カテゴリ:ビートルズ・ソング( 20 )

127 ブルーグラスの中のビートルズ (20)

ピッキン・オン・ザ・ビートルズ (Pickin’ On The Beatles)

a0038167_16464756.jpgブルーグラスによるビートルズ集というと、即座にチャールズ・リバー・バレー・ボーイズの「ビートル・カントリー」を思い浮かべますが、もうひとつの「ビートルズ・カヴァー集」が1994年に作られています。「ビートル・カントリー」は歌入りでしたが、こちらのほうは全曲インストゥルメンタルで構成されていて、スーパー・テクニックを堪能できる作りとなっています。

演奏メンバーは、名フィドラーであるグレン・ダンカン、ブルーグラス・ドブロの開祖といわれるアンクル・ジョッシュの息子ティム・グレイヴス、そしてプロデューサーも務めるギタリストのビル・トロイらナッシュヴィルのスーパー・ピッカーたちが参加していますので、それはそれは聴きごたえがあります。

さて、全曲インストとなるとそのアレンジが非常に重要な要素になります。特にバンジョーがどこまでビートルズ・メロディーを弾きこなせるかがポイントとも楽しみともなるのです。そのバンジョーがリードをとる3曲、フィドルがリードの4曲、そしてマンドリンの2曲、あと3曲はそれぞれの楽器が替わりばんこにリードをとっています。

1. Strawberry Fields Forever
2. And I Love Her
3. Ticket To Ride
4. Norwegian Wood
5. I Want To Hold Your Hand
6. Paperback Writer
7. Can’t Buy Me Love
8. Hey Jude
9. She Loves You
10. Yellow Submarine
11. Yesterday
12. A Hard Day’s Night

11曲目はフィドルのグレンが丁寧に、まるでクラシックの室内楽のように演奏しています。また4、8曲目はマンドリンを中心に演奏されますが、繊細な音色が原曲の持つメロディの美しさを実によく生かしています。そして問題のバンジョー中心の曲が6、9.10曲目です。特に6曲目はバンジョーのスピード感といい、ブレイクの仕方といい、素晴らしい仕上がりとなっています。なお、1999年には本作の続編もリリースされています。

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by scoop8739 | 2005-09-19 16:51 | ビートルズ・ソング

126 ブルーグラスの中のビートルズ (19)

オー・ダーリン (Oh Darling)

この曲は「のっぽのサリー」や「アイム・ダウン」以来の、ひさびさ背筋がぞくぞくするようなポールのヴォーカルが聴かれます。自動ピアノのようなピアノと、コードを刻む火の出るようなギターの下で、ポールはわざとしわがれ声で歌っていますが、彼はレコーディングの1週間前からスタジオで何度も歌い込んで、このパワフルな声を作ったと言われています。

作曲もポール自身で、50年代後期のロッカ・バラードにインスパイアされたこの曲は、「一生愛し続けるからそばにいて欲しい」と、愛する人に呼びかけるシンプルなラブ・ソングとなっています。ジョンは後年、「オレならもっと上手く歌えたのに」と言ったそうですが、この曲に限っては、やはりポールの思い入れがあったからこそ完成した曲だと言えます。

a0038167_20404555.jpgさてブルーグラス界広しと言えども、この曲を熱唱できる人は彼をおいて他にはいません。それは誰あろう「ブルーグラス・ロッカー」のジョン・コーワンその人で、彼のヴォーカルを盛り上げるサポート・メンバーが、これまたブルーグラス界でロック魂を持つバンジョー・プレイヤーのベラ・フレック率いるフレックトーンズでした。ベラの不思議(?)なエレクトリック・バンジョーのイントロに続き、絶叫のようなパワフルなジョンの雄叫びが炸裂します。間奏のピアノはとてもジャージーで、ブルーグラスとロックとジャズが融合したフュージョン・サウンドになっています。なおこの曲が収録されているアルバムは「テルライド・1992・フェスティバル:プラネット・ブルーグラス」(Telluride 1992 Festival: Planet Bluegrass)です。

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by scoop8739 | 2005-09-06 20:44 | ビートルズ・ソング

125 ブルーグラスの中のビートルズ (18)

デイ・トリッパー(Day Tripper)

ベーシックなギター・リフと歌詞のほとんどをジョンが作り、ポールが歌詞の一部を手伝っているこの曲は、ビートルズがクリスマス市場用にと無理強いされ、アルバム「ラバー・ソウル」と同じ日(1965年12月3日)にニュー・シングルとしてリリースされました。それにもかかわらず、「恋を抱きしめよう」との両A面シングルとして、イギリスでは1位、アメリカでは5位を獲得しています。

