カテゴリ:ブルーグラスの歴史( 39 )

51 ブルーグラスの80年って? (その2)

a0038167_16193522.jpg1950年代はブルーグラス音楽にとって黄金期といってもいいでしょう。まずビル・モンローに魅せられてデビューしたのが、ヴァージニア州出身のスタンレー・ブラザーズでした。逆に、レスター・フラットとアール・スクラッグスは、ビルのバンドを離れてマーキュリーから新しいバンドでスタートします。彼らはフォギー・マウンテン・ボーイズと名乗り数々の名曲を世に送り出しました。

ダイナマイト・サウンドのバンジョー奏者ダン・リーノウは、友人のレッド・スマイリー(ギター)を誘ってテネシー・カッタップスを結成し、キング、ドット・レーベルで大活躍をします。

カントリーの老舗レーベル、RCAビクターもこのブルーグラスの波を無視することができず、ロンサム・パイン・フィドラーズというバンドの売り出しにかかります。また系列のデッカでもジミー・マーチン&サニー・マウンテン・ボーイズが活躍しました。

ジム&ジェシーはカントリー伝統の兄弟デュエットを継承しながら、個性豊かなブルーグラス・バンドを結成します。ビル・モンローの荒々しいマンドリンに比べてジェシー・マクレイノルズのそれは優雅そのものでした。彼らはキャピトルにたくさんの曲を録音しています。

50年代の終わりにデビューしたのがオズボーン・ブラザーズでした。兄ボブのテナーの下にコーラスをつけるという新しい手法で人気を獲得しました。また、ブルーグラス・ゴスペルというジャンルを築いたのがカール・ストーリーです。彼らはハーモニー・コーラスの極みを聴かせてくれました。

この4枚組CD-BOXの2.3枚目には黄金期を支えたブルーグラス・スターたちの(今やスタンダードとなっている)名曲が数多く収録されています。

DISC 2:
1. Can't You Hear Me Callin' / Bill Monroe & His Blue Grass Boys
2. Foggy Mountain Breakdwon / Lester Flatt, Earl Scruggs & The Foggy Mountain Boys
3. Poor Ellen Smith / Molly O'Day & The Cumberland Mountain Folks
4. The Drunkard's Hell/ The Stanley Brothers & The Clinch Mountain Boys
5. The Lonesome River / The Stanley Brothers & The Clinch Mountain Boys
6. On The Banks Of The River / Wilma Lee & Stoney Cooper
7. The Fields Have Turned Brown / The Stanley Brothers & The Clinch Mountain Boys
8. The White Dove / The Stanley Brothers & The Clinch Mountain Boys
9. Sunny Side Of The Mountain / Wilma Lee
10. I'm A Man Of Constant Sorrow / The Stanley Brothers & The Clinch Mountain Boys
11. I Wonder How The Old Folks Are At Home / Mac Wiseman
12. Uncle Pen / Bill Monroe & His Blue Grass Boys
13. Stoney, Are You Mad At Your Gal / Wilma Lee & Stoney Cooper, Their Clinch Mountain Clan
14. When The Angels Rolled The Stone Away / Lynn Davis
15. Earl's Breakdown / Lester Flatt, Earl Scruggs & The Foggy Mountain Boys
16. Don't Get Above Your Raising / Lester Flatt, Earl Scruggs & The Foggy Mountain Boys
17. Are You Missing Me? / Jim & Jesse, The Virginia Boys
18. Why Did You Wander? / Lester Flatt, Earl Scruggs & The Foggy Mountain Boys
19. Flint Hill Special / Lester Flatt, Earl Scruggs & The Foggy Mountain Boys
20. I'll Go Stepping Too / Lester Flatt, Earl Scruggs & The Foggy Mountain Boys
21. Love And Wealth / Carl Story & His Rambling Mountaineers
22. 20/20 Vision / Jimmy Martin & The Osborne Brothers
23. My Lord Keeps A Record / Carl Story & His Rambling Mountaineers
24. I Love The Hymns They Sang At Mother's Grave / Carl Story & His Rambling Mountaineers
25. Reunion In Heaven / Carl Story & His Rambling Mountaineers
26. Don't You Hear Jerusalem Mourn / Carl Story & His Rambling Mountaineers
27. Hitch Hiker's Blues / Jack Youngblood

DISC 3:
1. The Martha White Theme / Lester Flatt, Earl Scruggs & The Foggy Mountain Boys
2. Don't Let Your Deal Go Down / Lester Flatt, Earl Scruggs & The Foggy Mountain Boys
3. Seven Year Blues / The Webster Brothers
4. Get Down On Your Knees And Pray / Bill & Mary Reid,The Melody Mountaineers
5. Somebody Touched Me / Carl Butler & The Webster Brothers
6. Feudin' Banjos / Arthur Smith & Don Remo
7. Ruby Are You Mad / The Osborne Brothers & Red Allen
8. Knoxville Girl / The Louvin Brothers
9. Once More / The Osborne Brothers & Red Allen
10. Twin Banjo Special / Joe Maphis
11. Gosh, I Miss You All The Time / Jim & Jesse & The Virginia Boys
12. You Don't Know My Mind / Jimmy Martin & The Sunny Mountain Boys
13. Rank Stranger / The Stanley Brothers
14. My Empty Arms / Jim & Jesse & The Virginia Boys
15. Foggy Mountain Top / Lester Flatt, Earl Scruggs & The Foggy Mountain Boys & Mother Maybelle Carter
16. Beautiful Moon Of Kentucky / Jim & Jesse & The Virginia Boys
17. Stoney Creek / Jim & Jesse & The Virginia Boys
18. She Left Me Standing On The Mountain / Jim & Jesse & The Virginia Boys
19. Sunny Side Of The Mountain / Jimmy Martin & The Sunny Mountain Boys
20. Just Joshing / Arthur Smith
21. To The Top OF The World, (It's A Long, Long Way) / Jim & Jesse & The Virginia Boys
22. Cotton Mill Man / Jim & Jesse & The Virginia Boys
23. Since Wedding Bells Have Rung / Don Reno
24. Rosalee / Granpa Jones
25. No More Goodbyes / Sara Carter & Maybelle Carter
26. The Ballad Of Jed Clampett / Lester Flatt, Earl Scruggs & The Foggy Mountain Boys
27. Rabbit In The Log / Jim & Jesse & The Virginia Boys
28. Rocky Top / The Osborne Brothers
29. Mountain Dew / Grandpa Jones
30. Dueling Banjos / Eric Weissberg/Steve Mandell

