98 エルサレム・リッジ

(Jerusalem Ridge)

ブルーグラス・フィドラーとして常に5本の指に名前が挙がるケニー・ベイカーは、ケンタッキー州東部ジェンキンスの出身で、彼がミュージシャンの道を目指したのは、意外なことにトミー・ドーシーやグレン・ミラーといったスイング・ジャズからでした。第2次世界大戦中、戦地に慰問にやって来たウェスタン・スイング・バンドのボブ・ウィルスやステファン・グラッペリに感化されフィドルを弾くようになりました。

フィドルを覚えるとビル・モンロウのフィドル・インストゥルメンタルに興味を持ち、のちにモンロウのブルー・グラス・ボーイズに加入することとなります。彼のフィドル・プレイは、元々影響を受けていたウェスタン・スイングとジャズを下地に、他のブルーグラス・フィドラーよりも甘く、表情豊かな特有の音色を持っています。彼の加入を機に、ブルー・グラス・ボーイズでは1960年代初頭までバンジョーの陰に隠れがちだったフィドルが再び主役の座を獲得したのでした。

a0038167_1325361.jpg1976年春、彼はそれまでモンロウの下で演奏して来た曲を集大成したソロ・アルバムをリリースします。マンドリンはグループの御大モンロウ自身が担当し、ケニーの軽快なフィドルを中心にボブ・ブラックやヴィック・ジョーダンのバンジョーが絡み、ワルツ、ラグ、ブレイクダウンと、緩やかな音からアップテンポな曲まで、シンプルながら多彩に演奏されます。その中に標題の「エルサレム・リッジ」が収録されています。ケニーのフィドルを中心に、途中でモンロウがマンドリンのブレイクをはさみます。
Kenny Baker / Plays Bill Monroe (County)

この曲はビル・モンロウのオリジナルとされ、フェスティバルなんかでも人気の曲です。モンロウ盤は、先のケニー・ベイカー盤からちょうど1年前にほぼ同じメンバーで録音されています。こちらの録音はどういう訳だかケニーのフィドルばかりで、モンロウによるマンドリンのブレイクが聴かれません。
Bill Monroe / Weary Traveler (MCA)

トニー・ライスはよっぽどこの曲がお気に入りのようで、彼のソロ・アルバムには何度も登場してきます。「エルサレム・リッジ」は次の3枚のアルバムで聴くことができます。その時代時代のトニーのプレイを聴き比べてみませんか?
Tony Rice / Church Street Blues (Sugar Hill)
次のアルバムはトニーの声帯の調子が悪い時期のもので、ドーグなどアコースティック系インスト中心のアルバム構成となっています。トニーの最高傑作アルバムといえるでしょう。
Tony Rice Unit / Unit Of Measure (Rounder)
次のアルバムはブルーグラス・チューンばかりを集めたオール・インストのベスト・セレクションとなっています。才能がありすぎる人は、余りにも多くのことを同時にやりすぎてファンを振り回してしまうことがありますが、トニーの優れた技術、技法を駆使したアルバムには時にその一歩手前のものを感じることがあります。しかしこのアルバムに限って言うと、たっぷりと軽やかでハッピーなトニーのギターを堪能できます。
Tony Rice / Bluegrass Guitar Collection (Rounder)

デヴィッド・グリスマン、ジョン・ハートフォード、マイク・シーガーという3つの個性が並ぶとありきたりのアルバムを作るはずがありません。このアルバムはちょっと古いスタイルを意識した演奏を聴かせてくれます。
Grisman, Hartford & Seeger / Retrograss (Acoustic Disc)

カール・ジャクソンは早くから才能が認められたバンジョー奏者で、さらに加えて優秀なボーカリストです。彼の80年代のソロ・アルバムにもこの曲が収録されています。カールの他には、ドブロにジェリー・ダグラス、マンドリンにマーティー・スチュアート、フィドルにブレイン・スプラウス、ギターはアラン・オブライアン、ベースにジム・ブロックJr.。そんな彼らの作り出すサウンドが悪かろうはずありません。CD化されれば必ず聴いていただきたい1曲です。
Carl Jackson / Song Of The South (Sugar Hill)(CD化されていません)

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by scoop8739 | 2005-05-22 13:32 | 不朽の名曲
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