(Mule Skinner Blues)
リチャード・グリーンとピーター・ローワンは、都会から出てレッド・アレンを経由し、ビル・モンロウの下でブルー・グラス・ボーイズの第2期黄金期を支えました。それと前後して、ビル・キースやデヴィッド・グリスマンも同じ道を辿り、彼らは再び都会に戻ってきたのです。そしてさらにフォーク〜ブルース〜ロック〜カントリーといった音楽遍歴を重ねていったのでした。 一方、1960年代末のウエスト・コーストでは、バーズのクラレンス・ホワイトがカントリー色を強く打ち出し、新しいディラーズやフライング・ブリトゥ・ブラザーズが派手に動き出します。こうして、1960年代末から70年代にかけてのブルーグラスやフォーク&ロック・シーンでは、クラレンスを始めとして、リチャード、ピーター、デヴィッド、ビルらが集まって何かをやろうとする一触即発的な動きが感じられていました。 そんな中、ビル・モンロウのロサンゼルスでのテレビ出演が不可能になったことから、急遽その穴を埋めるべく上記メンバーによるテレビ番組放映が決まったのです。これを観ていた当時のワーナーのプロデューサーが、レコードにしないかと持ちかけて制作されたのが、かの有名な「ミュールスキナー」というアルバムです。 このアルバムの前半はビル・モンロウのレパートリーとそのスタイルを軸に、それを忠実に再現し、そこからわき上がる新しさが楽しめます。アルバムの1曲目に収録されているのが、タイトル曲の「ミュール・スキナー・ブルース」です。闇を切り裂くようなクラレンスのテレキャスターによるイントロに続いて、バンジョー、フィドル、マンドリンが一斉に耳に飛び込んできます。ピーターの飛び跳ねるようなボーカル、リチャードのうねるようなフィドル、これは間違いなくぼくが今まで聴いてきた中でも史上最強の「ミュール・スキナー・ブルース」でした。 The Mule Skinner Band / Mukeskinner (DBK Works) となると、オリジナルを聴かない訳にはまいりません。まずは作曲者自演のオリジナルを聴いてみましょう。ジミー・ロジャースはカントリー音楽を商業ベースにのせ、この音楽を全世界に広めたアメリカン・ブルー・ヨーデラーで、南部アメリカの土着の匂いがする歌い手と言われています。現在も多くのアーティスト、ファンに引き継がれその人気は衰えを知りません。1961年にカントリーの「名誉の殿堂入り」を、1986年には「ロックの殿堂入り」を果たしています。 Jimmie Rodgers / The Essential Jimmie Rodgers (RCA) 続いてはこの曲をブルーグラスに取り入れた張本人ビル・モンロウが、いわゆるブルーグラス・スタイルを完成させる直前の、グランド・オール・オープリーに初出演を果たした時の録音です。ビルはトレード・マークのマンドリンではなくギターを弾いています。ここでは彼のGランが聴かれます。 Bill Monroe / Music of Bill Monroe from 1936-1994 (Uni/MCA) ブルー・グラス・ボーイズからフラット&スクラッグスが抜けた後、バンジョーにルディ・ライル、ギターにジミー・マーチンを加え、この曲はブルーグラス・スタイルで「ニュー・ミュール・スキナー・ブルース」というタイトルとなり新録音されました。 Bill Monroe / Country Music Hall of Fame (MCA) 数多いブルーグラス曲の中で一番ドライブするのがこの曲です。ジョン・ダフィーの張り切り方は異常とも思えるくらいです。 The Country Gentlemen / Roanoke Bluegrass Festival (Starday) (CD化されていません) 1950年代半ばのイギリスで「スキッフル・ブーム」を巻き起こしたロニー・ドネガンが、1999年に新作をリリースしています。自身の代表曲の再録もきっちり今風の音作りに仕上げていて新鮮な印象を受けます。アルバムの中ではヴァン・モリソンとの共演でこの曲が収録されています。 Lonnie Donegan / Muleskinner Blues (RCA) アメリカン・ポップスが最もそれらしかった時代の代表的存在だったコニー・フランシスが、そのルーツともいえるカントリーを歌っています。共演は若き日のハンク・ウィリアムス・ジュニアです。彼女は60年代前半にカントリーのLPを3枚出していて、このアルバムはその中の1枚です。コレクターズ・アイテムとしてもなかなかなものです。 Connie Francis & Hank Williams Jr. / Sing Great Country Favorites (Bear Family) 人気blogランキングへ
by scoop8739
| 2005-04-03 15:05
| 不朽の名曲
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