カテゴリ:不朽の名曲( 47 )

84 おじいさんの古時計

(Grandfather’s Clock)

1961年に正式にカントリー・ジェントルメンに加入したトム・グレイは、ブルーグラス界にフォー・ビートを持ち込みました。フォー・ビートを刻むベーシストとしては、彼以前にもセドリック・レインウォーターやジョージ・シャフラーといった人がいましたが、彼のそれは他の楽器ともよりマッチして、ブルーグラスをさらにダイナミックなものにしました。彼のベースにインスパイアされて、ジェントルメンはいろいろな曲を作り録音しています。

a0038167_17233956.jpg我が国では平井堅の歌でも有名になった「おじいさんの古時計」を、トムはカントリー・ジェントルメン時代からライヴの持ちネタとしています。彼らのフォークウェイズ第3作にして最初のライヴ・アルバム「オン・ザ・ロード」では、62年4月のアンティオーク・カレッジ編でこの曲が演奏されています。エディ・アドコックのパリパリしたバンジョーのブレイクに続いて、トムがベース・ソロを披露します。続くジョン・ダフィーのマンドリンのブレイクの後に、今度はスラッピングでベース・ソロをとります。
The Country Gentlemen / On The Road (And More) (Smithsonian Folkways)

トムはセルダム・シーンのライヴでも持ちネタを披露します。ジョン・ダフィーの巧妙なMCでこの曲に入っていきます。ジョン・スターリングが「トム、間違うなよ」と言った矢先に、イントロでバンジョーのベン・エルドリッジが間違ってみせるという軽いジョークが楽しいですね。それにしてもジェントルメンといい、シーンといい、トムの卓越したテクニックと安定したリズムがそれぞれのモダン・サウンド作りの大きなファクターとなっているのがよくわかります。
Seldom Scene / Recorded Live At The Cellar Door (Rebel)

この曲はトム・グレイのベース・ソロの印象が強いせいか、他に演奏している人は多くありません。そんな中、アラン・マンデが「フェスティバル・フェイヴァリッツ」シリーズの第2集でこの曲を取り上げています。間奏でのローランド・ホワイトのマンドリンが独特のいい味を出しています。
Alan Munde / Festival Favorites Volume 2 (Ridge Runner) (CD化されていません)

ベテラン・シンガーのマック・ワイズマンも古いカントリー・ソングを20曲揃えたアルバムでこの曲を歌っています。
Mac Wiseman / 20 Old-Time Favorites (Rural Rhythm)

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by scoop8739 | 2005-04-10 17:24 | 不朽の名曲

83 アッシズ・オブ・ラヴ

(Ashes Of Love)

a0038167_20492498.jpgサンフランシスコのロック・バンド「グレイトフル・デッド」を率いてきた故ジェリー・ガルシアは評判のブルーグラス・フリークでした。彼は1975年にデヴィッド・グリスマンらとともに「オールド・イン・ザ・ウェイ」をリリースしてブルーグラスに急接近したと思いきや、翌76年、フランク・ウェイクフィールドを中心とした「グッド・オールド・ボーイズ」なるバンドをプロデュースし、新たな仕掛けをしてきました。

このバンドはマンドリンのフランクに加えて、リード・ボーカルにカントリー・ロック・バンド「ニュー・ライダーズ・オブ・ザ・パープル・セイジ」のデビット・ネルソン、さらにバンジョーにドン・リーノウ、フィドルにチャビー・ワイズという豪華な布陣でレコーディングを行っています。

このアルバムのオープニング曲が「アッシズ・オブ・ラヴ」です。往年のカントリー・デュエット、ジョニー&ジャックとしておなじみのジョニー・ライトとジャック・アングリンの作で、彼らのヒット曲としても馴染みの深い曲ですが、こうしてブルーグラス・ヴァージョンとして聴いても何の遜色もありません。
Frank Wakefield & The Good Old Boys / Pistol Packin’ Mama (Liberty) (CD化されていません)

