カテゴリ:不朽の名曲( 47 )

64 アールズ・ブレイクダウン

(Earl’s Breakdown)

a0038167_15293866.jpgブルーグラス・バンジョーの開祖アール・スクラッグスは革新的なバンジョー奏者でした。演奏中にチューニングを変えるというアイディアを実行し、後に自らの名を冠した最高傑作「アールズ・ブレイクダウン」を作曲、録音しました。最初の録音(1951年10月24日)では普通にペグを回しています。「フラット&スクラッグス ザ・ゴールデン・エラ(1950-55)」などではこのバージョンを聴く事ができます。
Lester Flatt & Earl Scruggs / Golden Era (Rounder)

この曲はとても好評で、方々のステージでリクエストを受けました。毎度ペグを回すのも大変だったので、アールは考え抜いた末、カムのような器具をペグに取り付け音程を変える動作をワンタッチで行えるようにしました。それが「スクラッグス・チューナー」というものです。これを使った演奏と、シンプルな曲構成と、はじけるようなバンジョーのサウンドは大喝采を浴びるようになりました。以来、「フリント・ヒル・スペシャル」(1952年11月9日録音)などでもこのカム・タイプのものを使用しています。

その後、やはり革新的なバンジョー奏者のビル・キースが別の構造を持つ同様のペグを発案しました。現在はこちらが主流となっているようですが、通常のペグにはない2つのネジが付いていて、このネジを高・低それぞれの音程で締めると、ペグはその範囲内でしか回らないように設計されています。これをアール・スクラッグスは、「スクラッグス・キース・チューナー」と呼んでいます。

ただし、ブルーグラス・コンテストなどでバンジョーの演奏を競う際、通常この「スクラッグス・キース・チューナー」の使用は禁止されています。つまり、安易にウケるからだそうです。裏を返せば、それくらいインパクトのある器具という事なのでしょう。

さて、ニッティ・グリッティ・ダート・バンドの「永遠の絆」に入っているバージョンでは、アール・スクラッグスがスクラッグス・チューナーを使っているフレーズを、ドック・ワトソンがギターで見事に表現し直しています。
Nitty Gritty Dart Band / Will The Circle Be Unbroken (Capitol)

映画「脱出」で挿入曲の「Dueling Banjo」が一躍有名になりましたが、このアルバムの中にも「アールズ・ブレイクダウン」が収録されています。
Eric Wiseberg / "Dueling Banjos" From The Original Soundtrack: Deliverance (Wea International)

我が国のプロ・ミュージシャンの中でもピカ一のテクニックを聴かせるのが城田じゅんじです。ナターシャー・セブン在籍時にリリースしたソロ・アルバムにこの曲が収録されていました。ギターは朋友の坂庭省悟、その後不幸が続き彼らの演奏はもう二度と聴けないものとなりました。
城田じゅんじ / Soft Shoes (東芝EMI) (CD化されていません)

1970年にサニー・マウンテン・ボーイズに参加し、それまでのメロディック奏法にジミー・マーティン直伝の右手のタイミングを加えて、バンジョー界に新風を吹き込んだのがアラン・マンデでした。彼の1980年代前半にシリーズで発表されたインストゥルメンタル・スタンダードを集めたLP4枚から再編集されたのが次のCDです。僚友ローランド・ホワイト他のシュアーなバックでの頭脳的プレイとソリッドなタイミングでのバンジョー・スタンダード集となっています。「アールズ・ブレイクダウン」はこの中にも収録されています。
Alan Munde / Festival Favorites Revisited (Rounder)

バンジョーの革命児トニー・トリシカは、1970年代初期のアグレッシブさに戻ったかのような尖がった前衛ブルーグラスを聴かせてくれます。いきなり1曲目の「アールズ・ブレイクダウン」でのバンジョーとテナー・サックスのバトルでビックリするのか、彼のユーモア感覚にニヤリと笑うのか、それはあなた次第です。
Tony Trischka Band / New Deal (Rounder)

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by scoop8739 | 2005-03-21 15:36 | 不朽の名曲

63 ラヴ・プリーズ・カム・ホーム

(Love Please Come Home)

a0038167_23432082.jpgドン・リーノウとレッド・スマイリーは1951年にコンビを組み、その後1964年まで順調に活躍していました。しかし、この年に突然解散してしました。それは、ハードなスケジュールと移動とがレッドの体を蝕み、演奏活動ができなくなったためだと言われています。

そんなリーノウ&スマイリーがヒットさせた曲は数多くあります。どちらかというとドンのバンジョーがとてもユニークなためにインストゥルメンタル曲の方が目立ってしまいがちですが、レッドの温かいボーカルをフィーチャーしたバラードものにも捨てがたい名曲が多くあります。そんなひとつにこの曲がありました。

