・モルスキーなどを適材適所に配し、前作より濃い目のブルース臭が漂うバンド音楽に仕上げています。

このアルバムの6曲目にフラット&スクラッグスの名曲「ラフ・アンド・ロッキー」が収録されています。重厚なベースのイントロに続いておなじみのメロディーがゆっくりとしたテンポで歌われます。間奏に入るとヴァイオリンとバンジョー、さらにギターが続き、セカンド・ブレイクでピアノがジャズの旋律を奏でるのです。それは決して違和感がなく、なんとも言葉では表すことの出来ない不思議な魅力に満ちあふれています。
The Wayfaring Strangers / This Train (Rounder)

ジョナサン・エドワーズは出世作「サンシャイン」(72年)でスターダムに昇り上がり、ジェームス・テイラー、ニール・ヤング、ドン・マクリーンらとともにシンガーソング・ライター時代の一角を担った歌手です。彼の歌にはシンプルで透明感にあふれ、澄み渡ったような鋭い感性が感じられます。そんなジョナサンをバックアップしてアルバム「ブルー・リッジ」を完成させたのがセルダム・シーンの面々でした。このアルバムの1曲目にこの曲が収録されています。ここではフォーク・サイドへのアプローチが楽しめます。
Jonathan Edwards & Seldom Scene / Blue Ridge (Sugar Hill)

1981年に発表した「ブルーグラス・アルバム」が大好評で、そのアルバム・プロモーションを兼ねての各地のフェスティバルではひっぱりだこの人気となったトニー・ライスを始めとするアルバム・バンドでしたが、第2弾はやはり前作に引き続いてアーリー・フラット&スクラッグス・ナンバーが中心となっています。つまり、トニー流のフォギー・マウンテン・ボーイズを大いに気取ったブルーグラス“激愛”アルバムとなっているのです。ここでもこの曲が収録されています。
Tony Rice / The Bluegrass Album Vol.2 (Rounder)

この曲はもちろんフラット&スクラッグスのオリジナルで、1954年5月14日に初めて録音されていますが、この頃になりますと彼らはビル・モンロウの呪縛から解かれたかのように伸び伸びと演奏をしています。ここではカーリー・セクラーのテナーが心地よく耳に飛び込んできます。
Flatt & Scruggs / Songs of Flatt & Scruggs (Rounder)

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by scoop8739 | 2005-05-04 20:04 | 不朽の名曲