60年代はフォーク・リバイバルの波に乗って、ワシントンD.C.から続々と新しいグループが現れます。その中でも代表がモダン・ブルーグラスを得意としたカントリー・ジェントルメンでした。彼らはジャズやポピュラーをアレンジして新しいサウンドを作り出したのです。さらに都会育ちの若者が彼らに続いて現れます。

ボストンからはビル・キースとジム・ルーニー、ニューヨークからはグリーンブライア・ボーイズ、チャールズ・リバー・バレー・ボーイズなどが生まれました。また西海岸から現れたケンタッキー・カーネルズのクラレンス・ホワイトは、その革新的なリード・ギターでブルーグラスの歴史を塗り替えます。(残念ながらレーベルの関係でこの4枚組CD-BOXにはこれらのグループは収録されていません)(次回につづく)

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by scoop8739 | 2005-01-04 16:22 | ブルーグラスの歴史

50 ブルーグラスの80年って? (その1)

a0038167_13295156.jpgこんな4枚組CD-BOXが発売されています。
題して「CAN'T YOU HEAR ME CALLIN' 〜 BLUEGRASS : 80 YEARS OF AMERICAN MUSIC」。「ブルーグラス音楽って、もう80年にもなるのか?」と首を傾げたくもなりますが、よくよくタイトルを読むと、「ブルーグラス:アメリカ音楽の80年」となっているではありませんか。つまり、ビル・モンローが「ブルーグラス音楽」という形式を完成させる以前の、初期のヒルビリー音楽やストリング・バンドからのものを含めて80年だというのです。

たしかにブルーグラス音楽は、もともと1920〜30年代に大流行したストリング・バンドの伝統から生まれたものとされています。マウンテン、ヒルビリー系のミュージシャンたちは1920年代半ば頃からレコードに吹き込み始めます。これは商業レコードが急速に広まり始めた頃のことで、南部の民謡や民族音楽を求めて、それを商売にしようとするレコード業者が頻繁に彼らの演奏をレコード化して売り始めたのが始まりでした。

レコード業者は南部山間地に入り込んで、才能ある歌い手、弾き手をスカウトし、レコードに吹き込んでいきました。とくにオウケー、コロムビア、ボッカリオンの3社はヒルビリー音楽を専門とし、これに大会社のビクターも追随し、続々とスターを生み出していったのです。

この4枚組CD-BOXの1枚目には、そんなヒルビリー系の歌手、グループの代表選手が収められています。フィドルのギド・ターナーと彼のスキレット・リッカーズはヒルビリー音楽にジャズやポピュラー音楽を結びつける試みをしています。これに少し遅れて現れたのがチャーリー・プールとノース・キャロライナ・ランブラーズでした。チャーリーのバンジョー奏法は独特のもので、バンドのアンサンブルはやや複雑なものとなり、その後のストリング・バンドの手本となりました。

初期ヒルビリーを代表する歌手は何といってもジミー・ロジャースです。彼は早くもヒルビリーと各種音楽との融合を試み大成功を収めました。それはブルース、ハワイアン、ジャズ、ジャグ・バンドなどの要素を程よくブレンドして、ヒルビリーの魅力を全米のファンにアピールしたのです(残念ながらこのCDには収録されていません)。

グループとして成功を収めたのが、カーター・ファミリーでした。南部の田園風景をイメージさせる曲や、ゴスペル・ソングに手腕を発揮して人気者となりました。両者ともアマチュアからプロになっての活躍でしたが、そうした機会を与えたのがラルフ・ピアという人物で、彼はテネシー州ブリストルで大規模なタレント・オーディションを行い、次々とプロとして成功可能なミュージシャンを発掘していったといわれています。1930年代になるとロイ・エイカフが現れます。彼はスモーキー・マウンテン・ボーイズを率いて、グランド・オール・オープリーで歌手としての存在を強く打ち出すきっかけとなりました。

そして忘れてはならないのが、モンロー・ブラザーズの存在です。ビル・モンローは1936〜38年の3年間、兄チャーリーとともにバンドを組んで活躍します。彼らはアパラチア南部の伝承的なスタイルで、チャーリーがギター、ビルはマンドリンを弾きながら歌っていました。この頃からビルはマンドリンに優れた才能を見せており、非常に早いテンポの演奏をします。彼はジャズに傾倒しているウェスタン・スィングの影響を受けながらブルーグラスの音楽形態を考えたといわれています。

その後ビル・モンローは兄の元を離れブルー・グラス・ボーイズを結成。このバンドをバックにグランド・オール・オープリーにデビューを果たします。この時歌ったのがジミー・ロジャースのヒット曲「ミュール・スキナー・ブルース(ブルー・ヨーデルNo.8)」でした。不思議なことに、この曲でビルはギターを弾いて歌っています。

今日のブルーグラスの楽器編成に近づいたのは彼らがコロムビアで録音を始めた頃です。しかし1946年の録音にはまだアコーディオンが使われています。さていよいよレスター・フラット、アール・スクラッグス、チャビー・ワイズら加入してからの録音は1946年9月16日に行われます。このアップテンポの革新的なストリング・バンド音楽こそ、ブルーグラス音楽の歴史的な誕生だったのです。

