200 時系列で聴くカントリー・ジェントルメン (39)

マーキュリーへの録音 (3)

続いて「フォーク・セッション・インサイド」のB面を聴くことにしましょう。米国オリジナル盤は日本盤とは少し曲順が異なっています。

a0038167_16261433.jpgB面1曲目「ガルヴェストンの洪水」(The Galveston Flood)の舞台は、グレン・キャンベルの歌でも有名なテネシー州ガルヴェストンです。この曲は1900年に実際に起こった暴風雨と大洪水の悲劇を基に歌われています。ご存知の方もおられるかと思いますが、米国ハリウッドにあるユニバーサル・スタジオでのスタジオ・ツアーズでも再現されているこの洪水で、列車に乗っていた数多くの家畜や人命が失われました。ジェントルメンは、亡くなった多くの者たちへの冥福を祈るかのようにトーキング・スタイルで歌っています。コーラス部ではリードをエディ、テナーがジョン、バリトンをトム、そしてベースをチャーリーの4部コーラスで歌われています。なお、この録音はアルバム「イエスタデイ&トゥディ」vol.3にも収録されています。

2曲目「漁師の花嫁」(Young Fisherwoman)は、米国版「岸壁の母」(?)のような作品で、その昔、ジム&ジェシーのグループでギターを弾いていたドン・マクハンという人の作です。早朝に漁のため元気に出港した夫が、夕方には帰ってこなかった。帰らぬ舟を待ちながら海辺に佇む漁師の若妻の姿を、ジョンが切々と歌い上げています。間奏のバンジョーはアルペジオ奏法で演奏されます。

3曲目の「悲しき9時の鐘」(This Morning At Nine)は悲しい失恋の歌です。歌の内容は「今朝9時にかつての恋人が新郎と共に教会の鐘を鳴らした」というもので、60年代の一時期、ドン・リーノウ&テネシー・カッタップスのギタリストとして、また歌手としても活躍していたシド・キャンベルの作です。この曲もA面4曲目同様、エディ・アドコックとピート・ロバーツによるツイン・バンジョーを聴くことが出来ます。

4曲目「浮き世の旅に疲れて」(I Am Weary)は、フォーク・ソング的ニュアンスを横溢させたピート・ロバーツの作品です。いかにもジェントルメンらしく伝統的なフォーク・ソングに対する洞察力の深さ、鋭さで聴かせる曲です。イントロと間奏ではバンジョーとマンドリンが同じメロディーを奏でます。ジョンとチャーリーとの斉唱の後、チャーリーのリードにハミング・コーラスが被さります。

A面1曲目同様、軽快なバンジョーのイントロで始まるB面5曲目「ダイナおばさんのパーティー」(Aunt Dinah's Quilting Party)は、アメリカのホーム・ソングの代表曲で、ジョンとエディのアレンジが効いています。「キルティング・パーティー」というのは、「アメリカ南部の諸州でよく見られるアメリカの婦人社交界=羊毛・羽毛などを入れた刺し子の掛け布団作りのお手伝い会」を意味しています。アメリカのご婦人方は、自分たちの余暇の時間を、比較的実用的に過ごしたようです。さらに珍しくエディのボーカルを聴くことができます。また、チャーリー・ウォーラーによる独特なギターのベース・ランニングは、当時この曲を聴いた数多くのギター奏者を虜にしたようです。この録音もまたアルバム「イエスタデイ&トゥディ」vol.2に収録されています。

最後になりましたが、このアルバムで「ナイト・ウォーク」と双璧をなすインスト曲「心の痛手」(Heartaches)は、このアルバム一番の聴きものでしょう。有名なスタンダード・ソングに果敢に挑戦し、見事なまでのアレンジですっかり彼らのレパートリーに昇華させています。トムのベース・ソロがまたこの曲に大きな貢献をしています。

アルバムを通して聴くことで、全曲に亘るトム・グレイのソリッドな4ビート・ベースが彼らのモダン・ブルーグラス・サウンドの大きなファクターとなっていることに気づかれることでしょう。


[PR]
by scoop8739 | 2017-07-21 16:56 | カントリー・ジェントルメン
<< 201 時系列で聴くカントリー... 199 時系列で聴くカントリー... >>