レッドの落ち着いたリード・ボーカルと好対照をなして、ドンのバンジョーとテナー・ボイスはたたみかけるように快調でスリリングなサウンドを創っています。またマック・マゲーハもノリのいいフィドルを聴かせてくれます。
Don Reno & Red Smiley / Love Please Come Home (King)

レッドと別れた後、ドンはビル・ハーレルと組んでテネシー・カッタップスを維持していきます。もちろんレッドとのコンビ時代のヒット曲も引き続きレパートリーに加えていったのでした。
Don Reno & Bill Harrel / With The Tennessee Cut-Ups (CD化されていません)

デヴィッド・グリスマンが1973年10月、サンフランシスコのボゥルディング・ハウスでピーター・ローワン、ジェリー・ガルシア、ヴァッサー・クレメンツと組んでライヴ・ショーを仕掛けました。これがあの有名なアルバム「オールド・イン・ザ・ウェイ」です。これとは別テイクのものがCD化されています。そこにこの曲が収録されているのです。ジェリーのちょっと引っかかるようなバンジョーにのせてピーターの飛ぶようなボーカルが弾みます。
Old & In The Way / That High Lonesome Sound (Live Recordings) (Acoustic Disc)

グリスマンは1992年にも朋友ハーブ・ペダーセンと組んでリユニオン・アルバムを仕掛けています。このアルバムではレッド・アレンのいぶし銀のようなボーカルが堪能できます。軽やかなジム・ブキャナンのフィドルも聴きものです。
Red Allen, David Grisman, Herb Pedersen / Bluegrass Reunion (Acoustic Disc)

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by scoop8739 | 2005-03-20 23:45 | 不朽の名曲

62 ローハイド

(Raw Hide)

a0038167_21493258.jpgくれぐれも1959年からテレビで放映された連続テレビ・ドラマ西部劇「ローハイド」の主題歌と間違えないように。こちらの方はビル・モンロウが1951年に、旧友で俳優のマックス・ターハン主演の映画にちなんで作ったというインストゥルメンタル曲です。あちらのようにフランキー・レインが「ローレン、ローレン、ローレン、ローレン、ローレン、ローハーーイ!」と、のんびり歌っているのと違って、この曲はとてもテンポが速く、息をつかせぬ演奏とはこのことを言うのでしょう。ビルのマンドリンもさることながら、レッド・テイラーがブルーグラス・フィドルの典型とも言えるプレイを聴かせてくれます。録音時のパーソナルはルディ・ライルのバンジョー、ジミー・マーチンのギターでした。
Bill Monroe / Anthology (MCA)

ビル・モンロウをアイドルとしていたのがマンドリン奏者ジョン・ダフィーです。カントリー・ジェントルメン時代はライヴ・ショーで必ずと言っていいほど演奏されていました。マンドリン奏法の技術が十分に活かされる曲だけに、ダフィーも張り切っています。
The Country Gentlemen / On The Road (And More) (Smithsonian Folkways)

そのダフィーが、ジェントルメン退団後に結成したセルダム・シーンのライヴ・アルバムでもまたまた張り切って演奏しています。こちらの方が演奏の腕が上がっているように聴こえるのは私だけでしょうか?
Seldom Scene / Recorded Live At The Cellar Door (Rebel)

同じくビル・モンロウをアイドルとしていたリッキー・スキャッグスの火を吹くような演奏が聴かれるアルバムです。バックのケンタッキー・サンダーもバリバリの演奏をしています。
Ricky Skaggs & Kentucky Thunder / Bluegrass Rules (Skaggs Family)

ビル・モンロウのトリビュート・アルバムでマンドリンを弾いているのが、デル・マッカリーの息子のロニーです。若さに任せてのテクニックに冴えが見えます。スチュアート・ダンカンの鳥肌立つフィドルも聴きものです。
All Star Tribute to the Father of Bluegrass Music / True Life Blues (Sugar Hill)

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by scoop8739 | 2005-03-19 21:53 | 不朽の名曲

61 ハウ・マウンテン・ガールズ・キャン・ラヴ

(How Mountain Girls Can Love)

a0038167_2143101.jpgこれは言うまでもなくスタンリー・ブラザースの名曲です。彼らの最大の魅力はその独特なコーラスにありました。永遠不朽のハーモニーはカーターの朴訥な歌唱とラルフの艶やかなハイテナーによって醸し出されたものです。この曲は今日でもジャムなどで必ず歌われる定番の一つですが、かつて日本で発売されていたLPには、「お山の彼女は恋が好き」という妙な邦題が付いていたものでした。直訳だと「山の少女がいかに愛することができるか」ということになるのですが、それでは面白くもおかしくもなく、またタイトルらしくありません。そこでボクは「山の娘は恋上手」と名付けました。いかがでしょう?
The Stanley Brothers / 16 Greatest Hits (Hollywood)