DISC 1:
1. Sodier's Joy / Gid Tanner & His Skillet Lickers
2. Don't Let Your Deal Go Down Blues / Charlie Poole & The North Carolina Ramblers
3. White House Blues / Charlie Poole & The North Carolina Ramblers
4. Bill Mason / Charlie Poole & The North Carolina Ramblers
5. Cannon Ball Blues / The Carter Family
6. D Blues / Blue Ridge Ramblers
7. Keep On The Sunny Side / The Carter Family
8. What Would You Give In Exchange (For Your Soul)? / The Monroe Brothers
9. I'm Thinking Tonight Of My Blue Eyes / The Carter Family
10. Great Speckle Bird / Roy Acuff & His Crazy Tennesseans
11. Orange Blossom Special / Roy Hall & His Blue Ridge Entertainers
12. Ida Red / Roy Acuff & His Smoky Mountain Boys
13. Pretty Polly / The Coon Creek Girls
14. Lonesome Old River Blues / Roy Acuff & His Smoky Mountain Boys
15. Mule Skinner Blues / Bill Monroe & His Blue Grass Boys
16. Wreck On The Highway / Roy Acuff & His Smoky Mountain Boys
17. The Drunkard's Gave / The Bailes Brothers
18. Rocky Road Blues / Bill Monroe & His Blue Grass Boys
19. Searching For A Soldier's Grave / The Bailes Brothers
20. Blue Moon Of Kentucky / Bill Monroe & His Blue Grass Boys
21. Dust On The Bible / The Bailes Brothers
22. I Heard My Mother Weeping / Molly O'Day & The Cumberland Mountain Folks
23. Will You Be Loving Another Man? / Bill Monroe & His Blue Grass Boys
24. Blue Grass Breakdown / Bill Monroe & His Blue Grass Boys
25. It's Mighty Dark To Travel / Bill Monroe & His Blue Grass Boys
26. Molly And Tenbrooks (The Race Horse Song) / Bill Monroe & His Blue Grass Boys
27. Black Mountain Rag / Roy Acuff & His Smoky Mountain Boys
(次回へつづく)

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by scoop8739 | 2005-01-04 13:33 | ブルーグラスの歴史

48 ニュー・トラディッショナルの旋風

a0038167_18391851.jpg流行の揺り戻し作用はどんなことにも起こるものです。1970年代半ばまで続いたニューグラスにも少しかげりが見え始めました。ニューグラスで火がついたブルーグラス熱は、それまでブルーグラス音楽に無関心だった層を刺激し、新たなファンを作り出していったのですが、彼らはグルーグラス音楽を知れば知るほどその歴史に興味を持ち始めます。それは過去の名盤復刻という形でさらに加熱していきます。

先のデヴィッド・グリスマンの「ラウンダー・アルバム」のように、新しいバンドが隠れた古い名曲を発掘し新しいアレンジで演奏するスタイルがブームとなります。またプログレッシヴなグループでさえ、古いマテリアルを以前より多くレパートリーに加え始めました。こうした結果、1970年に蒔かれた「ニューグラス」の種は、意外なことに「ニュー・トラディッショナル」という形で実を結んだのでした。

1977年になると、J.D.クロウのニュー・サウスやグリスマン「ラウンダー・アルバム」で実力を遺憾なく発揮したリッキー・スキャッグスとジェリー・ダグラスが中心となって、「ブーン・クリーク」という名の新しいバンドを結成します。彼らはいくぶんプログレッシヴ寄りのバンドでしたが、トラッドの良さを失わないスタイルを打ち出します。

メンバーはリッキーとジェリーに加えて、リード・ボーカルとギターにウェズレー・ゴールディング、バンジョーとフィドルにテリー・ベイコム、エレキ・ベースにフレッド・ウーテン(のちにスティーブ・ブライアントに替わる)の5人からなり、全員少年の頃から一流のプロ・バンドで活躍していて、個々の持つ類い稀な楽器演奏能力にバンドとしてのアンサンブル、そして美しいコーラス・ワークなど特徴的な要素を多く持ち合わせていました。

彼らはビル・モンローやスタンレー・ブラザーズ、フラット&スクラッグスなどの曲に新しいアレンジを加え、新しいカルテットのコーラスとハイ・リード、エレキ・ベースの強い音での演奏や、それまでのブルーグラス・スタイルにウェスタン・スィングを取り入れるなど、彼らなりにトラディッショナルなブルーグラス音楽を新しい感覚で甦らせていきました。

One Way Track (Sugar Hill)
1. One Way Track
2. Head Over Heels
3. Little Community Church
4. Mississippi Queen
5. In the Pines
6. Can't You Hear Me Calling
7. No Mother or Dad
8. I'm Blue, I'm Lonesome
9. Daniel Prayed
10. Sally Goodin'
11. Paradise [Live]
12. Pathway of Teardrops [Live]
13. Walking in Jerusalem [Live]

彼らのデビュー・アルバムはビル・モンローやスタンレー・ブラザーズ、フラット&スクラッグスの曲などを中心として。確かにソリッドな部分を崩さず上手く仕上げられています。一方、彼らのオリジナルとなる1曲目「One Way Track」、4曲目「Mississippi Queen」は少しプログレッシヴな曲です。エレキ・ベースが強く前面に押し出されているにもかかわらず、決してニューグラスっぽくなく、みごとにブルーグラスとなっています。この辺りに彼らのセンスが顕著に現れています。

このCDにはオリジナルのSugar Hillのアナログ盤には入っていない3曲のボーナス・トラック(しかもライブ盤)が入っています。これだけでもかなりお得な気分ですが、すばらしいコーラス・ワークを楽しむとさらにお得感が増します。
(次回につづく)

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by scoop8739 | 2004-10-05 18:38 | ブルーグラスの歴史

47 セッション・アルバムのヒット・メーカー

a0038167_9425295.jpgデヴィッド・グリスマンの創る「ドーグ・ミュージック」は、かつてグレート・アメリカン・ミュージック・バンドで試みたジャズやロックの即興演奏を用いたアコースティック・インストゥルメンタルによるニュー・ミュージックを目指したものです。しかしブルーグラス・ファンに理解されるのにはまだまだ十分な時間が必要でした。

