カテゴリ:名盤紹介( 2 )

54 極上スープと特選素材と料理人の腕

美味しい「とんこつラーメン」の条件は、極上スープと特選素材に名料理人の腕が加わることが必要です。一方、いい「ブルーグラス音楽」の条件は、プレイヤーの音楽センスと演奏テクニック、それに加えてプロデューサーの腕がものをいいます。ここに「とんこつラーメン」でいう「極上スープと特選素材と名料理人の腕」が備わった最高の「ブルーグラス音楽」があります。

a0038167_195315.jpgまず名料理人から紹介しましょう。その人はブルーグラス史上最高の料理人、デヴィッド・グリスマン。1970年代半ばからプロデュースの手腕を発揮し始め、70年代後半から80年代にかけて次々と名盤を発表します。1982年に発表した「Here Today」は、バンジョーとテナー・ボーカルにハーブ・ペダーセン、フィドルにジム・ブキャナン、ギターとリード・ボーカルにビンス・ギル、ベースにエモリー・ゴーディJr.を起用し、自らマンドリンとバリトン・ボーカルで参加し、久々にワクワクする「ブルーグラス音楽」を作り上げてくれました。

a0038167_10393394.jpgそして1988年、デヴィッド・グリスマンはその時点での「極上スープと特選素材」を準備し、名料理人としての腕を披露したのでした。アルバムのタイトルは「心の故郷」(Home Is Where The Heart Is)。アルバムの全曲に亘って聴ける彼のマンドリン・ワークは、ツボを得た小気味のよい、まるで丁寧に煮出された極上のとんこつスープのように一音一音がセンスに溢れています。

グリスマンのこのアルバムでの調理方法は、従来のセッション・アルバムと違って、1曲ごとにセッション・メンバーを替えて品数豊かなメニューを披露します。ビル・モンロー・ソングではデル・マッカリーをリード・ボーカルに据えてハイロンサム・サウンドをたっぷりと味わわせてくれます。さらに旧知の仲のレッド・アレンとも息のあった素晴らしいパフォーマンスを繰り広げています。またトニー・ライス、リッキー・スキャッグス、サム・ブッシュ、マーク・オコーナーといった当代一の特選素材をずらりと揃えて、ここでも名料理人の包丁さばきに冴えを見せます。

総勢22名という特選素材を、手を替え品を替え、まるで「横浜ラーメン博物館」のような「一大トラディショナル・ブルーグラス大会」に仕上げていますが、決してそこらの田舎ラーメンにはなっておらず、全体的にまろやかでしなやかでセンスの良い、今風「とんこつラーメン」を作り上げてくれました。どうぞご賞味下さい。

Home Is Where The Heart Is / David Grisman (Rounder)
Disc 1
1. True Life Blues
2. Down in the Willow Garden
3. My Long Journey Home
4. Little Willie
5. Highway of Sorrow
6. Sophronie
7. My Aching Heart
8. Close By
9. Feast Here Tonight
10. Leavin' Home
11. Little Cabin Home on the Hill
12. I'm Coming Back (But I Don't Know When)
Disc2
1. Salty Dog Blues
2. If I Lose
3. Sad and Lonesome Day
4. My Little Georgia Rose
5. Foggy Mountain Top
6. I'm My Own Grandpaw
7. Pretty Polly
8. Home Is Where the Heart Is
9. Nine Pound Hammer
10. Memories of Mother and Dad
11. Teardrops in My Eyes
12. House of Gold
(次回につづく)

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by scoop8739 | 2005-02-10 01:12 | 名盤紹介

49 クリスマス・アルバムの傑作

ロック、ポップスの分野で活躍するアーティストが、自分の音楽特性や主張を全面に押し出したアルバムを作り始めたのはビートルズが活躍する60年代後半からです。それ以前はレコード会社が主導権を握り、たとえ人気アーティストでも例外なくアルバム作りに関してはコマーシャル性がすべてに優先され、レギュラー、ベスト、ライヴ、それにクリスマスがその主な内訳になっていました。言い替えるなら50〜60年代におけるアルバムのこの制作パターンは人気スターの証明でもあった訳です。

現代ではアーティストの個性や主張がなんの制約、障害もなくアルバムに反映され、レギュラー作品主体で内容もバラエティ豊かです。このためベスト盤やクリスマス盤などの企画、編集作品が50〜60年代のようにファンに新鮮な響きを与えなくなりました。また時代とともにファンの音楽を聴くスタイルも変化したため、季節にあった音楽を楽しむという傾向もなくなりました。

この影響をモロに受けたのがクリスマス・レコードです。年に一度とは言っても50〜60年代はまだクリスマス・レコードが全盛で、毎年その季節になると新旧さまざまなアーティストの作品が発表され人気を集めていました。しかし、70年以降はクリスマスだからあえて、という傾向は、アーティスト、ファンともに薄れ、ハンで押したようなレコード制作は影をひそめてしまいました。とは言えクリスマス作品がなくなった訳ではありません。アルバムに変わってシングルだけのオリジナル・クリスマス作品が発表されています。

