50 ブルーグラスの80年って? (その1)

a0038167_13295156.jpgこんな4枚組CD-BOXが発売されています。
題して「CAN'T YOU HEAR ME CALLIN' 〜 BLUEGRASS : 80 YEARS OF AMERICAN MUSIC」。「ブルーグラス音楽って、もう80年にもなるのか?」と首を傾げたくもなりますが、よくよくタイトルを読むと、「ブルーグラス:アメリカ音楽の80年」となっているではありませんか。つまり、ビル・モンローが「ブルーグラス音楽」という形式を完成させる以前の、初期のヒルビリー音楽やストリング・バンドからのものを含めて80年だというのです。

たしかにブルーグラス音楽は、もともと1920〜30年代に大流行したストリング・バンドの伝統から生まれたものとされています。マウンテン、ヒルビリー系のミュージシャンたちは1920年代半ば頃からレコードに吹き込み始めます。これは商業レコードが急速に広まり始めた頃のことで、南部の民謡や民族音楽を求めて、それを商売にしようとするレコード業者が頻繁に彼らの演奏をレコード化して売り始めたのが始まりでした。

レコード業者は南部山間地に入り込んで、才能ある歌い手、弾き手をスカウトし、レコードに吹き込んでいきました。とくにオウケー、コロムビア、ボッカリオンの3社はヒルビリー音楽を専門とし、これに大会社のビクターも追随し、続々とスターを生み出していったのです。

この4枚組CD-BOXの1枚目には、そんなヒルビリー系の歌手、グループの代表選手が収められています。フィドルのギド・ターナーと彼のスキレット・リッカーズはヒルビリー音楽にジャズやポピュラー音楽を結びつける試みをしています。これに少し遅れて現れたのがチャーリー・プールとノース・キャロライナ・ランブラーズでした。チャーリーのバンジョー奏法は独特のもので、バンドのアンサンブルはやや複雑なものとなり、その後のストリング・バンドの手本となりました。

初期ヒルビリーを代表する歌手は何といってもジミー・ロジャースです。彼は早くもヒルビリーと各種音楽との融合を試み大成功を収めました。それはブルース、ハワイアン、ジャズ、ジャグ・バンドなどの要素を程よくブレンドして、ヒルビリーの魅力を全米のファンにアピールしたのです(残念ながらこのCDには収録されていません)。

グループとして成功を収めたのが、カーター・ファミリーでした。南部の田園風景をイメージさせる曲や、ゴスペル・ソングに手腕を発揮して人気者となりました。両者ともアマチュアからプロになっての活躍でしたが、そうした機会を与えたのがラルフ・ピアという人物で、彼はテネシー州ブリストルで大規模なタレント・オーディションを行い、次々とプロとして成功可能なミュージシャンを発掘していったといわれています。1930年代になるとロイ・エイカフが現れます。彼はスモーキー・マウンテン・ボーイズを率いて、グランド・オール・オープリーで歌手としての存在を強く打ち出すきっかけとなりました。

そして忘れてはならないのが、モンロー・ブラザーズの存在です。ビル・モンローは1936〜38年の3年間、兄チャーリーとともにバンドを組んで活躍します。彼らはアパラチア南部の伝承的なスタイルで、チャーリーがギター、ビルはマンドリンを弾きながら歌っていました。この頃からビルはマンドリンに優れた才能を見せており、非常に早いテンポの演奏をします。彼はジャズに傾倒しているウェスタン・スィングの影響を受けながらブルーグラスの音楽形態を考えたといわれています。

その後ビル・モンローは兄の元を離れブルー・グラス・ボーイズを結成。このバンドをバックにグランド・オール・オープリーにデビューを果たします。この時歌ったのがジミー・ロジャースのヒット曲「ミュール・スキナー・ブルース(ブルー・ヨーデルNo.8)」でした。不思議なことに、この曲でビルはギターを弾いて歌っています。

今日のブルーグラスの楽器編成に近づいたのは彼らがコロムビアで録音を始めた頃です。しかし1946年の録音にはまだアコーディオンが使われています。さていよいよレスター・フラット、アール・スクラッグス、チャビー・ワイズら加入してからの録音は1946年9月16日に行われます。このアップテンポの革新的なストリング・バンド音楽こそ、ブルーグラス音楽の歴史的な誕生だったのです。

DISC 1:
1. Sodier's Joy / Gid Tanner & His Skillet Lickers
2. Don't Let Your Deal Go Down Blues / Charlie Poole & The North Carolina Ramblers
3. White House Blues / Charlie Poole & The North Carolina Ramblers
4. Bill Mason / Charlie Poole & The North Carolina Ramblers
5. Cannon Ball Blues / The Carter Family
6. D Blues / Blue Ridge Ramblers
7. Keep On The Sunny Side / The Carter Family
8. What Would You Give In Exchange (For Your Soul)? / The Monroe Brothers
9. I'm Thinking Tonight Of My Blue Eyes / The Carter Family
10. Great Speckle Bird / Roy Acuff & His Crazy Tennesseans
11. Orange Blossom Special / Roy Hall & His Blue Ridge Entertainers
12. Ida Red / Roy Acuff & His Smoky Mountain Boys
13. Pretty Polly / The Coon Creek Girls
14. Lonesome Old River Blues / Roy Acuff & His Smoky Mountain Boys
15. Mule Skinner Blues / Bill Monroe & His Blue Grass Boys
16. Wreck On The Highway / Roy Acuff & His Smoky Mountain Boys
17. The Drunkard's Gave / The Bailes Brothers
18. Rocky Road Blues / Bill Monroe & His Blue Grass Boys
19. Searching For A Soldier's Grave / The Bailes Brothers
20. Blue Moon Of Kentucky / Bill Monroe & His Blue Grass Boys
21. Dust On The Bible / The Bailes Brothers
22. I Heard My Mother Weeping / Molly O'Day & The Cumberland Mountain Folks
23. Will You Be Loving Another Man? / Bill Monroe & His Blue Grass Boys
24. Blue Grass Breakdown / Bill Monroe & His Blue Grass Boys
25. It's Mighty Dark To Travel / Bill Monroe & His Blue Grass Boys
26. Molly And Tenbrooks (The Race Horse Song) / Bill Monroe & His Blue Grass Boys
27. Black Mountain Rag / Roy Acuff & His Smoky Mountain Boys
(次回へつづく)

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by scoop8739 | 2005-01-04 13:33 | ブルーグラスの歴史
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