そこでグリスマンはグループのメンバーを中心とし、さらに当代一のミュージシャンを加えてブルーグラス音楽とドーグ・ミュージックの橋渡しとなるようなアルバムの制作を企画します。そのアルバムは、グリスマン自身が長年に亘って暖めていた「良質のブルーグラス・アルバムを作りたい」との思いを実現させたもので、それはブルーグラス・ファンが楽しめ、しかも日頃ファンが聴いたことのない曲ばかりで構成されたものでした。

そのために起用されたミュージシャンは、グリスマン好みの凄腕ばかりでした。まずバンジョーには先の「ミュールスキナー」で共演したビル・キースを、そしてフィドルには「オールド・イン・ザ・ウェイ」で当代一のテクニックを聴かせてくれたヴァッサー・クレメンツ、ギターとボーカルはJ.D.クロウのニュー・サウスを離れグリスマン・クィンテットに参加してきた才人トニー・ライス、ドブロは同じくニュー・サウスをトニーと同時期に辞めたジェリー・ダグラス、そしてベースにはグレイト・アメリカン・ミュージック・バンド以来グリスマンと行動を共にしているトッド・フィリップスというメンバーが集まります。

さらにこれらのミュージシャンを補強するかのように、テナー・ボーカルとセカンド・フィドルにはジェリー・ダグラスと行動を共にするリッキー・スキャッグス、きれいに整理されたマンドリンを弾かせたら右に出る者がいないと言われるバック・ホワイトをセカンド・マンドリンに、そしてミステリアス・バンジョーことセカンド・バンジョーには、ビル・キースを敬愛してやまないカントリー・クッキングの名手トニー・トリシュカと、それはそれはよくもここまで揃えたものだとファンを唸らせる顔ぶれでした。

何はともあれ、グリスマンの考える最高のミュージシャンで良質のブルーグラスを聴かせるというコンセプトに従って、このアルバムを聴いてみようではありませんか。

David Grisman Rounder Compact Disc(Rounder)
1. Hello
2. Sawin' on the Strings
3. Waiting on Vassar
4. I Ain't Broke (But I'm Badly Bent)
5. Opus 38
6. Hold to God's Unchanging Hand
7. Boston Boy
8. Cheyenne
9. 'til the End of the World Rolls 'Round
10. You'll Find Her Name Written There
11. On and On
12. Bob's Brewin'
13. So Long

まずは1曲目「ハロー」はイントロにあたる短い曲です。ジミー・マーチンとサニー・マウンテン・ボーイズが挨拶代わりに歌っていたもので、ジミーのバンドはこの曲に続いて「トレイン45」を演奏していましたが、グリスマンはドン・リーノウとレッド・スマイリーの「ソーイング・オン・ザ・ストリングス」という隠れた大傑作を持ってきて選曲の冴えを見せてくれます。

続いての「ウェイティング・オン・ヴァッサー」はヴァッサーのことを書いたグリスマンの作品です。ドーグ・ミュージックにあまり馴染みのないジェリーにとっては、難解なコード進行でセッション経験の浅かった当時はずいぶんと手こずったようです。

4曲目はこのアルバムのハイライトであり、普段あまり聴かれないような曲で構成された中でも最たるものです。実はこの曲、グリスマン所有のビル・モンローのライヴ・テープに収められていたものだそうですが、リッキーの大真面目な熱唱が聴かれます。さてさて続いて現れたのはグリスマン一連のマンドリン組曲の一つ、イギリスの雰囲気を漂わせたオールド・タイム・フィドル・チューンにオリエンタル・ムードが混ざったようなミステリアスな曲です。

6曲目は1曲目同様、ジミー・マーチンがよく歌っていたものだそうです。7、8、10、11曲目はグリスマンの敬愛するビル・モンローの作品です。わりとポピュラーなものやあまり知られていないものなどうまい具合に選曲されています。9曲目はフラット&スクラッグスの1950年代中期の作品です。グリスマンのリードにリッキーのテナー、そしてトニーのバリトンが聴かれます。最後の曲「ソー・ロング」は1曲目のイントロを真似て短いコーラスで締めくくられています。この曲も実はジミー・マーチンがショーのエンディング曲としていたものなのだそうです。

この時期、「ミュールスキナー」や「オールド・イン・ザ・ウェイ」の成功を受け、相次いでセッション・アルバムがリリースされ始めます。まさに新旧入り乱れてのセッション・フィーバーとなった訳ですが、常にその中心となったのがこのアルバムの仕掛人デヴィッド・グリスマンに他ならなかったのでした。以来、ブルーグラスにはセッションがつきものとなってきますが、ブルーグラス・ファンの期待と興奮を満たすものはそんなに多くはありませんでした。それでもグリスマンが手掛けるものはこれ以降もレベルの高いものばかり、常にファンの欲求を満たし心ときめかせ続けたのでした。それはグリスマン自身が一ファンとしてブルーグラス音楽を愛し、またアルバム作りに全力投球したからなのでしょう。
(次回につづく)

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by scoop8739 | 2004-10-01 09:41 | ブルーグラスの歴史

46 ニューヨークの才能集団

a0038167_9381645.jpgニューグラスの嵐が吹き荒れる1970年代前半、大都会ニューヨークからさらなるニューグラス・バンドが登場します。彼らはこともあろうにブルーグラスにサキソフォンやシンセサイザーを持ち込んでジャズっぽい演奏を聴かせました。バンドの名は「カントリー・クッキング」といい、これまでにブルーグラス音楽が経験しなかったユニークなサウンドを生みだす才能あふれる集団でした。

つまり、そのロケーションとしてのニューヨークは様々な種類の音楽が満ちあふれていて、それを吸収して育った若者がブルーグラスというフィルターを通して創るサウンドは、南部のそれとはずいぶんと違った形であるということです。とくに彼らはジャズを意識的に強調し、ブルーグラスのカテゴリーから外れないところで自由に発想し、かつ思考してサウンドを創造していたのです。

