1960年代になると、フォーク・リバイバルの影響で都市部にブルーグラス・ミュージシャンを志す若者が増えてきます。最初に頭角を現したのがバンジョー奏者のビル・キースでした。キースはその特徴あるバンジョーの演奏スタイルをもってブルーグラスという音楽に革命をもたらしたのです。
彼はさまざまなストリングス楽器を通じてフィドルのメロディに近づくことで、ユニークなバンジョー・ピッキングの奏法を会得したことで有名ですが、キースの楽器演奏のスタイルはまさに名人級で、新しい可能性にチャレンジするパイオニア精神にあふれています。この奏法は現在でもプログレッシヴ・ブルーグラス寄りのミュージシャンに多用されています。 彼は最初、レッド・アレンのバンドに入り演奏活動やレコーディングに参加しますが、アレンの口利きでビル・モンローに紹介され、その場でブルー・グラス・ボーイズの入団が決定しました。その理由は、彼のバンジョー奏法がアール・スクラッグス・スタイルを超える革新的なものだったからだといいます。 それまでの他の革新的なバンジョー奏者というと、ドン・リーノウ、ソニー・オズボーン、エディ・アドコック、J.D.クロウといったプレイヤーでしたが、彼らはスクラッグス奏法の語彙を発展させただけのもので、基本的な文法はやはりスクラッグス・スタイルでした。しかしキースのそれは、アプローチの全般に亘る複雑さにおいてスクラッグス・スタイルに代わる一つの文法を提案したのです。これは「クロマチック奏法」、あるいは「メロディック奏法」と呼ばれるものですが、今では彼の名を取って「キース・スタイル」と呼ばれています。 モンローは早速、キースをフィーチャーしたアルバム「ブルーグラス・インストゥルメンタル」を録音します。このアルバムの中で聴くことが出来る「ソルト・クリーク」、「悪魔の夢」や「セイラーズ・ホーンパイプ」などのフィドル・チューンを、キースはスケールや他の工夫で1音1音を鮮やかに弾き、新しいユニークなサウンドを創り出しています。 ビル・キースがブルーグラス界に与えたインパクトほど強烈なものはありませんでした。キースが現れて間もなく、南部(あるいは北部)のバンジョー奏者たちは彼のバンジョー奏法を知ろうとしました。また、レスター・フラットとアール・スクラッグスの人気の後塵を拝していたビル・モンローは、この機会をとらえて聴衆にブルーグラスの成り立ちを語り始めたのです。 それはキースをスクラッグスのレベルの達人と讃えた上で、自ら「ブルーグラスの創始者」とアピールし、その過程の中でアール・スクラッグスのバンジョー奏法が創られ、またその線に沿ってキースがブルーグラス・バンジョーを前進させたのだと説明したのです。この結果、彼のバンドには次々と都会のフォーク・リバイバルから生まれた若いミュージシャンたちが入団することとなります。そして彼らのエネルギーは、モンローの創る音楽を再活性化したのでした。 July 1963: Two Days at Newport(MCA) 1. July 26, 1963-Intro 2. Mule Skinner Blues 3. Uncle Pen 4. Devil's Dream 5. Molly and Tenbrooks 6. I Am a Pilgrim 7. Rawhide 8. July 27, 1963-Intro 9. Paddy on the Turnpike 10. Pike County Breakdown 11. Rawhide 12. Get Up John 13. Will You Be Loving Another Man? 14. Conversation With Ralph Rinzler 15. Pretty Fair Maiden in the Garden 16. Salt Creek 17. Lonesome Road Blues (次回につづく) 人気blogランキングへ
by scoop8739
| 2004-08-30 10:51
| ブルーグラスの歴史
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