カテゴリ:カントリー・ガゼット( 3 )

57 カントリー・ガゼット考(その3)

さて、話を最初に戻すことにします。
どういういきさつだったのかは判りませんが、今から20年前の1985年5月に「リユニオン・バンド」として来日したガゼットは、1本のライヴ・ビデオを残してメンバーは再びそれぞれの道を歩み始めます。

a0038167_20462135.jpgそのビデオを観ると、さすがに往年のテクニックは衰えているものの、これぞガゼットという見事なまでのアンサンブルで最後までボクを飽きさせないまま約100分間のステージを進行させていきます。構成は3部になっていて、1stステージと2ndステージがそれぞれ12曲ずつの24曲に、アンコールとして4曲の合計28曲が収録されています。

COUNTRY GAZETTE: Live in Japan
(MAPS Video-004)
Produced by Takashi Fujii for MAPS Inc.
with Alan Munde, Roland White, Byron Berline & Roger Bush.
1st STAGE;
1. Durham's Reel
2. Never Ending Love
3. Lonesome Road
4. Sunny Side Of The Mountain
5. Snow Ball
6. Honky Cat
7. Forked Deer
8. Little Darlin' Pal Of Mine
9. Don't Let Your Deal Go Down
10. Hot Burrito Breakdown
11. To Prove My Love To You
12. Sally Goodin
2nd STAGE;
13. Huckleberry Hornpipe
14. Down The Road
15. I Wish You Knew
16. New River Train
17. Wheel Hoss
18. Medley : Keep On Pushin'/Tried So Hard/Swin Low, Sweet Chariot
19. Dusty Miller
20. Boil Them Cabbage Down
21. If You're Ever Gonna Love Me
22. Aggravation
23. Uncle Pen
24. Medley : Will You Be Lonesome Too/Roll In My Sweet Baby's Arms/Foggy Mountain Breakdown
ENCORE STAGE;
25. I Know What It Means To Be Lonesome
26. Dear Old Dixie
27. Hard Hearted
28. Orange Blossom Special

全28曲のすべてがガゼットのオリジナル曲とブルーグラス・スタンダード曲で構成されていて、取り立てて目新しいものがあるわけではないのですが、逆にそれが観る者に安心感を与え、懐かしさと気楽な気分で約100分間のステージに付き合えたのでしょう。ただボクにもっと英語を理解する力があれば、ロジャーのおしゃべりを楽しめたはずなのですが…。

ここでボクが感じたことを述べると、日本のファンはガゼットのオリジナルをアラン・マンデ、ローランド・ホワイト、ロジャー・ブッシュに加えて、バイロン・バーラインとしていることです。つまり中期から後期(1985年当時)の中心メンバーに、初期のリーダーだったバイロンを加えた4人がオリジナルだと認識していて、招聘元もこれを認めた上で彼らをチョイスして「リユニオン・バンド」を組んだのだろうと思います。

でもガゼットのオリジナルというと、何度も書きますが、ケニー・ワーツを除いては考えられません。そう、何度も何度も書かせていただきますが、ガゼットといえば、ウエスト・コースト特有のファンタスティックで抜けるようなヴォーカル、ハーモニーがトレード・マークであり、デビュー・アルバム「パーティの裏切り者」で受けた衝撃こそ、それまでのブルーグラス・グループにはなかった斬新な発想と表現方法だったのです。そのハーモニー作りの中心人物が他ならぬケニー・ワーツでした。

しかし放浪癖(と言われている?)のケニーにコンタクトを捕ることが困難だったのか、金銭だけでは招聘できなかったのか、そのいきさつは判りませんが、結果上記の4名が「リユニオン・バンド」として来日しました。ケニーが駄目ならばということでは「ハーブ・ペダーセン」という線も考えられたはずです。彼はアルバム・デビュー以前のガゼットのメンバーであり、声質も明るく爽やかでガゼットのリード・ヴォーカルには誰よりも相応しい存在ですし、彼らの1作目、2作目でも素晴らしいヴォーカルとハーモニーを聴かせてくれています。

それでもガゼットにローランド・ホワイトを加えたいという、かつての日本のブルーグラス・ファンは、ガゼットに「ケンタッキー・カーネルズ」の面影を求めていたとしか考えられないのですが、いかがなものでしょうか?
(次回につづく)

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by scoop8739 | 2005-03-03 20:48 | カントリー・ガゼット

56 カントリー・ガゼット考(その2)

ところがガゼットは本来、楽器のテクニックもさることながら、バーズ、フライング・ブリトゥズ、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングに代表されるウエスト・コースト特有のファンタスティックで抜けるようなヴォーカル、ハーモニーがトレード・マークであり、そうしたハーモニー作りの中心人物が他ならぬケニー・ワーツだったのです。いかにケニーが重要な位置を占めていたかは、前述の「ガゼット・ライヴ」を一聴すれば明らかでしょう。

たしかにローランドの加入は、ケニーに不足していたブルーグラスらしいスピリッツと極上の演奏テクニックを提供し、バンドにずっしりとした手応えのあるブルーグラス・サウンドをもたらしました。また、ヴォーカル、ハーモニーもガゼット特有の雰囲気を損なうことなく気を使ってはいたものの、デビュー1作目、2作目で感じた新鮮な衝撃とはどこか様子が違っていました。