ギターのラス・バレンバーグは、多分に漏れずドック・ワトソンやクラレンス・ホワイト、ダン・クレアリーを模してキャリアをスタートさせますが、彼の弾くギターは生ギターの持つ美しさを繊細に表現し、かつ大胆にリズムを刻んでいます。マンドリンとサキソフォンを操るアンディ・スタットマンは「知る人ぞ知る」マンドリンの名手です。それまでマンドリンでは使われなかったようなジャズのスケールを用いて面白いサウンドを創造します。またデヴィッド・グリスマンを思わせるようなフレーズも随所に表現して楽しませてくれます。フィドルのケニー・コセックはセッション・マンとして活躍していますが、リチャード・グリーンの影響下にあるそのプレイは、聴く者を気持ちよくも不安定な気分にもさせてくれる不思議な魅力を持っています。

さてこのバンドにはバンジョー奏者が二人いて曲によってはダブル・バンジョーを聴かせてくれます。一人は右指のロールが実にユニークなトニー・トリシュカですが、彼はビル・キース
をとても敬愛していて随所にそれらしいフレーズが聴かれます。また非ブルーグラス的な発想での曲作りは彼らのサウンドにユニークさをもたらしているのです。もう一人のバンジョー奏者はピーター・ワーニックといい、トニーのそれよりはずっとノーマルなものです。彼はバンジョー教則本の著者としても有名です。

ベーシストのジョン・ミラーはラグタイム・ブルースのギタリストとしても名を成していますが、このバンドでベースを始めたそうです。紅一点のボーカリストは名前をナンディー・レオナルドといい、ステージではホンキートンク風のボーカルを聴かせてくれます。

彼らのバンドとしての2枚目のアルバム(その前に違ったメンバーを含むインスト・アルバムを発表しています)である「バレル・オブ・ファン」は、そのタイトルの通り楽しさがいっぱい詰まった内容です。それは彼らが自由に音を遊んでいるのがジャケットの写真からも伺い知れます。

BARREL OF FUN(ROUNDER)
Side A
1. U.S.40
2. Paul Revere's Ride
3. The Parson's Duck
4. Wagon Ho
5. Tequila Mockingbird
6. Lonesome Song
7. Big River
Side B
1. Barrel Of Fun
2. Morning Glory
3. November Cotillion
4. Colorado Bound
5. Six Mile Creek
6. Plumber's Nightmare
7. Kentucky Bullfight
8. Noodles

A面1曲目からアンディのサキソフォンが登場します。これに度肝を抜かれていたのでは彼らのサウンドをじっくりと楽しめません。トニー・トリシュカの作である2、3曲目の美しいメロディーを体験するとブルーグラス音楽の可能性が見えてきます。4曲目も完全なるブルーグラスですが、各楽器の美しい演奏は彼らが只者ではないことの証明です。

アンディの縦横無尽に駆け巡るようなマンドリンが素晴らしい5曲目はピーター作です。ツイン・バンジョーがぴったりと決まっています。6曲目はナンディーのジャグ風ボーカルですが、どこかマリア・マルダーのようですね。7曲目ではカントリー・タッチのボーカルとラスのブルージーなギター、そしてジャジーなサキソフォンが聴かれます。8曲目はアルバムのタイトルにもなっています。典型的なブルーグラスのパターンを踏んでいて、各楽器の演奏の素晴らしさを十分に味わえます。B面1、2、4、5曲の美しい曲を見事にのびのびと演奏しています。3曲目はピーター作の何故か懐かしい雰囲気を持つカントリー・タッチの曲です。

6曲目はブルース・コードを基にしたアドリブ曲だと思われますが、まるでジャズのように弾きまくっています。7曲目はまたまたサキソフォンのイントロとなる妙にエキゾチックなナンバーです。最後を飾るに相応しい(?)曲は、彼らのサウンド志向がよくわかるものです。なんとこの曲では非ブルーグラスの最たる楽器であるムーグ・シンセサイザーが使用されています。

倉庫からレコードを取り出して、曲解説を書くため何度も何度も繰り返し聴いていますが、なかなか味のあるいいアルバムですよ、って言うじゃな〜〜い?
でもあんた、このレコードはCD化されていないんですから…。残念!
ラウンダー・レコード、売れそうもないレコードもCD化すべし斬り!
(次回につづく)

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by scoop8739 | 2004-09-30 09:37 | ブルーグラスの歴史

45 デヴィッド・グリスマンとドーグ・ミュージック

a0038167_9291046.jpg
9. Richochet
10. Dawg's Rag

まずリズムというのはリズム楽器だけで作るものではないとうことを嫌というほど思い知らされるアルバムです。1曲目「E,M.D.」でいきなり引き込まれていきます。ドラムがいないにもかかわらず物凄いグルーヴ感、常にどこかから聞こえて来るリズム・ノートにきっと圧倒されるはずです。

こういう風に思ってしまった時点で彼らの音楽にノック・アウトされてしまっている訳ですが、これこそ真の巨匠にのみ可能な非リズム楽器だけのグルーヴィーな演奏なのです。グリスマン・バンドの音楽は遥かな高みに達しているというのに猛烈なリズムの嵐の向こうから聞こえて来るのはなんとも美しいメロディの数々です。そして炸裂する凄いアドリブや細かくアレンジされた曲構成、アクロバティックなアンサンブルにジャズ・ミュージシャンも裸足で逃げ出すほどです。これらの要素が束になって心をわしづかみにするのですからもう大変。

3曲目「Gマイナー作品57」は、グリスマンの弾くマンドリンの独特のリズム刻みとトニ−ライスのギターが一段とシンコペーションして、名盤「ミュールスキナー」に収録されていたクラレンス・ホワイトの演奏したものよりも素直に耳に入ります。CD化に際しては実にうれしい名曲「16/16」が追加されました。本作は後にセンセーションをまきおこすドーグ・ミュージック誕生の衝撃をいつまでも伝えてくれる、そんな彼らのデビュー盤なのです。

グリスマンはジャズとの接近や他のジャンルのミュージシャンとのセッションを通じてさらに「ドーグ・ミュージック」を深く追求し、これより先、数十年に亘って新しいアコースティックを創造続け、今でも精力的にライブ活動を続けています。またD.G.Q.は新しい才能が生まれる場所にもなりました。

