56 カントリー・ガゼット考(その2)

ところがガゼットは本来、楽器のテクニックもさることながら、バーズ、フライング・ブリトゥズ、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングに代表されるウエスト・コースト特有のファンタスティックで抜けるようなヴォーカル、ハーモニーがトレード・マークであり、そうしたハーモニー作りの中心人物が他ならぬケニー・ワーツだったのです。いかにケニーが重要な位置を占めていたかは、前述の「ガゼット・ライヴ」を一聴すれば明らかでしょう。

たしかにローランドの加入は、ケニーに不足していたブルーグラスらしいスピリッツと極上の演奏テクニックを提供し、バンドにずっしりとした手応えのあるブルーグラス・サウンドをもたらしました。また、ヴォーカル、ハーモニーもガゼット特有の雰囲気を損なうことなく気を使ってはいたものの、デビュー1作目、2作目で感じた新鮮な衝撃とはどこか様子が違っていました。

つまり、ローランドのヴォーカル自体、深みと誠実さを併せ持ち、人柄の良さを彷彿させ、ケニーを遥かに凌ぐミュージシャンであることに疑いの余地はないのですが、ローランドに終生ついてまわるであろういにしえの「ケンタッキー・カーネルズ」での個性は、ことウエスト・コーストのカントリー、フォーク・ロックへクロス・オーヴァーしたブルーグラス・バンド「カントリー・ガゼット」の個性とは明らかに「異質」だったのです。その結果、バンドは「ローランド・ホワイト&カントリー・ガゼット」という、「ケンタッキー・カーネルズ」風バンドへと変貌してしまったのでした。このことを強く感じていたバンド・リーダーのバイロン・バーラインは自らバンドを去ることとなります。

そうしたガゼットに1976年、突然ケニー・ワーツが帰ってきます。それまでどこで何をやっていたのかは明らかにされていませんが、ウエスト・コーストのガゼット・ファンにとっては、デビュー1作目、2作目で聴かれたオリジナル・ガゼットのハーモニーがまた聴けるというのを心待ちにしていたのだと思います。

a0038167_21164841.jpgケニーの復帰によって録音されたのが、フライング・フィッシュからリリースされた「アウト・トゥ・ランチ」(Out To Lunch)というアルバムです(これまた残念ながらCD化されていません)。このアルバムではバイロン・バーラインに替わって彼そっくりにフィドルを弾くデイヴ・ファーガソンと、おなじみアル・パーキンスがゲストでドブロを弾いています。これによりガゼット本来の完璧なサウンドに、ケニーのヴォーカル、ハーモニーが戻って来て、さながら初期のガゼットを思わせる演奏を聴かせてくれます。ローランドもヴォーカルの負担が軽くなったのか、前作よりも気楽に歌っているようにも思えます。

COUNTRY GAZETTE: OUT TO LUNCH
(Flying Fish 027 & Transatlantic TRA 318)
Produced by Jim Dickson
with Alan Munde, Roland White, Roger Bush, Kenny Wertz & Dave Ferguson / guest;Al Perkins
Side A
1. Still Feeling Blue
2. Sure Didn't Take Him Long
3. Out To Lunch
4. Melody For Baby
5. Sing A Sad Song
6. Sunny Side Of The Mountain
Side B
1. Down Down Down
2. Why You Been Gone So Long
3. Forked Deer
4. Time Left To Wander
5. Last Thing On My Mind
6. Uncle Clooney Played The Banjo
7. Blue Light
(次回につづく)

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by scoop8739 | 2005-03-02 21:18 | カントリー・ガゼット
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