204 時系列で聴くカントリー・ジェントルメン (42)


マーキュリーへの録音
(4)

名盤「フォーク・セッション・インサイド」を発表して以降、ジェントルメン人気は高まるばかりでした。各地のライヴ・ハウスやフェスティバルからの出演依頼が殺到し、しばらく活動はライヴ中心となります。

さて、前作の録音から9ヶ月後の1964年6月5日、彼らはマーキュリー社への次のアルバム制作のため、久々にウィンウッド・スタジオでレコーディングをします。この時レコーディングされた10曲は、マーキュリー社との契約のもつれからか、結局リリースされずにお蔵入りしたのでした。

それから26年後の1990年、ピート・ロバーツの経営するカパー・クリーク社から突然の様にリリースされることになりました。

考えてみますと、あの世界的に有名なロック・グループ、ビーチ・ボーイズが、超「幻のアルバム」と言われていた「スマイル」を37年もの後に、作者ブライアン・ウィルソン自らの手によって完成させリリースした時、世代を超えた多くのファンたちからは大歓迎されたものでした。

一方ジェントルメンのこのアルバムは、当時のファンにとってリリースを喜ぶのには「時すでに遅し」の感を否めることができません。

a0038167_16372947.jpegそれでは、当時録音された10曲と、1990年にリリースされた際にボーナス・トラックとして追加された1曲を合わせて聴いてみましょう。

1曲目のタイトル曲「ナッシュヴィルの監獄」(Ballad of Nashville Jail)ドン・マクハンの作です。フォーク・セッション・インサイド」でも書きましたが、彼は「漁師の花嫁」(Young Fisherwoman)の作曲者でもあります。ジム&ジェシーのグループでギターを弾いていたり、テイター・テイトと共にベイリー・ブラザースのバンドにも在籍していました。ミドル・テンポのこの曲はジョンとチャーリーの斉唱で歌われています。

2曲目「この世に住む場所もなくて」(This Worlds No Place To Live)は、アン・ヒル・ストリーター(後にピート・ロバーツと結婚)の作詞、ジョン・ダフィーの作曲です。チャーリー・ウォーラーは出来上がったこの曲を評して、「このアルバムの中の最高傑作だ」と言ったそうですが、曲調は「500マイル」にとてもよく似ています。それをジョンが哀愁たっぷりに歌います。この曲は別テイクですが、1965年1月最後の週にシラキュース大学で録音され、レベル社からリリースされたアルバム「ブリンギング・メリー・ホーム」にも収録されています。

3曲目「エレクトリシティ」(Electricity)はとても神懸かった曲です。こういった歌を「リリジャス・ナンバー」(Religious Number)と呼んでいますが、宗教的な生まれ変わりを信じるというような内容のようです。ヒルビリー系のカントリー歌手としてそこそこ名を売っていたジミー・マーフィーが自作自演していた曲でした。リード・ヴォーカルのチャーリーはこの頃とても声がよく伸び溌剌と歌っています。また、間奏では独特のギターを聴くことが出来ます。アルバム「イエスタデイ&トゥデイ」vol.1にも同じテイクが使われています。

4曲目「アズロ・キャンパーナ」(Azzurro Campana)は、英語名「ブルー・ベル」と呼ばれる曲で、この後もジェントルメンのナンバーとしてよく演奏されます。バンジョーのエディとマンドリンのジョンの共作です。前アルバム「心の痛手」に共通するエディのバンジョー・ワークや、ジョンのギターとマンドリンを持ち替えての演奏が聴きものです。

5曲目「ブラウン・マウンテン・ライト」(Brown Mountain Light)は、3曲目の「エレクトリシティ」と同じように「光」のことを歌っていますが、こちらの方は「お化けの灯火」といったものです。「マウンテン・デュー」(Mountain Dew)やエルヴィス・プレスリーの歌で有名になった「愛していると言ったっけ」(Have I Told You Lately That I Love You)でお馴染み、スコット・ワイズマン作となっていますが、元々はノース・キャロライナ地方に伝わる民謡だと思われます。チャーリーのよく通るリード・ヴォーカルに続いてジョンとエディとによる3部コーラスとなります。

3.4、5曲目はこれ以降、彼らの十八番曲として、アルバム「ロアノーク・ブルーグラス・フェスティバル」や「ゴーイン・バック・トゥ・ザ・ブルー・リッジ・マウンテン」(邦題「イン・コンサート」オリジナルとは曲順が違います)などのライヴ盤に残されています。

この続きは次回へ。

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by scoop8739 | 2017-08-01 08:38 | カントリー・ジェントルメン
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