48 ニュー・トラディッショナルの旋風

a0038167_18391851.jpg流行の揺り戻し作用はどんなことにも起こるものです。1970年代半ばまで続いたニューグラスにも少しかげりが見え始めました。ニューグラスで火がついたブルーグラス熱は、それまでブルーグラス音楽に無関心だった層を刺激し、新たなファンを作り出していったのですが、彼らはグルーグラス音楽を知れば知るほどその歴史に興味を持ち始めます。それは過去の名盤復刻という形でさらに加熱していきます。

先のデヴィッド・グリスマンの「ラウンダー・アルバム」のように、新しいバンドが隠れた古い名曲を発掘し新しいアレンジで演奏するスタイルがブームとなります。またプログレッシヴなグループでさえ、古いマテリアルを以前より多くレパートリーに加え始めました。こうした結果、1970年に蒔かれた「ニューグラス」の種は、意外なことに「ニュー・トラディッショナル」という形で実を結んだのでした。

1977年になると、J.D.クロウのニュー・サウスやグリスマン「ラウンダー・アルバム」で実力を遺憾なく発揮したリッキー・スキャッグスとジェリー・ダグラスが中心となって、「ブーン・クリーク」という名の新しいバンドを結成します。彼らはいくぶんプログレッシヴ寄りのバンドでしたが、トラッドの良さを失わないスタイルを打ち出します。

メンバーはリッキーとジェリーに加えて、リード・ボーカルとギターにウェズレー・ゴールディング、バンジョーとフィドルにテリー・ベイコム、エレキ・ベースにフレッド・ウーテン(のちにスティーブ・ブライアントに替わる)の5人からなり、全員少年の頃から一流のプロ・バンドで活躍していて、個々の持つ類い稀な楽器演奏能力にバンドとしてのアンサンブル、そして美しいコーラス・ワークなど特徴的な要素を多く持ち合わせていました。

彼らはビル・モンローやスタンレー・ブラザーズ、フラット&スクラッグスなどの曲に新しいアレンジを加え、新しいカルテットのコーラスとハイ・リード、エレキ・ベースの強い音での演奏や、それまでのブルーグラス・スタイルにウェスタン・スィングを取り入れるなど、彼らなりにトラディッショナルなブルーグラス音楽を新しい感覚で甦らせていきました。

One Way Track (Sugar Hill)
1. One Way Track
2. Head Over Heels
3. Little Community Church
4. Mississippi Queen
5. In the Pines
6. Can't You Hear Me Calling
7. No Mother or Dad
8. I'm Blue, I'm Lonesome
9. Daniel Prayed
10. Sally Goodin'
11. Paradise [Live]
12. Pathway of Teardrops [Live]
13. Walking in Jerusalem [Live]

彼らのデビュー・アルバムはビル・モンローやスタンレー・ブラザーズ、フラット&スクラッグスの曲などを中心として。確かにソリッドな部分を崩さず上手く仕上げられています。一方、彼らのオリジナルとなる1曲目「One Way Track」、4曲目「Mississippi Queen」は少しプログレッシヴな曲です。エレキ・ベースが強く前面に押し出されているにもかかわらず、決してニューグラスっぽくなく、みごとにブルーグラスとなっています。この辺りに彼らのセンスが顕著に現れています。

このCDにはオリジナルのSugar Hillのアナログ盤には入っていない3曲のボーナス・トラック(しかもライブ盤)が入っています。これだけでもかなりお得な気分ですが、すばらしいコーラス・ワークを楽しむとさらにお得感が増します。
(次回につづく)

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by scoop8739 | 2004-10-05 18:38 | ブルーグラスの歴史
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