フランク・ウェイクフィールドと古くはコンビを組んでいたレッド・アレンが、デヴィッド・グリスマンらとアルバム「ブルーグラス・リユニオン」を制作しています。このアルバムではジェリー・ガルシアがしゃしゃり出て来て“美味しいとこ取り”してこの曲を歌っています。
Bluegrass Reunion Band / Bluegrass Reunion (Acoustic Disc)

クリス・ヒルマンのメイン・ストリームでの活躍はバーズに始まり、フライング・ブリトゥ・ブラザーズ、マナサス、サウザー・ヒルマン・フューレイ・バンド、マッギン・クラーク&ヒルマンと、西海岸の重要なバンドで脇役を固めていました。そんな彼が1984年に発表したソロ・アルバムが「デザート・ローズ」です。このアルバムはイーグルス初期のものよりのどかで、かなりカントリーよりのカントリー・ロック・アルバムとなっています。とはいえ、ドブロのアル・パーキンス始め、ジェームス・バートン、バニー・リードン、バイロン・バーラインらの腕達者がバックを固めているので聴き応えは充分なものとなっています。この中の1曲に「アッシズ・オブ・ラヴ」が収録されています。
Chris Hillman / Desert Rose (Sugar Hill)

ジム&ジェシーの来日コンサートでも演奏されました。「恋のなきがら」という邦題もなかなか味わいがあっていいものです。いつ聴いてもマクレイノルズ兄弟のコーラスは透き通って綺麗ですね。
Jim & Jesse & The Virginia Boys / Back in The Tokyo Again (Vivid Sound)

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by scoop8739 | 2005-04-09 19:12 | 不朽の名曲

82 ビューグル・コール・ラグ

(Bugle Call Rag)

J.D.クロウは13才でバンジョーを始め、16才の頃アマチュア・コンテストに入賞します。この時、ケンタッキーのレキシントンを通りかかったジミー・マーチンに認められて、1956年にサニー・マウンテン・ボーイズに入団しています。ジミーのもとには1963年まで在籍し、21曲のレコーディングに参加しました。

ちなみにジミー・マーチンがそれ以降のバンジョー・プレイヤーに、J.D.のスタイルで演奏することを要求しているのは何故かというと、ジミーとJ.D.と2人で作り上げたサウンドこそが、ジミーの理想とするサニー・マウンテン・ボーイズのスタイルであり、それがすなわちJ.D.のように弾くということに他ならないからなのです。

a0038167_20582787.jpgさて、J.D.は1966年11月にもジミーのレコーディングに誘われていて、ここでは自らの名を冠した「クロウ・オン・ザ・バンジョー」という曲を残しています。実はこの曲、誰もがよく知っている名曲「ビューグル・コール・ラグ」のことだったのです。
Jimmy Martin & The Sunny Mountain Boys / You Don't Know My Mind (1956-1966) (Bear Family)

この「ビューグル・コール・ラグ」という曲は元々ジャズの名曲でベニー・グッドマン楽団の演奏でも有名ですが、ブルーグラスの世界でも、アール・スクラッグスが1961年に名盤「フォギー・マウンテン・バンジョー」に残し、ビル・モンロウも同年のアルバム「ブルーグラス・ランブル」(バンジョーはトニー・エリス)に収録するなど超有名曲となっています。
Bill Monroe & His Blue Grass Boys / Bluegrass Ramble (MCA)

先のJ.D.クロウのように演奏者によっては名前を変えて録音していますが、オズボーン・ブラザーズはアルバム「ボイセス・イン・ブルーグラス」で、この曲を「ビューグル・オン・ザ・バンジョー」とタイトルしています。ここではソニー・オズボーンのバンジョーが鮮やかにスクラミングしています。
The Osborne Brothers / Voices In Bluegrass (MCA)

ギタリストのトニー・ライスは「カリフォルニア・オータム」というアルバムでこの曲を取り上げています。バンジョーでおなじみのこの曲も、ギター・ソロで聴くとまた格別の味わいがあります。
Tony Rice / California Autumn (Rebel)

