38 変貌遂げたカントリー・ジェントルメンの来日ライヴ

a0038167_93623100.jpgモダン・グルーグラスの強力なフロント・ラインとして、そのサウンドをクリエイトし続けたジョン・ダフィーが抜け、エディ・アドコックが抜けた後のカントリー・ジェントルメンは、メンバー移動の末に1970年にはバンジョーに結成時メンバーのビル・エマーソンが返り咲き、マンドリンにはJ.D.クロウのバンドからドイル・ロウソンを迎え、さらにベースにはジミー・マーチン、ビル・モンローのバンドを経てビル・イエーツが入団してやっと落ち着きます。

こうしてブルーグラス界の中堅プレイヤーで固められたジェントルメンは、翌71年1月に初来日を果たします。これは最初の訪日計画から3年目にしてのことでしたが、彼らはそこで評判どおりのハイ・テクニックとフレッシュなソフィスティケイトされたマナーを十分に見せてくれました。メンバーのいずれもが超一流のオーセンティックなバンドで豊富な経験を積んでおり、演奏内容はかつてないほどのトラディッショナルなものとなっています。つまり、ダフィー、アドコック在籍時のモダン・フォークやジャズを取り入れたプログレッシブなサウンドから、より堅実なオーセンティックなものへと変化していったのです。これによりチャーリーのボーカルにも明らかに40年代前後におけるカントリー音楽の強い影響が見られるようになり、彼の個性が実にのびのびと新しいジェントルメンの中で躍動し始めたように感じられました。

オーセンティック・バンドとして定着し、充実した活動をするようになったジェントルメンは、1971年にはブルーグラス関係の賞31部門のうち約4分の1にあたる8部門のタイトルを受賞します。内訳はブルーグラス・アンリミテッド誌から「フェイヴァリット・バンド賞」、「リード・シンガー賞(ウォーラー)」、「フェイヴァリット・ベース賞(イエーツ)」、ミュール・スキナー誌からは「ブルーグラス・バンド・オブ・ザ・イヤー賞」、「ベスト・ボーカル・グループ賞」、「ベスト・ギター・プレイヤー賞(ウォーラー)」、「ベスト・ベース・プレイヤー賞(イエーツ)」、「ソング・オブ・ジ・イヤー賞(ティーチ・ユア・チルドレン)」というものでした。これらの賞がラルフ・スタンレーおよびビル・モンローとおおむね3分する結果となっていることは注目に値するものです。

そんな彼らの来日コンサートの模様がアルバムとして残されています。CD化の際に収録時間の関係で5曲ほど割愛されていますが、それでも当時の雰囲気を伝えるのに十分な内容となっています。

Live in Japan [LIVE] (Rebel)
1. Fox on the Run
2. Little Bessie
3. Train45
4. Legend of the Rebel Soldier
5. Walking Down the Line
6. Matterhorn
7. Take Me Home, Country Roads
8. He Will Set Your Fields on Fire
9. Cripple Creek
10. Foggy Mountain Breakdown
11. East Virginia Blues
12. Redwood Hill
13. I'll Break Out
14. Under the Double Eagle
15. Copper Kettle
16. Yesterday
17. Bringing Mary Home
18. Seeing Nellie Home
19. Along the Way
20. Hank Snow Medley: The Last Ride/One More Ride/Golden
Rocket/I'm Movin

アルバムの1曲目はエマーソンがクリフ・ウォードロンと組んでいた頃の当たり曲「フォックス・オン・ザ・ラン」です。いかにもエマーソン好みのイントロに始まり、サビのボーカル・クァルテットで観客をグイグイと引きつけていきます。ありきたりのナンバーでのオープニングでは新生ジェントルメンに相応しくありません。そういった意味でなかなか粋なセンスが伺えます。5曲目デュラン・ソングでリード・ボーカルをとるロウソンは「C.G. エクスプレス」という彼自身にオリジナル曲を演奏しています(CDには未収録)。

またウォーラーものびのびとリード・ギターの腕前を披露します。14曲目「双頭の鷲の下に」はクラシック・ジェントルメン時代のレパートリーでもあるのですが、このステージでは一段とギターの腕を上げているように思えます。力余ってか弦まで切れる音がリアルに聞こえます。6、17、18、19曲目はお馴染みのジェントルメン・ナンバーです。しかし演奏者がかわると雰囲気もすっかり変わってしまうもので、ある意味いい感じに仕上がっています。

ステージではジェントルメンならではのお笑いも演じます。9曲目「クリプル・クリーク」はレコードの回転速度を間違ったような超スローモーな始まりで、途中から回転を速くしたように変わって、最後はハード・ドライヴィングでぴしりと終わらせます。この曲、実はバンジョー弾きの入門曲なのですが、早弾きの練習のためにテープの回転速度を落として「耳コピー」する定番の方法を「生で再現した」演奏だそうでなかなか笑えます。つまり、技術に裏打ちされた「遊び」で新生ジェントルメンの面目躍如と言ったところでしょう。

またウォーラー得意のハンク・スノウの物まねメドレーも聴かれます。イエーツの司会にのせられハンク・スノウになり切って大熱演してくれています。このアルバムは演奏、録音ともに日本で録音されたあらゆるジャンルのライブ・アルバムを含めて屈指のものであると思えます。
(次回に続く)

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by scoop8739 | 2004-09-16 09:36 | ブルーグラスの歴史
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