1965年の夏、ジョンとジョージは初めてLSDを体験しています。それは、彼らと食事をともにしたロンドンの歯科医が食後のコーヒーにそっと混入させたもので、彼らの意志ではありませんでした。しかし8月には、アメリカ滞在中に自分たちの意志でトリップを体験し,それ以来ジョンは、「四六時中、口のほおり込むようになった」と告白しています。「デイ・トリッパー」というタイトルは、勃興期にあったドラッグ・カルチャーが、ビートルズの曲作りに及ぼしていた影響を反映させたものと言えます。

a0038167_2017468.jpgジェリー・ダグラスとタット・テイラーがプロデュースし、ブラザー・オズワルドからジョッシュ・グレイブス、そしてロブ・アイクスまで11人のドブロ・ミュージシャンによるオムニバス盤「グレイト・ドブロ・セッションズ」にこの曲が収録されています。この曲をドブロでリードするのはジーン・ウートン(2001年没)で、デヴィッド・グリア(g)、ラリー・パーキンス(bj)、ロニー・マッカリー(m)らが好サポートをしてオリジナルに忠実なアレンジで聴かせてくれます。なお、このアルバムは1994年度のグラミーを受賞しています。

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by scoop8739 | 2005-09-02 20:20 | ビートルズ・ソング

124 ブルーグラスの中のビートルズ (17)

イン・マイ・ライフ (In My Life)

この曲はビートルズの6枚目でモザイクのような作りのアルバム「ラバー・ソウル」に収録されています。アルバムの中ではこの曲がもっとも大きな広がりを持っているようで、アルバムが持つテーマにいちばん近い感じがします。

自分の内的な生活に焦点を置いて作曲してはどうかとのアドバイスを受けたジョンは、あきらかに自伝的な曲を書き始めます。その結果、この曲はジョンにとって初めて自身の進歩を実感できた作品となりました。一人の人間の一生を通じて、親しい関係というものが本来持っている夢だとか幻滅といったものと、ある特定の恋とを結びつけているという実に哲学的な作品です。

a0038167_9415225.jpg90年代に入ってからのディラーズは、ロドニー・ディラード(g)、ミッチ・ジェイン(bs)、ディーン・ウェッブ(m)というオリジナル・メンバーにスティーブ・クーリー(bj)を加え、旧知のバイロン・バーライン(f)やハーブ・ペダースン(bj)らとともに、ボブ・ディランの秀逸なカヴァーを含むベストともいえる「レット・イット・フライ」(Let It Fly)というアルバムを発表しています。さらに94年にはこの曲「イン・マイ・ライフ」のブルーグラス風解釈を含むアルバム「テイク・ミー・アロング・フォー・ザ・ライド」(Take Me Along For The Ride)をリリースします。アルバムの中で特にこの曲はバンジョーが印象的な仕上がりとなっています。

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by scoop8739 | 2005-08-28 09:50 | ビートルズ・ソング

123 ブルーグラスの中のビートルズ (16)

ノルーウェイの森 (Norwegian Wood)

ビートルズ初期の頃のこと、既婚で知られたジョンは結婚生活に満足していなくて、妻に対してもたびたび不実な行為を繰り返していました。この曲はそうした火遊びの一つを描いた作品です。歌詞にあるように、ジョンはかつて「ものにしていた」女性に関する自慢話から始まります。しかし彼は即座に、「ものにしていた」のは自分の方ではなく、彼女の方だったと訂正するのです。つまり彼は妻に対して浮気の事実を隠蔽し、また正当化するなどして話をはぐらかしていたのでした。

ところが、この曲はそんな事情とはまったく関係なく大きな話題を呼びます。なぜなら、この曲にはシタールという楽器が効果的に使われていて、それまではインド楽器がポップスに使われたというのはなかったことでした。これ以降、ビートルズの発表するアルバムには必ずと言っていいほどインド楽器が導入されることとなり、その影響で次々とポップス界に広がっていき、「ラガー・ロック」というカテゴリーさえ生まれたのでした。

a0038167_2001721.jpgさてこの名曲を、ブルーグラス界のケルト音楽通ティム・オブライエンが歌っています。彼のアルバム「トゥー・ジャーニーズ」(Two Journeys)は、ブルーグラスの枠を超えて自身のルーツ、アパラチアそしてアイルランドへの想いを掘り下げていったものです。その中でこの曲はパイプをバックに、ティムのマンドリンが絡ませながら滔々と歌われます。それはブルーグラスというより、ケルト音楽風にアレンジされたものとして、ファン必聴の仕上がりとなりました。

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by scoop8739 | 2005-08-25 20:04 | ビートルズ・ソング