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by scoop8739 | 2005-04-08 21:01 | 不朽の名曲

81 聞こえないのかい

(Can’t You Hear Me Callin’)

ビル・モンロウの代表曲と言われる「聞こえないのかい」(Can`t You Hear Me Callin')は、モンロウのスタジオ録音としては、意外や意外、1949年にマック・ワイズマンとデュエットしたものしかありません。ではこの曲がどうしてこんなに有名になったのかと言うと、カントリー・ジェントルメンの名盤「フォーク・セッション・インサイド」を始め、多くのミュージシャンが取り上げたことでポピュラーになったと思われるのです。つまりは、ジェントルメンのジョン・ダフィーやリッキー・スキャッグスのようなモンロウズ・チャイルドによって、この曲は歌い継がれて不朽の名曲となったのです。

a0038167_2234878.jpgジョン・ダフィーにおいては、モンロウの影響なくしては存在し得なかったと言っても過言でないくらいのモンロウ・フリークであり、これは先のアルバムに収められているこの曲を聴くことでも明らかです。マンドリン・ワークといい、テナー・ボーカルといい、その影響の大きさが顕著にみられます。
The Country Gentlemen / Folk Session Inside (Copper Creek)

また、リッキー・スキャッグスがかつて在籍していたブーン・クリークというグループでも、1978年発表のアルバムにこの曲を残しています。なお、このアルバムは80年代のコンポラグラス・サウンドの基本とまで言われる名盤となっています。
Boone Creek / One Way Track (Sugar Hill)

かつてのボーイズでもピカ一のボーカリストだったのがデル・マッカリーでした。モンロウのトリビュート・アルバムで息子ロニーとのデュエットで聴かせてくれます。バッサー・クレメンツのイントロに続いて艶のある声でリード・ボーカルを歌い、コーラスではテナーに廻っています。
Del McCoury / True Life Blues(All Star Tribute to the Father of Bluegrass Music) (Sugar Hill)

ハーブ・ペダーソンは、ソロ・アルバム「サウスウエスト」でこの曲を歌っています。コーラス部分はハーブのダブル・トラックで、これはこれで面白い感じがします。ドブロに超ベテランのジョッシュ・グラヴィスが絶妙の間奏を聴かせてくれます。
Herb Pedersen / Southwest (Coline)

ローランド・ホワイトのソロ・アルバムでは、1976年当時のカントリー・ガゼットのメンバーがサポートしています。バンジョーにアラン・マンデ、ギターとテナーにケニー・ワーツ、ベースとハイ・バリトンにロジャー・ブッシュの3人です。ローランドのいぶし銀のような渋いボーカルにケニーとロジャーのコーラスが被ります。
Roland White / I Wasn’t Born To Rock’n Roll But I Love To
Cook (Ridge Runner)

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by scoop8739 | 2005-04-07 20:49 | 不朽の名曲

80 ソルジャーズ・ジョイ

(Soldier’s Joy)

a0038167_2024841.jpgクラシックの世界3大テノール(The Three Tenors)というとパヴァロッティ、ドミンゴ、カレーラスの3人ですが、これをもじったのが、アール・スクラッグス、ドック・ワトソン、リッキー・スキャッグスの3人による「The Three Pickers」です。2003年12月にはこの3人によるコンサートが催されました。

バンジョーのアール、ギターのドクは年齢もキャリアも超ベテランの上、まだまだ健在です。そこにバリバリ現役のリッキーのマンドリンがからみ、カーター・ファミリーやモンロウ・ブラザーズ、ブルーズからブルーグラスと、彼らの音楽の原点といったレパートリーを中心に演奏されます。しかし何よりもアールの音楽センスの凄さに感服します。またドクはその芸術的な伝統音楽をマイペースで聴かせ、リッキーは偉大な2人を卒なくフォローします。加えてアリソン・クラウスが見事なサイドマンぶりとハーモニーで3人をサポートし、他にもケンタッキー・サンダーやスクラッグスのファミリー&フレンズ・バンドが総出で応援しています。

