カテゴリ:不朽の名曲( 47 )

94 パンハンドル・カントリー

(Panhandle Country)

マイク・オウルドリッジは人気バンド、セルダム・シーンの中にあってドブロという楽器をもってその中心的な役割を担ってきました。それでなくても革新的なアレンジや選曲で多くのファンを楽しませてくれるセルダム・シーンでしたが、これに飽き足らないのか、マイクは多数のソロ・アルバムをリリースしています。

a0038167_21501932.jpgその中から、タコマには「ドブロ」「ブルース・アンド・ブルーグラス」という2枚のアルバムを残しています(2枚のLPは1枚のCDになって発売されています)。これらはポピュラー・ミュージックから、ロック・ナンバー、ジャズ、レッド・ネック、もちろんブルーグラスまで大変ヴァラエティにあふれる内容となっていて、フラット&スクラッグスの「フォギー・マウンテン・バンジョー」や、ビル・モンロウの「ブルーグラス・インストゥルメンタル」に匹敵するほどのブルーグラス・インストにおける歴史的名盤となっています。またこれらのアルバムでは、脇を固めるサポート・ミュージシャンも豪華な人選がなされていて、マイクの素晴らしいドブロ演奏が堪能できます。

2枚目のアルバム「ブルース・アンド・ブルーグラス」の中に、ビル・モンロウのおなじみのインストゥルメンタル・ナンバー「パンハンドル・カントリー」が収録されています。ヴァラエティ豊かな選曲のアルバムの中にあって、さすがにこの曲は正当なブルーグラス・アレンジがなされています。バンジョー、マンドリン、リズム・ギター、ベースはセルダム・シーンのメンバーがサポートし、オリジナル曲同様、ツイン・フィドルにヴァッサー・クレメンツとリッキー・スキャッグスが参加しています。この曲ではマンドリン、ジョン・ダフィーのスケール・ピッキングも充分に生かされています。
Mike Auldridge / Dobro & Blues And Bluegrass (Takoma)

そのセルダム・シーンのライヴ盤では、マイクのドブロを中心にメンバーそれぞれがセンスのいいソロを聴かせてくれます。ライヴ録音にも拘らずマイクのドブロの音の伸びが大変よく美しい音色で聴かれます。最後のパートはコーラスを歌った後に「1・2・3・ジャン!」とカッコいい終わり方をして一言、「どうだ、ニューグラス・リバイバルめ!」と笑わせてくれます。
Seldom Scene / Recorded Live At The Cellar Door (Rebel)

毎度おなじみアラン・マンデ節のバンジョーが聴けるのは、後期カントリー・ガゼットのライヴ演奏を集めたアルバムです。マンドリンもこれまたローランド・ホワイト節が全開です。
Country Gazette / Live On The Road (Disc Union) (CD化されていません)

この曲のオリジナルは、ケニー・ベイカー、ボビー・ヒックスという2大フィドラーを擁したブルー・グラス・ボーイズ、1958年4月8日の録音でした。モンロウが主催する「ブラウン・カウンティ・ジャンボリー」のオープニング・テーマ曲としても有名な曲です。
Bill Monroe / Bluegrass 1950-58 (Box) (Bear Family)

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by scoop8739 | 2005-05-11 21:56 | 不朽の名曲

93 アイ・ウイッシュ・ユー・ニュー

(I Wish You Knew)

ボリック・ブラザース、モンロー・ブラザース、デルモア・ブラザースなどの兄弟デュオをお手本にして、アイラとチャーリーのルーヴィン兄弟がデュオを組んだのは1930年代でした。50年代になるとカントリー音楽のサウンドに変化が起こりますが、この時期にルーヴィン兄弟の活躍が始まります。なんと10回ものオーディションに挑戦した結果、1955年にグランド・オール・オプリーの出場を果たすこととなります。

a0038167_19521299.jpg彼らの特徴は革新的なヴォーカル・ハーモニーで、それは弟チャーリーのテナーと兄アイラの女声ばりのハイ・テナーとによる美しいデュエット・コーラスが魅力的でした。また曲作りにも大いなる才能を発揮しました。彼らの活躍は1963年に解散するまで続きますが、その後のカントリー、ロックに多大な影響を及ぼしたことでも有名です。
The Louvin Brothers / Radio Favorites 1951-57 (Country Music Foundation)

