09 ビル・モンローとブルーグラス音楽の誕生

a0038167_13124199.jpg「ブルーグラスの父」と称されるビル・モンローは、それまで兄チャーリーと組んでいたモンロー・ブラザーズを解散し、一時期ストリング・バンドを結成していましたが、これはどうやら失敗に終わったようです。そして1939年にクレオ・デイヴィス(Cleo Davis/ヴォーカル、ギター)、アート・ウーテン(Art Wooten/フィドル)、ジム・ホルムス(Jim Holmes/ベース)らと結成したのがブルー・グラス・ボーイズでした(メンバーには他説あり)。このメンバーでオーディションに受かり、憧れの「グランド・オール・オープリー」に登場します。ここでビルは、1920年代に活躍したジミー・ロジャースという歌手が作って歌いヒットさせた「ミュール・スキナー・ブルース」という曲を、ギターを弾きながら歌っています。

バンドは何度かのメンバー交替の後、1945年にはレスター・フラット(ヴォーカル、ギター)、アール・スクラッグス(バンジョー)、チャビー・ワイズ(Chubby Wise/フィドル)、セドリック・レインウォーター(Cedric Rainwater/ベース)というメンバーに落ち着き、今日で言う「ブルーグラス・スタイル」で演奏をするようになりました。

ビル・モンローについては、この1945年前後がブルーグラス音楽の歴史上において最も大切な時期ですので、CDの解説をしながら話を進めてまいります。選んだCDは2枚組「ジ・エッセンシャル・ビル・モンロー」(Columbia/Legacy)というものです。

DISC1の1〜8は1945年2月13日の録音です。2曲目の「ケンタッキー・ワルツ」(Kentucky Waltz)は、ブルー・グラス・ボーイズにとって1946年最初のヒット曲として知られています。ここにはバンジョーが入ってなく、代わりにサリー・アン・フォレスター(女性)のアコーディオンの演奏が聴けます。同じく6曲目の「雪の上の足跡」(Footprints In The Snow)は、編成こそギター、マンドリン、フィドル、バンジョー、ベースの典型的なブルーグラス・スタイルなのですが、サウンド的にはいま一歩のように思えます。つまりブルーグラス・スタイルが確立される直前の録音と言うことになります。

そして歴史的な録音となるDISC1の9〜16は1946年9月16日に、17〜20が翌日の9月17日にと、この2日間での録音がブルーグラス誕生後初のものとなります。しかし各楽器間の相互作用はまだ今ほど込み入っていませんでした。

さらに同じメンバーで、DISC2の1〜8が1947年10月27日に、9〜16が10月28日に録音されました。このセッションは、前回に比べてみてもずいぶんとブルーグラス・スタイルが確立されているように思えます。

DISC1-12曲目の「トイ・ハート」(Toy Heart)、DISC2-1曲目の「懐かしいケンタッキーへ」(I'm Going Back To Old Kentucky)、同4曲目の「丘の上の小さな家」(Little Cabin Home On The Hill)、同14曲目の「モリーとテンブルックス」(Molly And Tenbrooks)では典型的なアップ・テンポのブルーグラスが聴かれます。

さらにDISC1-13曲目の「夏の日は過ぎて」(Summertime Is Past And Gone)ではトリオ・コーラスによるブルーグラス・ワルツが、そしてDISC2-8曲目の「オールド・クロス・ロード」(The Old Cross Road)ではスローな宗教歌のブルーグラス・バージョンが、また6曲目の「ブルー・グラス・ブレイクダウン」(Blue Grass Breakdown)では典型的なブルーグラス・インストゥルメンタルを聴くことができます。

この時期のブルー・グラス・ボーイズの魅力は、何といってもアールの独創的なバンジョー奏法に尽きます。スリー・フィンガー奏法を改良したもので、以降、ブルーグラス音楽のバンジョー奏法が確立されたと言われています。またそれだけでなくビルとレスターのデュエット・コーラス、そしてビルのマンドリン、チャビーのフィドルと、ブルーグラス音楽のソロ・スタイルの真髄が聴けることです。これらの要素によりブルーグラス音楽を強く特徴づけていくことになるのです。こうしてみると、この2回、計4日間のセッションこそ、まさにブルーグラス音楽が創り出される瞬間を収めた歴史的証言ということになります。

なお、DISC2の17〜20はレスター・フラットとアール・スクラッグスという二枚看板が抜けた直後の1949年10月22日の録音で、ヴォーカルとギターにマック・ワイズマン(Mac Wiseman)が入団し録音されたものです。残念ながらこの録音でのバンジョーは、ドン・リーノウ(Don Reno)ではなく、ルディ・ライル(Rudy Ryle)となっています。

ところで、ブルー・グラス・ボーイズは実にメンバー交替の激しいバンドで、1948年にはビルを除いてのメンバーが相次いでグループを離れ、独自にフラット、スクラッグス&ザ・フォギー・マウンテン・ボーイズを結成します。それ以来、夏期シーズンに行われるフェスティバルでは、毎年メンバーの誰かが新しく入れ替わっていたと伝えられています。のちに一家を成すドン・リーノウ(1949年ごろ)、ジミー・マーチン(Jimmy Martin/1950年〜1954年ごろ)、カーター・スタンレー(Carter Stanley/1951年ごろ)、ソニー・オズボーン(Sonny Osborne/1952年ごろ)、というプレイヤーたちも一時期ブルー・グラス・ボーイズに在籍し活躍していました。

The Essential Bill Monroe & His Blue Grass Boys(CLUMBIA/LEGACY)
DISC 1
1. Rocky Road Blues
2. Kentucky Waltz
3. True Life Blues
4. Nobody Loves Me
5. Goodbye Old Pal
6. Footprints in the Snow
7. Blue Grass Special
8. Come Back to Me in My Dreams
9. Heavy Traffic Ahead
10. Why Did You Wander
11. Blue Moon of Kentucky
12. Toy Heart
13. Summertime Is Past and Gone
14. Mansions for Me
15. Mother's Only Sleeping
16. Blue Yodel No. 4
17. Will You Be Loving Another Man?
18. How Will I Explain About You?
19. Shining Path
20. Wicked Path of Sin
DISC 2
1. I'm Going Back to Old Kentucky
2. It's Mighty Dark to Travel
3. I Hear a Sweet Voice Calling
4. Little Cabin Home on the Hill
5. My Rose of Old Kentucky
6. Bluegrass Breakdown
7. Sweetheart You Done Me Wrong
8. Old Cross Road
9. That Home Above
10. Remember the Cross
11. Little Community Church
12. Along About Daybreak
13. When You Are Lonely
14. Molly and Tenbrooks [The Racehorse Song]
15. Shine Hallelujah, Shine
16. I'm Travelin' on and On
17. Can't You Hear Me Callin'
18. Travelin' This Lonesome Road
19. Blue Grass Stomp
20. Girl in the Blue Velvet Band
(次回につづく)

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by scoop8739 | 2004-07-28 13:14 | ブルーグラスの歴史
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