1966年、兄カーターが重病に陥り41歳の若さでこの世を去ってしまいました。兄亡き後のラルフが来日した折のコンサートでオープニングにこの曲を取り上げています。
Ralph Stanley And The Clinch Mountain Boys / Ralph Stanley in Japan (Rebel)

かつてクリンチ・マウンテン・ボーイズで活躍したことのあるリッキー・スキャッグスがメジャーになってからもケンタッキー・サンダーを率いて愛唱しています。
Ricky Skaggs & Kentucky Thunder / Live At The Charleston Music Hall (Skaggs Family)

リッキー・スキャッグスとは旧知の仲でブルーグラス界随一のギタリスト、トニー・ライスもこの歌を歌っています。このアルバムはいつもながらのトニーの華麗なギター・ピッキングによるブルーグラス名曲集となっています。
Tony Rice / Plays and Sings Bluegrass (Rounder)

あの渋いシルバー・ミドル・バンドのセルダム・シーンが、なんとも粋にハイテンポで聴かせてくれます。
Seldom Scene / Scenic Roots (Sugar Hill)

一風変わったところでは、ブルーグラスのアーティストではないのですが、有名なシンガー・ソングライターのジョン・デンバーが1979年のアルバムでこの曲を歌っています。豪華布陣を率いてのスタジオ・ワークですが、新しいスタイルが無理なく馴染んで余裕を感じさせてくれます。ブルーグラス界ではおなじみのミュージシャンではバンジョー、ギター、コーラスにハーブ・ペダーセン、ベースにエモリー・ゴーディ・Jr.が参加しています。
John Denver / Autograph (RCA)

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by scoop8739 | 2005-03-18 21:39 | 不朽の名曲

60 ブラック・マウンテン・ラグ

(Black Mountain Rag)

a0038167_16131063.jpgドク・ワトソンは、1963年のニューポート・フォーク・フェスティバルで、フィドルのホット・リックを応用したこの曲の早弾きを披露して聴衆の度肝を抜いたという伝説を残しています。ドクはこの時、すでに40歳を超えていたのですが、そのギター・プレイは瑞々しく、また渋い歌声も不思議な魅力を持っていました。

この曲は初期のスタンリー・ブラザーズのフィドラー、レズリー・キースの作といわれ、フィドル・チューンの「Lost Child」を原曲として作られているのだそうです。

古いところでは1949年、ロイ・エイカフと彼のスモーキー・マウンテン・ボーイズの録音があります。この時フィドルを弾いていたのは、後にブルー・グラス・ボーイズでも活躍するトミー・マグネスでした。
Roy Acuff & His Smoky Mountain Boys / Can't You Hear Me Callin' Bluegrass: 80 years of American Music (Sony)

ドン・リーノウが Dチューニングで見事なリックを次から次へと繰り出すインストゥルメンタル・ナンバー「Green Mountain Hop」も、実はこの曲のことです。リーノウ&スマイリーの演奏としてリリースされたのは,当時バンジョー・チューンとしてヒットしていた「Home Sweet Home」と同じセッションで録音され,そのB面としてでした。
Don Reno & Red Smiley / Early Years 1951-1959 (King)

同じ題名ではバンジョー奏者、ビル・キースによるカバーもあります。
Bill Keith / Something Auld, Something Newgrass, Something Borrowed, Something Bluegrass (Rounder)

ブルーグラス・ギターの伝説的な創造者と言われているクラレンス・ホワイトは、ジョージ・シャフラーのクロス・ピッキングとアール・スクラッグスのシンコペーション、そしてドン・レノのフラット・ピッキングを基にした独自のギター・プレイで、ドク・ワトソンを凌駕するテクニックを見せつけてくれます。
Clarence White / 33 Acoustic Guitar Instrumentals (Sierra)

カントリー・ガゼットがそれまでのリード・ヴォーカル、ケニー・ワーツに替えて、ケンタッキー・カーネルズのローランド・ホワイトを迎え入れてライヴ・ショーをレコーディングしています。そのオープニングに使われたのがこの曲で、バイロン・バーラインのフィドルにアラン・マンデのバンジョーが軽快に絡み、さらにローランドがクラレンス・ホワイト並みのリード・ギターを聴かせてくれると、おのずとショーへの期待が増してきます。
Country Gazette / Live At McCabes (CD化されていません)

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by scoop8739 | 2005-03-17 20:30 | 不朽の名曲

