10 ビル・モンローとブルーグラス・プラス・サムシング

a0038167_1131931.jpgブルーグラス音楽とは、1945年頃にビル・モンローが創り上げた音楽のことです。ビルが兄チャーリーとともに活動したモンロー・ブラザーズ時代から、彼のあのドライヴのかかったマンドリンとはりつめたテナー・ボーカルは当時活躍していた数多くのデュエット・チームの中でも群を抜いてユニークな存在でした。とくにあのスウィンギーでジャジーなアドリブは、今聴いても古臭さを感じさせないほど素晴らしいものです。このアドリブとドライヴ感こそが、そのままブルーグラス音楽の生命となった重要な要因だといえます。

ブルー・グラス・ボーイズを結成してから数年間の試行錯誤があり、そのスタイルさえ定まらなかったのですが、1945年に集められたメンバーによって彼の理想とするスタイルが確立されます。ビルのジャジーなマンドリン、アールの華麗なバンジョー、チャビーのスムーズなフィドルという強力なフロント・ライン。そしてブルーグラス・ギターの基礎を作ったといわれるレスターのGランを効果的に用いたリズム・ギター、セドリックのステディなベース。これらによってブルーグラス音楽の歴史が始まりました。そして1950年代始めにラジオ局のD.J.たちが、彼らブルー・グラス・ボーイズの演奏する今までのカテゴリーに収まらない音楽を称して、“ブルーグラス・スタイル”と呼んだことから、「ブルーグラス音楽」というジャンルが一般化したといわれています。

この60年ほどの歴史しかないブルーグラス音楽は、今日までに常に変動してきたことは前述しましたが、とくに60年代に入ってからは、それ以前の20年余りの間とは比べようのないくらい激しい変化に見舞われます。フォーク・リバイバルの動きとともに都会へと進出を果たし、その都会に育った若いミュージシャンたちの手によって、60年代後半以降のブルーグラスのモダン化は圧倒的な勢いで進行しました。70年代に突入すると、いわゆるニュー・グラスという形で最も端的に現れたのでした。

しかしビル・モンロー自身、そしてブルー・グラス・ボーイズの音楽は、そうした様々な外的あるいは内的な変化に流されることなく、常に自らの求める道を歩み続け、変化をたくみに自らの音楽に組み入れることによってブルーグラスのメイン・ストリームを守ってきました。時にはA&Rマンの圧力を受けてやむなく時流に押し流されそうになったこともありましたが、いつの間にかそれをも跳ね返し、自ら築き上げたブルーグラス・スタイルを守り通してきたのです。

彼は60余年にもおよぶ長いキャリアの中で、常に新しいサムシングを取り入れる努力を続け、時代の先端を行くブルーグラス・スタイルを創り続けてきたことは賞賛に値するものです。さらにビルは、永きに亘って“ファーザー・オブ・ブルーグラス”、“ミスター・ブルーグラス”と呼ばれ、常にブルーグラス界のトップの座に君臨してまいりました。この間に彼は多くのミュージシャンを育て、彼のもとから育った若いミュージシャンたち、たとえばビル・キースやリチャード・グリーン、ピーター・ローワンといったプレイヤーは、彼の教えを生かしたブルーグラス・プラス・サムシングの音楽にチャレンジし、またビルをアイドルとしてきたジョン・ダフィーやデヴィッド・グリスマン、サム・ブッシュらも、ビル・モンロー・トラディションをふまえた新しい独特のスタイルを生み出してきました。

彼が常に新しいサムシングを求め続けたということは、生前残してきた多くのレコーディングによって如実に示されており、それらのほとんどは現在でも多くのCDにまとめられています。今回はそんなビル・モンローの永いキャリアの中で創り出された作品を、レーベルの枠を越えて俯瞰的にとらえた4枚組のボックス・セットでご紹介します。

Music of Bill Monroe from 1936-1994 (Uni/MCA)
ディスク: 1
1. My Long Journey Home
2. What Would You Give In Exchange For Your Soul
3. Muleskinner Blues
4. Cryin' Holy Unto My Lord
5. Back Up And Push
6. Goodbye Old Pal
7. Heavy Traffic Ahead
8. Wicked Path Of Sin
9. It's Mighty Dark To Travel
10. Bluegrass Breakdown
11. Can't You Hear Me Callin'
12. My Little Georgia Rose
13. I'm On My Way To The Old Home
14. I'm Blue, I'm Lonesome
15. Uncle Pen
16. Lord Protect My Soul
17. Raw Hide
18. Brakeman's Blues
19. Sugar Coated Love
20. Christmas Time's A Coming
21. The First Whippoorwill
22. In The Pines
23. Footprints In The Snow
24. Walking In Jerusalem
ディスク: 2
1. Memories Of Mother & Dad
2. The Little Girl & The Dreadful Snake
3. Y'all Come
4. Sitting Alone In The Moonlight
5. On And On
6. White House Blues
7. Happy On My Way
8. A Voice From On High
9. Close By
10. Put My Little Shoes Away
11. Wheel Hoss
12. Cheyenne
13. You'll Find Her Name Written There
14. Roanoke
15. Blue Moon Of Kentucky
16. The Girl In The Blue Velvet Band
17. Used To Be
18. A Good Woman's Love
19. Cry, Cry Darlin'
20. I'm Sittin' On Top Of The World
21. I'll Meet You In The Morning
22. Scotland
23. Molly And Tenbrooks
24. John Henry
ディスク: 3
1. Big Mon
2. Dark As The Night, Blue As The Day
3. Sold Down The River
4. Little Joe
5. Lonesome Road Blues
6. I'm Going Back To Old Kentucky
7. Toy Heart
8. Nine Pound Hammer
9. Big Sandy River
10. Darling Corey
11. Salt Creek
12. Sailor's Hornpipe
13. Roll On Buddy, Roll On
14. Bill's Dream
15. Never Again
16. Dusty Miller
17. Midnight On The Stormy Deep
18. Soldier's Joy
19. Blue Night
20. Sally Goodin
21. Kentucky Mandolin
22. Walls Of Time
23. I Haven't Seen Mary In Years
24. The Dead March
25. With Body And Soul
26. Walk Softly On My Heart
27. Goin' Up Caney
ディスク: 4
1. Kentucky Waltz
2. Get Up John
3. Lonesome Moonlight Waltz
4. Rocky Road Blues
5. Jenny Lynn
6. My Old Kentucky And You
7. You Won't Be Satisfied That Way
8. Jerusalem Ridge
9. Ashland Breakdown
10. Come Hither To Go Yonder
11. My Last Days On Earth
12. My Sweet Blue-Eyed Darlin'
13. Travelin' This Lonesome Road
14. The Old Brown County Barn
15. Stay Away From Me
16. The Long Bow
17. The Old Cross Roads
18. Southern Flavor
19. Take Courage Un' Tomorrow
20. Pike County Breakdown
21. I'm Working On A Building
22. You're Drifting Away
23. Boston Boy
(次回につづく)

人気blogランキングへ
[PR]
by scoop8739 | 2004-07-29 10:40 | ブルーグラスの歴史
<< 11 ブルーグラス音楽の発展に... 09 ビル・モンローとブルーグ... >>