122 ブルーグラスの中のビートルズ (15)

タックスマン (Taxman)

指がギターの弦を滑る音、咳払い、息を吸う音などスタジオの雑音を断ち切るように、1.2.3とカウントを数えてこの歌が始まります。作ったのはグループのギタリスト、ジョージ・ハリソンで、彼はこう歌います。最初の歌詞で「まず税金の仕組みについてお教えしましょう」と、慇懃無礼な言い回しでタックスマン(税金取り)のえげつなさをからかいます。

これはその当時、ジョージが彼自身に課せられた高額所得特別付加税の大きさに初めて気づいて驚いたのと同時に、実質収入のほとんどが税金でとられていることへの不満を歌にしたものです。しかしタックスマンはそれでも、死者に対して「まぶたに乗せる硬貨にも申告漏れのないように」だの、「車を運転したら、道路に税金をかけますよ」だのと、課税に容赦はありません。とどめの言葉が、「結局みなさんは、私のために働いている訳でして」と締めくくられます。誰でも税金を取られることに満足している人はいませんが、特にビートルズに対する課税の多さは半端ではありませんでした。

a0038167_1830315.jpgこの曲を若手ブルーグラス・バンドの先鋒ニッケル・クリークが歌っています。彼らは、シーン(g,vo)、サラ(f,vo)のワトキンス兄妹とクリス・シーリ(m,vo)というまだ20代前半の若い3人組ですが、ギター、マンドリン、フィドル、そしてベースというアコースティックな楽器を駆使したシンプルな構成と、3人の素直なヴォーカルとハーモニーで、ジャンルを超えた新鮮なポップスを聴かせてくれます。そしてこの曲の収録されているアルバムが「テルライド・ブルーグラス・フェスティバル・30イヤーズ」(Telluride Bluegrass Festival:30 Years)です。このフェスはさまざまな音楽ジャンルを含んだものとして有名ですが、彼らはこの曲をアップ・テンポにアレンジして、パワフルにロックしたブルーグラスとして聴かせてくれます。

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by scoop8739 | 2005-08-21 18:34 | ビートルズ・ソング

121 ブルーグラスの中のビートルズ (14)

夢の人 (I've Just Seen a Face)

この曲は、ビートルズ自身2作目となった主演映画「ヘルプ!」のサントラ盤として発売された5枚目のオリジナル・アルバムに収録されています。映画の方は前作での魅力を引きずりながらも、よりポップでアイドル性に満ちた楽しい内容となっていて、その後、TV番組「モンキーズ」などのようなアイドル主演もののお手本的作品となりました。

アルバムの前半7曲が映画に使用されたナンバーで、後半7曲がアルバム用に録音されたナンバーとなっています。この曲は後半5曲目、つまりアルバム用に作られたもので、ポールによる本格的なカントリー・ナンバーとなっています。アコウスティック・ギターを何本も重ねたようなイントロから、ブラシを使ったドラム、重たくもシンプルなギター・ソロまで一気に聴かせるアレンジは見事のひとことに尽きます。そういった意味でポールの曲作りの懐の深さを見せつけたような作品でもありました。

さてブルーグラス界を代表する革新的なフィドル・プレイヤーの一人ヴァッサー・クレメンツは、1946年にビル・モンロウの下でキャリアをスタートさせます。やがて彼は、自分が本当にやりたいのはもう少し違うタイプの音楽だということに気づき、さまざまなスタイルや要素を積極的に取り入れるようになりました。そしてジャズとカントリーを融合させるという実験に取り組みながら、40数年に亘ってその技術に磨きをかけ、今では最も多忙なセッション・ミュージシャンとして知られるまでになりました。

a0038167_18524720.jpgそんな彼が2001年に発表したアルバム「フル・サークル」(Full Circle)は、この「夢の人」を含め、クリームの「ホワイト・ルーム」、ビートルズの「イエスタデイ」を織りまぜながら、ブルーグラスの定番曲もきっちりと押さえた構成であり、またサム・ブッシュ(m)、ブライアン・サットン(g)、ジョッシュ・グレイヴス(d)、ケヴィン・グラント(bs)をはじめ、各曲でゲスト・ヴォーカリスト、ゲスト・プレイヤーを招いた豪華なアルバムとなっています。この曲ではもちろん、主役であるヴァッサーのフィドルはつぼを押さえつつも大いに乗りまくっていてファンを納得させる出来となっています。

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by scoop8739 | 2005-08-17 18:53 | ビートルズ・ソング

120 ブルーグラスの中のビートルズ (13)

ゲット・バック (Get Back)