ルーヴィン兄弟と頻繁に交流していたのがジム&ジェシーのマクレイノルズ兄弟でした。この二組のグループは、スタイルの上からも、レパートリーの上からも、相互に近似していたという事情もあったのでしょうが、ジム&ジェシーは何度もルーヴィン兄弟の卓越した作曲のおかげを受けてきました。この曲もある意味、ジム&ジェシーのために書かれたようなものでした。
Jim & Jesse, Bill Monroe / Bean Blossom (MCA)

この曲というとこのグループと言われるくらいに定着したのがカントリー・ガゼットでした。彼らのデビューアルバム「パーティの裏切り者」の3曲目にこの曲が収録されていますが、軽快なフィドルのイントロに続いて、これぞウェスト・コースト・ブルーグラスという爽やかなハーモニーで歌われます。リード・ボーカルをとっているのはハーブ・ペダーソンでした。
Country Gazette / A Traitor In Our Midst (BGO)

初代ジョン・スターリング、二代目フィル・ロゼンタルに続いて、中期以降のセルダム・シーンを支えたリード・ボーカリストがルー・リードでした。彼はリード・ギター以外にもフィドルやマンドリンをも巧くこなすマルチ・プレイヤーです。そんな彼と同時期にシーンで活躍していたベーシストのT.ミッチェル・コールマンと、ドブロのマイク・オウルドリッジが加わって、1989年に「ハイ・タイム」というアルバムをリリースしています。この曲もアルバムに収録されています。ドブロのイントロに続いてコーラスが始まります。他のアーティストのものと比べると、すこしゆったりとしたテンポの仕上がりになっています。
Auldridge Reid & Coleman / High Time (Sugar Hill)

カール・ジャクソンのプロデュースで、エミルーやジェイムズ・テイラー、アリソン・クラウスなどが参加したルーヴィン・ブラザーズへのトリビュート盤がリリースされています。タイトルは「生きること・愛すること・失うこと」とでも訳すのでしょうか、マーティン・スチュアートとデル・マッカリーのデュエット曲「レット・アス・トラベル,トラベル・オン」など小気味良い演奏などが聴かれるこのアルバムは、第46回グラミー賞で最優秀カントリー・アルバムを受賞しただけでなく、4曲目のジェイムズ・テイラーとアリソン・クラウスの共演曲は、「ベスト・カントリー・コラボレーション」にも選ばれています。もちろんここでも「アイ・ウイッシュ・ユー・ニュー」を、娘さんでしょうか(?)キャシー・ルーヴィンとパメラ・ブラウン・ヘイズのデュエットで聴くことができます。
Various Artists / Livin', Lovin', Losin'- Songs of the Louvin Brothers (Universal South)

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by scoop8739 | 2005-05-09 19:53 | 不朽の名曲

92 ダスティ・ミラー

(Dusty Miller)

惜しくも65歳で亡くなったジョン・ハートフォードの残した功績は、ビートルズの「イエスタデイ」に次ぐ録音回数を誇る世界的ヒット曲「ジェントル・オン・マイ・マインド」を書いたことや、1968年に西海岸でザ・バーズのアルバム「ロデオの恋人」(Sweetheart of the Rodeo)の録音現場に居合わせてカントリー・ロックの誕生にかかわったこと、さらに1970年代以降のニューグラス・ムーブメントの精神的支柱となったことや、1980年代以降のオールドタイム・フィドルの研究と保存と、その教育に力を注いだことなどです。

a0038167_20181553.jpgその彼が1960年代後半、RCAレコードに残したすべてのアルバムがCD化されています。シリーズ3枚目の最後のCDは、LP3枚分を収めた2枚組となっています。RCA時代も後期になると、ジョンの才能の凄さとレコード会社の商業主義との間に大きな溝ができますが、ジョンはバンジョーへの愛着と自身の詩の世界を押し通しました。しかしRCAの旧態然とした首脳部は、ジョンの計り知れない才能を知りながらも、それをヒッピー社会のビジネスに生かせず、遂には希有の芸術家を手放すことになったのでした。

さてここで特筆すべきは、7枚目のオリジナル・アルバムとして制作されながら、今日まで陽の目を見ることのなかった幻のアルバム「ラジオ・ジョン」(Radio John)が初めて世に出たという快挙です。つまりこれは、RCAの3枚シリーズでは最もハートフォードらしい作品集だったのです。この中に収録されている「ダスティ・ミラー」(Dusty Miller)は、録音タイトルが「Dusty Miller Hornpipe And Fugue In A Major For Strings, Brass And 5-String Banjo」とあるように、モデラートなフーガ仕立てとなっています。
JOHN HARTFORD / John Hartford/Iron Mountain Depot/Radio John (BMG)

