21 カントリー・ジェントルメンの登場

a0038167_9413435.gif1950年代後半から60年にかけてアメリカ全土を襲ったフォーク・リヴァイヴァルという風潮と共に、演奏面はもとより思想的なものも加味して、その対象が都会人(特に大学生を中心としたインテリ層)という新しいブルーグラスの道が切り開かれました。1950年代半ばまでは「ブルーグラス音楽」というと本質的には南部人が南部人(特にアパラチアン地方の人々)を相手に歌い演奏してきたものでしたが、ムーブメントは東部の都会人の中にもブルーグラス・バンドを誕生させたのでした。

彼らの演奏活動は、都会人にとってそれまで経験した音楽とは違って新鮮なショックを伴い絶対的な支持を得ました。その中でもっとも実力のあるバンド「カントリー・ジェントルメン」は、古いものを守るとか、単に郷愁といったものから一歩もニ歩も前進したもののとらえ方で、ブルーグラス音楽をより正しく理解する方向性を打ち出し、圧倒的な人気をつかんで行ったのでした。

カントリー・ジェントルメンの歴史は、バンジョー奏者のビル・エマーソン(Bill Emerson)から始まります。彼は1938年1月27日ワシントンD.C.に生まれ、少年時代にスミッティ・アーヴィンにバンジョーを習い、アーヴィン・ファミリーに加入してワシントンD.C.で演奏することになります。

すぐにバズ・バズビー(Buzz Busby)のバイユー・ボーイズ(Bayou Boys)のバンドに移りましたが、そこにいたのがギター奏者のチャーリー・ウォーラー(Charlie Waller)でした。チャーリーは1935年1月19日テキサス生まれで、少年時代をルイジアナの綿畑で過ごしたという典型的な「プアー・ボーイ」でした。彼はカントリー・シンガーのハンク・スノウやマック・ワイズマンをアイドルとして育ちます。その結果、力強い歌唱力を持ち、同時に非常に優れたギター奏者となりました。

1955年のある日、バズ(マンドリン)を含むメンバー数人が自動車事故に遭い入院を余儀なくされました。その夜にブッキングされていたヴァージニア州北部の居酒屋でのステージを失いたくないと思ったビルは、バズの代役として彼の少年時代からの友人だったジョン・ダフィ(John Duffey)という青年を連れてきました。ジョンは1934年メリーランド州ベセズダの生まれで、少年時代から聖歌隊で歌い、青年期に多くのアマチュア・バンドでその腕を磨いてきました。彼は独特の力強い歌い方をするテナー・シンガーで、マンドリンのスタイルは活気に溢れる斬新なものでした。

こうして急場しのぎで組み立てられたバンドでしたが、3人は多分にもれず息投合し、その頃都会で人気が出始めていたオズボーン・ブラザース(Osborne Brothers)のボーカル・スタイルを取り入れてのトリオ・コーラスは見事に調和したのでした。それから彼らはブルーリッジ・レーベルの社長であり、有名なD.J.だったドン・ウェンズの紹介で、ヴァージニア州アーリントンのWARL局を中心にワシントンD.C.周辺のバーやクラブで活動し腕を磨きました。さらに数ヶ月間ほど演奏活動を続けて、3人は新しくバンドを結成することを決めました。時は1957年7月4日、ジョン23歳、チャーリー22歳、ビル19歳という若いグループ、「カントリー・ジェントルメン」の誕生でした。

その直後の9月、彼らは「ディキシー」という小さなレーベルで初めてのレコーディングを行ないます。この時のパーソネルは、やはりワシントンD.C.出身の、フィドルにジョン・ヘイル(John Hail)、ベースにトム・モーガン(Tom Morgan)というメンバーでした。ここに初めての都会(東部人)によるブルーグラス・ミュージシャンのレコードが作られたのです。

彼らは初めてレコーディングしたディキシーより僅かに遅れて、スターディー・レコードと契約し(この時期、スターディーは全米に流通網を持つマーキュリー・レコードと業務提携していました)、この年の12月に、まず「バックウッド・ブルース」、「イエスタデイズ・ラブ」を、さらに同月「デキシー・ルックアウェイ」、「イッツ・ザ・ブルース」の計4曲をレコーディングしています。この時にフィドルがカール・ネルソンに替わります。この中から「バックウッド・ブルース」と「イッツ・ザ・ブルース」のカップリングがシングル発売されます。ディキシーでの初めてのシングル盤にはレコード番号が付けられなかったので、事実上これが「カントリー・ジェントルメン」として世に出た最初のレコードであると言ってもいいでしょう。

High Lonesome(Starday)
DISC:1
1. Backwoods Blues
2. Yesterday's Love - (previously unreleased)
3. Dixie Lookaway
4. It's The Blues
5. High Lonesome
6. Banjo Hop
7. Church Back Home, The
8. Orange Blossom Fiddle
9. Hey, Little Girl
10. Devil's Own, The
11. Rollin' Stone
12. Nine Pound Hammer - (previously unreleased)
13. I'll Never Marry
14. Travelin' Dobro Blues
15. Nobody's Business
16. New Freedom Bell - (alternate take)
17. New Freedom Bell
18. Hills And Home, The
19. Letter To Tom, A
20. Darling Allalee
21. Tomorrow's My Wedding Day
22. Helen
23. Blue Man
24. Remembrance Of You
25. Red Rockin' Chair
26. If That The Way You Feel
27. I Know I've Lost You
ほか2枚組全51曲
(次回につづく)

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by scoop8739 | 2004-08-20 09:40 | ブルーグラスの歴史
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