トニー・ライスは1979年になると自らのバンド、トニ−・ライス・ユニットを結成しより深く自分の音楽を追い求めて行きます。トニ−はこのサウンドを「スペース・グラス」と呼んでいます。またD.G.Q.卒業者ではトニーのほかにもオリジナル・メンバーだったダロル・アンガーが「タートル・アイランド・ストリング・バンド」を立ち上げ、マーク・オコーナーはグラミー賞を受賞者し、マイク・マーシャルは「モダン・マンドリン・クァルテット」を起こすなど各方面で活躍しています。またD.G.Q.はバンジョー弾きのベラ・フレックなど新しい時代のミュージシャンにも強い影響を及ぼしました。
(次回につづく)

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by scoop8739 | 2004-09-29 09:27 | ブルーグラスの歴史

44 ブルーグラス界の必殺仕掛人

a0038167_1017810.jpgこの頃から俄然、デヴィッド・グリスマンがブルーグラス界の仕掛人としてその中心的存在になってまいります。大リーグ1シーズン262本の最多安打を達成したイチローのように安打製造機と化して次々とヒットを生み出していったのです。

その始まりは「オールド・イン・ザ・ウェイ」プロジェクトでした。「ミュールスキナー」プロジェクトがよほど面白かったのか、グリスマンは先のセッションで大活躍したピーター・ローワンや朋友ジェリー・ガルシア(グレイトフル・デッドのリーダー)を誘い、さらにフィドルの奇才ヴァッサー・クレメンツを加えて、またまた新たなるセッションを仕掛けてきます。

さてジェリー・ガルシアのブルーグラスのキャリアですが、1963年当時(21歳の頃)、デヴィッドやピーターとともにブルーグラスに入れあげていたらしく、翌64年には彼の弟のバンド、ニュー・ライダーズ・オブ・ザ・パープル・セイジのデビュー・アルバムの中でバンジョーを弾いているということです。彼は右手中指を詰めていて代わりに薬指を使っているためか、妙に引っかかりのある多分に感覚的なバンジョー・ロールを聴かせてくれます。

ヴァッサー・クレメンツはブルーグラスの世界に留まらずありとあらゆるセッションに顔を出すほどの名プレイヤーとして年に似合わぬ旺盛な探究心には定評があります。この当時はジャズのベーシストであるデヴィッド・ホーランドとのセッションも行っています。

このセッション企画は、そんなキャリアを持つミュージシャンを一同に集めて1973年10月8日、サンフランシスコのボゥルディング・ハウスで行われたライヴでした。アルバムでは全員がリラックスした中で次第に演奏が熱気を帯びていく模様がありのままに録音されています。

Old & in the Way [LIVE] (Bmg/Arista)
1. Pig In A Pen
2. Midnight Moonlight
3. Old And In The Way
4. Knockin' On Your Door
5. The Hobo Song
6. Panama Red
7. Wild Horses
8. Kissimmee Kid
9. White Dove
10. Land Of The Navajo

会場のざわめきの中、リクエストの「フォギー・マウンテン・ブレイクダウン」の叫びを無視するかのように1曲目「ピッグ・イン・ザ・ペン」からステージは切って落とされます。続く「ミッドナイト・ムーンライト」はピーターのオリジナル曲です。ピーターは前セッション同様にシャウトなのだかヨーデルなのだかよくわからない翔ぶようなボーカルを聴かせます。3曲目はアルバム・タイトルでセッションの名前でもある「オールド・イン・ザ・ウェイ」です。

5曲目「ザ・ホーボー・ソング」はピーターの自信作です。ボーカルは益々翔んでいます。続く6曲目「ワイルド・ホーシーズ」はローリング・ストーンズの曲ですが、フライング・ブリトウ・ブラザーズも持ち歌としていました。そして最後の曲「ランド・オブ・ザ・ナヴァホ」はピーターの作で、メロディの随所に聞き覚えのあるフレーズが顔を出します。エンディングでナヴァホ・インディアンの悲痛な叫び声が印象的です。

ちなみにこのCDには続編があり、グリスマン自身のレーベル「ACOUSTIC DISC」から「Breakdown: Live Recordings 1973」と「That High Lonesome Sound - Live Recordings 1973」の2タイトルがリリースされています。
(次回につづく)

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by scoop8739 | 2004-09-28 10:15 | ブルーグラスの歴史

43 巨星墜つ、クラレンス・ホワイト突然の事故死

a0038167_9252138.jpg1973年7月19日の深夜、ブルーグラス・ギターの名手クラレンス・ホワイトがフロリダのナイト・クラブの駐車場で、飲酒運転の車にはねられて亡くなりました。享年29才、ブルーグラス・ファンにとっては何ともやるせない出来事でした。

彼は1944年6月6日メーン州マダワスカの生まれで、1950年代の半ばにはエリックとローランドの兄たちと一緒にスリー・リトル・カントリー・ボーイズを結成し、ロサンゼルスのクラブを中心に活動していました。1960年になると新たなメンバーを加えて伝説のブルーグラス・バンド「ケンタッキー・カーネルズ」を結成します。1964年に発売されたアルバム「アパラチアン・スウィング!」(Appalachian Swing !)で聴かせるクラレンスのフラット・ピッキング・スタイルのギター演奏は、それだけでブルーグラス界最高のギタリストとして君臨することになります。

その後1962年にバンドを離れ、リンダ・ロンシュタットやランディ・ニューマンのレコーディングに参加した後、1968年にジーン・パースンズとナッシュビル・ウェストに加わります。このバンドがこれまた「幻」とも「伝説」と呼ばれるものですが、メンバーにはジーン・パースンズを始めフライング・ブリトー・ブラザーズのメンバーとなるギブ・ギルボー、そして一時期スニーキー・ピートもいたといわれています。

このナッシュヴィル・ウエスト時代こそクラレンスがセッション活動を単独に、あるいはバンドで大活躍していた時期でもあったのです。クレジットされていないセッションが膨大にあるといわれていますが、バーズがナッシュヴィル・ウエストのライヴを見学にきていたといわれるほど、クラレンスの実力は噂に違わず凄かったようです。そうするとナッシュヴィル・ウエストこそカントリー・ロックの実力ある先駆けバンドだったということですね。