若き日のサム・ブッシュが、これまた若いアラン・マンデやウェイン・スチュアートらと一緒の作ったのが名盤「プア・リチャーズ・アルマナック」でした。ここでのサムはただただフィドルに専念し、みごとなインストゥルメンタル・アルバムを完成させています。この曲でのサムは、地味ながらもきっちりと聴かせてくれます。
Sam Bush, Alan Munde, Wayne Stewart / Poor Richard’s Almanac (Ridge Runner) (CD化されていません)

アラン・マンデは「プア・リチャーズ」の録音の後、ジミー・マーチンのバンドに加わります。そこでジミーの指導の下、右指の強いアタックを習得し、独自のバンジョー・テクニックを身につけました。その後はカントリー・ガゼットに加わりますが、その昔メンバーだったストーン・マウンテン・ボーイズのリユニオン・アルバムにも参加しています。ここでの「ダスティ・ミラー」は、「プア・リチャーズ」の頃から比べると数段パワーある演奏をしています。
Stone Mountain Boys / Reunion (Ridge Runner) (これまたCD化されていません)

アリソン・クラウスは1987年にラウンダー・レコードからアルバム「トゥー・レイト・トゥ・クライ」でデビューします。そのときの彼女はなんと15才でした。この中にも「ダスティ・ミラー」が収録されています。アリソンの華麗に透き通った声と、力強いフィドル・プレイを堪能できるアルバムとなっています。
Alison Krauss & Union Station / Too Late To Cry (Rounder)

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by scoop8739 | 2005-05-06 20:19 | 不朽の名曲

91 ラフ・アンド・ロッキー

(Don’t This Road Look Rough And Rocky)

「世界の中心でブルーグラス・ジャズを叫ぶ」とでもいうのでしょうか、世界の中心都市ニューヨークで生まれた異色のグループが「ウェイファリング・ストレンジャーズ」です。音楽ディレクターでもあるヴァイオリン奏者のマット・グレイサーを中心に、ブルーグラス・サイドからはバンジョー奏者のトニー・トリシュカとギター奏者のジョン・ミゲーン、ジャズ・サイドからはピアニストのラズロ・ガードニー、ドラムのジェイムズ・ハダッド、ベースのジム・ ホイットニー、そして3人の女性ボーカルを加えた大所帯で、ブルーグラスのスタンダード作品を素晴しいアレンジで見事なまでにジャズと融合させています。

a0038167_2014177.jpg彼らのデビュー・アルバムではラルフ・スタンレーやティム・オブライエン、ローリー・ルイスやロンダ・ビンセントといった大物アーティストをゲストに迎え、21世紀型新感覚のアメリカン・ミュージックを披露してくれました。続く第2弾ではアンディ・スタットマンやダロル・アンガー、ジェイ・アンガーとモリー・メイソン、オールドタイムからのブルース・モルスキーなどを適材適所に配し、前作より濃い目のブルース臭が漂うバンド音楽に仕上げています。

このアルバムの6曲目にフラット&スクラッグスの名曲「ラフ・アンド・ロッキー」が収録されています。重厚なベースのイントロに続いておなじみのメロディーがゆっくりとしたテンポで歌われます。間奏に入るとヴァイオリンとバンジョー、さらにギターが続き、セカンド・ブレイクでピアノがジャズの旋律を奏でるのです。それは決して違和感がなく、なんとも言葉では表すことの出来ない不思議な魅力に満ちあふれています。
The Wayfaring Strangers / This Train (Rounder)

ジョナサン・エドワーズは出世作「サンシャイン」(72年)でスターダムに昇り上がり、ジェームス・テイラー、ニール・ヤング、ドン・マクリーンらとともにシンガーソング・ライター時代の一角を担った歌手です。彼の歌にはシンプルで透明感にあふれ、澄み渡ったような鋭い感性が感じられます。そんなジョナサンをバックアップしてアルバム「ブルー・リッジ」を完成させたのがセルダム・シーンの面々でした。このアルバムの1曲目にこの曲が収録されています。ここではフォーク・サイドへのアプローチが楽しめます。
Jonathan Edwards & Seldom Scene / Blue Ridge (Sugar Hill)

