17 ジム&ジェシー兄弟の多彩な音楽遍歴

a0038167_1643981.jpgジムとジェシーのマクレイノルズ兄弟は、ヴァージニア州南西部、つまりテネシー、ケンタッキー、ノース・キャロライナのそれぞれの州に接するサザン・マウンテン地域に生まれ育ちました。

この地域出身のブルーグラス・バンドとして有名なのがカーターとラルフのスタンレー兄弟ですが、彼らとジム&ジェシー兄弟を比較してみると全く違ったサウンドであることがわかります。つまりスタンレー兄弟のブルーグラスはストレートでハード系ですが、ジム&ジェシー兄弟の創り出すサウンドはソフト系なのです。それには彼らがたどってきた数多くの音楽遍歴が原因しているのでした。

1940年代後期に兄ジムがギター、弟ジェシーがマンドリンを弾きながらコーラスするというデュエット・コーラス中心のバンドを組みます。始めは兄弟デュオの代表的なグループであったブルー・スカイ・ボーイズやベイリー・ブラザーズなどの曲をレパートリーとしていたようですが、それから彼らが試みたのは、バンドにスティール・ギターやアコーディオン、ピアノ、オルガンといった楽器を導入しての、いわゆるウェスタン音楽というものでした。

この頃、一般的にブルーグラス・バンドがテネシー州を活動の中心にしていたのに対して、彼らはウィチタ、カンサスといった別の地方を目指します。その当時の彼らのレパートリーは“サンズ・オブ・パイオニアーズ”や“ライダーズ・オブ・ザ・パープル・セイジ”というウェスタン・バンドの曲でした。

その後オハイオへと移った彼らは、カンサス時代に知り合ったバンド仲間とゴスペル・ソングを歌うバンドを組みます。この時代にマンドリン、ギター、ベースという編成ではありましたが、ブルーグラス・スタイルでセイクレッド・ソングを歌うようになります。バンドにはブルーグラス音楽に欠かすことのできない楽器バンジョーがない代わりに、ジェシーのマンドリンが大活躍を始めます。これは後年、“マクレイノルズ・スタイル”とか“マンドリンのスクラッグス・スタイル”などと形容されるようになる、アール・スクラッグスのバンジョー奏法をマンドリンに取り入れたものでした。ジェシーの明解なアクセントをつけて弾くクロス・ピッキング奏法は、それまでのマンドリン奏法に対して革命そのものでした。

1952年になるとキャピトル・レコードと契約して本格的にブルーグラス音楽を演奏するようになります。しかし彼らの創り出すブルーグラス音楽が従来のブルーグラス・スタイルと明確に違うのは、ビル・モンローの影響下になかったという点です。

つまり、これまでのブルーグラス・プレイヤーの大半は、かつてブルー・グラス・ボーイズの一員としてビルに師事した人ばかりでした。ビルはメンバーに対し、「常に先人たちの創った“スタイル”、“テクニック”を徹底的に研究させ、伝統的“スタイル”を堅固に受け継ぐ」ことを要求しました。要するにビルの創り出すブルーグラス音楽は、“スタイル”を重要なポイントと考えていたのです。だから、たとえブルー・グラス・ボーイズから巣立っていったプレイヤーであっても、根本的にこの“スタイル”から離れるということはまずあり得ませんでした。

ジム&ジェシーがブルーグラス音楽へと演奏スタイルを変えていったのは、なるほど確かにブルー・グラス・ボーイズの影響がなかった訳ではありませんが、ところが、彼らは他の多くのプレイヤーのように、決してブルー・グラス・ボーイズをコピーすることによってブルーグラス音楽を取り入れたのではありませんでした。また、もし彼らが他のプレイヤーのようなアプローチでブルーグラス音楽を演奏していたのであったなら、彼らの音楽的魅力は永遠にそのスタイルの中に埋没してしまっていたことでしょう。

こういった点で、彼らは他のプレイヤーには決して真似のできない、いわゆる純カントリー調のレパートリー(強いていうと、モンロー流のブルーグラス・スタイルではないという意味)を、実に鮮やかにジム&ジェシー流のブルーグラス・スタイルで演奏することができたのです。

3の「アー・ユー・ミッシング・ミー」は彼らが初期にレパートリーにしていたルーヴィン・ブラザーズの作品です。1、2はこのルーヴィン・スタイルで作られています。6、7は自作のセイクレッド・ナンバーですが、スタンレー調で演奏されています。一押しのナンバーが9で、モチーフの新鮮さが曲調にまで浸透しています。10、11、15はどの観点からみても、彼らの典型的なスタイルで演奏されています、

First Sounds: The Capitol Years (Capitol )
1. I'll Wash Your Love From My Heart
2. Just Wondering Why
3. Are You Missing Me
4. I Will Always Be Waiting for You
5. Virginia Waltz
6. Are You Lost in Sin
7. Look for Me (I'll Be There)
8. Purple Heart
9. Air Mail Special
10. My Little Honeysuckle Rose
11. Waiting for a Message
12. Too Many Tears
13. My Darling's in Heaven
14. Two Arms to Hold Me
15. Is It True
16. A Memory Of You
(次回のつづく)

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by scoop8739 | 2004-08-15 16:44 | ブルーグラスの歴史
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