このアルバムは、アールとドクというアメリカ音楽の珠玉の芸術をたっぷりと味わえる大秀作です。この中に「ソルジャーズ・ジョイ」が収録されています。リッキーによるクロハマー・スタイルのバンジョーに乗ってドクとアールのソロが展開します。それ自体、なかなか味わい深い作品となっています。
Earl Scruggs, Doc Watson and Ricky Skaggs / The Three Pickers (Rounder)

アパラチア山系サウス・カロライナと隣接する北ジョージアは南部の州です。この地方出身のフィドリン・ジョン・カースンはヒルビリー系音楽の最初の成功者となりました。これに続いたのがギド・タナーの率いるスキレット・リッカーズでした。彼らが1929年に残した録音にこの曲がありました。古い録音ですがこれまたいい味を出しています。
Gid Tanner & His Skillet Lickers / Old-Time Fiddle Tunes And Songs From North Georgia (County)

新しいアレンジで聴かせるのは、マーク・オコーナーがヨーヨー・マ、エドガー・メイヤーらとともに制作したブルーグラス作品集「リバティ!」です。これは、現代最高のチェリスト、フィドラー、ベーシスト、ヴァイオリニストが繰り広げるアメリカ音楽の旅とも言えるアルバムです。つまり、最高のアーティストたちの豪華な競演によって、異郷の音楽でありながら、どこか懐かしいアメリカン・トラディショナル・サウンドが堪能できる1枚なのです。スペシャルゲストとして、ジェイムズ・テイラーやアリソン・クラウスが参加していることも大きな話題を呼びました。バックも素晴らしいのですが、オコーナーのフィドルは魅力的で感動的です。何ともいえない荘厳な雰囲気の「ソルジャーズ・ジョイ」をお楽しみ下さい。
Mark O’Conner / Liberty! (1997 Television Mini-series) (Sony)

リン・モーリスのバンド・メンバーとして活躍するロン・ステュワートは、フィドル、バンジョーと、どちらの楽器にもプロフェッショナルなテクニックとセンスを持つアーティストです。フィドル奏者としての彼は、2000年にIBMAアウォード「最優秀フィドル・プレイヤー」を獲得しているほどの腕前です。彼のソロ・アルバムはリン・モーリスのプロデュースで、全13曲中6曲が彼のオリジナル作品で占められていて、この中にも「ソルジャーズ・ジョイ」が収録されています。
Ron Stewart / Time Stands Still (Rounder)

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by scoop8739 | 2005-04-06 20:23 | 不朽の名曲

79 刑の終わるその日まで

(Doing My Time)

a0038167_19431262.jpg観客の歓声の後、ベン・エルドリッジの華麗なバンジョー・イントロに続いて、ジョン・スターリングが歌いだします。そこへジョン・ダフィーのコーラスが被さり、さらにリフレインのソロまで歌います。マンドリンの間奏後のソロはダフィーからで、リフレインに入るとおもむろに登場して来たのがマイク・オルドリッジです。そしてバンジョーの間奏の後は最初と同じ組み合わせとなります。そうです、これはおなじみセルダム・シーンの名盤「ライヴ・アット・セラー・ドア」の1曲目で演奏されている「刑の終わるその日まで」(Doing My Time)です。さらに演奏は続きます。

ドブロの間奏後にダフィーの一段と高いテナーが響き渡り、続くリフレインでは珍しくトム・グレイが登場してきます。ダフィーに茶化されてトムもお返しを一発、メンバー総出演後はダフィーの一人舞台でエンディングとなります。各楽器と歌のバランス、これぞセルダム・シーンのサウンドの特性であり魅力なのです。
Seldom Scene / Live At The Cellar Door (Rebel)

この曲はジミー・スキナーの作で、古くは1951年10月にフラット&スクラッグスがマーキュリー盤の録音で取り上げて有名になりました。
Lester Flatt & Earl Scruggs & The Foggy Mt. Boys (Mercury)