11月に彼はここを脱退し、ジーン・パースンズと一緒にバーズに加わったのです。当時のバーズはライヴができないバンドとしてファンの間では暗黙の了解事項となっていましたが、クラレンスが加わったことで最強のライヴ・バンドに変身します。つまりクラレンスこそバーズを生まれ返らせた立役者でもあるのです。またバーズ在籍中にはジーン・パーソンズと共に愛用のテレキャスターを改造し、スティール・ギターのようなサウンドが創れるストリング・ベンダー(正式にはセカンド・ストリング・ショルダーストラップ・ベンダーという独自のチョーキング装置)なるものを生み出します。余談になりますが、レッド・ツェッペリンのギタリストとして有名なジミー・ペイジはこのストリング・ベンダーの愛用者ですが、彼をして「ジミ・ヘンドリックスと並ぶアメリカの2大ギタリストだ」と言わしめたのがこのクラレンスです。そんな彼は今でも「マスター・オブ・テレキャスター」と呼ばれています。

1973年、バーズが解散した後は再び兄エリックやローランドとケンタッキー・カーネルズを編成しながらも、セッション・ミュージシャンとして伝説の「ミュールスキナー」に参加し、そのギター・テクニックを余すところなく披露してくれました。(この章は佐々木実さん作成のHPから一部抜粋使用させていただいております。
http://www02.so-net.ne.jp/~m-sasaki/cwhite.html)

Tuff and Stringy Sessions 1966-68 (Ace)
1. Hong Kong Hillbilly / Nashville West
2. Mother-In-Law
3. Make Up Your Mind
4. Grandma Funderbunk's Music Box
5. Guitar Pickin' Man
6. Vaccination for the Blues
7. Don't Pity Me
8. Gotta Go See the World
9. Everybody Has One But You
10. She's Gone
11. Tuff and Stringy
12. I'm Tied Down to You
13. Hey Juliana
14. Last Date
15. I'll Live Today
16. Not Enough of Me to Go Round
17. Riff-Raff
18. If We Could Read
19. Rocks in My Head
20. Made of Stone
21. Buckaroo
22. Adam and Eve
23. Why Can't We Be
24. Nature's Child
25. Tango for a Sad Mood
26. If We Could Read

このCDは29歳の若さで亡くなったクラレンス・ホワイトという希有のミュージシャンがザ・バーズに正式加入する直前の22才から24才までの約3年間に残した貴重なレコーディング・セッションです。ここでは後にザ・バーズでのレコーディングで使用するストリングベンダー・ギターはまだ完成しておらず、このCDに収録されたエレクトリック・ギターは普通のテレキャスターと思われます。それにもかかわらずここで聴ける彼の演奏はストリング・ベンダーを駆使したかのような素晴しいリックスやフレーズが随所に登場します。これは言い換えればクラレンス独特のギター・フレーズはストリング・ベンダーという便利なものが発明されたからこそ初めて可能になったのではなく、既にそれ以前にクラレンスの頭の中でほぼ完成されていて自在にプレイできていたということがこのCDで確認できるのです。

ケンタッキー・カーネルズによる「Everybody Has One But You」や「Made Of Stone」はマンドリンの名手でもある兄のローランド・ホワイトとのデュエットで聴けますが、リード・パートを歌う若きクラレンスの雰囲気たっぷりの少し鼻にかかったロンサムなボーカルは、その後にザ・バーズで「Bugler」や「Jamaica Say You Will」といった永遠の名曲を残すことになる彼を予感させてくれます。また多くのトラックではクラレンスを擁したナッシュヴィル・ウェストの他のメンバーも参加しており、ジーン・パースンズと思われるハーモニカやバンジョーがフィーチャーされた曲も含まれています。

クラレンスが亡くなって30年以上が経ちますが、いまだにクラレンスを追い求める音楽ファン、ギター・ファンは絶えません。日本では今一つ知名度が低いようですが、この機会にクラレンス・ホワイトと彼がかかわったミュージシャン達のウエストコースト・ロックに触れて頂きたいものです。
(次回につづく)

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by scoop8739 | 2004-09-27 09:23 | ブルーグラスの歴史

42 偶然生まれた夢のセッション、ミュール・スキナー

a0038167_10225031.gif1973年、ビル・モンローがロサンゼルスのテレビ局KCETでのショー出演のためにツアー・バスで向かっているところ事故に遭遇し、ショーそのものが不可能になるという危機を迎えます。その穴を埋めるためにテレビ局はロス在住のブルーグラス・ミュージシャンに連絡を取り、急遽セッション・バンドを組み立てて番組を作ることとなりました。

ここで呼ばれたのが、リチャード・グリーン、ピーター・ローワン、ビル・キースというモンローゆかりの人たちを中心に、モンロー・フリークで有名なデヴィッド・グリスマン、バーズ解散後フリーとなっていたクラレンス・ホワイトという、その当時ロックをやっていたミュージシャンばかりでした。

リチャードは1964年にモンローのもとを離れるとブルーグラス以外の音楽に目を向けペダル・スチールを弾いているジム・クェスキンのジャグ・バンドに移ります。また同時にデヴィッド・グリスマンらとイヴン・ダズン・ジャグ・バンドを組んだり、ビル・キースらとセッション・バンドのブルー・ベルヴェット・バンドにも参加していました。

ピーターはリチャードと同じ頃にニューヨークを中心にモンローのもとを離れ、デヴィッド・グリスマンらとソフト・ロック・グループのアース・オペラを組み、リチャードとともにブルース・プロジェクトからシー・トレインというバンドを作っては壊すといったことをやっていました。

ビル・キースはいまさら言うまでもなく、バンジョー奏法ではアール・スクラッグスのパターンを基本に発展させたキース・スタイルを創り出したことで有名なプレイヤーですが、彼は1963年にモンローのもとを去った後はリチャードらとジム・クェスキンのジャグ・バンドや、同じ頃にブルー・ベルヴェット・バンドに参加したり、マリア・マルダーのマッド・エイカーズといったバンドにも参加しています。