つまり、ローランドのヴォーカル自体、深みと誠実さを併せ持ち、人柄の良さを彷彿させ、ケニーを遥かに凌ぐミュージシャンであることに疑いの余地はないのですが、ローランドに終生ついてまわるであろういにしえの「ケンタッキー・カーネルズ」での個性は、ことウエスト・コーストのカントリー、フォーク・ロックへクロス・オーヴァーしたブルーグラス・バンド「カントリー・ガゼット」の個性とは明らかに「異質」だったのです。その結果、バンドは「ローランド・ホワイト&カントリー・ガゼット」という、「ケンタッキー・カーネルズ」風バンドへと変貌してしまったのでした。このことを強く感じていたバンド・リーダーのバイロン・バーラインは自らバンドを去ることとなります。

そうしたガゼットに1976年、突然ケニー・ワーツが帰ってきます。それまでどこで何をやっていたのかは明らかにされていませんが、ウエスト・コーストのガゼット・ファンにとっては、デビュー1作目、2作目で聴かれたオリジナル・ガゼットのハーモニーがまた聴けるというのを心待ちにしていたのだと思います。

a0038167_21164841.jpgケニーの復帰によって録音されたのが、フライング・フィッシュからリリースされた「アウト・トゥ・ランチ」(Out To Lunch)というアルバムです(これまた残念ながらCD化されていません)。このアルバムではバイロン・バーラインに替わって彼そっくりにフィドルを弾くデイヴ・ファーガソンと、おなじみアル・パーキンスがゲストでドブロを弾いています。これによりガゼット本来の完璧なサウンドに、ケニーのヴォーカル、ハーモニーが戻って来て、さながら初期のガゼットを思わせる演奏を聴かせてくれます。ローランドもヴォーカルの負担が軽くなったのか、前作よりも気楽に歌っているようにも思えます。

COUNTRY GAZETTE: OUT TO LUNCH
(Flying Fish 027 & Transatlantic TRA 318)
Produced by Jim Dickson
with Alan Munde, Roland White, Roger Bush, Kenny Wertz & Dave Ferguson / guest;Al Perkins
Side A
1. Still Feeling Blue
2. Sure Didn't Take Him Long
3. Out To Lunch
4. Melody For Baby
5. Sing A Sad Song
6. Sunny Side Of The Mountain
Side B
1. Down Down Down
2. Why You Been Gone So Long
3. Forked Deer
4. Time Left To Wander
5. Last Thing On My Mind
6. Uncle Clooney Played The Banjo
7. Blue Light
(次回につづく)

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by scoop8739 | 2005-03-02 21:18 | カントリー・ガゼット

55 カントリー・ガゼット考(その1)

カントリー・ガゼットに1985年のライヴ・ビデオというものがあります。このライヴはガゼットのリユニオン・バンドとして日本で行われたものだそうですが、1980年代になるとボクの中のブルーグラス熱が急激に萎んでいて、1970年代に経験したような興奮状態になかったせいか、あまりライヴを観に出かけていません。それで1985年にこんなメンバーで来日したことすら知りませんでした。

バンジョーにアラン・マンデ、ギターはローランド・ホワイト。1985年頃はガゼットもまだまだ健在で、マンドリンにジョー・カー(Joe Carr)、エレキ・ベースにビリー・ジョー・フォスター(Billy Joe Foster)らが在籍していたと思います。しかしこのリユニオン・バンドは、ベースにロジャー・ブッシュ、フィドルとマンドリンにバイロン・バーラインという初期ガゼットに近い構成ではありませんか。それでもボクとしては、デビュー当時のアルバム「パーティの裏切り者」(A Traitor In Our Midst)で受けた衝撃を思い起こすと、やはりここはローランド・ホワイトでなく、ケニー・ワーツで演ってもらいたかったというのが本音です。

ガゼットは1973年8月のケニー・ワーツの退団を機に、以前から交際の深かったローランド・ホワイトをメンバーに迎えます。彼の加入によってガゼットはそれまでよりトラディッショナルな曲を好んで取り上げるようになりました。コーラス・パターンも、ローランドのブルーグラスのツボを得たハーモニーを活かすことで、従来からのガゼットの雰囲気をも失わずに、よりハードなブルーグラス・バンドとして飛躍を図ったのです。もちろんローランドのギター・プレイヤーとしての腕前は、以前にビル・モンローの下で腕を磨いただけあってビートの強いリズム・ギターには定評がありましたが、次第に素晴らしいリード・ギターをも聴かせるようになったのです。

a0038167_20264679.jpgこうしたローランドのヴォーカルと楽器の両面でのテクニシャンぶりがバンドにメリットを与え、音楽的な可能性を押し上げました。そして翌年9月にカリフォリニアはサンタモニカにある「マッケイブス・ギター・ショップ」においてライヴ・レコーディングを行います。この模様は「ガゼット・ライヴ」(Live at McCaves)で聴くことができます(残念ながらCD未発表です)。

COUNTRY GAZETTE: Live
(Transatlantic TRA 291, Ariola 88 556 IT, Trio 3095 & Antilles 7014)
Produced by Jim Dickson
with Byron Berline, Alan Munde, Roger Bush & Roland White
guest Skip Conover
Side A
1. Black Mountain Rag
2. Roses For A Sunday Morning
3. Blue Blue Day
4. To Prove My Love To You
5. Lonesome Road
6. Will You Be Lonesome Too
7. Only Way Home
Side B
1. Sally Goodin
2. My Baby's Gone
3. Sunday Sunrise
4. Laughing Guitar
5. Never Ending Love
6. Holland Holiday
7. Down In The Blue Grass
(次回につづく)

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by scoop8739 | 2005-03-01 20:29 | カントリー・ガゼット