映画「オー・ブラザー!」現象で、あちこちのレーベルが倉庫を探しまわってブルーグラスやオールド・タイムの音源をリリースするようになりました。このブームがなければこれらの音源は誰にも聴かれることがなかったかもしれませんが、マンドリン奏者にして熱烈なブルーグラス愛好家であるデヴィッド・グリスマンは、自らの遺したぼう大なテープのストックを掘り起こして、それまでリリースされたことのなかったトラックを選び出しました。これらはブルーグラスの大家たちと共に録音したもので、マック・ワイズマン、デル・マッカリー、ラルフ・スタンレーらが参加しています。このアルバムでは、今は亡きジョン・ハートフォードのバンジョーとグリスマンのマンドリンの素晴らしいデュエットでこの曲が聴けます。
David Grisman / Life Of Sorrow (Acoustic Disc)

天才サム・ブッシュ(フィドル、マンドリン、ヴォーカル)、コートニー・ジョンソン(バンジョー)、カーティス・バーチ(ギター、ヴォーカル)、ジョン・コーワン(ベース)の4人からなるニューグラス・リバイバルの活動は1972年に遡るのですが、長髪でジーパン姿の若者が、いわば保守的ともいえるブルーグラス音楽にロックを融合させたことにその成功を見ることができます。そんな彼らが、1975年と1977年にスタジオ録音した2つのLP「When The Storm Is Over」「Fly Through The Country」を1枚に復刻した贅沢なCDがあります。この中にもこの曲が収録されています。革新的な即興演奏を取り入れたロック・フィーリングにあふれた仕上がりとなっています。
New Grass Revival / When The Storm Is Over & Fly Through The Country (Flying Fish)

僚友サムに負けじとばかりにトニー・ライスも頑張っています。まるで「ミュール・スキナー・ブルース」のイントロを思わせるようなギターからスタートするこの曲は、若きトニーの気負った感じの歌いっぷりがなかなかいいですね。
Tony Rice / Guitar (Rebel)

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by scoop8739 | 2005-04-05 19:44 | 不朽の名曲

78 デキシー・ブレイクダウン

フライング・ブリトゥ・ブラザーズは、アルバム「The Flying Burrito Brothers」発表後に、スニーキー・ピートとバーニー・レドンが相次いで脱退し、バンドは再び危機を迎えました。そこでリーダーのクリス・ヒルマンは、スニーキーの代役としてシャイローにいたアル・パーキンズを引き抜くと同時に、「Burrito Deluxe」にゲスト参加していたバイロン・バーラインに助力を求めます。当時バイロンはカントリー・ガゼットを始動させる準備をしていたところでしたが、結果的にガゼットのメンバーであるケニー・ワーツ、ロジャー・ブッシュ、そしてバーラインの3人がブリトゥズのヨーロッパ・ツアーに付き合うこととなり、7人という大所帯のツアー・バンドが誕生することになりました。

a0038167_20134941.gifこうして録音された「Last Of The Red Hot Burritos」の最大の聴きどころは、アルバム中盤に用意されたマンドリンのヒルマンとカントリー・ガゼットの面々によるブルーグラス・コーナーです。アルバム4曲目の「デキシー・ブレイクダウン」から6曲目の「オレンジ・ブロッサム・スペシャル」までの演奏では、ヒルマンが水を得た魚のように元気良く演奏しています。ギターのケニー・ワーツはここではバンジョーを担当し、これもなかなかの聴きものですが、バイロンのフィドルの素晴らしさは言うまでもありません。彼ほど聴衆を興奮させるツボを心得ている奏者も珍しいのではないでしょうか。
The Flying Burrito Brothers / Last Of The Red Hot Burritos

バイロン・バーラインは、ガゼット脱退後に組んだバンド「サンダンス」のライヴでもこの曲を演奏しています。バンジョーのジョン・ヒックマン、ギターのダン・クレアリーに続いて、流れるようなバイロンのフィドリングが聴けます。
Byron Berline & Sundance / Live At McCabes (Takoma) (CD化されていません)