1981年に発表した「ブルーグラス・アルバム」が大好評で、そのアルバム・プロモーションを兼ねての各地のフェスティバルではひっぱりだこの人気となったトニー・ライスを始めとするアルバム・バンドでしたが、第2弾はやはり前作に引き続いてアーリー・フラット&スクラッグス・ナンバーが中心となっています。つまり、トニー流のフォギー・マウンテン・ボーイズを大いに気取ったブルーグラス“激愛”アルバムとなっているのです。ここでもこの曲が収録されています。
Tony Rice / The Bluegrass Album Vol.2 (Rounder)

この曲はもちろんフラット&スクラッグスのオリジナルで、1954年5月14日に初めて録音されていますが、この頃になりますと彼らはビル・モンロウの呪縛から解かれたかのように伸び伸びと演奏をしています。ここではカーリー・セクラーのテナーが心地よく耳に飛び込んできます。
Flatt & Scruggs / Songs of Flatt & Scruggs (Rounder)

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by scoop8739 | 2005-05-04 20:04 | 不朽の名曲

90 ビル・チータム

(Bill Cheatham)

作曲家のバルトークからその名前をもらったというベラ・フレックは、1959年ニューヨークに誕生しています。彼がバンジョーに興味を覚えたのは15歳の頃でした。高校時代からバンジョーとビ・バップという意外な組み合わせに興味をひかれ、ジャズの影響も取り入れた自分のプレイ・スタイルを確立していきます。高校卒業後は、ジャック・トトルの「テイスティ・リックス」やジミー・ゴウドロウの「スペクトラム」というニュータイプのバンドに在籍し、この間の1979年には早くも初のソロ・アルバムとなる「クロッシング・ザ・トラックス」(Crossing the Trucks)を発表しています。

a0038167_11315332.jpgそして翌80年にバンジョーの革命児ビル・キースやトニー・トリシュカらとともに発表したのが「バンジョーのためのフィドル・チューン」(Fiddle Tunes For Banjo)でした。このアルバムは、バンジョーの名手3人がフィドル・チューンを三人三様に演奏するというもので、1曲目に収録されているのが標題の「ビル・チータム」です。この曲は古くからのフィドル・チューンで、フィドル弾きなら誰でも一度は演奏する曲と言われています。なお、この曲に限ってはビル、ベラ、トニーの順にブレイクをとっています。それぞれの演奏テクニックを比較するのも楽しみのひとつですね。
Tony Trischka, Bill Keith, Bela Fleck / Fiddle Tunes For Banjo (Rounder)

華麗なテクニックで美しい音色を聴かせるバンジョー・プレイヤーがベン・エルドリッジです。彼がセルダム・シーン以前に在籍していたのが、クリフ・ウォードロンのニュー・シェイズ・オブ・グラスでした。この曲でのベンは、愛器ギブソン“グラナダ”でスリー・フィンガーとクロマティックを絶妙に混ぜ合わせての素晴らしいバンジョー・チューンを聴かせてくれます。
Cliff Waldron & New Shades Of Grass / Traveling Light (rebel) (CD化されていません)

フラット&スクラッグスがドク・ワトソンを迎えて制作したアルバムの中にもこの曲が収録されています。大物同士の共演という企画物っぽいリラックス・ムードでやっているかと思うと、これが全く違っていて、テンションの高いインストゥルメンタル・アルバムに仕上がっています。ドク・ワトソンが傑作ファースト・アルバムを出したのが1964年、この録音が66年ですから、まさに彼が一番脂の乗り切っている時期でした。このアルバムで彼はモダンなギター・ワークを展開し、これを受けてのスラッグスのバンジョーも最高で、他のメンバーの演奏も素晴らしいものとなっています。
Flatt & Scruggs With Doc Watson / Strictly Instrumental (County)

ナッシュヴィルでのセッションには欠かすことのできないフィドラーとして、スチュアート・ダンカンと並ぶ存在となったのがオーブリー・ヘイニーです。彼のソロ3作目は、ナッシュヴィルでも近年評価が高まっているデイヴ・タルボットのバンジョーをフィ−チュアし、サム・ブッシュ、トニー・ライス、バリー・ベイルズという、これ以上にないパーフェクトなリズムにのせた見事なフィドルでその存在感を実証してみせます。アルバムの半分がケニー・ベイカーの作品でまとめるという、ベイカーへの憧憬と敬意の表われがまず目を引きますが、そこに込められた、故郷フロリダの先達チャビー・ワイズとヴァッサー・クレメンツへのオマージュが心に響いてきます。
Aubrey Haynie / The Bluegrass Fiddle Album (Sugar Hill)