59 サニー・サイド・オブ・ザ・マウンテン

(Sunny Side Of The Mountain)

a0038167_1614162.jpg元はホークショー・ホーキンスが歌いヒットさせたカントリー・ソングですが、ジミー・マーチンがレパートリーに加えてからはすっかり彼のオリジナルのようになりました。この曲での彼のボーカルと、それを支えるサイドメンも完璧で、完全なブルーグラス・アレンジがなされています。最初に録音した時のバンジョー奏者はマイク・ミラー、テナー・ボーカルとマンドリンはヴァーノン・デリックあたりでしょう。なお、ジミーはこの曲で1965年にASCAP賞を受賞しています。
Jimmy Martin / Greatest Hits (King)

ビル・モンロウ主催のブルーグラス・フェスティバル「ビーン・ブロッサム」にも収録されているジミーのパフォーマンスは、ブルーグラスの野外ライブらしく、拍手、口笛もそのままに拾ってあり、当時の興奮がそのまま伝わります。
Bill Monroe / Bean Blossom (MCA)

ウィルマ・リー&ストーニー・クーパーはジミーに先駆けてこの曲を録音しています。
Wilma Lee & Stoney Cooper With Their Clinch Mountain Clan / Can't You Hear Me Callin' Bluegrass: 80 years of American Music (Sony)

あれっ!彼らも演っていたの?と思ってしまったのが、スタンレー・ブラザーズのスターディー時代の録音です。
The Stanley Brothers / 16 Greatest Hits (Hollywood)

ジミーと旧知の間柄であるオズボーン・ブラザーズも1978年に録音しています。
The Osborne Brothers / Bluegrass Collection (CMH)

ローランドとクラレンスのホワイト兄弟のコーラスが堪能できる、1965年のライヴ録音ヴァージョンです。クラレンスのタイミングを外したリズム・ギターが聴きものです。
The Kentucky Colonels / Livin' In The Past (Sierra)

こちらは後年のローランド・ホワイトが渋いボーカルを聴かせてくれるカントリー・ガゼットのヴァージョンです。アラン・マンデのバンジョーはいつ聴いても心地よいですね。
Country Gazette / Out To Lunch (CD化されていません)

最後に、映画「オー・ブラザー!」で主演ジョージ・クルーニーの声を吹き替えて歌ったダン・ティミニスキ(アリソン・クラウスとユニオン・ステーションのギター)のソロ・アルバムでも、この曲が聴かれます。
Dan Tyminski / Carry Me Across the Mountain (Rounder)

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by scoop8739 | 2005-03-16 21:57 | 不朽の名曲

58 フォギー・マウンテン・ブレイクダウン

(Foggy Mountain Breakdown)

a0038167_1615269.jpg1950年、アール・スクラッグスのペンによる不滅のインストゥルメンタル・チューンです。つまりこの曲を知らないようなブルーグラス・ファンはいないと言っても過言ではありません。

コードはG(レコードでは半音上がりのチューニングのためG#となっています)を2小節、Emを1小節、Gを1小節、再びEmを1小節、Gを1小節、Dを1小節、そしてGに戻って1小節となります。Emを含んでいるのがミソですね。

この曲は、映画「俺たちに明日はない」(原題:Bonnie and Clyde 監督:アーサー・ペン、1967年の作品)で使用されたことでも有名ですが、これによってブルーグラスを知らない人でも何らかの感動を覚えたはずです。

フラット&スクラッグスは後年、何度となくこの曲を録音していますが、これほどの名曲となると数多くのバンジョー・ピッカーによっても演奏されています。アール・スクラッグスをアイドルとするピッカーにソニー・オズボーンやJ.D.クロウなどがいます。彼らの演奏はそれぞれ次のアルバムで聴くことができます。

The Osborne Brothers / Bluegrass Special (ん?これはCD未発表か?)
J.D.Crowe and the New South / Live In Japan (Rounder)

やはりスクラッグス・スタイルのビッグ・バンジョーを聴かせるビル・エマーソンが、1970年に来日した折にコンサートで演奏しています。
The Country Gentlemen / Live in Japan (Rebel)

珍しいところでは、アラン・マンデが完璧にスクラッグス・スタイルで演奏しているものもあります。
The Country Gazette / Live on the Road (Disc Union) (これまたCD化されていない)

超珍しいものとして、ネオ・ロカビリーで一世を風靡したストレイ・キャッツが「Feline Frisky」(Recall)というライヴ・アルバムで演奏しています。

しかし何といってもオリジナルのフラット&スクラッグス盤に勝るものはありませんね。

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by scoop8739 | 2005-03-15 21:18 | 不朽の名曲