しかし何といっても作者自らが演奏しているオリジナルを外す訳にはいきません。ダン・リーノウの独特のバンジョー・フレーズが飛び出します。
Reno & Smiley / On The Air (Copper Creek)

アメリカ西海岸で活躍したディラーズは華麗なインストゥルメンテーションと愉快なステージで多くのファンをつかみました。彼らのデビュー2作目のアルバムはそんな楽しいライヴの模様を収録しています。この曲は彼らのもっとも得意とするインストゥルメンタル曲で、ダグ・ディラードのバンジョーが弾んでいます。
The Dillards / Back Porch Bluegrass-Live!!! Almost!!! (Warner)

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by scoop8739 | 2005-04-04 20:13 | 不朽の名曲

77 ミュール・スキナー・ブルース

(Mule Skinner Blues)

リチャード・グリーンとピーター・ローワンは、都会から出てレッド・アレンを経由し、ビル・モンロウの下でブルー・グラス・ボーイズの第2期黄金期を支えました。それと前後して、ビル・キースやデヴィッド・グリスマンも同じ道を辿り、彼らは再び都会に戻ってきたのです。そしてさらにフォーク〜ブルース〜ロック〜カントリーといった音楽遍歴を重ねていったのでした。

一方、1960年代末のウエスト・コーストでは、バーズのクラレンス・ホワイトがカントリー色を強く打ち出し、新しいディラーズやフライング・ブリトゥ・ブラザーズが派手に動き出します。こうして、1960年代末から70年代にかけてのブルーグラスやフォーク&ロック・シーンでは、クラレンスを始めとして、リチャード、ピーター、デヴィッド、ビルらが集まって何かをやろうとする一触即発的な動きが感じられていました。

a0038167_14593650.jpgそんな中、ビル・モンロウのロサンゼルスでのテレビ出演が不可能になったことから、急遽その穴を埋めるべく上記メンバーによるテレビ番組放映が決まったのです。これを観ていた当時のワーナーのプロデューサーが、レコードにしないかと持ちかけて制作されたのが、かの有名な「ミュールスキナー」というアルバムです。

このアルバムの前半はビル・モンロウのレパートリーとそのスタイルを軸に、それを忠実に再現し、そこからわき上がる新しさが楽しめます。アルバムの1曲目に収録されているのが、タイトル曲の「ミュール・スキナー・ブルース」です。闇を切り裂くようなクラレンスのテレキャスターによるイントロに続いて、バンジョー、フィドル、マンドリンが一斉に耳に飛び込んできます。ピーターの飛び跳ねるようなボーカル、リチャードのうねるようなフィドル、これは間違いなくぼくが今まで聴いてきた中でも史上最強の「ミュール・スキナー・ブルース」でした。
The Mule Skinner Band / Mukeskinner (DBK Works)

となると、オリジナルを聴かない訳にはまいりません。まずは作曲者自演のオリジナルを聴いてみましょう。ジミー・ロジャースはカントリー音楽を商業ベースにのせ、この音楽を全世界に広めたアメリカン・ブルー・ヨーデラーで、南部アメリカの土着の匂いがする歌い手と言われています。現在も多くのアーティスト、ファンに引き継がれその人気は衰えを知りません。1961年にカントリーの「名誉の殿堂入り」を、1986年には「ロックの殿堂入り」を果たしています。
Jimmie Rodgers / The Essential Jimmie Rodgers (RCA)

続いてはこの曲をブルーグラスに取り入れた張本人ビル・モンロウが、いわゆるブルーグラス・スタイルを完成させる直前の、グランド・オール・オープリーに初出演を果たした時の録音です。ビルはトレード・マークのマンドリンではなくギターを弾いています。ここでは彼のGランが聴かれます。
Bill Monroe / Music of Bill Monroe from 1936-1994 (Uni/MCA)