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by scoop8739 | 2005-05-03 11:31 | 不朽の名曲

89 心の痛み

(Pain In My Heart)

1975年の日本公演を最後にトニー・ライスはニュー・サウスを去ります。この時彼は「二度とブルーグラスなんてやらないよ」という言葉を残しています。たしかにその直後に彼はカリフォリニアに住まいを移し、リチャード・グリーンらと共にデヴィッド・グリスマンをサポートして、ドウグ・ミュージックの完成に一役買うなど、ブルーグラスの世界から足を洗ったかのような動きをしています。

しかしトニーは、舌の根の乾くのを待てずに同年、「カリフォルニア・オータム」という名盤をリリースします。さらに77年には「トニー・ライス」、79年には「マンザニータ」と、2年おきにブルーグラスどっぷりのアルバムをリリースしています。この間、たとえ僚友サムブッシュがレオン・ラッセルとロックに活路を求めようとも、リッキー・スキャッグスがニュー・カントリー路線で華々しい世界に躍り出ようとも、トニーはもっともラディカルな方法論的実践者としてブルーグラスの王道を走っていったのでした。

a0038167_1944571.jpgそしていよいよ1981年、彼は常日頃想い描いていたプランを実践させるために、そうそうたるメンバーをカリフォルニアに集結させ、「正調ブルーグラス・アルバム」を作ることを決意します。バンジョーにJ.D.クロウ、マンドリンにドイル・ロウソン、フィドルにボビー・ヒックス、ドブロにジェリー・ダグラス、ベースにトッド・フィリップスという、その時点での最高のミュージシャンたちと共に、彼はブルーグラス名曲集を完成させたのでした。これが名盤「ブルーグラス・アルバム」(以降シリーズとなります)だったのです。

このアルバムは、ブルーグラス音楽創成期のフラット&スクラッグスの曲を中心に、ビル・モンロウや、オズボーン・ブラザーズ、ジミー・マーチンらの名曲を交え、トニーにとっては「ブルーグラスの方法論的実践者」の面目躍如たるアルバムに仕上がっています。この中に収録されているフラット&スクラッグスが1951年に録音した「心の痛み」は、J.D.クロウがスクラッグスを完全コピーし、トニーがレスター・フラットのような枯淡のリード・ボーカル、ドイル・ロウソンがカーリー・セクラーもどきの哀愁のテナー・ボーカルを聴かせてくれます。
Tony Rice / The Bluegrass Album Vol.1 (Rounder)

この曲のオリジナルは言わずと知れたレスター・フラットとアール・スクラッグスのフォギー・マウンテン・ボーイズです。彼らはコロンビアとレコーディング契約したものの、マーキューリーとの契約曲数が消化されておらず、1950年10月21日にこの曲を含む8曲がレコーディングされました。コロンビア移籍を前にして、彼らの意欲的でパワフルでスインギーなドライヴィング・ブルーグラス・サウンドが炸裂します。
Lester Flatt, Earl Scruggs & The Foggy Mountain Boys / The Complete Mercury Sessions (Mercury)

オズボーン・ブラザーズの代表曲の数々全24曲を、1980年代に再録音したオズボーンズのベスト曲集決定盤がCMHからリリースされてます。この中にこの曲も収録されています。
The Osborne Brothers / The Bluegrass Collection (CMH)

ビル・キースがデヴィッド・グリスマン・グループと組んで作ったアルバムにもこの曲は収められました。ギターはトニー・ライス、フィドルにリッキー・スキャッグス、ドブロにジェリー・ダグラス。当時もっとも活きのいいプレイヤーとの共演でした。
Bill Keith / Something Bluegrass (Rounder)

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by scoop8739 | 2005-04-30 19:52 | 不朽の名曲

88 45号列車

(Train 45)

