155 クリスマス・ソングをブルーグラスで (20)

まきびと羊を (The First Noel)

以前、新聞コラムに載っていた話です。ある牧師さんが教会にクリスマスの飾り付けをしていたところ、通りかかった男性がいいました。「へー、教会もクリスマスをやるんですか」と。これがなぜ笑い話なのか本気でわからない人が、今の日本には少なからずいそうです。

a0038167_20212890.jpgさて、すべてのキャロルの中で最もポピュラーなものの一つである「The First Noel」は、仏教徒の多い我が国でも非常に有名な曲です。プロテスタント系の教会であればどこの教会でも、クリスマス・シーズンになるとこの曲を日本語訳した「まきびと羊を」(賛美歌第103番)と歌います。またデパートやスーパーでも、BGM用にオーケストラ編曲したものがよく流れています。

このキャロルは、作曲者も作詞者もよくわかっていない英国のトラディショナル・キャロルですが、その起源は13世紀にさかのぼるともいわれています。一方ではこの曲のオリジナルは15世紀のフランスにあるという説もあり,いずれにせよ遠い昔のことなので起源ははっきりしないようです。しかしキャロルを自国の財産と考え、誇り高い合唱王国でもある英国が、このすばらしいキャロルをライバル国フランスのものと認めるわけがありません。それどころかアメリカを始め他の国では、一般的に「The First Noel」と綴るところを、英国風に「The First Nowell」と綴る伝統を頑として守っているのです。

さてこのキャロルは、日本でも最もよく知られたキャロルの一つと書きましたが、この曲ほど英語のキャロルを日本語に訳すことの難しさを実感させる曲はありませんでした。日本の讃美歌集に収められた訳では、原曲の流れるような美しさがまるで感じられないからです。下の英語原歌詞を参照してほしいのですが、まず第1節の冒頭、原曲では"The first nowell the angel did say"で、"nowell"と"angel "の響きが夢見るような気分を誘うのに対して、日本語では「まーきーびーとー ひーつーじーをー」と全く間の抜けた伸び切った日本語訳が使われています。

そしてこの曲のサビにあたる美しいリフレインの前半、"Nowell, Nowell, Nowell, Nowell,"が、「よーろーこーびー たーたーえよー」と、やはり伸びきった日本語訳で歌われると、まったく聴く気が起こりません。このキャロルは、ぜひとも英国の一流の合唱団の歌唱で聴くことをお薦めします。音楽と言葉の美しい調和に、何度聴いても聴き飽きることがありません。第1節では、"say"と"lay","sheep"と"deep"、第2節では"star"と"far"、"light"と"night"というように、すべての節で美しい韻が踏まれています。

The first nowell the angel did say
Was to certain poor shepherds in fields as they lay;
In fields where they lay, keeping their sheep,
On a cold winter’s night that was so deep:

Nowell, Nowell, Nowell, Nowell,
Born is the King of Israel.

まきびと 羊を 守れるその宵、
たえなるなる歌は 天(あめ)より響きぬ
喜びたたえよ 主イエスは生まれぬ

仰げばみ空に きらめく明星(あかぼし)
夜昼さやかに 輝きわたれり
喜びたたえよ 主イエスは生まれぬ

a0038167_20235659.jpg最初、ボクはこの曲のタイトルの「まきびと」って何だ?と思っていたのですが、「牧人」つまり、「牧場の人」だったんですね。ブルーグラスでは、セイクレッドを得意とするドイル・ローソンとクイック・シルヴァーの面々がこの曲を取り上げています。この曲と「It Came Upon A Midnight Clear」「Joy To The World」のメドレーをアカペラ4重奏で歌います。これぞブルーグラス・セイクレッドの真髄と感じさせるコーラスです。

人気blogランキングへ
[PR]
by scoop8739 | 2005-12-21 20:22 | クリスマス・ソング
<< 156 ブルーグラスのクリスマ... 154 クリスマス・ソングをブ... >>