ブルー・グラス・ボーイズからフラット&スクラッグスが抜けた後、バンジョーにルディ・ライル、ギターにジミー・マーチンを加え、この曲はブルーグラス・スタイルで「ニュー・ミュール・スキナー・ブルース」というタイトルとなり新録音されました。
Bill Monroe / Country Music Hall of Fame (MCA)

数多いブルーグラス曲の中で一番ドライブするのがこの曲です。ジョン・ダフィーの張り切り方は異常とも思えるくらいです。
The Country Gentlemen / Roanoke Bluegrass Festival (Starday) (CD化されていません)

1950年代半ばのイギリスで「スキッフル・ブーム」を巻き起こしたロニー・ドネガンが、1999年に新作をリリースしています。自身の代表曲の再録もきっちり今風の音作りに仕上げていて新鮮な印象を受けます。アルバムの中ではヴァン・モリソンとの共演でこの曲が収録されています。
Lonnie Donegan / Muleskinner Blues (RCA)

アメリカン・ポップスが最もそれらしかった時代の代表的存在だったコニー・フランシスが、そのルーツともいえるカントリーを歌っています。共演は若き日のハンク・ウィリアムス・ジュニアです。彼女は60年代前半にカントリーのLPを3枚出していて、このアルバムはその中の1枚です。コレクターズ・アイテムとしてもなかなかなものです。
Connie Francis & Hank Williams Jr. / Sing Great Country Favorites (Bear Family)

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by scoop8739 | 2005-04-03 15:05 | 不朽の名曲

76 デビルズ・ドリーム

(Devil’s Dream)

1963年3月、ビル・キースはアール・スクラッグスに会いにオープリーにやって来たところ、そのスクラッグス・スタイルとはひと味違った斬新なバンジョー・スタイルを買われ、ケニー・ベイカーを通じてブルー・グラス・ボーイズに入団するというスピード出世を果たしたのです。

この当時のビル・モンロウは、人気者のフラット&スクラッグスに対し強烈な闘争心と反骨心をあらわにしていました。そんな彼のもとへ若い才能が飛び込んで来たのですから「渡りに船」とはこのことで、早速キースのために2回のセッションを設けて合計7曲を録音し、その中から6曲がアルバムに収録されました。この中の1曲に「デビルズ・ドリーム」がありました。

a0038167_23582213.jpgさて1963年と言うと、ビル・モンロウが初めてニューポート・フォーク・フェスティヴァルに出演した年でもあります。フォーク・リヴァイヴァル真只中とはいえ、ブルーグラスがどのように受け止められるのか懐疑的だったモンロウですが、彼が惚れ込んだビル・キースをこれほどまでにフィーチュアしたステージというのも極めて異例のことです。ここではキースの紹介やグランド・オール・オープリへの繰り返しの言及に、フォーク・ファンへのメッセージを強く意識した彼の胸のうちがよく表われているとみていいでしょう。

「デビルズ・ドリーム」はフィドル・チューンとしてはかなりポピュラーな曲ですが、バンジョーでメロディックに弾きこなすのには大変な技を要します。それをキースはいとも容易く鮮やかに弾きこなしています。
Bill Monroe / July 1963, Two Days At Newport (And More Bears)

アイルランド伝承音楽の使者チーフタンズは、かつてナッシュヴィルでニッティ・グリティ・ダートバンド、エミルー・ハリス、ウィリー・ネルソン、チェト・アトキンス、リッキー・スキャグスらをゲストに、アパラチア&アイリッシュの「アナザー・カントリー」という素晴らしいアルバムを制作し、グラミーを受賞しました。そして2003年には、再びナッシュヴィルでブルーグラスやフォーク・ミュージシャンらと共演して、その続編のようなアルバムを作っています。収録されているこの曲には、ドク・ワトソンが参加してフラットピック・ギターを聴かせてくれます。
The Cheaftains / Further Down The Old Plank Road (RCA)