デヴィッド・グリスマンはビル・モンローとフランク・ウェイクフィールドを崇敬し彼らの演奏を吸収しているマンドリン奏者です。また彼は音楽プロデュースの才能を持ち、ロサンゼルスではグレイトフル・デッドやローワン・ブラザーズを手掛けています。

クラレンス・ホワイトについてはこれまでに多くを書いてきましたので割愛させていただくとして、こうして集結したメンバーを見ると彼らが単なるブルーグラス音楽を演奏すると言うのがおかしな話であるということは火を見るより明らかです。

Muleskinner (DBK Works )
1. Muleskinner Blues
2. Blue And Lonesome
3. Footprints In The Snow
4. Dark Hollow
5. Whitehouse Blues
6. Opus 57 In G Minor
7. Runways Of The moon
8. Roanoke
9. Rain And Snow
10. Soldier's Joy
11. Blue Mule

アルバムのタイトルでありオ−プニング曲である「ミュールスキナー・ブルース」はショー出演を断念せざるを得なかったモンローのオマージュとして演奏されます。この曲では何といきなりクラレンスのテレキャスターの「テケケケケケ〜」という堅いエレキ音から始まり、「エッ!」と驚く暇もなく直後の5小節目、めったに聴くことのない「エレキ・ギターのGラン」をきっかけに全員が一斉に飛び込んできます。さらにピーターがヨーデルなのだかシャウトなのだがよくわからない翔ぶような唱法でガンガン歌ってきます。追い打ちをかけるかのようにリチャードが自信と勢いとアイデアに満ち溢れたフレーズを連発します。こんなフィドル弾きがいるとバンドもさぞかしスリリングだろうなと思えてきます。

それにつけても圧倒されるのがクラレンスのギターです。3分余りに渡って延々と弾き続けるバッキングは、時折4th、7th、9thといった音を織り交ぜるだけなのにまったくタイミングが良すぎます。このように、彼らは1曲目からやりたい放題で大騒ぎした挙げ句にフェイド・アウトという非ブルーグラス的手法で去って行きます。さすが異業種交流を繰り返したミュージシャンの演奏するブルーグラスは1曲目から驚かせてくれます。

2曲目「ブルー・アンド・ロンサム」はカントリー調ミディアム・テンポのブルーグラスを演奏します。これでやっと平常心を取り戻せそうです。と思いきや、ここでもリチャードは先ほどの興奮状態から脱していないのか1曲目に続いて変わったフレーズを連発します。ちょうど高速道路のインターを降りて一般道路に入ったのにスピード感が麻痺して100kmくらいのスピードで走ってしまう状態、それが彼なのですね。

彼の状態に不安を覚えたのか、他の4人はこの後「フットプリント・イン・ザ・スノウ」、「ダーク・ホロウ」、「ホワイトハウス・ブルース」と計3曲の普通のブルーグラスを連続して演奏することで治療を試みます。その甲斐あってどうやらリチャードの興奮状態も治まった模様です。

ところがようやく1人が治まったと思ったら、今度はグリスマン氏が自ら開発した「ドーグ」(Dawg)なるジャンルの曲を持ち込んで、既にそのイントロをシャカシャカと奏で始めているではありませんか。幸いなことにここで単弦奏法の得意なビル・キースの賛同が得られたのか無事「Gマイナー作品57」が始まります。思えば後年、トニー・ライスによってその多くが弾かれることになるドーグ音楽をクラレンスが演奏している貴重な1曲です。それにしても何だか軽々と弾いている感がありますね。

続く「ランウェイズ・オブ・ザ・ムーン」、「ロアノーク」、「レイン・アンド・スノウ」を無難に過ごすと、クラレンスの弾く「ソルジャーズ・ジョイ」が鳴り響きます。そして最後に「ブルー・ミュール」で締めくくられるのです。この曲はこれまでの10曲に比べて大変まとまりが良く、あらかじめ整理された役割分担の中で一人一人が抜群のパフォーマンスをやってくれます。特にリチャードのプレイは印象的で、エレキ・バイオリンを駆使し「通奏低音」ならぬ「通奏高音」のようなプレイをベースに、曲をドラマチックに展開させて行きます。
またクラレンスさんの16小節のソロは切り込んでくるタイミングが素晴らしい上に、生前彼が弾いていたフレーズを散りばめていて、この演奏の数ヶ月後に亡くなってしまうことを考えると何か感慨深いものがあります。

この曲は終盤、まるで1曲目「ミュールスキナー・ブルース」を再現しているかのように全員が思い思いに弾きまくってフェイド・アウトして終わります。ああ興奮、またまた興奮。しかし興奮冷めあらぬ彼らはさらなる企画を立ち上げるのでした。
(次回につづく)

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by scoop8739 | 2004-09-24 09:41 | ブルーグラスの歴史

41 ニュー・オーセンティックの旗頭、デル・マッカリー

a0038167_9283447.jpg
12. Roll in My Sweet Baby's Arms
13. Blue Yodel
14. Beautiful Life

「デル・マッカリー・スィングス・ブルーグラス」とタイトルされたこのアルバムには、バックミュージシャンとしてビル・エマーソン(バンジョー)、ビリー・ベイカー(フィドル)、ウェイン・イエーツ(マンドリン)、トミー・ニール、ドゥウェイ・レンフロ(ベース)がクレジットされています。また1972年、新生のラウンダー・レコードと契約し、彼としては2枚目のアルバム「ハイ・オン・ア・マウンテン」をリリースします。

ビル・モンロー亡き後、彼ほどハイ・ロンサムでストレートなブルーグラスを歌える人物は他にいません。そういった意味で真のビル・モンローの後継者としてその評価は高く、オーセンティックなブルーグラスを演奏する一流のプレイヤー、しかもファースト・ゼネレーションでもない彼の実力と人気は、長年の苦労の上にしっかりと大地に根を張る雑草のようにたくましいものなのです。
(次回につづく)

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by scoop8739 | 2004-09-22 09:25 | ブルーグラスの歴史