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210 時系列で聴くカントリー・ジェントルメン (48)

フォークウェイズへの録音 (14)

いよいよアルバム「ゴーイング・バック〜」も最終コーナーを曲がるところとなりました。

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B面5曲目「悲しく、せつない日」(Sad And Lonesomeday)は、1938年にアルトンとレイボンのデルモア・ブラザーズによって演奏され、これに歌詞を付けて歌ったのがレッド・スマイリーでした。しかしブルーグラス・アレンジとしての決定打はレッド・アレンのアルバム「キープ・オン・ゴーイング」(Keep On Going)収録されているものでしょう。このような白人系カントリー・ブルースは、16小節型4行詞で、1行目から3行目までが同じ文句になっているのが普通です。ジェントルメンは名盤「フォーク・セッション・インサイド」において初録音し、以来、ライヴの定番曲となっています。

6曲目「クリプル・クリーク」(Cripple Creek)はブルーグラスの定番曲となった古いバイオリン曲です。1920年代から40年代にかけて、フィドル奏者の間では一般的に演奏されていました。ビル・モンロゥ、フラット&スクラッグス、リノ&ハーレル、スタンレー・ブラザーズなど大物たちも取り上げています。ジェントルメンのは最初はゆっくりとバンジョーのイントロから始まり、「クルプル・クリークへ昇って行こう。面白いよ。ズボンを膝までまくり上げ、行こうヨ、行こうヨ」と少しだけ歌い、続いてエディのバンジョーが弾むように続きます。ジョンのマンドリンも負けてはいません。続くエディは珍しくクロマティック・スタイルのバンジョーも聴かせてくれます。

7曲目「恋の道は…」(Don’t This Road Look Rough & Rocky ?)は、戦いに向かう兵士の別れの歌で、ヴァースの部分は兵士の言葉、コーラス部(リフレイン)は妻の言葉と考えられます。リフレインの「赤子をいとおしいと思わないでください。私がこの腕に抱えて、大事に寝かせていますから」という、妻から夫への激励の言葉が強い感銘を与えます。かつてはビル・モンロゥによって歌われていて、一方ジェントルメンは始めから終わりまで3部コーラスで歌われます。

さていよいよゴールに向かってムチが入りました。熱戦、いや熱の入った解説に期待しましょう(?)

8曲目の「ミュールスキナー・ブルース」(Muleskinner Blues)は、ラバ追いのカウボーイ・ソングです。数多くのカントリー・ヨーデルを書いたジミー・ロジャースが初めて書いた「ブルー・ヨーデル」ナンバーで、ビル・モンロゥが初めてブルー・グラス・ボーイズを結成した時に録音した曲でもあります。以来、彼の定番曲として有名になっています。

ところで話は変わりますが、1973年のある日、ビル・モンロゥがロサンゼルスのテレビ局KCETでのショー出演のためにツアー・バスで向かっているところ事故に遭遇し、ショーそのものが制作できなくなるという危機を迎えます。

その穴を埋めるべくテレビ局はロス在住のブルーグラス・ミュージシャンに連絡を取り、急遽セッション・バンドを組み立てて番組を作ることとなりました。

そこに呼ばれたのが、リチャード・グリーン、ピーター・ローワン、ビル・キースというモンロゥゆかりの人たちを中心に、モンロゥ・フリークで有名なデヴィッド・グリスマン、バーズ解散後フリーとなっていたクラレンス・ホワイトという、その当時ロックをやっていたミュージシャンばかりを集めたのです。

この急場仕立てのバンド名がなんと「ミュールスキナー」でした。番組は無事放映され、こと無きを得たのですが、この連中はその余韻からか番組終了後にレコーディングを画策し、結果、1枚のアルバムを残します。これが名盤「ミュールスキナー」(Mule Skinner)でした。

話が違うところに行ってしまいましたが、ジョンのビル・モンロゥを凌駕するようなハイテンションのヴォーカルが炸裂します。それを煽るかのようにエディのバンジョーが続きます。曲も最高潮に達したところで歌い終わると、客席からしばしアンコールの声が飛び交います。実際のステージでは、きっとこの後にアンコール曲が何曲か歌われたことでしょう。

ということで、珍解説も途中でムチの入れどころを間違えた箇所がありましたが、無事落馬せずにゴールしたようです。

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なお、米国版「ゴーイング・バック〜」は1973年9月にやっとLPが発売されました、また、日本盤「イン・コンサート」は、197410月に再編集(2曲カット)されて再発売されています。さらに「ゴーイング・バック〜」は、ファンの誰もが忘れていた頃の2007年5月になって初めてCD化されています(アルバム・デザインがオリジナル盤と違っています)。


by scoop8739 | 2017-08-22 17:08 | カントリー・ジェントルメン
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