現代民謡の父、ウディ・ガスリーによって歌われた「900マイルズ」も、フォーク・ブルースの「オールド・ルーベン」や、「ルーベン・トレイン」や、「ルーベン・ブルース」などもみなこの曲の違った呼び名です。最初はフィドル曲として演奏されていましたが、スタンレー・ブラザーズがレパートリーに取り入れるや、彼らの18番とまで言われるくらいにあまりにも有名になりました。

a0038167_2001860.jpg彼らのバージョンでは、カーターを狂言廻しにしてメンバーとのダウンホームな寸劇が展開されます。カーターの「どこへ行くんだい?」との問いかけに、“タウザー・マーフィー”ことアル・エリオット、“ダッド・ネイチャー”ことビル・ネイピア、“フィドリング・メーヨー”ことラルフ・メーヨーの3人がそれぞれ故郷の地名を答えています。たとえば「俺らは、ヴァージニアのディッケンスン・カウンティのちっぽけな農場に帰るんだ」という具合にです。
The Stanley Brothers / Ridin' That Midnight Train (Westside)

ジミー・マーチンのバンド、サニー・マウンテン・ボーイズもこの曲をレパートリーに加えていました。ここではポール・ウィリアムスの火の出るようなマンドリン・ワークとJ.D.クロウのバンジョー・プレイが聴かれます。この曲が録音された1961年当時は、ブルーグラス界でもステレオ録音が始まっていて、マンドリンとバンジョーが左右のスピーカーを行ったり来たりして、ずいぶんとステレオ効果を意識したレコーディングとなっています。
Jimmy Martin / Jimmy Martin and the Sunny Mountain Boys (Bear Family)

J.D.クロウは、ジミー・マーチンの下から独立して自らのバンド、ケンタッキー・マウンテン・ボーイズを結成します。ここに集まったのがマンドリンにラリー・ライス(トニー・ライスの実兄)、ギターにドイル・ローソン、フィドルにはボビー・スローンというメンバーでした。このメンバーで作られたのがアルバム「ブルーグラス・ホリデイ」です。この中にも「トレイン45」が収録されています。
J.D Crowe & The Kentucky Mountain Boys / Bluegrass Holiday (Rebel)

J.D.クロウにとって、この曲はたいへん縁の深い曲です。「ニュー・サウス」リユニオン・バンドの1987年のライヴでも演奏されています。マンドリンのリッキー・スキャッグス、ドブロのジェリー・ダグラスの円熟味の増したパワフルな演奏が聴かれます。
Various Artists / Bluegrass The World’s Greatest Show (Sugar Hill)

ビル・モンロウの息子、ジェイムズ・モンロウとミッドナイト・ランブラーズが、名盤「ビーン・ブロッサム」の中でこの曲を演奏しています。ビルのしゃべりにとても似たジェイムズの曲紹介に続いて、心地よいバンジョーのイントロが始まります。
Bill Monroe & Various Artists / Bean Blossoms (MCA)

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by scoop8739 | 2005-04-26 20:03 | 不朽の名曲

87 グッド・ウーマンズ・ラヴ

(Good Woman’s Love)

ニュー・グラス・リバイバル(以後N.G.R.)は、彼らのデビュー・アルバムでブルーグラス・ファンに大きなショックを与えた後、しばらくレコーディングから遠ざかっていましたが、ベースがブッチ・ロビンスからジョン・コーワンに代わると、ますますヒート・アップしていきます。

ジョンのボーカルは、ブルーグラスらしからぬ極端に喉をひっつめたような歌い方で、たちまちのうちにN.G.R.をカントリー・ロック路線へと向わせてしまいました。そしてさらに彼のファンキーなロック・ベースは、サムや他のメンバーが体質的に持ち合わせていたロック感覚をみごとに昇華させてしまったのです。

a0038167_19435427.jpgさて、ブルーグラスではお馴染みのこの曲も、N.G.R.にかかれば完全にロックになってしまいます。しかし原曲の持つシンプルな美しさは、たとえロックにアレンジされても少しも損なわれることなく、逆に美しさが一層強調されています。そういう意味ではこのアレンジは大成功なのでしょう。それにしてもジョンの張りつめたファンキーなボーカルはこの歌にピッタリですね。
New Grass Revival / Fly Through The Country (Flying Fish)

それから7年後の1982年、N.G.R.はサムとジョンを残してメンバー・チェンジしライヴを行っています。前作までのオリジナル・メンバー、コートニー・ジョンソンに代わって、バンジョーを弾いているのがベラ・フレック、そしてギターのカーティス・バーチに代わったのがパット・フリンです。ベラは、それ以前にジャック・トトルらと「テイスティ・リックス」というバンドに在籍していましたが、バンドの解散と同時にN.G.R.に移籍しています。このライヴでもジョンのパワフルなボーカルが聴かれます。
New Grass Revival / Live (Sugar Hill)