ビートルズとしての最後のアルバムとなった「レット・イット・ビー」は、1969年当時、バラバラになっていたグループを結束させるために、ポールの提案によって「昔に戻ろう」(Get Back)という意味で始められたセッションでした。しかしポールの思惑とは裏腹に、そのセッションの様子を収めた映画を観ると、グループの意志はちぐはぐな方向にいっているのが判ります。

この曲「ゲット・バック」はそんなポールの想いを歌ったものですが、歌詞はアリゾナ州ツーソン出身のジョジョと、「自分は女だと思っていたが、実際にはただの男だった」というロレッタ・マーチンのことを歌ったものに変貌しています。このあたりにポールのバンドに対するジレンマの現れかと思われます。

a0038167_11482652.jpgさて、この曲もブルーグラスにアレンジされるととても楽しいものとなります。2004年に発表したニッティ・グリッティ・ダート・バンドのアルバム「ようこそウッディ・クリークへ」(Welcome To Woody Creek)は、30年ほど前に発表した彼らの名盤「アンクルチャーリーと愛犬テディ」と同じような路線で、ポップやロックから、泣かせるバラード、スワンピーなインスト・ナンバー、スライド・ギターなど渋い曲ありの全12曲の構成となっています。そのうち9曲がオリジナルであるにもかかわらず、すんなりと耳に馴染むポップな出来で、カントリーとロックが程よく溶け合ったいい感じのアルバムとなっています。この曲「ゲット・バック」は、ここでは陽気なブルーグラス調に様変わりして、これがまったく違和感なく実に楽しいバージョンで聴かせてくれます。

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by scoop8739 | 2005-08-15 11:53 | ビートルズ・ソング

119 ブルーグラスの中のビートルズ (12)

アイム・ダウン (I’m Down)

この曲は、ポールがリトル・リチャードの「のっぽのサリー」からインスピレーションを得て作ったもので、オープニングの部分が「のっぽのサリー」にとてもよく似ています。曲の内容は、恋人が自分になびいてこなくてイライラしている、つまりかなり落ち込んでいる(アイム・ダウン)状態を歌ったものです。かつてメリー・ジョー・パーカーという小説家がロックンロールの本質を捉えて、「悲しいことを楽しく歌う」と言っていましたが、これはまさにそれを地でいっているような曲です。

ここでのポールは、痛々しいまでに主人公の報われない想いを熱唱しています。肺が張り裂けんばかりに絶叫するその気違いじみた声、加えて他のメンバーは彼の歌を激しく炸裂させ、アンサンブルは爆発しそうなくらいタイトなものとなっています。

a0038167_2122718.jpgそんな曲をブルーグラスにアレンジして歌えるグループは、ブルーグラス界広しと言えども彼らをおいて他にはいません。そうです、みなさんご想像通りの、ロックを歌わせたら右に出るものがいないと言われるニュー・グラス・リヴァイヴァルその人たちでした。絶叫するジョン・コーワン(vo.bs)のヴォーカルを、サム・ブッシュ(m)、ベラ・フレック(bj)、パット・フリン(g)が好サポートして、これまた爆発しそうなくらいタイトなロック・グラスとなっています。

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by scoop8739 | 2005-08-09 21:04 | ビートルズ・ソング

118 ブルーグラスの中のビートルズ (11)

ホエン・アイム・シックスティ・フォー (When I’m Sixty Four)

ビートルズの中でも名盤とされている「サージェント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」の中に収録されているこの曲は、実はポールが16才の時に作ったとされています。彼はミュージカル・コメディかキャバレー・チューンとして使えるようにと、漠然と作曲したのだと語っています。1966年当時、イギリスでニュー・ボードヴィル・バンドによる「ウィンチェスターの鐘」がヒットしたのを機に、ポールはこの古びた曲のほこりを払って録音に挑みました。

ヴァースの歌詞は世間並みの家庭的な美徳から、タイトルとなっている控えめな質問へと移ります。「ボクはまだ必要でしょうか? 食べる時にボクの世話をしてくれますか? 64才になっても…」と。

a0038167_8215139.jpgさて、ブルーグラス界の長老3人が集まって作ったアルバム「レトログラス」にもこの曲が収められています。長老3人とは誰あろうデヴィッド・グリスマン、ジョン・ハートフォード、マイク・シーガーのことです。この3人がポピュラーなスタンダード曲をクラシックなアメリカン・フォーク・スタイルで演じるという、すさまじくも楽しいアイデアにあふれたアルバムですが、この曲を彼らが演奏すると、これが見事に1920年代のストリングバンド風に聴こえて、なかなか味わい深い仕上がりとなっています。

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by scoop8739 | 2005-08-07 08:23 | ビートルズ・ソング