カントリー・ジェントルメンがアメリカ東海岸で活躍していた1963年(昭和38年)とは一体どんな年だったのでしょう。日本での流行歌に対比させながら話を進めてまいりましょう。
昭和30年代も終わり頃になると、流行歌の世界でも世代代わりを感じさせるような状況になってきました。つまり、三橋美智也、春日八郎、フランク永井、美空ひばり、江利チエミ、雪村いずみといった昭和20年代、30年代の前半から活躍していた大スターたちに代わって、若いスターがヒットを飛ばすようになります。 この年のヒット曲を思いつくまま挙げてみると、梓みちよが歌った「こんにちは赤ちゃん」、舟木一夫の「高校三年生」、三田明の「美しい十代」、北原謙二の「若いふたり」、坂本九の歌った「見上げてごらん夜の星を」などの青春歌謡が数多くヒットしています。 また、梓みちよと田辺靖雄の「ヘイ・ポーラ」、ダニー・飯田とパラダイス・キングをバックに九重佑三子が歌った「シェリー」などのカヴァー・ポップスもヒットしました。 洋楽では、サーフィン&ホットロッド・ブームをうけて、ビーチ・ボーイズの「サーフィン・U.S.A.」、ジャン&ディーンの「サーフ・シティ」、アストロノウツの「太陽の彼方」、サーファリーズの「ワイプ・アウト」、ロニー&デイトナスの「GTOでぶっとばせ」が流行り、ジョニー・シンバルの「ミスター・ベースマン」、カスケイズの「悲しき雨音」、ジョニー・ティロットソンの「キューティ・パイ」、ヴェルヴェッツの「愛しのラナ」といったアメリカン・ポップスがラジオ番組でよく流れていました。 前年から引き続いてのフォークソング・ブームに乗って、PP&Mの「パフ」や、ロルフ・ハリスの「悲しきカンガルー」、ニュー・クリスティ・ミンストレルズの「グリーン・グリーン」なんかがヒットしています。そして極めつけがボブ・ディランの「風に吹かれて」でした。 またこの年、バンジョーという楽器を日本で広く知らしめた曲「ワシントン広場の夜は更けて」(ヴィレッジ・ストンパーズ゛)も流行しています。 一般的には、高度成長政策による所得上昇にともなって各家庭にテレビ受像機が急速に普及し、話題のテレビ番組を一家揃ってみることが団欒娯楽の中心になったのもこの頃でした。結婚と同時に、独身時代の4畳半一間のアパートから何とか抜け出し、水道完備・ガス見込みの文化住宅に住み、テレビ、洗濯機、冷蔵庫など電化製品を所狭しと並べて、台所のある部屋の真ん中に赤外線の電気ごたつ、卓上にはミカンやおかきを置き、みんながテレビをみながらそれに手をのばし、「狭いながらも楽しい我が家」を実感するというのがこの頃の「しあわせ」の典型で、「ホーム・ドラマ」も次々と制作されています。 しかし、明るい話題ばかりでもありませんでした。衝撃的な事件が起きたのもこの年です。それは翌年に開催される予定の東京オリンピックを世界に生中継しようということで、宇宙通信衛星を使って中継放送が行われていた11月23日のことでした。 時のアメリカ大統領、ジョン・F・ケネディのメッセージを日本に伝えるべく、大統領がダラス空港に着き、オープン・カーに乗って人々の歓呼にこたえる映像を送っていた時のことでした。人々に手を振っていた大統領が突然座席に倒れたのです。まったく偶然にも、中継放送の最中に大統領が暗殺された瞬間が映し出されたのでした。 テレビはリアルタイムで出来事の映像を伝えると言われてきました。国内の事件報道などで確かにそれを実感しはじめていたのですが、世界の出来事ではまだまだ先の話だと思っていました。その最初を東京オリンピックでとNHKの技術陣は意気込んでいたのでしたが、それが一年も前にこんな衝撃的な事件で実現しようとは誰も想像できなかったのです。これをきっかけにテレビはその速報性を自覚し、めざめたように事件現場からの生中継報 道を行うようになりました。 さて、話を流行歌に戻すと、この年の「紅白歌合戦」は81.4%という驚異的な視聴率を記録しています。一体どんな顔ぶれで、どんな歌を歌ったのか、誰もが興味のあるところでしょうが、いくら他に愉しみがなかったといっても、この視聴率は現在では考えられないものですね。
by scoop8739
| 2006-03-30 15:17
| ブレイク・タイム
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