カントリー界の名ソングライター、サイ・コウブンの手になるこの曲も、カントリー・ジェントルメン風の味付けがなされるとまた違って聴こえます。この曲はジェントルメンがフォークウェイズからリリースした最初のアルバムに収録されています。ドブロはジョン・ダフィーが弾いていました。
The Country Gentlemen / The Country Songs - Old & New (Smithsonian Folkways)

ケンタッキー・カーネルズのライヴ・アルバムではローランドとクラレンスのホワイト兄弟のデュエットで歌われます。間奏のギターとマンドリンが必聴です。
The Kentucky Colonels / Livin' In The Past (Sierra)

1975年発表のトニー・ライスの第2作は、セルダム・シーンのジョン・スターリングがプロデュースをしています。ここでのトニーは若さをおさえて、わざとらしく渋く歌っている感じがします。
Tony Rice / California Autumn (Rebel)

「ボーダーライン」はウッドストック系のグループで、彼らが作ったこのアルバムはカントリー・ロックの隠れた名盤といわれてます。バンドの中心メンバーだったのはデヴィッドとジョンのガーシェン兄弟でした。彼らは1971年に完成したベアズヴィル・スタジオで働いていたジョンとジム・ルーニーに出会います。カントリー、フォークの影響を受けたデヴィッドとジョン、ジャズやブルースの影響を受けたジムの3人でボーダーラインはスタートします。このアルバムはブルーグラスのトラッド曲「ハンサム・モリー」で幕を開けます。そして4曲目にこの「グッド・ウーマンズ・ラヴ」が収録されています。
Borderline / Sweet Dreams And Quiet Desires (Avalanche)

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by scoop8739 | 2005-04-24 19:49 | 不朽の名曲

86 わらの中の七面鳥

(Turkey In The Straw)

バンジョーと言えばすぐにアール・スクラッグスの名を思い浮かべますが、こと演奏に関しては誤解を恐れずに書かせてもらうと、最も高度の音楽センスとテクニックを披露していたのがダン・リーノウではなかったでしょうか。

5弦バンジョーの奏法は、いわゆる三本指奏法(親指、人差し指、中指を使うスクラッグス・スタイル)のことですが、ダン・リーノウや元カントリー・ジェントルメンのエディ・アドコックに見られる共通した奏法は、既成の奏法にとどまらず、ツー・フィンガー・スタイルをも活用していることにあると思われます。それは彼らの演奏の中で、2コーラス目か3コーラス目にたびたび出てくる、親指と人差し指、または親指と中指の組み合わせによる三連音符、四連音符などを多用したアドリヴで聴くことができます。

スリー・フィンガー奏法も音符に直すと三連音符、四連音符も聴かれますが、彼らの場合はコード進行時におけるコード分解の方法にあります。つまり、これまでの奏法では、ただスリー・フィンガー・スタイルに乗せてメロディーが移行するだけだったのに対して、彼らの場合は、それまでのブルーグラスではほとんど使われなかったサスペンションとか、13thといったコードの応用に現れています。

エディ・アドコックはカントリー・ジェントルメンに加入する以前に、しばらくダン・リーノウ宅に寄宿していろいろとバンジョーの手ほどきを受けていたとのことです。そういえばエディーの奏法にはダンとの共通点を多く見出すことができます。しかしエディーはさらに改良を加え、ダンに比べると音が簡素化され、整理されています。

a0038167_21133465.jpgこうしたブルーグラス・バンジョーの世界では異色のプレイヤーである2人が共演したアルバムが「センセーショナル・ツイン・バンジョーズ」なるものです。この録音には延べ8時間を費やしたと言われていますが、マイクを挟んで2人がお互いの指使いを見ながら、ほとんど即興的に和音の構成、ピッキングの打ち合わせがなされたのだそうです。その中の1曲に、フォーク・ダンス曲の「オクラホ・マミキサー」としてもおなじみの「わらの中の七面鳥」があります。イントロ直後から、いきなり2人のツー・フィンガー・デュエットが始まります。
Adcock & Reno / Sensational Twin Banjos (Rebel)