近年はクリスマス・ソングがヒット・チャートに登場することは珍しく、大きなレコード・セールスを残したケースもあまり見当たりません。ビング・クロスビーの歌った「ホワイト・クリスマス」が恒例のようにヒットしていた頃と現代では、時代や流行のスピード、そしてファンの音楽に対する姿勢や好みも大きく異なっています。しかしながら、こうした傾向はあるにせよ昔ながらのオーソドックスなクリスマス・ソングがすたれるわけではありません。従って現在のクリスマス・ソングは人気やヒットに関係なく、各人の好みにあった自由な選択、楽しみ方が一番だと思われます。

a0038167_14135565.jpgさて話をブルーグラスの世界に移しますと、敬虔なクリスチャンの多い南部アメリカにおいて、クリスマスは特別の日のひとつとして感謝祭と同じように盛大にお祝いされます。もちろんクリスマス・ソングを聴いたり、歌ったりというのは当然のことです。そういった意味ではグルーグラス音楽によるクリスマス・アルバムはよく聴かれるアイテムでもあるわけです。そんな中、遅ればせではありますが、業界の慣習通りレベル・レコードが1980年代はじめに「CHRISTMAS TIME BACK HOME」というLPをリリースします(現在CD化されています)。これはレベル・レコードお得意の手法ながら、さまざまなローカル・グループのシングル盤を編集したもので、カントリー・ジェントルメンを始め、ビル・クリフトン、ラリー・スパークスらが歌うクリスマス・ソングが収められています。

また、単独のものとしてはデヴィッド・グリスマン・クィンテットによるインスト集「David Grisman's Acoustic Christmas」(ROUNDER)、ラリー・スパークスの「Christmas in the hills」(REBEL)、ラルフ・スタンレーの「Christmas time with Ralph Stanley」(FREELAND)などのアルバムがリリースされています。

わが国でもシュガー・ヒル・レコードのアーティストで構成された「クリスマス・ララバイ」(キング)というアルバムがリリースされています。これには珍しいセルダム・シーンのクリスマス・ソング「きよしこの夜」も収録されていてファン必聴のアルバムとなっています(残念ながら廃盤となってしまいました)。また2000年代になるといろいろ面白い編集盤がリリースされます。リッキー・スキャッグス・バンドのメンバーを中心にしたクリスマス・インスト集「CHRISTMAS GRASS」(AUDIUM)や、デル・マッカリー・バンドを中心にドック・ワトソン、マック・ワイズマン、ティム・オブライエン、オズボーン・ブラザーズという豪華メンバーが集った「CHRISTMAS ON THE MOUNTAIN」(UNIVERSAL)といったものがそうです。

ところで、またまた新しく傑作アルバムがリリースされましたのでご紹介いたします。このアルバムは新旧のアーティストが歌うクリスマス・ソングをレーベルの垣根を越えて編集されています。

Essential Bluegrass Christmas Collection:
a0038167_14142747.jpg Christmas Time's a Comin' (Time Life)
1. Christmas Time's A-Comin'
/ Bill Monroe
2. Christmas Is Near
/ The Stanley Brothers
3. Christmas Time Back Home
/ The Country Gentlemen
4. Bluegrass Christmas
/ Del McCoury Brothers
5. Beautiful Star Of Bethlehem
/ Emmylou Harris
6. Old-Fashioned Christmas
/ Jimmy Martin & The Sunny Mountain Boys
7. It's Christmas Time
/ Larry Sparks
8. Rudolph, The Red-Nosed Reindeer
/ Lynn Morris
9. Merry Christmas From Our House To Yours
/ Doyle Lawson & Quicksilver
10. That's Christmas Time To Me
/ Bill Monroe & His Blue Grass Boys
11. I'm Goin Home, It's Christmas Time
/ Ralph Stanley
12. Call Collect On Christmas
/ Del McCoury
13. Jingle Bells
/ Reno & Smiley
14. I Feel The Christmas Spirit
/ The Isaacs
15. The Friendly Beast
/ The Johnson Mountain Boys
16. Away In A Manger
/ Larry Stephenson
17. White Christmas
/ Larry Sparks
18. The First Noel/It Came Upon A Midnight Clear/Joy To The World
/ Doyle Lawson & Quicksilver

さぁいかがでしょうか? この顔ぶれ、このクリスマス・ソングの数々、そんな訳でこのアルバムが悪かろうはずありません。もうすぐシーズンが到来します。あなたも聖夜をブルーグラス音楽でお楽しみ下さい。
(次回につづく)

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by scoop8739 | 2004-10-09 14:14 | 名盤紹介