ダン・クレアリーはブルーグラス・アライアンスからキャリアをスタートさせたギタリストですが、彼の弾く「デビルズ・ドリーム」のバージョンは、ドク・ワトソンの「ブラック・マウンテン・ラグ」と並んで、フラット・ピッキング・ギタリストの古典的名曲と言われるものです。途中でマイナーになるところがフラメンコ、またはスペインのクラシック・ギター風です。これはブルーグラス・ギターではめったに聴かれないフレーズです。
Dan Crary / Bluegrass Guitar (Sugar Hill)

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by scoop8739 | 2005-04-02 23:58 | 不朽の名曲

75 ソルティ・ドッグ・ブルース

(Salty Dog Blues)

早口ソングのようなこの歌は、1939年にモリス・ブラザーズが作曲し録音しています。フラット&スクラッグスが、ブルー・グラス・ボーイズから独立後の1951年にレパートリーに取り入れてから有名になりました。ここでのリード・ボーカルはいつものレスター・フラットではなくフィドルのベニー・シムスでした。

「Salty Dog」とは、当時人気のあった飲み物か,あるいはそれにちなんだ酒場の名前のことと言われています。しかしそれ以前、1930年にアレン・ブラザーズが「A New Salty Dog」として録音していて,その一人リー・アレンによると、「Salty dog」の定義は「俗っぽく,世の中をいい加減に生きる男」だったことが記録されています。

a0038167_1959752.jpgフォギー・マウンテン・ボーイズ絶頂期の1962年12月、カーネギー・ホールで行われた彼らのライヴのオープニングにこの曲が取り上げられています。レスター・フラットの曲紹介の後、間髪を入れずイントロに入るアール・スクラッグスや、ポール・ウォーレンの切れ味鋭いフィドルなど聴きどころ満載のアルバムです。LPでは13曲が収められていましたが、CDではなんと32曲も収録されています。録音も良好で、特にウッドベースは、特有のこもった感じがなくメリハリがあり心地よく聴こえます。
Lester Flatt & Earl Scruggs & The Foggy Mt. Boys / At Carnegie Hall (Koch)

1964年の夏のある日、ローランド・ホワイトが不在のときにケンタッキー・カーネルズの残る3人が友人宅のリビング・ルームでのリハーサルをテープに収めていました。ここではステージでのホットなアドリブ演奏とは違う、アルバム作りにも近い丁寧さが垣間見られます。ただし、録音は良くないしローランドもいません。またアルバム構成もされていませんが、アルバム作りに近い姿勢で録音された貴重な録音だと思います。ローランドのマンドリンがない代わりに、クラレンスのギターが火を噴き、ベースのロジャーがバンジョーに持ち替えてのビリー・レイ・レイサムとのツイン・バンジョーを披露するなど、リラックスした中でさまざまな曲を楽しんでいます。アルバムの1曲目に「シャッキン・ザ・コーン」が収録されています。
Latham, Bush & White / Rare Performances (Shikata)

「世の中をいい加減に生きる男」のことを、可愛いホワイト・シスターズが少しアレンジを加えたリズムで歌います。転がるようなジャック・ヒックスのバンジョーと、これまた鈴を転がしたようなバック・ホワイトのマンドリンがいい感じです。
Buck White & The Down Home Folks / Live At Pickin’ Parlor (County) (CD化されていません)

デヴィッド・グリスマンがすべての曲でマンドリンを弾くというコンセプトのセッション・アルバム「心の故郷」の中にもこの曲が収録されています。ただしタイトルはグリスマンをもじって「Salty Dawg Blues」です。ここではグリスマンとトニー・ライスが交互にリードをとり、フラット&スクラッグス盤(Mercury)を再演しています。J.D.クロウの典型的なスクラッグス・スタイルのバンジョーと、サム・ブッシュのフィドルがさすがに貫禄を感じさせます。
David Grisman / Home Is Where The Heart Is (Rounder)

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by scoop8739 | 2005-04-01 20:00 | 不朽の名曲