ビル・モンロウのブルー・グラス・ボーイズがピーター・ローワン、リチャード・グリーンを擁していた頃にこの曲を録音しています。ちなみにバンジョー奏者はラマー・グリア、ベースはビルの息子のジェイムズでした。
Bill Monroe And His Blue Grass Boys / Bluegrass Time (MCA) (CD化されていません)

アラン・マンデは「フェスティバル・フェイバリッツ」シリーズの第4集目にして、この曲を完璧なクロマティック・ロールで聴かせてくれます。
Alan Munde / Festival Favorites (Ridge Runner) (CD化されていません)

レスター・フラットのナシュヴィル・グラスの創設メンバーで、バンジョーを弾いていたのがヴィック・ジョーダンでした。彼はバンジョーの魅力をバウンスするところにあると言っています。“バウンス”という聞き慣れない言葉の意味は“はずむ”と表現でもするのでしょうか。この点をとくに強調したのがヴィックなのです。彼のソロ第一作のなかにもこの曲が収められています。あっと驚くヘッド・アレンジで演奏していますが、コード進行も幾分変わっているようです。
Vic Jordan / Pick Away (Polydor) (CD化されていません)

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by scoop8739 | 2005-04-23 21:16 | 不朽の名曲

85 シンク・オブ・ホワット・ユーヴ・ダン

(Think Of What You’ve Done)

ダン・フォーゲルバーグは、フォーク・シンガーとしてロサンゼルスを拠点に活動していますが、セッション・ミュージシャンとしての腕前も磨いて、1975年にはイーグルスのツアーにも参加したという経歴を持っています。彼が発表したアルバムはそれぞれ高い評価を得ていて、そんな彼の存在を広く世に知らしめたのが1979年のアルバム「フェニックス」でした。ここからシングル・カットされた「ロンガー」は全米で大ヒットしました。

a0038167_20255690.jpgさてそのダンが、デヴィッド・グリスマンのセッション・アルバム「ヒア・トゥデイ」のメンバーを丸ごと起用して作ったのが「ハイ・カントリー・スノウ」(邦題:遥かなる心と絆)というアルバムです。このアルバムにカーター・スタンレーの名作「シンク・オブ・ホワット・ユーヴ・ダン」が収録されています。この曲はスタンレー・ブラザーズの慣用語として有名な「オールド・ヴァージニア」が印象的に歌われた名曲中の名曲として知られますが、その内容は失恋の歌で、故郷のオールド・ヴァージニアで知り合った女に捨てられ、ひとり故郷で生きようとする純情な男の気持ちが歌われています。
Dan Forgelberg / High Country Snows (Epic)

前述のアルバムにも参加し、見事なまでのハーモニーを聴かせたリッキー・スキャッグスにとって、この曲はいわば「座右の曲」とでも言うのでしょうか、「ブーン・クリーク」時代にもレパートリーとしていましたが、ソロ・アルバムでもきっちりと聴かせてくれています。
Ricky Skaggs / Family And Friends (Rounder)

カントリー歌手としての栄光の代償に、契約上12年間以上もブルーグラスを録音することを禁じられていたリッキー・スキャッグスは、満を持して自らのバンド、ケンタッキー・サンダーを率いてアルバム「ブルーグラス・ルールズ」をリリースします。このアルバムの冒頭で「Country Rocks, But Bluegrass Rules.」と言っていますが、ここでの“Rock”は,「(人の心を)揺さぶる」という意味で、“Rule”も「(人間を)支配する」という意味なのだそうです。つまり「カントリー音楽には心を揺らす力があるが、ブルーグラスは人の人生を支配する力がある」と言っているのです。このアルバムにも「座右の曲」は収録されていました。
Ricky Skaggs & Kentucky Thunder / Bluegrass Rules! (Rounder)

Dr.バンジョーことピーター・ワーニックと、今やアメリカーナ系で最も重要なアーティストの一人と言えるマンドリンのティム・オブライエン、ホット・ギタリストのニック・フォスターらの素晴らしい才能が集まったグループがホット・ライズでした。彼らはブルーグラスが音楽産業として飛躍的に成長した80年代を駆け抜けたバンドとして多くのアルバムを残していますが、解散後の92年にリユニオンとして発表したアルバムの中でこの曲を歌っています。
Hot Rize / Take It Home (Sugar Hill)

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by scoop8739 | 2005-04-18 20:25 | 不朽の名曲